第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度における経営環境は、前連結会計年度終盤より円高の局面が是正されましたが、米国経済は好調であったものの、欧州・中国は停滞傾向が継続し、新興国経済は成長ペースが鈍化しており、全体的に想定した需要には至りませんでした。国内においても「アベノミクス」によるデフレ脱却による景気回復期待や、消費増税による駆け込み需要があったものの、当社を取り巻く市場は本格的な回復とは言えない状況でした。
 このような状況においても、当社グループは持続的な成長を実現させるため、コア事業の世界戦略を加速するとともに、水・環境、エネルギー、光学・電子の各領域において次世代を担う事業の開発を積極的に推進しています。

2013年度(2013年4月1日~2014年3月31日)の経営成績につきましては、売上高は前期比44,054百万円11.9%)増413,485百万円、営業利益は347百万円0.7%)増49,545百万円、経常利益は753百万円1.6%)増49,343百万円、当期純利益は592百万円2.1%)増29,390百万円となりました。

当社は、2013年4月1日付の組織改定に伴い、当連結会計年度より報告セグメントを変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後のセグメント区分に基づいています。

 

セグメント別の業績は次のとおりです。

[ビニルアセテート]

当セグメントの売上高は179,261百万円前期比15.5%増)、営業利益は46,658百万円同4.5%減)となりました。

① 光学用ポバールフィルムは液晶テレビの需要が伸び悩むなか、パネルの在庫調整が長引き、販売量が減少しました。ポバール樹脂は数量は伸びましたが、欧州プラントの省エネ工事のための停止期間が長引き、一時的コストアップが発生しました。また、PVBフィルムは欧州の景気低迷の影響を強く受け苦戦し、加えて自動車向け製品開発費が増加しました。一方、水溶性ポバールフィルムは旺盛な需要を背景に順調に拡大、それに対応するため米国における増設を決定し、2014年7月稼働を目指し工事を進めています。

② EVOH樹脂<エバール>は、米国、アジアを中心に順調に拡大しました。米国において12,000トンの能力増強工事が完了し、稼働を開始しました。

 

なお、当事業の持続的成長のため、E.I.du Pont de Nemours and Companyと2013年11月に同社グループのビニルアセテート関連事業を買収することに合意し、2014年6月に買収を完了しました。

[イソプレン]

当セグメントの売上高は53,027百万円前期比18.3%増)、営業利益は5,471百万円同41.4%増)となりました。

① イソプレン関連では、液状ゴムの需要は低調に推移しましたが、ファインケミカルおよび熱可塑性エラストマー<セプトン>は需要が回復しました。

② 耐熱性ポリアミド樹脂<ジェネスタ>は、LED反射板・コネクタ用途、自動車用途ともに好調でした。鹿島事業所において3,000トンの能力増強工事が完了し、稼働を開始しました。

[機能材料]

当セグメントの売上高は48,552百万円前期比7.5%増)、営業利益は1,500百万円同22.3%減)となりました。

① メタクリル樹脂は、競合激化に加え原燃料価格上昇により減益傾向に歯止めがかかりませんでした。

② メディカルは、歯科材料の販売が堅調に推移しました。

③ 人工皮革<クラリーノ>は、構造改善の一環として取り組んでいる既存プロセスの中国移管は順調に進んだものの、新プロセス品の拡販が遅れ、全体として低調に推移しました。

[繊維]

ビニロンは、ブレーキホース用途、アスベスト代替のFRC(繊維補強セメント)用途ともに順調に推移しました。この結果、売上高は46,932百万円前期比1.5%増)、営業利益は2,633百万円同48.6%増)となりました。

[トレーディング]

一部の事業は景気低迷の影響を受けましたが、繊維資材関連をはじめとするその他の事業は総じて堅調に推移しました。この結果、売上高は108,991百万円前期比0.2%増)、営業利益は3,582百万円同6.7%増)となりました。

[その他]

活性炭事業は、浄水・エネルギー関連用途を主体に順調に拡大しました。それ以外の事業については総じて景気低迷の影響を受けました。また、アクア・電材関連事業の開発費用増の影響もあり、売上高は67,334百万円前期比4.5%増)、営業利益は2,493百万円同37.7%減)となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

