第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

当連結会計年度の世界経済は、米国では、雇用情勢の改善を背景とした好調な個人消費等を受けて、景気は着実に回復しました。また、中国でも実質GDPの成長率の伸びは鈍化したものの政策効果によって景気が持ち直しに転じる等、世界景気は総じて堅調でした。国内経済は、雇用情勢の改善が続く中で個人消費が底堅く推移したほか、外需の寄与により、景気は緩やかに回復しました。

このような状況の中、当期の業績は、売上高は前期比0.4%増収の1,439,855百万円であったものの、営業利益は、パルプ市況軟化等の影響もあり、前期比4.3%減益の70,508百万円となりました。また、経常利益は、為替差損が増加したこともあり、前期比17.9%減益の51,190百万円となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失が減少したこともあり、前期比139.6%増益の36,562百万円となりました。

 

各セグメントの状況は、次のとおりです。

 

○生活産業資材

国内事業では、段ボール原紙は堅調に推移し、販売量が前年に対し増加しました。段ボールの販売量はほぼ前年並みでした。白板紙・包装用紙は、輸出向けを中心に堅調に推移し、販売量が前年に対し増加しました。家庭用紙は、ティシュペーパー、トイレットロールともに販売量が増加しました。紙おむつは、子供用は販売量がほぼ前年並みでした。大人用は前年に対し増加しました。

海外事業では、東南アジアにおいて、段ボール原紙の販売が堅調に推移し、段ボールの販売も飲料・加工食品関連を中心に堅調に推移しました。紙おむつは、東南アジアにおける現地生産・販売の本格化、中国における現地販売組織立ち上げによる本格市場参入等により、販売量が前年に対し増加しました。

これらにより当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 連結売上高:      620,281百万円 (前期比   2.7%増収)

             (外部顧客への売上高  577,160百万円)

 連結営業利益:      18,830百万円 (前期比   0.3%増益)

 

○機能材

国内事業では、特殊紙の国内販売は、新製品開発・新規顧客開拓に注力し拡販を進めてきたこと等により、前年に対し販売量が増加しました。輸出販売は、新規受注等により前年に対し販売量が増加しました。感熱紙の国内販売は、堅調に推移しました。

海外事業では、感熱紙の販売量が、北米で減少、南米・アジアで増加し、全体では増加しました。

これらにより当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 連結売上高:      217,595百万円 (前期比   3.1%増収)

             (外部顧客への売上高  200,566百万円)

 連結営業利益:      17,548百万円 (前期比  47.3%増益)

 

○資源環境ビジネス

国内事業では、パルプ事業は、溶解パルプが輸出向けを中心に販売好調であり、販売量が前年に対し増加しました。エネルギー事業は、2016年1月の北海道江別市におけるバイオマスボイラの営業運転開始が寄与し、売電量が増加しました。

海外事業では、パルプ事業は、Celulose Nipo-Brasileira S.A.及び江蘇王子製紙有限公司の拡販等により、前年に対し販売量は増加しましたが、売上高は市況軟化及び外貨建て売上高の円換算額が円高により減少した結果、減少しました。木材事業は、Pan Pac Forest Products Ltd.の拡販により、販売量が前年に対し増加しました。

これらにより当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 連結売上高:      270,335百万円 (前期比   1.0%増収)

             (外部顧客への売上高  219,634百万円)

 連結営業利益:      19,390百万円 (前期比  38.5%減益)

 

○印刷情報メディア

国内事業では、新聞用紙は、発行部数減の影響等により、販売量が前年に対し減少しました。印刷・情報用紙は、販売量はほぼ前年並みでしたが、売上高は市況軟化の影響等により、前年に対し減少しました。

海外事業では、江蘇王子製紙有限公司が順調に印刷用紙の販売を伸ばし、販売量が前年に対し増加しました。

これらにより当事業の業績は以下のとおりとなりました。

 連結売上高:      296,135百万円 (前期比   4.3%減収)

             (外部顧客への売上高  268,907百万円)

 連結営業利益:       5,527百万円 (前期比 145.3%増益)

 

○その他

エンジニアリング事業等の増収により、売上高は前年に対し増加しました。

これらによりその他の業績は以下のとおりとなりました。

 連結売上高:      269,693百万円 (前期比   1.1%増収)

             (外部顧客への売上高  173,585百万円)

 連結営業利益:       8,900百万円 (前期比  0.5%増益)

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比し、3,708百万円増加の51,352百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費74,858百万円(前連結会計年度は78,579百万円)、税金等調整前当期純利益62,648百万円(同27,016百万円)などにより、157,406百万円の収入(同128,051百万円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出などにより、40,247百万円の支出(前連結会計年度は43,328百万円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済による支出などにより、114,468百万円の支出(前連結会計年度は89,762百万円の支出)となりました。

なお、当連結会計年度末の有利子負債の残高は、前連結会計年度末に比して100,418百万円の減少となっています。

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

生活産業資材

649,751

0.4

機能材

202,528

△2.1

資源環境ビジネス

196,393

△5.0

印刷情報メディア

280,044

△4.0

報告セグメント計

1,328,718

△1.8

その他

9,047

△6.1

1,337,765

△1.8

(注)1 生産高は自家使用分を含めて記載しています。

2 金額は販売価格によるものであり、消費税及び地方消費税を含みません。

 

(2)受注状況

 当社グループは、不動産・エンジニアリング等一部の事業で受注生産を行っていますが、その割合が僅少であるため、記載を省略しています。

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

生活産業資材

577,160

2.7

機能材

200,566

3.9

資源環境ビジネス

219,634

△2.1

印刷情報メディア

268,907

△3.9

報告セグメント計

1,266,269

0.6

その他

173,585

△0.5

1,439,855

0.4

(注)1 セグメント間取引については相殺消去しています。

2 上記の金額には、消費税及び地方消費税を含みません。

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)企業集団の経営戦略

当社グループは、「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」を経営理念とし、「領域をこえ 未来へ」向かって、中長期的な企業価値向上に取り組んでいます。

この経営理念の下、「海外事業の拡大」、「国内事業の集中・進化」、「財務基盤の強化」をグループ経営戦略の基本方針に据え、下記の経営目標を掲げています。

 

2018年度経営目標

連結営業利益

有利子負債残高

1,000億円

7,000億円


これを実現するため、具体的には以下の取り組みを行っています。

 

(a)生活産業資材

・産業資材
(段ボール原紙事業、段ボール加工事業、白板紙・包装用紙事業、紙器・製袋事業)

海外では、東南アジア・インド・オセアニアを中心に事業拡大を進めています。2016年9月にはマレーシアの段ボール製造販売会社であるDazun Paper Industrial Company Sdn.Bhd.の買収を完了しました。また、ミャンマーで2番目となる工場では段ボール、軟包装及び紙コップ事業の準備を進めており、2017年中に営業運転を開始する予定です。オーストラリアにおいても、2017年10月の営業運転開始に向けて、段ボール工場の新設を進めています。今後も東南アジア等を中心に拠点を拡大していくとともに、東南アジア・インド・オセアニア地域全体の連携を深めて製造・販売ネットワークを活性化し、収益力を強化していきます。

国内では素材・加工一体型ビジネスをさらに推進するとともに、M&Aによる段ボール加工の事業拡大、生産性向上・競争力強化施策による全事業分野の基盤強化を推し進め、No.1総合パッケージングメーカーを目指します。

