第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は「新しい価値の創造を通じて社会に貢献する」ことを企業理念として掲げ、これに基づき経営基本方針を以下のとおり定めている。
 
 お客様のために  新しい価値と高い品質の製品とサービスを
 社員のために   働きがいと公正な機会を
 株主のために   誠実で信頼に応える経営を
 社会のために   社会の一員として責任を果たし相互信頼と連携を
 
 即ち、当社は、社会の中でお客様、社員、株主など数多くのステークホルダーによって支えられていることを認識し、それぞれに対して責任を果たし、広く社会に貢献することを経営の基本方針としている。
 

(2) 経営環境及び対処すべき課題等

当社グループは2011年に長期経営ビジョン“AP-Growth TORAY 2020”を策定した。その第1ステージとして、2013年度までの3ヵ年は中期経営課題“プロジェクト AP-G 2013”、2016年度までの3ヵ年は第2ステージとして中期経営課題“プロジェクト AP-G 2016”を実行してきた。2017年度からは2019年度までの3ヵ年を期間とする新たな中期経営課題“プロジェクトAP-G 2019”に取り組み、前2回の中期経営課題で要としていた「成長分野、成長国・地域での事業拡大」と「競争力強化」を踏襲しつつ、これまで進めてきた経営課題への取り組みを仕上げていく。また、同時に、2020年以降の持続的成長と企業価値向上を担う新たな収益源の創出についての取り組みも強化していく。
 2018年度の世界経済は、米国や欧州などの先進国が拡大基調を維持するほか、新興国でも中国が若干減速するものの堅調に推移することで、全体として緩やかな景気拡大が続くと想定している。ただし、先進国での保護主義的な通商政策、貿易摩擦の拡大、米欧の金融正常化に向けた動きがもたらす金融市場混乱等のリスク要因に注意を払う必要がある。日本経済についても、雇用・所得環境の改善が続く中、緩やかな景気回復が続くことを想定しているが、海外経済の不確実性や、原油価格及び金融・資本市場の変動が景気に影響を及ぼす懸念がある。
 このような状況の下、当社グループは、先端材料、コア技術、グローバルな事業基盤という強みを活かして事業拡大を進める。成長分野、成長国・地域には、設備投資や研究・技術開発といった経営資源を重点的に配分する。また、当社の強みを活かしてシナジーの発揮が期待できる場合には、M&Aやアライアンスを機動的に行うことで、既存事業の成長を増幅・補完していく。
 為替や原燃料価格の変動などに対しては、グローバルな事業基盤を活用することで、こうした外部要因の影響をできるだけ受けない企業体質の確保に引き続き努めていく。そして、中長期的視点に立った設備投資や研究・技術開発、人材育成を行っていくことで持続的な成長を図り、ステークホルダーの信頼に応える経営を実践していく。
 配当については、引き続き業績の改善に連動して安定的、継続的に配当を増加させていくことを基本方針とする。
 安全・防災・環境保全、企業倫理・法令遵守をはじめとしたCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)には最優先の経営課題として取り組みを強化している。2019年度までの3ヵ年を期間とする「第6次CSRロードマップ」を策定し、事業活動のあらゆる側面におけるCSRを引き続き体系的に推進することで経営戦略とCSRを連動させ、当社グループの持続的発展とCSRの両立を図っていく。

こうした中で、当社の子会社である東レハイブリッドコード株式会社において、製品検査データの書き換えを行っていたことが判明した。本事案について法令違反はなく、顧客の製品の安全性に問題がないことも確認されている。本事案の調査を委嘱した有識者委員会からは、対応が概ね妥当との評価を得ると同時に、コンプライアンスの強化に向けた提言を受けた。

 

また、本事案を契機に、当社グループ全体にわたる品質データの一斉調査を行い、法令違反や顧客の製品の安全に影響を与える事案はないことを確認した。

当社は、グループ全体にわたる品質保証業務の実効性を確保する施策に着手しており、品質保証を含むコンプライアンスの強化を進める。品質保証を確実なものとし、問題が生じた場合には迅速かつ的確に対処できるよう、顧客とのコミュニケーションを強化する。こうした施策の進捗状況については取締役会、監査役が定期的に報告を受けてガバナンス機能を発揮する。そして、役員・従業員全員が「正しいことを正しくやる、強い心」を持って今後の企業活動に取り組んでいく所存である。