税金等調整前当期純利益45,598百万円、減価償却費34,972百万円などの収入に対し、売上債権の増加、たな卸資産の減少、仕入債務の減少による4,532百万円の支出、法人税等の支払額17,273百万円などの支出で、営業活動によるキャッシュ・フローは 61,175百万円の収入となりました。前年同期比では5,736百万円収入が減少しました。

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

運用資産の取崩し85,843百万円による収入に対して、有形及び無形固定資産の取得58,414百万円による支出で、投資活動によるキャッシュ・フローは22,293百万円の収入となりました。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

配当金の支払額12,584百万円、借入金の減少額3,759百万円などの支出により財務活動によるキャッシュ・フローは15,427百万円の支出となりました。

以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額および新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額により、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より70,756百万円増加して、100,642百万円となりました。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品が多く、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため生産、受注および販売の状況については、「1 業績等の概要」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。

 

3 【対処すべき課題】

当社は、グループが目指すべき長期的な方向性を示す『長期企業ビジョン』を踏まえ、世界に存在感を示すスペシャリティ化学企業として、売上高1兆円への成長イメージを描きました。その達成に向け、2012年度より中期経営計画『GS‐Ⅲ』に取り組み、一定の成果を上げてきました。しかし、当初の想定より世界経済が総じて低調に推移したこともあり、『GS‐Ⅲ』で掲げた2014年度売上高5,500億円、営業利益850億円の達成は困難な状況です。2014年度は市場環境に左右されない収益力の強化を図り、2015年度から始まる次期中期経営計画につなげてまいる所存です。
 
 当社グループが『長期企業ビジョン』で掲げた持続的な成長は、今日の全地球的課題(地球温暖化、有限な天然資源、水・食糧不足、環境汚染等)に対し、当社グループならではの独創的技術の発現により効果的な解決策を提供すること、そしてすべての企業活動において環境・社会との調和を図ることで、達成可能になると考えます。当社が蓄積してきた技術・市場に関する知恵を生かし、全社の価値創造ポテンシャルを最大限に発揮することで成長力を高めます。
 
 『GS‐Ⅲ』の具体的な施策として、技術革新を通じた新たな製品・用途開発の加速、国内・海外を問わず成長余地のある市場・分野での事業拡大、自社資源を補完・発展しうる領域での外部資源の有効活用、拡大する事業を支えるためのグローバル経営基盤強化、環境への対応を図っています。その一環として2012年6月の米国の水溶性ポバールフィルム製造・販売会社であるMonoSol Holdings, Inc.およびその100%子会社の買収に続き、2014年6月にE.I. du Pont de Nemours and Companyから同社グループのビニルアセテート関連事業を買収、コア事業のさらなる基盤強化を図ります。

 

<株式会社の支配に関する基本方針>

Ⅰ.当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針

昨今、日本の企業社会の構造は大きく変わりつつあります。たとえば、株式の持合いの解消が進み、会社は株主のものとする考え方や株主の声に配慮した経営が一層浸透する一方で、企業買収に対する株式市場、企業社会の理解も深まってきています。こうした中で、企業買収の対象となる会社の経営陣と十分な協議や合意のプロセスを経ることなく、いわば敵対的に、突如として株式の大量買付けを強行する動きが顕在化しています。もとより、当社は、このような敵対的な株式の大量買付けであっても、その具体的な条件・方法等によっては、当社の企業価値・株主共同の利益の向上に資する場合もあると認識しております。そして、当社が資本市場に公開された株式会社である以上、当社の株式の買付提案に応じるべきか否かの判断は、最終的には、個々の株主の皆様によってなされるべきであると考えております。

 

しかしながら、上記のような一方的な株式の大量買付けの中には、株主の皆様に対して当該大量買付けに関する十分な情報が提供されず、株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれがあるものや、株主の皆様が当該大量買付けの条件・方法等の検討を行ったり、当社取締役会が代替案の提案等を行ったりするための十分な時間が確保されないもの、その他真摯に合理的な経営を行う意思が認められないもの等の当社の企業価値・株主共同の利益を著しく損なう株式の大量買付けもないとはいえません。