また、中越パルプ工業株式会社との資本・業務提携施策として推し進めてきた製袋事業の協業に関して、2016年5月に中間持株会社であるO&Cペーパーバッグホールディングス株式会社を設立しました。生産体制の合理化等によって国内の事業基盤を盤石なものとしたうえで、海外において両社の既存拠点を基点として事業拡大を積極的に進め、製袋事業を成長させていきます。さらに、安定した需要が期待できる高級白板紙の生産合弁会社として設立したO&Cアイボリーボード株式会社では、2017年8月の営業生産開始に向けて準備を鋭意進めています。

 

・生活消費財
(家庭紙事業、紙おむつ事業)

家庭紙事業では、森林認証を取得した環境配慮型商品や「鼻セレブ」に代表される高品質商品をはじめとした商品展開により、一層の「ネピア」ブランドの価値向上を目指していきます。また、三菱製紙株式会社と合弁でエム・ピー・エム・王子ホームプロダクツ株式会社を設立し、三菱製紙株式会社八戸工場構内で家庭紙の製造事業を行うことについて、2017年4月に合意しました。東北地区で初めてとなる家庭紙事業の拠点獲得による物流コスト削減等を通じた家庭紙事業の競争力強化を進めるとともに、今後も安定した需要が期待される家庭紙事業の拡大を進めていきます。

紙おむつ事業の子供用分野では、国内外の統一ブランドとして展開する「Genki!(ゲンキ!)」に加え、「Whito(ホワイト)」を新たに発売しました。「Whito」は、テープ型からパンツ型まで揃えた、王子史上最高品質のブランドです。紙おむつ吸収体の表面にプレスした溝が、「吸収性」、「通気性」、「フィット性」の3性能を飛躍的に向上させる独自技術で、業界初となる「3時間用(こまめにおむつを替える時の短時間用)」と「12時間用(お出かけ時や睡眠時などの長時間用)」を開発し、用途によって使い分ける新習慣を提案します。2017年2月にベビー専門店のアカチャンホンポで先行販売を開始したところ、早くもリピート購入いただくなど販売は順調に伸長しています。今秋には全国一斉に展開し、品質志向の高い顧客をターゲットに高価格市場を開拓していきます。また、国内では2016年にはテープ型、パンツ型ともに加工機を増設することで供給能力も拡大しました。中国をはじめとする海外への日本からの輸出も一層の強化を図ります。海外ではマレーシア2拠点での製造販売、インドネシアの合弁会社における販売を実施しており、インドネシアでの製造開始も予定しています。大人用の「ネピアテンダー」においても、介護現場が抱える課題を解決する商品の開発を続けていきます。

 

(b)機能材
(特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業)

東南アジアでの機能材事業は、感熱紙・粘着紙などの川上事業を中心に展開してきましたが、2016年5月にマレーシアで印刷・加工製品を製造販売するHyper-Region Labels Sdn.Bhd.及びその関連会社の株式の60%を取得し、川中・川下事業にも参入しました。さらに、マレーシアで感熱紙・ノーカーボン紙等の製造販売を行うTele Paper (M) Sdn.Bhd.の株式取得も進めています。これらの拠点を基点として川中・川下事業を拡大していくことにより、エンドユーザーのニーズを適時適確に把握し、川上・川中・川下事業が一体となって新規事業開拓や新製品開発を強化していきます。ミャンマーではウイスキーラベルへの展開や食品・飲料及び生活消費財メーカー向けフィルム等の軟包装事業の準備を進めており、2017年中に営業生産を開始する予定です。また、ブラジルでは南米での感熱紙の旺盛な需要に対応するため、Oji Papéis Especiais Ltda.における約10%の生産能力増強を進めています。今後も、さらなる海外事業の拡大に取り組んでいきます。

国内については、生産体制再構築を進めて競争力を高めるとともに、光拡散部材や熱可塑性複合繊維等の脱「紙」製品の開発、 EV・HEV用コンデンサフィルムや光学機能性フィルム等の新たな付加価値の創造に基づく既存製品の高度化により、新たな事業領域への展開を進めていきます。

 

(c)資源環境ビジネス
(パルプ事業、エネルギー事業、木材事業)

パルプ事業では、パルプ市況の変動に耐え得る事業基盤を構築するため、主要拠点にて戦略的収益対策を実施しています。2014年に買収したニュージーランドのOji Fibre Solutions (NZ) Ltd.では、当社グループのノウハウや操業管理手法等を導入・活用し、操業の安定化及び効率化対策に取り組み、ブラジルのCelulose Nipo-Brasileira S.A.では製造設備の最新鋭化等による継続的な収益対策を進めています。また、江蘇王子製紙有限公司では2017年末稼働予定のドライパルプマシンの増設を進めています。その他、2014年に稼働した溶解パルプ製造設備ではレーヨン用途向け製品の生産に加えて、食料添加剤・医療品材料等の高付加価値品の開発も鋭意進めています。

新規ビジネスについても展開を加速させています。電力事業については、2015年度までに3基のバイオマス発電設備を稼働させ、水力発電設備の更新工事、電力小売り事業等を行っています。水力発電については、更新を計画した15カ所のうち、これまでに10カ所で工事が完了しました。また、三菱製紙株式会社と共同で、同社八戸工場構内に設備を設置し、2019年にバイオマス発電事業を開始する予定です。電力事業の拡大とともに、未利用の国内木材資源を活用した燃料用チップの生産設備の増強やインドネシアでのパーム椰子殻の調達拡大を進めるなど、エネルギー事業向け燃料事業の拡大も進めています。

木材事業では、近年、インドネシア・ミャンマーで木材加工工場を稼働させ、ニュージーランドでも製材工場のリニューアルを行うなどアジア・オセアニア地域を中心に生産能力の増強に取り組んでいます。

また、中国・インドネシア・ベトナムの販売会社を通じてパルプ、燃料、木材加工事業等の幅広い分野で商社機能の強化を推し進めています。

 

(d)印刷情報メディア

(新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業)

事業環境を見極めつつ、適宜、生産体制再構築を実施しており、王子製紙株式会社では2016年の富岡工場7号抄紙機の停止に続き、2017年にも春日井工場4号抄紙機を停止します。需要に即した最適生産体制の構築等を通じてコスト構造を継続的に見直し、国際競争力の強化を進めるとともにキャッシュ・フローの増大を図っていきます。

また、江蘇王子製紙有限公司では、中国では数少ない紙パルプ一貫生産体制の強みを最大限に生かしコストダウンを進めた結果、紙事業は2016年度通期で営業利益黒字化を達成しました。また、2016年度下期においては紙事業とパルプ事業を合わせた同社全体でも営業利益の黒字化を達成しています。2017年末稼働予定のドライパルプマシンの増設を進めるパルプ事業との両輪でさらなる競争力強化を図り、紙事業・パルプ事業ともに営業利益の黒字安定化を目指します。

 

(e)研究開発の強化

次世代素材として幅広い産業に応用が期待されているセルロースナノファイバー(CNF)をはじめとして、水処理技術等、グループ内の関連部門と連携を密にとりながらイノベーション推進本部を中心に機動的かつ効率的な研究開発活動を実施し、革新的価値創造に取り組んでいます。特にCNFについて、2016年12月に当社独自技術であるリン酸エステル化CNFスラリーの製造実証プラントが稼働し、さらに、当社しか実現していない透明連続シート生産の設備を2017年度後半に世界に先駆けて導入します。これらの設備導入により、製造エネルギー低減効果の検証や量産技術の確立に取り組むとともに、実用化段階のユーザーに対するサンプル提供規模を拡大し、2017年5月に提供を開始したCNF増粘剤「アウロ・ヴィスコ」をはじめ、CNF透明シート「アウロ・ヴェール」、自由に成形加工可能なCNF透明シート「アウロ・ヴェール3D」など新たな可能性を創造し、幅広い用途へ応用展開していくことでCNFの市場活性化に貢献していきます。