当社グループは、すべての製品の元となる素材には、社会を本質的に変える力があるという信念のもと、常に世界に先駆けた技術革新に挑戦し、最先端の技術や新素材を生み出し事業化することを目指している。そして、企業活動のあらゆる場面で現場力を重視し、徹底的な現状把握と現状分析に基づいて問題を克服していくことで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を具現化していく。

 

2 【事業等のリスク】

「第2 事業の状況」、「第5 経理の状況」等での記載事項に関して、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは、以下のとおりである。当社グループは、日常的にこれら潜在するリスクからの回避、又はその影響の低減に努めるとともに、不測の事態が発生した場合には迅速な対応と的確な情報開示を実施しうる体制を構築すべく努めている。なお、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、事業等のリスクはこれらに限定されるものではない。また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月26日)現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 国内外の需要、製品市況の動向等に関わるリスク

当社グループは基礎素材製品を広範な産業に供給しており、世界的あるいは地域的な需給環境の変動や素材代替の進行、取引先の購買方針の変更等により当社グループの製品に対する需要が急速に減退する可能性がある。また、当社グループの様々な事業は他企業との厳しい競争状態にあり、新規参入の脅威に曝されているものもあるほか、医薬・医療事業には薬価並びに償還価格改定による価格変動要因がある。当社グループは持続的に競争優位の確保に努めているものの、これら製品の需要が減少あるいは価格が下落した場合、あるいは取引先の与信リスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(2) 原燃料価格の上昇に関わるリスク

当社グループが使用する石油化学原料や燃料は、価格が大きく変動することがあり、これら原燃料の価格上昇分を製品価格に十分に転嫁できない場合、あるいは品種転換による採算の改善が困難な場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(3) 設備投資、合弁事業・提携・買収等に関わるリスク

当社グループは広範囲にわたる事業領域で設備投資を実施しており、また、第三者との間で様々な合弁事業や戦略的提携、事業買収等を行っている。これら設備投資、合弁事業・提携・買収等の実施にあたっては、事前に収益性や投資回収の可能性について様々な観点から検討を行っているが、必ずしも確実に予期したとおりの成果が得られるという保証があるわけではなく、事業環境の急変などにより、予期せぬ状況変化や所期の事業計画からの大幅な乖離が生じた場合、固定資産等の減損損失や持分法投資損失等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性がある。

 

(4) 為替相場の変動、金利の変動、有価証券等の価値の変動等に関わるリスク

当社グループの海外事業の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時の為替レート変動の影響を受ける。外国通貨建て取引については、為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じているが、予測を超えた為替変動が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性がある。
 また、予期せぬ金利水準の急激な変動やその他の金融市場の混乱、当社グループの保有する有価証券あるいは年金資産の価値の変動等が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

 

 

(5) 将来予測等の前提条件の変動に伴う退職給付債務や繰延税金資産に関わるリスク

当社の単独及び連結財務諸表は、将来に関する一定の前提を置いた年金数理計算に基づいて退職給付債務を計上しており、また、将来年度の課税所得の見積額に基づき回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を計上しているが、年金数理計算に使用する前提条件に変動が生じた場合、あるいは将来の課税所得の見積額に変動が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

 

(6) 海外での事業活動に関わるリスク

当社グループは、アジア・欧州・米国をはじめ海外で広く事業を展開しているが、各地域において以下のようなリスクがあり、これらの事象が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

①不利な影響を及ぼす租税制度の変更等の予期しない諸規制の設定又は改廃

②予期しない不利な経済的又は政治的要因の発生

③テロ・紛争等による社会的混乱 など

 

(7) 製造物責任に関わるリスク

当社グループは、世界最高水準の品質を追求しているが、予期し得ない重大な品質問題が発生する可能性は皆無ではなく、そうした重大事態が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(8) 訴訟に関わるリスク

当社グループが広範な事業活動を展開する中で、知的財産権、製造物責任、環境、労務等、様々な訴訟の対象となるリスクがある。重大な訴訟が提起された場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(9) 法規制、租税、競争政策、内部統制に関わるリスク