当社といたしましては、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業理念、および当社の企業価値の源泉をなす重要な経営資源を十分に理解した上で、当社の企業価値・株主共同の利益を中長期的に確保・向上させることを真摯に目指す者でなければならないと考えております。したがいまして、上記のような当社の企業価値・株主共同の利益を著しく損なうおそれのある株式の大量買付けを行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えます。

 

Ⅱ.基本方針の実現に資する取組み

当社は、企業価値を安定的かつ持続的に向上させていくことこそが株主共同の利益の向上のために最優先されるべき課題であると考え、以下のような事項をはじめ、当社の企業価値・株主共同の利益の向上のための様々な取組みを行っております。これらの取組みは、上記Ⅰ.の当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の実現に資するものであると考えております。

 

1.中期経営計画に沿った事業の強化・拡大

当社が目指すべき長期的な方向性を示す「長期企業ビジョン」の実現に向けて、2012年度から2014年度の3ヵ年計画として中期経営計画「GS-Ⅲ」に取り組み、技術革新、地域拡大、外部資源活用、グローバル経営基盤強化および環境対応を主要な経営戦略とし、次なる成長のステージへ飛躍するための諸施策に取り組んでおります。

 

2.コーポレート・ガバナンス体制の構築

当社は、経営の効率性と公正性を確保する効果的なコーポレート・ガバナンス体制の構築により、多様な利害関係者との適切な関係を維持し、社会に対する責任を果たすことが、長期的・持続的に企業価値・株主共同の利益を向上させ、上記Ⅰ.に記載の基本方針の実現に資するものと考えます。当社は、この認識のもとに、以下の諸施策の実施を通じてコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。

①社外取締役による経営監督機能の強化および執行役員制度による経営の意思決定と業務執行責任の分離

②社外監査役による監査機能の充実

③社外有識者による社長の業務執行に対する助言を目的とした経営諮問会議の設置

 

3.株主の皆様への利益配分についての基本方針

当社は、株主の皆様に対する利益配分を経営の重要課題と位置付け、当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上させるべく、株主の皆様に対する経営成果の還元と将来の成長力の確保に配慮しつつ、適正な利益配分を行うよう努めています。

当社は、上記1.に記載のとおり、中期経営計画「GS-Ⅲ」を実施しております。この期間における利益配分として、連結当期純利益に対する配当性向35%以上を目標としております。

 

Ⅲ.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

当社は、2012年6月22日開催の当社第131回定時株主総会の承認を得て、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上のための取組みとして、当社に対する濫用的な買収等を未然に防止するため、以下のとおり、当社の株式の大量買付行為に関する対応策(以下「本プラン」といいます。)を導入しました。

本プランに定められた手続(以下「大量買付ルール」といいます。)では、当社株式の保有割合が20%以上となる買付け等(以下「大量買付行為」といい、かかる買付行為を行う者を以下「大量買付者」といいます。)を行う大量買付者には大量買付行為を行う前に、大量買付行為に対する皆様のご判断および当社取締役会の評価・検討等のために必要かつ十分な情報を提供していただくこととしております。当社取締役会は、当該情報に基づき所定の評価期間内に大量買付行為に対する意見を取りまとめ、株主の皆様に公表するとともに、必要に応じて大量買付者との間で大量買付行為の条件・方法について協議し、株主の皆様に対する代替案の策定等を行います。

大量買付者が大量買付ルールに従わずに大量買付行為を行おうとする場合には、当社取締役会は、当該大量買付行為を当社の企業価値・株主共同の利益を著しく損なう敵対的買収行為とみなし、新株予約権の無償割当てによる対抗措置を発動することができるものとします。他方、大量買付者が大量買付ルールに従って大量買付行為を行う場合には、当該大量買付行為が当社の企業価値・株主共同の利益を著しく損なうものであると明白に認められる場合を除き、原則として当該大量買付行為に対する対抗措置は発動しません。

 

当社取締役会は、対抗措置の発動に先立ち、社外取締役および社外監査役で構成される特別委員会に対して対抗措置の発動の是非について諮問し、特別委員会の勧告を最大限尊重するものとします。また、当社取締役会は、特別委員会の勧告または当社取締役会の判断に基づき対抗措置の発動の是非につき株主の皆様のご意思を確認するための株主総会を招集する場合には、当該株主意思確認総会の決議に従うものとします。