また、薬用植物「甘草(かんぞう)」の栽培研究によって、第17改正日本薬局方に定める薬効成分含量を満たす短期栽培技術を日本で初めて開発しました。この当社栽培の「甘草」は株式会社アルビオンの化粧品原料として実用化される見通しがついています。今後、漢方薬等の医薬品原料としての販売を目指すとともに、医薬部外品や甘味料等の原料化も視野に、新規ビジネスの柱の一つとして注力していきます。

 

  (f)環境経営

民間企業で国内最大の森林保有者である当社グループは、環境経営の推進を掲げ、環境と調和した企業活動を展開しています。持続可能な森林経営を推進すると同時に、環境負荷ゼロに向けた取り組み、木材原料をはじめとする原材料についての責任ある調達を続けていきます。

 

当社グループは、これらの諸施策を通じて、革新的価値を創造し続けるグローバルな企業グループを目指していきます。
 

(2)会社の支配に関する基本方針

 当社は、「当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」(以下、「会社の支配に関する基本方針」といいます。)を下記(Ⅰ)のとおり定めています。また、2017年6月29日開催の第93回定時株主総会における株主の皆様のご承認に基づき、有効期限を当該定時株主総会終結から3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までとして、下記(Ⅲ)に定める特定株主グループ(注1)の議決権割合(注2)を20%以上とすることを目的とする当社株券等(注3)の買付行為、または結果として特定株主グループの議決権割合が20%以上となる当社株券等の買付行為(注4)に関する対応方針(以下、「本方針」といいます。)を継続しています。

注1.特定株主グループとは、(ⅰ)当社の株券等(金融商品取引法第27条の23第1項に規定する株券等をいいます。)の保有者(同法第27条の23第1項に規定する保有者をいい、同条第3項に基づき保有者に含まれる者を含みます。)及びその共同保有者(同法第27条の23第5項に規定する共同保有者をいい、同条第6項に基づき共同保有者とみなされる者を含みます。)、または(ⅱ)当社の株券等(同法第27条の2第1項に規定する株券等をいいます。)の買付け等(同法第27条の2第1項に規定する買付け等をいい、取引所金融商品市場において行われるものを含みます。)を行う者及びその特別関係者(同法第27条の2第7項に規定する特別関係者をいいます。)を意味します。

注2.議決権割合とは、(ⅰ)特定株主グループが、注1.の(ⅰ)の記載に該当する場合は、当該保有者の株券等保有割合(金融商品取引法第27条の23第4項に規定する株券等保有割合をいいます。この場合においては、当該保有者の共同保有者の保有株券等の数(同項に規定する保有株券等の数をいいます。)も計算上考慮されるものとします。)、または(ⅱ)特定株主グループが、注1.の(ⅱ)の記載に該当する場合は、当該買付者及びその特別関係者の株券等所有割合(同法第27条の2第8項に規定する株券等所有割合をいいます。)の合計をいいます。議決権割合の算出に当たっては、総議決権(同法第27条の2第8項に規定するものをいいます。)及び発行済株式の総数(同法第27条の23第4項に規定するものをいいます。)は、有価証券報告書、四半期報告書及び自己株券買付状況報告書のうち直近に提出されたものを参照することができるものとします。

注3.株券等とは、金融商品取引法第27条の23第1項または同法第27条の2第1項に規定する株券等を意味します。

注4.上記のいずれの買付行為についても、予め当社取締役会が同意したものを除きます。以下、このような買付行為を「大規模買付行為」、大規模買付行為を行う者を「大規模買付者」といいます。
 

(Ⅰ)会社の支配に関する基本方針の内容
 上場会社である当社の株式は株主、投資家の皆様による自由な取引が認められており、大規模買付行為であっても、当社の企業価値・株主共同の利益に資する買付提案等に基づくものであれば、当社はこれを一概に否定するものではありません。かかる提案等については、買付けに応募するかどうかを通じ、最終的には株主の皆様にご判断いただくべきものと考えています。
 他方、当社グループが企業価値・株主共同の利益の向上を図っていくためには、当社グループが展開する様々な事業分野において、グループ経営戦略の基本方針である「海外事業の拡大」、「国内事業の集中・進化」、「財務基盤の強化」を中長期的に推進していく必要があり、また、民間企業で国内最大の森林保有者である当社グループにとって、持続可能な森林経営を行い、中長期的に森林の公益的価値の維持・向上を図ることが、社会的責任の一つであると認識しています。したがって、当社への大規模買付行為に際し、株主の皆様が適切な判断を行うためには、当該買付者に関する適切な情報等の提供及び代替案の検討機会を含めた検討期間の確保がなされることが必要不可欠であると考えます。
 しかし、当社株式の買付け等の提案においては、会社や株主に対して買付けに係る提案内容や代替案等を検討するための十分な時間や情報を与えないものも想定されます。また、買付目的や買付け後の経営方針等に鑑み、当社の企業価値・株主共同の利益を損なうことが明白であるもの、買付けに応じることを株主に強要するような仕組みを有するもの、当社の社会的信用を含めた企業価値が著しく毀損しまたは当社の株主に著しい不利益を生じさせる客観的な蓋然性があるもの等、当社の企業価値・株主共同の利益に資さないものも少なくありません。
 このような大規模買付行為や買付提案を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては適切ではないと考えています。


(Ⅱ)会社の支配に関する基本方針の実現に資する取り組み
 当社では、多数の投資家の皆様に長期的に継続して当社に投資していただくため、当社の企業価値・株主共同の利益を向上させるための取り組みとして、以下の施策を実施しています。
 これらの取り組みは、当社の企業価値・株主共同の利益を向上させるためのものであることから、上記(Ⅰ)の会社の支配に関する基本方針に沿うとともに、当社の株主共同の利益に合致するものであり、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えています。
 

(Ⅲ)会社の支配に関する基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み

(a)本方針導入の目的

 当社取締役会は、上記(Ⅰ)の基本方針に基づき、以下のとおり、当社株式の大規模買付行為に関するルール(以下、「大規模買付ルール」といいます。)を設定し、大規模買付者に対して大規模買付ルールの遵守を求めることとしています。大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合には、当社取締役会として一定の措置を講じる方針です。また、大規模買付行為が当社に回復しがたい損害をもたらすことが明らかである場合や当社株主全体の利益を著しく損なう場合にも、当社取締役会として一定の措置を講じる方針です。
 

(b)大規模買付ルールの設定

 当社株主全体の利益のため、大規模買付行為は、以下に定める大規模買付ルールに従って行われるものとします。この大規模買付ルールとは、(ⅰ)事前に大規模買付者から当社取締役会に対して十分な情報が提供され、(ⅱ)当社取締役会による一定の評価期間が経過した後(株主意思確認総会(後記(c)ホ.に定義します。以下同じ。)が開催される場合には、当該株主意思確認総会が終了した後)に大規模買付行為を開始する、というものです。

 まず、大規模買付者には、当社取締役会に対して、当社株主の皆様の判断及び取締役会としての意見形成のために十分な情報(以下、「大規模買付情報」といいます。)を提供していただきます。その項目は別紙1記載のとおりです。