当社グループは、事業活動を行っている各国及び地域において、環境、商取引、労務、知的財産権、租税、為替等の各種関係法令、投資に関する許認可や輸出入規制、独占禁止法に基づく競争政策等の適用を受けている。当社グループは内部統制システムの整備・維持を図り各種法令等の遵守に努めているが、新たな環境規制や環境税の導入、法人税率の変動等これらの法令の改変があった場合や各種法令に違反したと判定された場合、公正取引委員会による行政処分を受けた場合や税務当局から更正通知を受領した場合、あるいは従業員による不正行為があった場合や財務報告に係る内部統制の有効性が維持できなかった場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(10) 自然災害・事故災害に関わるリスク

当社グループは、「安全・防災・環境保全」をあらゆる経営課題に優先し、生産活動の中断による損害を最小限に抑えるため、製造設備の定期的な防災点検及び設備保守、また安全活動を推進しているが、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等で製造設備等が損害を受けた場合や原材料等の供給不足が生じた場合、電力・物流をはじめとする社会インフラの機能が低下した場合等には、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(11) 情報セキュリティに関わるリスク

当社グループが事業活動を行う上で、情報システム及び情報ネットワークは欠くことのできない基盤であり、構築・運用に当たっては十分なセキュリティの確保に努めているものの、不正侵入、情報の改ざん・盗用・破壊、システムの利用妨害などにより業務の停滞や信用の低下が生じた場合、あるいは機密情報が社外に流出した場合等には、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
 なお、文中の将来における事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。連結財務諸表の作成において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載している。連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の報告額に影響を与える見積りが必要となる。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。

 

(2) 経営成績の概要及び分析

当連結会計年度の世界経済は、米国や欧州では、景気は緩やかな回復が続いた。新興国では、多くの国で景気は持ち直しの動きが見られた。国内経済については、雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな景気回復が続いた。
 一方で、原燃料価格の上昇は当社グループ収益の下押し要因となった。このような事業環境の中、当社グループは2017年4月より、2019年度までの3ヵ年を期間とする新たな中期経営課題“プロジェクトAP-G 2019”をスタートし、「成長分野での事業拡大」、「成長国・地域での事業拡大」、「競争力強化」を要とした成長戦略を実行している。この結果、当連結会計年度の売上高、営業利益及び経常利益はいずれも過去最高を更新した。
 

(中期経営課題“プロジェクトAP-G 2019”業績指標)

(単位:億円) 

 

2017年度実績

2018年度見通し

2019年度目標

売上高

22,049

 

24,000

 

27,000

 

営業利益

1,565

 

1,650

 

2,500

 

営業利益率

7.1%

 

6.9%

 

9%

 

ROA

6.3%

 

約6%

 

約9%

 

ROE

9.1%

 

約9%

 

約12%

 

 

 

売上高は、ライフサイエンス事業を除く全てのセグメントで増収となり、前連結会計年度比1,784億円(8.8%)増収の2兆2,049億円となった。営業利益は、繊維事業、機能化成品事業を中心に増益となり、前連結会計年度比96億円(6.5%)増益の1,565億円となった。

営業利益の前連結会計年度比増減要因を分析すると、販売・生産数量の増加や販売価格上昇による増益640億円があった一方で、原料価格上昇や営業費増加などによる減益△544億円があり、差し引き96億円の増益となった。
 営業外損益は、新規設備操業開始費用が増加したことなどにより、前連結会計年度比10億円の減益となり、経常利益は同86億円(6.0%)増益の1,523億円となった。
 特別利益は前連結会計年度比14億円減の45億円、特別損失は関係会社事業損失や環境対策費を計上したことを主因に同96億円増の202億円となり、税金等調整前当期純利益は同24億円(1.7%)減益の1,366億円となった。
 親会社に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比35億円(3.5%)減益の959億円となった。自己資本利益率は、9.1%と前連結会計年度比1.0ポイント悪化した。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりである。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載している。

 

 

(繊維事業)