なお、本プランの有効期間は、2012年6月22日開催の当社第131回定時株主総会の終了時から2015年に開催される当社第134回定時株主総会の終結時までです。

本プランの詳細については、当社のウェブサイト(http://www.kuraray.co.jp/release/2012/pdf/120426_1_jp.pdf)をご参照ください。

 

Ⅳ.上記Ⅱ.の取組みについての取締役会の判断

当社は、企業価値を安定的かつ持続的に向上させていくことこそが株主共同の利益の向上のために最優先されるべき課題であると考え、当社の企業価値・株主共同の利益の向上を目的として、上記Ⅱ.の取組みを行っております。これらの取組みの実施を通じて、当社の企業価値・株主共同の利益を向上させ、それを当社の株式の価値に適正に反映させていくことにより、当社の企業価値・株主共同の利益を著しく損なうおそれのある当社株式の大量買付けは困難になるものと考えられます。したがいまして、上記Ⅱ.の取組みは上記Ⅰ.の基本方針に沿うものであり、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

Ⅴ.上記Ⅲ.の取組みについての取締役会の判断

上記Ⅲ.の取組みは、十分な情報の提供と十分な検討等の期間の確保の要請に応じない大量買付者、および当社の企業価値・株主共同の利益を著しく損なう大量買付行為を行いまたは行おうとする大量買付者に対して、対抗措置を発動できることとしています。したがいまして、上記Ⅲ.の取組みは、これらの大量買付者による大量買付行為を防止するものであり、上記Ⅰ.の基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みであります。また、上記Ⅲ.の取組みは、当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上させることを目的として、大量買付者に対して、当該大量買付者が実施しようとする大量買付行為に関する必要な情報の事前の提供、およびその内容の評価・検討等に必要な期間の確保を求めるために導入されたものです。さらに、上記Ⅲ.の取組みにおいては、株主意思の重視、合理的な客観的要件の設定、特別委員会の設置等の当社取締役会の恣意的な判断を排し、上記Ⅲ.の取組みの合理性を確保するための様々な制度および手続が確保されているものです。

したがいまして、上記Ⅲ.の取組みは上記Ⅰ.の基本方針に沿うものであり、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの業績(経営成績および財政状態)等に重要な影響を及ぼすリスクには以下のような項目があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2014年3月31日)現在において当社が判断したものです。

(1) 事業環境の変化に関わるリスク

当社グループは、多様な事業ポートフォリオを有しており、製品市場もグローバルかつ様々な用途分野に展開しています。さらに、当社の製品は特殊化学品が多く、一般に比べて商品市況の影響を受けにくい構成になっていますが、近年、用途分野を電子・電機、自動車、環境等の成長分野へシフトさせつつあり、業績の依存度も高まっています。これらの分野は、最終製品における業界標準の転換、短い製品寿命、グローバルな開発競争等、市場変化が激しいため、当社製品についても市場環境や競争条件が激変するリスクがあります。

また、当社グループの製品である化成品、合成樹脂、合成繊維の原料は、原油、天然ガスの市況に影響を受けるエチレン等の石油化学製品です。このため、予想を超えるこれらの市況の変動が、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらの事業環境の変化により、重要な事業が縮小・撤退を余儀なくされるリスクがあります。

(2) 事故・災害に関わるリスク

当社グループは、日本および欧州、北米、アジアに生産拠点を設けており、これらの多くは大規模な化学工場です。爆発、火災、有害物質の漏洩などの事故・災害の未然防止、および災害発生時には被害の極小化に努めるとともに、重要な生産設備については、拠点分散や損害保険によるリスク対応を行っていますが、重大な保安事故、環境汚染や自然災害が発生すれば、従業員や第三者への人的・物的な損害、事業資産の毀損、長期の生産停止が生じるリスクがあります。

また、重要な原材料、設備・メンテナンス部品やサービスの提供などを担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生により、当社グループの製品供給に影響が生じるリスクがあります。

 