 大規模買付情報の具体的内容は、大規模買付行為の内容によって異なることもあり得るため、大規模買付者が大規模買付行為を行おうとする場合には、まず当社宛に、大規模買付ルールに従う旨の意向表明書をご提出いただくこととします。意向表明書には、大規模買付者の名称、住所、設立準拠法、代表者の氏名、国内連絡先及び提案する大規模買付行為の概要を明示していただきます。当社は、この意向表明書の受領後5営業日以内に、大規模買付者から提供していただくべき大規模買付情報のリストを大規模買付者に交付します。なお、当初提供していただいた情報だけでは大規模買付情報として不足していると考えられる場合、十分な大規模買付情報が揃うまで追加的に情報提供をしていただくことがあります。当社取締役会は、大規模買付行為の提案があった事実は、速やかに情報開示します。また、当社取締役会に提供された大規模買付情報は、当社株主の皆様の判断のために必要であると認められる場合には、適切と判断する時点で、その全部または一部を開示します。
 次に、大規模買付行為の評価等の難易度に応じ、大規模買付情報の提供が完了した後、60日間(対価を現金(円貨)のみとする公開買付けによる当社全株式の買付けの場合)または90日間(その他の大規模買付行為の場合)を、取締役会による評価、検討、交渉、意見形成、代替案立案のための期間(以下、「取締役会評価期間」といいます。)とします。当社取締役会は、大規模買付情報の提供が完了した事実及び取締役会評価期間については、速やかに開示します。大規模買付行為は、取締役会評価期間の経過後(株主意思確認総会が開催される場合には、当該株主意思確認総会が終了した後)にのみ開始されるものとします。
 取締役会評価期間中、当社取締役会は外部専門家の助言を受けながら、提供された大規模買付情報を十分に評価・検討し、取締役会としての意見を開示します。必要に応じ、大規模買付者との間で大規模買付行為に関する条件改善について交渉し、当社取締役会として株主の皆様へ代替案を提示することもあります。また、当社取締役会は、特別委員会に大規模買付情報を提供し、その評価・検討を依頼します。特別委員会は、独自に大規模買付情報の評価・検討を行い、本方針に従い当社取締役会がとるべき対応について勧告を行います。当社取締役会は、特別委員会の勧告を踏まえ、これを最大限尊重しつつ、本方針に従った対応を決定します。


(c)大規模買付行為がなされた場合の対応方針

イ.大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合

 大規模買付者が意向表明書を提出しない場合、大規模買付者が取締役会評価期間の経過前に大規模買付行為を開始する場合、大規模買付者が大規模買付ルールに従った十分な情報提供を行わない場合、その他大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合には、当社取締役会は、当社株主全体の利益の保護を目的として、新株予約権の発行等、会社法その他の法律及び当社定款が取締役会の権限として認める措置をとり、大規模買付行為に対抗することがあります。当社取締役会は、対抗措置の発動を決定するに先立ち、特別委員会に対抗措置の発動の是非を諮問しその勧告を受けるものとします。特別委員会の勧告を最大限尊重しつつ、弁護士、財務アドバイザー等の外部専門家の意見も参考にした上で、当社取締役会は対抗措置の発動を決定します。
 具体的な対抗措置については、その時点で相当と認められるものを選択することとなります。具体的対抗措置として株主割当てにより新株予約権を発行する場合の概要は、原則として別紙2記載のとおりとします。なお、新株予約権を発行する場合には、議決権割合が一定割合以上の特定株主グループに属さないことを新株予約権の行使条件や取得条件とする等、対抗措置としての効果を勘案した行使期間、行使条件及び取得条件を設けることがあります。

 今回の大規模買付ルールの設定及びそのルールが遵守されなかった場合の対抗措置は、当社株主全体の正当な利益を保護するための相当かつ適切な対応であると考えていますが、他方、このような対抗措置により、結果的に、大規模買付ルールを遵守しない大規模買付者に経済的損害を含む何らかの不利益を発生させる可能性があります。大規模買付ルールを無視して大規模買付行為を開始することのないように予め注意を喚起します。
 

ロ.大規模買付者が大規模買付ルールを遵守した場合

 大規模買付ルールは、当社の経営に影響力を持ち得る規模の当社株式の買付行為について、当社株主全体の利益を保護するという観点から、株主の皆様に、このような買付行為を受け入れるかどうかの判断のために必要な情報や、現に経営を担っている当社取締役会の評価意見を提供し、さらには、代替案の提示を受ける機会を保証することを目的とするものです。大規模買付ルールが遵守されている場合、原則として、当社取締役会の判断のみで大規模買付行為を阻止しようとするものではありません。
 しかしながら、例外的に、大規模買付者が大規模買付ルールを遵守していても、大規模買付行為が当社に回復しがたい損害をもたらすことが明らかである場合や当社株主全体の利益を著しく損なう場合であると、弁護士、財務アドバイザー等の外部専門家の意見も参考にし、特別委員会の勧告を最大限尊重した上で、当社取締役会が判断したときには、上記(c)イで述べた大規模買付行為を抑止するための措置をとることがあります(ただし、株主意思確認総会が開催された場合には、当社取締役会は、当該株主意思確認総会の決議に従った決定を行うものとします。)。
 対抗措置をとることを決定した場合には、適時適切な開示を行います。具体的には、以下の類型に該当すると認められる場合には、原則として、大規模買付行為が当社に回復しがたい損害をもたらすことが明らかである場合や当社株主全体の利益を著しく損なう場合に該当するものと考えます。

 

(i)次の①から④までに掲げる行為等により株主全体の利益に対する明白な侵害をもたらすような買収行為を行う場合

①株式を買い占め、その株式について会社側に対して高値で買取りを要求する行為

②会社を一時的に支配して、会社の重要な資産等を廉価に取得する等会社の犠牲のもとに買収者の利益を実現する経営を行うような行為

③会社の資産を買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する行為

④会社経営を一時的に支配して会社の事業に当面関係していない高額資産等を処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるか、一時的高配当による株価の急上昇の機会をねらって高値で売り抜ける行為

(ⅱ)強圧的二段階買収(最初の買付条件よりも二段階目の買付条件を不利に設定し、あるいは二段階目の買付条件を明確にしないで、公開買付け等の株式買付けを行うことをいいます。)等株主に株式の売却を事実上強要する客観的な蓋然性のある買収行為を行う場合

(ⅲ)次の①から③までに該当する事由のいずれかが存在し、それにより、当社の社会的信用を含めた企業価値が著しく毀損しまたは当社の株主に著しい不利益を生じさせる客観的な蓋然性がある場合

①大規模買付者による支配権取得後の経営方針や事業計画等が著しく不合理または不適当であること

②大規模買付者による支配権取得後の経営方針や事業計画等について環境保全・コンプライアンスやガバナンスの透明性の点で重要な問題を生じる客観的な蓋然性があること

③大規模買付者に関する情報開示が当社の株主保護の観点から見て十分かつ適切になされない客観的な蓋然性があること

 