国内では、自動車関連など産業用途の一部で需要が堅調に推移し、衣料用途でも店頭販売の動きなどに徐々に改善が見られる中で、衣料用・産業用それぞれの用途での拡販に加え、糸綿/テキスタイル/製品一貫型ビジネスの拡大を進めるとともに、事業体質強化に注力した。
 海外では、東南アジアや韓国などの一部子会社の業績が低調であったが、自動車関連用途向けや衛生材料向けは総じて堅調に推移し、衣料用途でも一貫型ビジネスの拡大を進めた。
 以上の結果、繊維事業全体では、売上高は前連結会計年度比6.7%増の9,136億円、営業利益は同8.5%増の724億円となった。

主要な製品の生産規模は、ナイロン糸が前連結会計年度比9.0%増の約474億円(販売価格ベース)、ポリエステル糸が同5.7%増の約601億円(販売価格ベース)、ポリエステルステープルが同16.6%増の約589億円(販売価格ベース)となった。

 

(機能化成品事業)

樹脂事業は、自動車関連用途向けの出荷が国内を中心に概ね堅調に推移した。自動車以外の用途でも、ABS樹脂やPPS樹脂などの拡販を進めた。フィルム事業は、リチウムイオン二次電池向けのバッテリーセパレータフィルムが需要の伸長を背景に出荷を拡大したことに加え、スマートフォン向けなどの電子部品用途が好調に推移した。電子情報材料事業は、有機ELパネルの需要拡大に伴い関連材料の出荷が拡大した。
 以上の結果、機能化成品事業全体では、売上高は前連結会計年度比10.9%増の8,033億円、営業利益は同15.5%増の714億円となった。

主要な製品の生産規模は、ABS樹脂が前連結会計年度比30.0%増の約1,024億円(販売価格ベース)、ナイロン樹脂とPBT樹脂が同11.6%増の約254億円(販売価格ベース)、ポリエステルフィルムが同9.7%増の約1,300億円(販売価格ベース)となった。

 

(炭素繊維複合材料事業)

航空宇宙用途では、航空機の最終需要が堅調に推移している中、サプライチェーンでの在庫調整が完了し、出荷は回復基調となった。一般産業用途では、圧縮天然ガスタンクや風力発電翼などの環境・エネルギー関連向けを中心に、全体として需要が回復傾向となった。なお、原料価格の上昇や競合激化の影響を受けた。
 以上の結果、炭素繊維複合材料事業全体では、売上高は前連結会計年度比10.1%増の1,779億円、営業利益は同13.3%減の208億円となった。

炭素繊維複合材料の生産規模は前連結会計年度比3.3%増の約1,640億円(販売価格ベース)となった。

 

(環境・エンジニアリング事業)

水処理事業は、国内外で逆浸透膜などの需要が概ね堅調に推移した。
  国内子会社では、エンジニアリング子会社で産業機器やエレクトロニクス関連装置が好調であった。
 以上の結果、環境・エンジニアリング事業全体では、売上高は前連結会計年度比12.1%増の2,383億円、営業利益は同13.5%増の133億円となった。

 

(ライフサイエンス事業)

医薬事業は、経口そう痒症改善薬レミッチ®*が、剤形追加や効能追加の効果から出荷を拡大した。一方、天然型インターフェロンベータ製剤フエロン®や経口プロスタサイクリン誘導体製剤ドルナー®の出荷は、代替治療薬や後発医薬品の影響を受けて低調に推移したほか、一部ライセンス収入も減少した。
 医療機器事業は、ダイアライザーの出荷が国内外で堅調に推移した。
 以上の結果、ライフサイエンス事業全体では、売上高は前連結会計年度比0.6%減の538億円、営業利益は同9.6%減の19億円となった。

医療機器の生産規模は前連結会計年度比13.1%減の約180億円(販売価格ベース)となった。

 

*レミッチ®は鳥居薬品㈱の登録商標である。

 

 

(その他)

売上高は前連結会計年度比3.1%増の179億円、営業利益は同10.4%増の29億円となった。

 

 (生産、受注及び販売の状況)

当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。
 このため生産、受注及び販売の状況については、各セグメントの業績に関連付けて示している。

 