(3) 係争・法令違反に関わるリスク

当社グループは、独自技術による事業を数多く有しており、将来において、当社グループの知的所有権への重大な侵害や当社の権利に対する係争が発生するリスクがあります。

また、当社グループは、自動車、電気・電子材料、医療、食品包装等、最終製品の品質確保に重要な役割を担う製品を数多く供給しています。当社グループでは主に製造拠点単位で品質マネジメントシステムを導入し品質の向上に努めていますが、品質の欠陥に起因する大規模な製品回収が発生すると、PL保険でカバーできない損害賠償等の損失が発生するリスクがあります。

当社グループの各事業拠点においては、コンプライアンス体制を構築し、法令等の遵守に努めていますが、重大な法令違反を起こした場合、また現行の法規制の変更や新たな法規制等が追加された場合には、事業活動に制約を受けるリスクがあります。

 

(4) 為替の変動に関わるリスク

当社グループは、日本国内および欧州、北米、アジアなどの海外諸地域で生産、販売を展開しています。当社グループが国内で生産し、海外へ輸出する事業では製品の輸出価格が為替変動の影響を受けます。一方、海外の事業拠点で生産、販売する事業では、異なる通貨圏との間の調達・販売価格および外貨建て資産・負債の価額が為替変動の影響を受けます。このため想定を超える為替変動は、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) その他のリスク

当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、戦争・暴動・テロ、伝染病等、偶発的な外部要因によって事業活動に支障が生じるリスクがあります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(当社が契約主体である技術援助契約)

相手先

内容

期間

LEE CHANG YUNG CHEMICAL INDUSTRY
CORPORATION(台湾)

メタクリル酸メチル(MMA)製造技術の供与

2005年3月28日からライセンスロイヤリティ受取期間終了の日まで(実質稼働10年間)

LEE CHANG YUNG CHEMICAL INDUSTRY
CORPORATION(台湾)

メタクリル樹脂(PMMA)製造技術の供与

2008年3月21日からライセンスロイヤリティ受取期間終了の日まで(実質稼働10年間)

Evonik Röhm GmbH(ドイツ)

メタクリル酸メチル(MMA)製造技術の供与

2006年1月23日からライセンスロイヤリティ受取期間終了の日まで(実質稼働10年間)

 

 

(当社が契約主体である合弁契約)

相手先

内容

期間

浙江禾欣実業股有限公司(中国)

人工皮革用基布の製造販売を目的とする合弁会社の設立・運営

2004年7月13日から12年間

 

 

(買収に関する契約)

 当社は、E. I. du Pont de Nemours and Companyより、同社グループのビニルアセテートモノマー(VAM)、ポバール(PVA)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂・フィルム等からなるビニルアセテート関連事業を譲り受ける(以下「本買収」という。)ための契約を、2013年11月21日付で同社と締結し、2014年6月1日に買収を完了しました。詳細は「第5 経理の状況 1.(1)連結財務諸表 注記事項 重要な後発事象 取得による企業結合」に記載のとおりです。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発活動は、企業ミッション「私たちクラレグループは、独創性の高い技術で産業の新領域を開拓し、自然環境と生活環境の向上に寄与します」に基づいて、社内カンパニー・事業部・連結子会社に所属するディビジョン研究開発とコーポレート研究開発との緊密な連携の下に推進されています。

中期経営計画『GS-Ⅲ』に掲げた「独創性の高い技術により全地球的課題に効果的な解決策を提供する」のコンセプトに則り、技術革新を通じ新たな製品・用途開発を行うことで業容を拡大するとともに将来の成長を目指します。『GS-Ⅲ』では「強い素材の開発と成型加工技術の深化・横展開」、「社内で保有しない技術の外部活用」、「カンパニーと関係会社の協働強化」を重点方針として掲げます。本方針に基づき、新事業創出を目指す「高い市場成長力」をもつ分野として定めた、環境(水処理を含む)、エネルギー、光学・電子材料の重点領域に関して、早期に収益への貢献を果たすことを目指し、『長期企業ビジョン』で描いた「世界に存在感を示すスペシャリティ化学企業の実現」を目指します。また、2013年4月からは新事業開発のスピードアップを図るため、従来の新事業開発本部を研究開発本部と新たな新事業開発本部に分割しました。研究開発本部は、新事業の創出および基盤技術の強化拡大に注力し、新たな新事業開発本部は、電子材料、成形部材等『GS-Ⅲ』の重点テーマの早期事業化を目指しています。