ハ.対抗措置発動後の停止

 当社取締役会は、本方針に従い対抗措置をとることを決定した後でも、(ⅰ)大規模買付者が大規模買付行為を中止した場合や、(ⅱ)対抗措置をとる旨の決定の前提となった事実関係等に変動が生じ、大規模買付行為が当社に回復しがたい損害をもたらさずかつ当社株主全体の利益を著しく損なわないと判断される場合には、特別委員会の勧告を最大限尊重した上で、対抗措置の発動の停止を決定することがあります(ただし、株主意思確認総会が開催されて、対抗措置の発動の停止についても決議がなされている場合には、当社取締役会は、当該株主意思確認総会の決議に従った決定を行うものとします。)。対抗措置として、例えば新株予約権を無償割当てする場合において、権利の割当てを受けるべき株主が確定した後に、大規模買付者が大規模買付行為の撤回を行う等の事情が生じ、特別委員会の勧告を踏まえ、対抗措置の発動が適切でないと取締役会が判断したときには、新株予約権の効力発生日までの間は新株予約権の無償割当てを中止し、また新株予約権の無償割当て後、行使期間の開始までの間においては当社が無償で新株予約権を取得して、対抗措置の発動を停止することができるものとします。
 このような対抗措置の発動の停止を行う場合には、特別委員会が必要と認める事項とともに速やかな情報開示を行います。
 

ニ.特別委員会の設置及び検討

 本方針において、大規模買付者が大規模買付ルールを遵守したか否か、大規模買付行為が当社に回復しがたい損害をもたらすことが明らかである場合や当社株主全体の利益を著しく損なう場合に該当するかどうか、そして大規模買付行為に対し対抗措置をとるべきか否か、その判断にあたり株主意思確認総会を開催するか否か、及び発動を停止するべきか否かの判断に当たっては、取締役会の判断の客観性、公正性及び合理性を担保するため、当社は、取締役会から独立した組織として、特別委員会を設置し、当社取締役会はその勧告を最大限尊重するものとします。特別委員会の委員は3名とし、社外取締役、社外監査役、経営経験豊富な企業経営者、投資銀行業務に精通する者、弁護士、公認会計士、税理士、学識経験者、またはこれらに準ずる者を対象として選任するものとします。

 取締役会は、対抗措置の発動、株主意思確認総会の開催もしくは不開催または発動の停止を決定するときは、必ず特別委員会に対して詰問し、その勧告を受けるものとします。特別委員会は、当社の費用で、当社経営陣から独立した第三者(財務アドバイザー、公認会計士、弁護士、コンサルタントその他の専門家を含む。)の助言を得たり、当社の取締役、監査役、従業員等に特別委員会への出席を要求し、必要な情報について説明を求めたりしながら、審議・決議し、その決議の内容に基づいて、当社取締役会に対し勧告を行います。取締役会は、対抗措置を発動するか否か、その判断にあたり株主意思確認総会を開催するか否か、及び発動の停止を行うか否かの判断に当たっては、特別委員会の勧告を最大限尊重するものとします。なお、特別委員会規程の概要、特別委員会委員の氏名及び略歴は、それぞれ別紙3、4のとおりです。
 

ホ.株主意思の確認手続き

 当社取締役会が、特別委員会の勧告を最大限尊重した上で、対抗措置を発動するか否かの判断にあたり、株主意思の確認手続きを経るべきであると判断した場合、当社取締役会は、株主の意思を確認するための株主総会(以下、「株主意思確認総会」といいます。)を開催することがあり、大規模買付者が大規模買付ルールを遵守し、かつ、大規模買付行為が上記(c)ロ.(ⅲ)の類型に該当することのみを理由として対抗措置を発動する場合には、株主意思確認総会の開催が著しく困難な場合を除き、必ず株主意思確認総会を開催し、対抗措置を発動するか否かについての株主意思の確認を行います。また、株主意思確認総会の開催にあたり、当社の企業価値・株主共同の利益が損なわれないようにするため、当社株主に対し、当該株主意思確認総会における議決権行使に関する勧誘を行うことがあります。株主意思確認総会の招集手続き及び議決権行使方法は、法令及び当社定款に基づく定時株主総会または臨時株主総会の招集手続き及び議決権行使方法に準ずるものとし、当社取締役会は、対抗措置を発動するか否かに関する株主意思確認総会の決議に従うものとします。

 

(d)当社株主の皆様・投資家の皆様に与える影響等

 本方針に基づく対抗措置の発動によって、当社株主の皆様(大規模買付者を除きます。)が経済面や権利面で損失を被るような事態は想定していませんが、当社取締役会が具体的対抗措置をとることを決定した場合には、法令及び金融商品取引所規則に従って、適時適切な開示を行います。
 対抗措置として考えられるもののうち、新株予約権の無償割当てを行う場合には、当社取締役会で別途定めて公告する基準日における最終の株主名簿に記録された株主に対し、その所有株式数に応じて新株予約権が割り当てられますので、当該基準日における最終の株主名簿に記録される必要があります。また、新株予約権を行使して株式を取得するためには、所定の期間内に一定の金額の払込みを完了していただく必要があります。ただし、当社が新株予約権を当社株式と引き換えに取得できる旨の取得条項に従い新株予約権の取得を行う場合には、当社取締役会が当該取得の対象とした新株予約権を保有する株主の皆様は、金銭の払込みを要することなく、当社による新株予約権取得の対価として、当社株式の交付を受けることができます。これらの手続きの詳細については、実際に新株予約権を発行または取得することとなった際に、法令及び金融商品取引所規則に基づき別途お知らせします。
 なお、いったん新株予約権の無償割当てを決議した場合であっても、当社は、上記(c)ハ.に従い、新株予約権の無償割当ての効力発生日までに新株予約権の無償割当てを中止し、または新株予約権の無償割当ての効力発生日後新株予約権の行使期間の初日の前日までに新株予約権を無償にて取得する場合があります。これらの場合には、当社株式の株価に相応の変動が生じる可能性があります。例えば、新株予約権の無償割当てを受けるべき株主が確定した後(権利落ち日以降)において、当社が新株予約権を無償取得して新株を交付しない場合には、1株当たりの株式の価値の希釈化は生じませんので、当社株式の価値の希釈化が生じることを前提にして売買を行った投資家は、株価の変動により損害を被るおそれがあります。
 

(e)大規模買付ルールの有効期限

 2017年6月29日開催の第93回定時株主総会において、本方針の継続について株主の皆様のご承認が得られたため、本方針の有効期間は、当該定時株主総会の日から3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までとし、以後も同様とします。なお、当社取締役会は、本方針を継続することを決定した場合、その旨を速やかにお知らせします。また、当社取締役会は、株主全体の利益保護の観点から、会社法及び金融商品取引法を含めた関係法令の整備・改正等を踏まえ、本方針を随時見直していく所存です。
 本方針は、その有効期間中であっても、株主総会において本方針を廃止する旨の決議が行われた場合または当社取締役会により本方針を廃止する旨の決議が行われた場合は、その時点で廃止されるものとします。また、当社取締役会は、本方針の有効期間中であっても、株主総会での承認の趣旨の範囲内で本方針を修正する場合があります。
 

(Ⅳ)本方針が会社の支配に関する基本方針に沿い、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致し、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないことについての取締役会の判断及びその判断に係る理由

 以下の理由により、本方針は、上記(Ⅰ)の会社の支配に関する基本方針に沿うとともに、当社の株主共同の利益に合致するものであり、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えています。

 

(a)買収防衛策に関する指針の要件を充足していること

 本方針は、経済産業省及び法務省が2005年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性の原則)を充足しています。
 

(b)株主共同の利益の確保・向上の目的をもって導入されていること

 本方針は、上記(Ⅲ)(a)「本方針導入の目的」にて記載したとおり、当社株券等に対する買付け等がなされた際に、当該買付け等に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や時間を確保し、株主の皆様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とすることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させるという目的をもって導入されるものです。
 