(3) 財政状態の概要及び分析

当連結会計年度末の財政状態は、資産の部は、受取手形及び売掛金や、たな卸資産が増加した結果、流動資産が前連結会計年度末比860億円増加し、固定資産も有形固定資産や投資有価証券の増加を主因に同1,102億円増加したことから、資産合計では同1,961億円増加の2兆5,929億円となった。
 負債の部は、有利子負債が増加したことを主因に前連結会計年度末比1,271億円増加の1兆4,237億円となった。当連結会計年度末の有利子負債残高は前連結会計年度末比999億円増加の8,163億円となった。
 純資産の部は、純利益の計上による利益剰余金の増加を主因に純資産合計で前連結会計年度末比690億円増加の1兆1,692億円となり、このうち自己資本は1兆907億円となった。当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末比0.5ポイント低下し42.1%、D/Eレシオは同0.05ポイント悪化し0.75ポイントとなった。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 ①キャッシュ・フローの概要及び分析

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、投資活動による資金の減少が営業活動による資金の増加を575億円上回った一方、有利子負債の増加を主因に財務活動による資金の増加が618億円となり、為替換算差額等を含めると、当連結会計年度末には前連結会計年度末比29億円(2.2%)増の1,343億円となった。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動による資金の増加は、前連結会計年度比448億円(25.7%)減の1,292億円となった。これは、税金等調整前当期純利益が1,366億円(前連結会計年度比24億円減)、減価償却費が958億円(同67億円増)であった一方、売上債権の増加額が620億円(同370億円増)、法人税等の支払額が343億円(同60億円増)であったこと等によるものである。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動による資金の減少は、前連結会計年度比514億円(38.0%)増の1,867億円となった。これは、有形固定資産の取得による支出が1,454億円(前連結会計年度比43億円増)、投資有価証券の取得による支出が673億円(同627億円増)であったこと等によるものである。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動による資金の増加は、前連結会計年度比798億円増の618億円となった。これは、長期借入れによる資金の調達が789億円(前連結会計年度比280億円増)、社債の発行による資金の調達が1,000億円(同1,000億円増)であった一方、長期借入金の返済による支出が1,114億円(同621億円増)であったこと等によるものである。

 

 

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 

回次

第133期

第134期

第135期

第136期

第137期

決算年月

2014年3月

2015年3月

2016年3月

2017年3月

2018年3月

自己資本比率(%)

40.5

41.8

41.5

42.6

42.1

時価ベースの自己資本比率(%)

52.4

68.3

67.3

65.9

62.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

4.1

5.0

3.6

4.1

6.3

インタレスト・カバレッジ・
レシオ

32.5

22.5

37.6

38.0

25.6

 

(注) 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産額

 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

 インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い

 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出している。

 また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用している。

 

 ②資金需要

当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資などの長期資金需要と当社製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金需要である。このうち、設備投資の概要及び重要な設備の新設の計画については、「第3 設備の状況」に記載している。

 

  ③財務政策

当社グループは、資金需要の見通しや金融市場の動向などを総合的に勘案した上で、最適なタイミング、規模、手段を判断して資金調達を実施している。また、事業拡大と財務体質強化の両立という基本方針の下、運転資金の圧縮、固定資産の稼働率向上、キャッシュマネジメントシステムによるグループ内余剰資金の有効活用等、資産効率の改善にも取り組んでいる。
 財務状況は健全性を保っており、現金及び現金同等物、有価証券などの流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入金、社債等による資金調達により、事業拡大に必要な資金を十分に賄えると考えている。また、緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱に備え、国内外の金融機関とコミットメントライン契約、当座貸越契約等を締結し、資金流動性を確保している。

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載している。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

 

契約会社名

相手方の名称

国名

契約の内容

内容

契約期間

東レ株式会社

E.I.DuPont de
Nemours and Co.

アメリカ

ポリイミドフィルム等を製造・販売する合弁会社東レ・デュポン㈱の設立及び運営

1963年2月22日から
合弁会社の存続する期間

東レ株式会社

Dow Corning Co.

アメリカ

シリコーン製品等を製造・販売する合弁会社東レ・ダウコーニング㈱の運営

2005年4月19日から
合弁会社の存続する期間

東レ株式会社

Invista, Inc.