コーポレート研究開発は、くらしき研究センター、つくば研究センターおよびクラレリサーチ&テクニカルセンター(KRTC:米国およびドイツ)を擁し、世界規模の体制で運営しています。生産技術に関しては、技術開発センターにおいて「原理原則と現場感覚の最適融合」による生産技術開発を推進しています。ディビジョン研究開発は、社内カンパニー・事業部・連結子会社が各事業所に研究開発部署を有しています。コーポレート研究開発とディビジョン研究開発は密接に連携し、基幹事業の強化および新事業の開発加速のために活動を推進しています。これらを合わせた当社グループ(当社および連結子会社)の研究開発人員数は876人です。当連結会計年度のセグメントごとの研究開発費は、ビニルアセテート4,114百万円、イソプレン1,077百万円、機能材料2,039百万円、繊維1,731百万円、トレーディング159百万円、その他1,405百万円、全社共通(コーポレート研究開発)6,576百万円、合計17,103百万円になります。

 

セグメントごとおよびコーポレートの研究開発活動を示すと次のとおりです。

ビニルアセテート

・ポバール樹脂、ポバールフィルム、PVBフィルム、<エバール>樹脂の酢酸ビニルチェーンについては、世界のリーディングカンパニーとして、国内外の研究開発部署が連携し、新規用途開発、新商品開発、新規生産技術開発も併せて、研究開発活動を推進しています。

・ポバール樹脂では、特殊変性技術を活かして、石油・天然ガス掘削現場で使用される高性能銘柄の開発を拡大しています。

・ガスバリア材料では、金属缶・ガラス瓶代替が可能な新商品として、スーパーバリア材料<エバール>AP、耐レトルト性のある透明バリアフィルム<クラリスタ>など積極的に新規用途開発に取り組んでいます。最近では水蒸気バリア性能を大幅に向上させた新銘柄<クラリスタ>CFを上市しており、一層の用途拡大を目指します。

 

イソプレン

・エラストマー関連では、新規に植物由来の原料ファルネッセンを用いた液状ゴムを開発しています。タイヤ原料に配合すると燃費向上につながることから、地球環境に貢献する液状ゴムとして、世界の大手タイヤメーカーで評価が進んでいます。

・イソプレンケミカル関連では、独自性の高いC4ケミストリーをさらに進化させた化学品として、殺菌剤や特殊インキ関連の材料開発、ならびに精密有機合成技術を基盤にした半導体フォトレジスト用材料など機能性化学品の創出に取り組んでいます。

・耐熱性ポリアミド樹脂<ジェネスタ>では、自動車分野での市場浸透が進むと共に、耐熱性・耐光性の高いLED部材用新銘柄の開発に取り組んでいます。

 

機能材料

・メタクリル樹脂については、差別化ポリマーの拡充とメタアクリル系樹脂を活用した新規用途開発、新商品開発を主体に研究開発活動を行っています。

・メディカル事業では、人工骨インプラント<リジェノス>の試験販売を進め、良好に進展しています。また、2011年度に株式会社ノリタケデンタルサプライとクラレメディカル株式会社の歯科材料事業を統合したことにより、無機技術、有機技術をベースとした新規材料の開発に注力しています。

・人工皮革<クラリーノ>については、環境対応型革新プロセス(CATS)で上質な商品、特長を生かした新規用途開発により、ユーザー評価を進めています。

 

繊維

・PVA繊維<ビニロン>については、革新プロセス(VIP)によるフィラメントの基礎技術を確立し、実証プラント建設、ならびに新規素材の開発を目指しています。FRC(セメント補強材)は、新商品によるアジア、中南米等の新規ユーザーが拡大しました。また、軽量な成型品の展開も進めています。