(c)合理的な客観的発動要件の設定

 本方針は、上記(Ⅲ)(c)「大規模買付行為がなされた場合の対応方針」にて記載したとおり、大規模買付行為が大規模買付ルールを遵守していない、あるいは大規模買付ルールを遵守していても株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらす買収である場合や株主に株式の売却を事実上強要するおそれがある買収である場合等、予め定められた合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ対抗措置が発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みを確保しているものといえます。
 

(d)株主意思を重視するものであること

 当社は、本方針の継続について株主の皆様のご意思をご確認させていただくため、株主総会において、議案としてお諮りしています。株主総会において、本方針の継続の決議がなされなかった場合には、速やかに廃止されることになり、その意味で、本方針の消長及び内容は、当社株主の合理的意思に依拠したものとなっています。
 

(e)デッドハンド型買収防衛策やスローハンド型買収防衛策ではないこと

 上記(Ⅲ)(e)「大規模買付ルールの有効期限」にて記載したとおり、本方針は、当社の株主総会で選任された取締役で構成される取締役会により廃止することができるものとされており、当社の株券等を大量に買付けた者が、当社株主総会で取締役を指名し、かかる取締役で構成される取締役会により、本方針を廃止することが可能です。従って、本方針は、デッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の過半数を交替させてもなお、発動を阻止できない買収防衛策)ではありません。また、当社の取締役任期は1年間であり、本方針はスローハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の交替を一度に行うことができないため、その発動を阻止するのに時間を要する買収防衛策)でもありません。

(別紙1)

 

大規模買付情報

 

1.大規模買付者及びそのグループ(ファンドの場合は組合員その他の構成員を含む。)の情報。

(1)名称、資本関係、財務内容

(2)(大規模買付者が個人である場合は)国籍、職歴、当該買収提案者が経営、運営または勤務していた会社またはその他の団体(以下、「法人」という。)の名称、主要な事業、住所、経営、運営または勤務の始期及び終期

(3)(大規模買付者が法人である場合は)当該法人及び重要な子会社等について、主要な事業、設立国、ガバナンスの状況、過去3年間の資本及び長期借入の財務内容、当該法人またはその財産に係る主な係争中の法的手続き、これまでに行った事業の概要、取締役、執行役等の役員の氏名

(4)(もしあれば)過去5年間の犯罪履歴(交通違反や同様の軽微な犯罪を除く。)、過去5年間の金融商品取引法、会社法(これらに類似する外国法を含む。)に関する違反等、その他コンプライアンス上の重要な問題点の有無

 

2.大規模買付行為の目的、方法及びその内容(取得の対価の価額・種類、取得の時期、関連する

取引の仕組み、取得の方法の適法性、取得の実現可能性を含む。)。


3.当社株式の取得の対価の算定根拠(算定の前提となる事実・仮定、算定方法、算定に用いた数

値情報並びに取得に係る一連の取引により生じることが予想されるシナジー及びその算定根拠を含む。)。


4.大規模買付行為の資金の裏付け(資金の提供者(実質的提供者を含む。)の具体的名称、

調達方法、関連する取引の内容を含む。)。


5.大規模買付行為後の当社の経営方針、事業計画、資本政策及び配当政策。


6.大規模買付行為後における当社の従業員、取引先、顧客、地域社会その他の当社に係る利害関係

者(ステークホルダー)に関する方針。

 

7.必要な政府当局の承認、第三者の同意等、大規模買付行為の実行に当たり必要な手続きの内容及び見込み。大規模買付行為に対する、独占禁止法その他の競争法並びにその他大規模買付者または当社が事業活動を行っているか製品を販売している国または地域の重要な法律の適用可能性や、これらの法律が大規模買付行為の実行に当たり支障となるかどうかについての考え及びその根拠。


8.その他当社取締役会または特別委員会が合理的に必要と判断して要請する情報。

 

(別紙2)

 

新株予約権の概要

 

1.新株予約権付与の対象となる株主及びその発行条件

 取締役会で定める基準日における最終の株主名簿に記録された株主に対し、その所有株式(ただし、当社の有する当社普通株式を除く。)1株につき1個の割合で新株予約権を割当てる。なお、株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与えて募集新株予約権を引き受ける者の募集を行う場合と、新株予約権の無償割当てを行う場合とがある。

 

2.新株予約権の目的である株式の種類及び数

 新株予約権の目的である株式の種類は当社普通株式とし、新株予約権の目的となる株式の総数は、当社取締役会が基準日として定める日における当社発行可能株式総数から当社普通株式の発行済株式(当社の所有する当社普通株式を除く。)の総数を減じた株式数を上限とする。新株予約権1個当たりの目的である株式の数は1株とする。ただし、当社が株式分割または株式併合を行う場合は、所要の調整を行うものとする。

 

3.発行する新株予約権の総数

 新株予約権の割当総数は、当社取締役会が基準日として定める日における当社発行可能株式総数から当社普通株式の発行済株式(当社の所有する当社普通株式を除く。)の総数を減じた株式の数を上限として、取締役会が定める数とする。取締役会は、割当総数がこの上限を超えない範囲で複数回にわたり新株予約権の割当てを行うことがある。

 

4.各新株予約権の払込金額

 無償(金額の払込みを要しない。)

 

5.各新株予約権の行使に際して出資される財産の価額

 各新株予約権の行使に際して出資される財産の価額は1円以上で取締役会が定める額とする。

 

6.新株予約権の譲渡制限

 譲渡による新株予約権の取得については、取締役会の承認を要することとする。

 

7.新株予約権の行使条件

 議決権割合が20%以上の特定株主グループに属する者(当社の株券等を取得または保有することが当社株主全体の利益に反しないと当社取締役会が認めたものを除く。)等に行使を認めないこと等を新株予約権行使の条件として定めることがある。詳細については、当社取締役会において別途定めるものとする。

 

8.新株予約権の行使期間等

 新株予約権の行使期間、取得条項その他必要な事項については、取締役会にて別途定めるものとする。なお、取得条項については、上記7.の行使条件のため新株予約権の行使が認められない者以外の者が有する新株予約権を当社が取得し、新株予約権1個につき1株を交付することができる旨の条項を定めることがある。

 

(別紙3)

 

特別委員会規程の概要

 

1.特別委員会は、大規模買付行為に対する対抗措置の発動等に関する取締役会の恣意的判断を排

し、取締役会の判断の客観性、公正性及び合理性を担保することを目的として設置される。

 

2.特別委員会の委員は3名とし、当社の業務執行を行う経営陣から独立している、(i)当社社外取

締役、(ⅱ)当社社外監査役、または(ⅲ)社外の有識者のいずれかに該当する者の中から、当社取締役会が選任する。ただし、社外の有識者は、経営経験豊富な企業経営者、投資銀行業務に精通する者、弁護士、公認会計士、税理士、学識経験者、またはこれらに準ずる者とし、別途当社取締役会が定める善管注意義務条項等を含む契約を当社との間で締結した者でなければならない。

 

3.特別委員会委員の任期は、選任後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株

主総会の終結の時までとする。ただし、当社取締役会の決議により別段の定めをした場合はこの限りではない。

 

4.特別委員会は、取締役会の諮問を受けて、以下の各号に記載される事項について審議・決議し、

その決議の内容に基づいて、当社取締役会に対し勧告する。なお、特別委員会の各委員は、こうした審議・決議にあたっては、当社の企業価値・株主共同の利益に資するか否かの観点からこれを行うものとし、自己または当社の経営陣の個人的利益を図ることを目的としてはならない。

①大規模買付行為に対する対抗措置の発動の是非

②大規模買付行為に対する対抗措置発動の停止

株主意思確認総会の開催の要否

④その他当社取締役会が判断すべき事項のうち、当社取締役会が特別委員会に諮問した事項

 