アメリカ

ポリウレタン弾性繊維を製造・販売する合弁会社東レ・オペロンテックス㈱の運営

2003年5月1日から
合弁会社の存続する期間

東レ株式会社

Freudenberg SE

ドイツ

不織布及び不織布関連製品等を製造・加工・販売する合弁会社日本バイリーン㈱の運営

2016年4月1日から
合弁会社の存続する期間

Toray Composite Materials America, Inc.

Boeing Co.

アメリカ

炭素繊維複合材料の供給

2015年9月30日から
2028年12月31日まで

 

 

(Pacific Textiles Holdings Ltd.の株式取得)

当社は、2017年6月30日付でPacific Textiles Holdings Ltd.(以下「PTHL社」)の株式を取得する株式売買契約を締結し、2017年7月19日付で取得した。

(1) 株式取得の目的

PTHL社は、綿・合繊(短繊維)カジュアルを主体に展開するニットテキスタイルメーカーとして1997年に設立された、高い生産効率性をベースとするコスト競争力、品質競争力を武器に、世界有数の生産規模を誇る高収益企業である。欧米大手アパレル、製造小売(SPA)向けに大きく商売を拡大しているとともに、当社グループの糸・綿/テキスタイル/縫製品一貫型ビジネスの重要なテキスタイル拠点ともなっている。
 当社グループは、今回のPTHL社への資本参加によって、両社による協力関係のさらなる強化とニット事業の拡大を図り、グローバルな一貫型事業の高度化を強力に推進していく。

(2) 株式取得の相手会社の名称

Far East Asia Ltd.ほか

(3) 取得した株式の数、取得価額及び取得後の持分比率

取得株式数    :405百万株
 取得価額    :4,062百万香港ドル(58,591百万円)
 取得後の持分比率:28.03%

 

(TenCate Advanced Composites Holding B.V.の株式取得)

当社は、2018年3月14日付でTenCate Advanced Composites Holding B.V.の全株式を取得することを、親会社であるKoninklijke Ten Cate B.V.との間で合意した。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(追加情報)に記載している。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)の研究・技術開発は、創業以来、「研究・技術開発こそ、明日の東レを創る」との信念に基づき、先端材料の研究・技術開発を推進している。東レのコア技術は、創業以来培われてきた「有機合成化学」「高分子化学」「バイオテクノロジー」であり、これらの技術を発展させながら、繊維からフィルム、ケミカル、樹脂と事業を拡大し、さらには電子情報材料、炭素繊維複合材料、医薬・医療、水処理事業へと発展を続けてきた。近年新たに「ナノテクノロジー」をコア技術に加え、成長市場へ向けてさまざまな先端材料を開発している。
 2017年2月に策定した中期経営課題“プロジェクトAP-G 2019”では、「グリーンイノベーション」、「ライフイノベーション」事業に重点を置き新技術・新素材を創出するとともに、そうした技術・素材の持つ本質的価値を顕在化させるための取り組みを進めることで収益を確保する。また、知的財産戦略による参入障壁の構築により技術競争力の優位性を堅持していく。

 

当連結会計年度のセグメント別の研究・技術開発の概要は次のとおりである。

 

(1) 繊維事業

基幹事業としての安定収益基盤の強化と収益拡大に向け、極限技術追求による高機能製品や繊維先端材料の創出・拡大に主眼を置いた研究・技術開発を推進している。その成果として、リミテッドユース防護服「LIVMOA®(リブモア®)」に対して、生地へ独自の耐油加工を施すことで、通気性と防じん性を保持しながら、外部からの油の浸透抑制機能を向上させた。また、当社が保有する繊維ナノスケール加工技術を応用した微細加工技術により、防虫機能を持つ多層構造の被膜をテキスタイル表面に立体的に形成させることに成功、従来の防虫素材では両立できなかった高い防虫機能と、肌への刺激を考慮した安全性を実現した防虫テキスタイルWithRelief™(ウィズリリーフ™)を開発した。さらに、防水性と透湿性を合わせ持つ高機能テキスタイルEntrant®(エントラント®)について、当社が長年培ってきた製膜技術と膜加工技術を駆使し、降雨に対する防水性能を損なわない範囲で、最大限に防水透湿層の空隙孔径を広げることに成功、これにより、Entrant®の特長である防水透湿性を保持したまま、従来品と比べ約50倍の通気性を持つ高通気タイプの開発に成功した。