・高強力繊維<ベクトラン>については、コスト合理化と品質安定化を図るべく新規プロセスの開発を開始しました。

・新型不織布<フレクスター>については、伸縮包帯用途を中心に新規ユーザーの開拓に取り組んでいます。

・難燃繊維(ポリエーテルイミド繊維)は、耐熱性、低発煙性や分散染料可染等の特長があり、航空機や自動車等の高温断熱材やコンポジット用に展開を図っていきます。

 

 

トレーディング

・ポリエステル長繊維<クラベラ>については、①ふんわり・柔らかい高級タオルの製造に欠かせない特殊水溶性繊維<ミントバール>や、②環境対応素材<エコトーク>の一環として、染色加工時のCO2排出量を削減した<ピュアス>に水との親和性の高いエバールを複合した肌に優しい<ピュアスソフィスタ>をラインナップに加え販売を展開するなど、機能性・環境をキーワードにした独自素材の開発、用途開発に注力しています。

 

その他

・アクア事業推進本部では、中空糸ろ過膜を用いた様々な水の製造・回収や有価物(シリコン、レアメタルなど)の回収、ポリビニルアルコール(PVA)ゲルを用いた産業排水の処理・回収、海洋生態系保全のための海水処理などを通して、「高品質で安全な水の提供」と「環境負荷の低減」に貢献する素材・装置・技術開発に取り組んでいます。

・クラレケミカル株式会社では、「Ecology & Amenity」を企業コンセプトとし、「環境・エネルギー」分野をメインターゲットに、活性炭や炭素材料を用いた新規用途開発に取り組んでいます。

・クラレプラスチックス株式会社では、当社の研究・開発部門と連携し、スチレン系エラストマーやアクリル系熱可塑性エラストマー<クラリティ>を使用した家電・電子部品ならびに自動車部品、建材、生活用品等用途のコンパウンド、ポバールフィルムでの多層化加工やエバールフィルムでの特殊コーティング加工をした新規フィルム、成型加工技術を利用したスマートハウス向け断熱換気ダクト等の開発を推進しています。

 

コーポレート研究開発

・コーポレート研究開発は、市場成長が期待される「水・環境」、「エネルギー」、「電子・光学」分野を重点注力分野とし、新規事業の創出と育成に注力しています。

・リチウムイオン二次電池(LiB)の研究・市場開発を加速するため、2012年8月に株式会社クレハの子会社である株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン(KBMJ)へ資本参加し、また同年8月にクラレケミカル株式会社とKBMJによる生産合弁会社である株式会社バイオハードカーボンを設立しました。岡山県備前市に年産1,000トンのバイオハードカーボン生産設備を建設中です。これを足掛かりに、今後急速な拡大が見込まれるハイブリッド車や電気自動車などの車載用市場向けの電池負極材の開発を一層加速してまいります。一方、これ以外に電池材料の開発につきましても、技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)に参画し、電池部材の評価・解析を通じ、開発の加速を図っています。

・炭酸ガス回収・貯留のための膜分離技術開発に向け、地球環境産業技術研究機構(RITE)他2社と共同で設立した次世代型膜モジュール技術研究組合において、RITEが保有する技術をベースに当社の独自素材・技術を組み合わせた分離膜を開発し、目標性能を達成いたしました。今後本組合では、分離膜の更なる性能向上を図るとともに、実機型膜モジュールおよび膜分離システムの開発を進めます。

・独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに参画し、多孔性金属錯体(MOF)を用いて低エネルギー負荷で炭酸ガス等の混合ガスよりガス資源を分離・濃縮し、高効率活用することを目指した研究を行ってきました。実用に即した評価条件で良好な結果が得られ、社外ユーザーでの評価を進めています。今後は、社外ユーザーとのキャッチボールを加速し、実用化に向けた検討を進めます。

・新規アクリル系の特殊フィルムの開発において、アクリルの透明性を生かしながら、新たな機能を付与させた製品の用途開拓を推進しています。展示会においては、多くの顧客からサンプル供給の要求を受けるなど、注目を集めています。光学や加飾分野での採用が見込まれ、市場投入に向けた販売体制の準備を進めています。