5.特別委員会は、当社の費用で、当社経営陣から独立した第三者(財務アドバイザー、公認会計

士、弁護士、コンサルタントその他の専門家を含む。)の助言を得ることができる。

 

6.特別委員会は、必要な情報収集を行うため、当社の取締役、監査役、従業員その他特別委員会委

員が必要と認める者の出席を求め、特別委員会が求める事項に関する説明を要求することができる。

 

7.特別委員会の決議は、原則として、特別委員会の委員全員が出席し、その過半数をもってこれを

行う。ただし、やむを得ない事由があるときは、特別委員会委員の過半数が出席し、その議決権の過半数をもってこれを行う。

(別紙4)

 

特別委員会委員の氏名及び略歴

 

特別委員会の委員は、以下の3名です。

 

奈良 道博(なら みちひろ)

 

略歴

1946年5月17日生まれ

1974年4月 弁護士登録

2014年6月 当社取締役
      現在に至る。

※奈良道博氏は、会社法第2条第15号に定める社外取締役です。

 

 

寺坂 信昭(てらさか のぶあき)

 

略歴

1953年4月9日生まれ

1976年4月 通商産業省入省

2009年7月 原子力安全・保安院院長

2011年8月 退官

2015年6月 当社取締役
      現在に至る。

※寺坂信昭氏は、会社法第2条第15号に定める社外取締役です。

 

 

北田 幹直(きただ みきなお)

 

略歴

1952年1月29日生まれ

1976年4月 検事任官

2012年1月 大阪高等検察庁検事長

2014年1月 退官

2014年3月 弁護士登録

2014年6月 当社監査役
      現在に至る。

※北田幹直氏は、会社法第2条第16号に定める社外監査役です。

 

4【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

また、以下に記載したリスクは主要なものであり、これらに限られるものではありません。

(1)国内需要の減少及び市況価格の下落

当社グループの売上高の内、国内売上高は約7割を占めます。当社グループの事業は、概ね内需型産業であり、国内景気動向の影響を大きく受けます。また、古紙等の主要原燃料購入価格及び製品販売価格の変動は、国内市況に大きく影響を受けます。国内景気の大幅な後退による国内需要の減少及び市況価格の下落が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

(2)国際市況価格の変動

国際市況に大きく影響を受けるチップ・重油・パルプ等の主要原燃料購入価格及び製品としての各種パルプの販売価格の変動は、当社グループの財政状態及び経営成績に対して影響を及ぼす可能性があります。

(3)為替レートの変動

当社グループは日本国内を始めとして、東南アジア・北米・南米・欧州・中国・オセアニア等、世界各地に拠点を持ち、様々な通貨を用いて事業活動を展開しています。原燃料購入価格に大きな影響を与える対米ドル・対豪ドル等の為替レートの大幅な円安が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

円だけに限らず、ブラジルレアル・ニュージーランドドル・人民元等の、大規模な事業を展開している国で主に使用される通貨において、対米ドル・対日本円の為替レートの変動により、当社グループの経営成績に対して影響を及ぼす可能性があります。

このような為替レートの変動リスクを低減するために、為替予約等によるリスクヘッジを行っていますが、すべてのリスクを回避することは不可能です。

また、連結財務諸表は日本円で表示するため、為替レートの変動により換算額に影響を受けます。

(4)金利の上昇

当社グループの総資産に対する有利子負債の割合は、当連結会計年度末において35.3%となっています。グループファイナンスの実施によりグループ資金の効率化を行うこと等により財務体質の改善に取り組んでいますが、大幅な金利の上昇が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5)退職給付債務

当社グループの退職給付制度は、一部を除いて確定給付型制度を採用しています。退職給付債務は、退職給付債務の割引率や年金資産の長期期待運用収益率等の数理計算上の前提に基づいて算出されていますが、数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合や株式市場の低迷等により、年金資産が毀損した場合には、将来の当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、一部の連結子会社は、2017年3月に確定給付型制度の一部について確定拠出型制度へ移行し、前述のリスクの低減を図っています。

(6)海外での政治・経済情勢の変動

当社グループは、チップ・重油等の原燃料の多くを海外から調達しています。現地での政治・経済情勢の悪化に伴って、原燃料確保の困難な状況や原燃料購入価格の上昇が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

また、海外での政治・経済情勢の変動が、海外の現行のプロジェクトや将来の計画に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

(7)災害による影響

当社グループは、災害による影響を最小限に留めるための万全の対策をとっていますが、災害によるすべての影響を防止・軽減できる保証はありません。災害による影響を防止・軽減できなかった場合、当社グループの生産能力の低下及び製造コストの増加等により、当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

(8)法規制または訴訟に関するリスク

当社グループの事業は、環境規制、知的財産等の様々な法規制の適用を受けており、それらの変更・改正によって、追加の費用が発生する可能性があります

また、訴訟等のリスクにさらされる可能性がありますが、訴訟の結果によっては当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

(9)製造物責任

当社グループの製品につき、当社グループは製造物責任に基づく損害賠償請求を受ける対象となっています。現在のところ重大な損害賠償請求を受けていませんが、将来的には直面する可能性があります。

製造物責任に係る保険(生産物賠償責任保険)を付保していますが、当社グループが負う可能性がある損害賠償責任を補償するには十分でない場合があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、全体の研究開発を統括するイノベーション推進本部と各事業会社の研究開発部門、各工場の研究技術部等が連携しながら取り組んでいます。イノベーション推進本部は、新事業の創出並びに既存事業の競争力強化を念頭に、技術革新のシーズ開発から、よりビジネスに密着した新市場の開拓と新製品開発を行っています。当連結会計年度末における当社の保有特許権・実用新案権・意匠権の総数は国内1,632件、海外356件です。また保有商標権の総数は国内896件、海外722件です。

当連結会計年度における各セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりです。

 

グループ全体の既存事業の競争力強化として、植林、パルプ、抄紙、塗工の各分野で、蓄積・体系化された技術を基に、新製品開発及び品質改善に取り組んでいます。国内工場では、品質向上・操業の安定化、コストダウンの推進を図り、海外事業への水平展開も進めています。

 

(1)生活産業資材

産業資材事業では、古紙利用拡大、抄紙条件、薬品の最適化によるコストダウン、異物・欠陥削減等の品質・操業性改善を推進しました。これらの国内で培った基盤技術を活用して新製品開発を進めると共に、カンパニーの枠を越え、当社グループ会社の各海外拠点へ水平展開を進めています。特に新製品開発については、製造技術を再見直しすることでクラフト紙の強度アップを図るとともに、製品の価値を高めてより一層の収益力強化を推進しています。

生活消費財事業では、ティシュ原紙やトイレットロール原紙のパルプ処方の変更や、抄紙条件の最適化により、肌触り感などの品質の向上を推進しています。

当事業に係る研究開発費は619百万円です。

 

(2)機能材

機能材事業では、研究開発型ビジネスの形成を目指し、王子グループのコア技術であるシートの製造・加工技術を活用した機能性シート・フィルム分野での新製品開発を進めています。

特殊紙事業では、高機能フィルター用基材などに使用される無機繊維ペーパーとして、従来品の性能は維持しながら、より環境に配慮した製品を開発しています。また、水と接触することで、抗菌性を発揮するなど、様々な機能を有するユニークな乾式不織布「ぬらすと!シリーズ」を開発し、用途展開を進めています。さらに、医療用途や電子機器など、成長分野への様々な製品開発も進めています。

イメージングメディア事業では、環境負荷を低減するライナーレス感熱ラベルや、従来より付加価値の高い2色感熱メディアなどを商品化しました。さらに、感熱紙の新しい用途展開に向けた技術開発を行うとともに、海外拠点も含め、新製品開発、コストダウンに繋がる技術支援を進めています。

粘着事業では、機能進化するタッチパネルに対応した各種粘着シートや高機能フィルムの開発を進めており、タッチペン適性を向上させる粘着シートや、画面の見やすさを向上させるフィルムなどで、スマートフォンや最新ノートPC等への採用が進んでいます。また、新たな市場開拓として、光学製品以外の製品開発も進めています。

フィルム事業では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの技術を生かしたコンデンサ用フィルムの開発や、塗工設備を活用した離型用フィルムの開発を進めています。コンデンサ用フィルムでは、ハイブリッド車や電気自動車向けに極薄ポリプロピレンフィルムを開発し、自動車部品の小型化に貢献しています。また、新たな高機能フィルムの開発では、高級感を持たせる和紙調ポリプロピレンフィルムや電子部品生産工程用のノンシリコーン軽剥離フィルムの開発を進めています。

当事業に係る研究開発費は2,051百万円です。

 

(3)資源環境ビジネス

王子製紙株式会社米子工場に設置したバイオリファイナリー連続工業プロセスでは、溶解パルプの実機生産と並行して、副生するヘミセルロース分解物の有効活用に関する研究を行っています。溶解パルプは、レーヨン、医薬品や食品の添加剤、セルロース誘導体等の原料として使用され、今後世界的な人口増加により需要拡大が期待されています。既に繊維メーカーや医薬品メーカーへの販売を行っており、現在はセルロース誘導体用途等の高付加価値品の開発にも注力しています。また、ヘミセルロース分解物からフルフラールを製造する技術確立は完了しました。現在は、付加価値の高い用途開発を進めています。

当事業に係る研究開発費は349百万円です。

 

(4)印刷情報メディア

印刷情報メディア事業では、DIP品質と歩留まりを両立する技術開発や、使用薬品の最適化によるコストダウン、欠点・断紙削減等の操業性改善を推進し、収益向上に繋げています。また、インクジェット新聞用紙の開発で培った技術を応用し、インクジェット印刷の高速化・フルカラー化に対応したフォーム印刷用インクジェット紙「OKH-JオフW」を開発しました。

当事業に係る研究開発費は1,313百万円です。

 

(5)その他

セルロースナノファイバー(CNF)では、ナノ化効率の高い王子独自技術であるリン酸エステル化CNFスラリーの実証プラントを王子製紙株式会社富岡工場に導入し、2016年12月から稼働しています。また、2017年度後半には、CNF透明連続シートの実証プラント導入も計画中です。これらの設備導入により、製造エネルギー低減効果の検証や量産技術の確立に取り組むとともに、実用化段階のユーザーに対するサンプル提供を拡大し、2017年4月に販売を開始したCNF増粘剤「アウロ・ヴィスコ」をはじめ、CNF透明シート「アウロ・ヴェール」、自由に成形加工可能な「アウロ・ヴェール3D」など、新たな可能性を創造し、幅広い用途へ応用展開していくことでCNFの市場活性化に貢献していきます。

北海道下川町に設置した医療植物研究室では、下川町や栗山町に実験圃場を構え、紙の原料となるユーカリやアカシアの研究で培った技術を取り入れ、薬用植物の薬効成分量を短期間で高めることができる栽培方法の開発を進めています。また漢方薬の約7割に使用されている薬用植物「甘草(かんぞう)」については、種子を播いて収穫までの栽培期間を5、6年から2年に短縮しながら薬局方の薬用成分基準も満たす栽培技術を日本で初めて確立しました。

水事業では、タイの工業団地に独自の薬品処方と膜とを組合せた用水製造設備の導入を行い、それにより、安定した終日連続自動運転が可能になりました。また、サービス事業として、導入した設備をベースに薬品などの消耗品の販売や、メンテナンスを開始しました。国内外における水処理事業の体制強化のため、2017年4月1日付で水環境事業推進室を紙パルプ革新センター内に設立しました。今後は、水事業推進に向けた戦略構築と技術開発を、王子エンジニアリング株式会社水環境技術部と連携のもと進めていきます。

その他に係る研究開発費は4,988百万円です。

 

なお、(1)~(4)の各セグメントに関わる研究開発活動のうち、事業化段階に無い、探索段階及び開発段階の研究開発活動の研究開発費はここに含まれます。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析は、以下のとおりです。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、不確実性、リスクといったものを内含しており、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。

(1)財政状態の分析

当社グループの当連結会計年度末総資産は前連結会計年度末に比し167億円減少して、19,181億円となりました。主な増減は、機械装置及び運搬具の減少411億円、退職給付に係る資産の増加352億円、受取手形及び売掛金の増加68億円です。

負債は前連結会計年度末に比し606億円減少して、11,433億円となりました。主な増減は、長期借入金の減少557億円、社債の減少400億円、コマーシャル・ペーパーの減少250億円、1年内償還予定の社債の増加199億円、繰延税金負債の増加177億円です。なお、当連結会計年度末の有利子負債は6,773億円となりました。

非支配株主持分を含めた純資産については、前連結会計年度に比し438億円増加して、7,747億円となりました。主な増減は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加365億円、剰余金の配当による減少99億円、退職給付に係る調整累計額の増加166億円、です。

この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は33.2%と、前連結会計年度末に比し2.5ポイント上昇しました。

(2)経営成績の分析

 

前連結会計年度

当連結会計年度

差異

①売上高

14,335

億円

14,398

億円

62

億円

②経常利益

623

 

511

 

△111

 

③特別損益

△353

 

114

 

468

 

④法人税等及び
法人税等調整額

110

 

252

 

142

 

⑤親会社株主に帰属する
当期純利益

152

 

365

 

213

 

 

① 売上高

当連結会計年度の売上高は14,398億円と、前連結会計年度に比し62億円の増収となりました。

セグメント別の売上高(セグメント間売上を含む)については、生活産業資材において165億円の増収、機能材において66億円の増収、資源環境ビジネスにおいて26億円の増収、印刷情報メディアにおいて132億円の減収、その他では29億円の増収となりました。

② 経常利益

当連結会計年度の経常利益は、当社グループが保有する外貨建資産負債の為替レートの評価替えによる為替差損の発生もあり、前連結会計年度に比し111億円減益511億円となりました。

この結果、当連結会計年度の売上高経常利益率は、前連結会計年度に比し0.8ポイント低下し、3.6%となりました。

③ 特別損益

当連結会計年度の特別損益は、減損損失が減少したこともあり、前連結会計年度に比し損失が468億円減少し、114億円の利益となりました。主な内訳として、退職給付制度改定益137億円、固定資産売却益80億円、減損損失79億円が発生したことなどが挙げられます。

 

④ 法人税等及び法人税等調整額

課税所得の増加による税金費用の増加及び退職給付に係る資産の増加による繰越税金負債の増加等の影響により、法人税等及び法人税等調整額は252億円と、前連結会計年度に比し142億円増加しました。

⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は365億円と、前連結会計年度に比し213億円の増益となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度に比し21.55円増加し、36.99円となりました。

(3)キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「1 業績等の概要」に記載しています。

(4)今後の戦略について

 今後の戦略につきましては、「3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(1)企業集団の経営戦略」に記載しています。