・将来の成長領域での有望な新技術探索機能を強化する目的で、2011年よりカリフォルニア州シリコンバレーに拠点を設け、当社とシナジーのある技術を保有するベンチャー企業等と積極的に技術交流を進めてきました。その一環として、2013年に太陽電池やディスプレイ向けの超防湿フィルム開発のベンチャー企業であるVitriflex Inc. への出資を完了し、戦略的パートナーシップを締結しました。

・当社の微細成形技術を用いて、高い集光効率の集光型太陽光発電システム向けレンズを開発しました。今後は、中東や中国市場への発電システム設置計画に合わせたレンズ供給体制の確立に取り組んでいきます。

・光源にLEDを用いるエッジライト方式の導光板開発が進み、高い照度、配光特性のコントロールおよび異方出射特性などの特長を生かしたLED照明への採用を加速します。さらに、省エネに優れ、薄型・軽量であることを生かした用途拡大が期待されます。

・当社の微細成形技術を用いて開発したマイクロ空間細胞培養プレート<Elplasia>の市場評価が進み、がんの創薬スクリーニング用途、および、再生医療細胞培養用途での実用化に向け、産学一体となってより具体的な取り組みを進めていきます。

・液晶ポリマーフィルム<ベクスター>は優れた高周波回路基板材料として市場で認められており、モバイルコミュニケーション端末用途と車載センサー用途で採用が拡大しました。今後のさらなる事業拡大を積極的に推進するため、2013年8月、西条事業所の生産能力増強を決定しました。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績の分析

当連結会計年度における経営環境は、前連結会計年度終盤より円高の局面が是正されましたが、米国経済は好調であったものの、欧州・中国は停滞傾向が継続し、新興国経済は成長ペースが鈍化しており、全体的に想定した需要には至りませんでした。国内においても「アベノミクス」によるデフレ脱却による景気回復期待や、消費増税による駆け込み需要があったものの、当社を取り巻く市場は本格的な回復とは言えない状況でした。
 このような状況においても、当社グループは持続的な成長を実現させるため、コア事業の世界戦略を加速するとともに、水・環境、エネルギー、光学・電子の各領域において次世代を担う事業の開発を積極的に推進しています。

セグメント別の状況につきましては、「第一部  企業情報  第2  事業の状況  1  業績等の概要  (1)業績」に記載したとおりです。

 

(2) 財政状態の分析

資産、負債および純資産の状況

    総資産は、有形および無形固定資産の増加等により前連結会計年度末比46,998百万円増634,252百万円となりました。負債は借入金の減少等により前連結会計年度末比4,153百万円減181,793百万円となりました。純資産は前連結会計年度末比51,152百万円増加し、452,459百万円となりました。自己資本は445,834百万円となり、自己資本比率は70.3%となりました。

(3) キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第一部  企業情報  第2  事業の状況  1  業績等の概要  (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標は以下のとおりです。

 

2013年3月期

2014年3月期

自己資本比率(%)

67.2

70.3

時価ベースの自己資本比率(%)

83.3

65.2

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

1.0

1.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

67.7

65.2

 

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。

3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。

4.有利子負債は短期借入金、コマーシャル・ペーパー、長期借入金および社債の合計額を使用しています。

また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。

5.当連結会計年度より、一部の在外子会社について「従業員給付」(国際会計基準審議会 国際会計基準第19号 2011年6月16日)を適用しています。当該会計方針の変更は遡及適用されるため、前連結会計年度の自己資本比率は遡及適用後の数値を記載しています。

 

(4) 経営戦略の現状と見通し

当社グループは、目指すべき長期的な方向性を示す『長期企業ビジョン』を踏まえ、このビジョンの実現に向けた挑戦を続けています。

2014年度の経営環境については、国内においては消費増税による一時的な景気減速懸念があります。国外においては米国経済は好調持続、欧州経済は緩やかな回復、中国経済は減速傾向、その他の新興国経済はまだら模様といった状況が予想されます。
 2012年度より取り組んでいる中期経営計画『GS-Ⅲ』(2012年度~2014年度)の最終年度にあたり、技術革新を通じた新たな製品・用途開発の加速、国内・海外を問わず成長余地のある市場・分野での事業拡大、一層のコスト削減などにより市場環境に左右されない収益力の強化を図り、2015年度から始まる次期中期経営計画につなげてまいる所存です。

 

※文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。