(2) 機能化成品事業

基幹事業として安定収益基盤の強化、戦略的拡大事業として中長期での収益拡大に向け、新製品開発、高付加価値化を目指し、研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、高硬度ナノ粒子に機能性高分子型分散剤を組み合わせた高機能・有機無機ハイブリッドコートにより、擦れキズの付きにくい硬度と平滑な表面を実現した新規PETフィルムを開発した。また、従来の二軸延伸PETフィルムのもつ特性(絶縁性、ハンドリング性、加工性)を保持しつつ、PETフィルムとしては世界最高レベルとなる、従来品比約2.5倍の高い熱伝導率をもつ二軸延伸PETフィルムの開発に成功した。さらに、X線非破壊検査やマンモグラフィーにおいて、従来と比較して2~4倍鮮明な画像を得ることが可能なX線シンチレータパネルを開発した。その他、包装用フィルム素材への軟包装印刷で、有機溶剤を用いない東レ水なし平版®、水溶性UVインキ・洗浄液、省電力LED―UV技術によって大幅に環境負荷が低減できる「VOCフリー水なしオフセット印刷システム」を開発した。

(3) 炭素繊維複合材料事業

当社の代表的ナンバーワン事業であり戦略的拡大事業として、グリーンイノベーション事業拡大、アジア・新興国及び米州での事業拡大のための研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、炭素繊維強化プラスチックの成形方法において、寸法精度の向上と省エネの両方を実現可能な新規成形技術を開発した。今回開発した成形技術は、所定数の面状ヒーターを金型表面に配置し、真空圧下において部材への接触加熱を用いることにより、従来の成形方法に対して約50%の省エネを実現した。さらに、各ヒーターを個別制御し、各部位に最適な温度分布を付与することにより残留応力の分布を均一化し、部材をより設計通りに近い形状、寸法に成形することができ、組立時の労力及び作業時間の低減が期待できる。また、次世代を担う高性能炭素繊維を創出するための革新プロセス開発設備の導入を決定した。本開発設備では、更なる高強度化を図った世界最高強度糸の開発や、革新的な生産性改善技術の開発により、来るべき循環型社会・水素社会に向け、環境配慮型製品向け素材として炭素繊維の普及拡大を目指し、更なる高性能化とコストバランスの両立へ取り組んでいく。

 

(4) 環境・エンジニアリング事業

機能化成品、炭素繊維複合材料に続く次の収益拡大の柱とするために、重点育成・拡大事業として研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、水処理関連では、国立研究開発法人理化学研究所と共同で、水に含まれる有機物やバクテリア等の汚れ成分が、逆浸透膜に付着し目詰まりする現象をさまざまな条件下で分析する革新技術を開発した。本技術を参考にして、新規低ファウリング(高防汚)膜の開発に繋げた。また、下水・産業廃水の処理・再利用方法の一つである膜分離活性汚泥法の散気エネルギーを高効率に洗浄エネルギーへ変換する基礎技術を開発した。そのほか、「高機能性逆浸透膜の開発」について、一般社団法人日本化学工業協会より「第49回(平成29年度)日化協技術賞総合賞」を受賞した。

(5) ライフサイエンス事業

重点育成・拡大事業として研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、そう痒症改善薬「TRK-820」口腔内崩壊錠(OD錠)を開発し、レミッチ®(*1)OD錠2.5μgの国内製造販売承認を取得、販売を開始した。レミッチ®(*1)OD錠2.5μgは、水あり、水なし、どちらの服用も可能であることから、高齢者など嚥下機能が低下している患者や、水分摂取の制限が必要とされる患者の利便性が向上することが期待される。また、当社が開発を進めているがん治療薬「TRK-950」について、米国での第Ⅰ相臨床試験を進めた。今後もグローバルな臨床開発を推進し、画期的がん治療薬として早期承認取得を目指す。さらに、ピント矯正力を向上させた遠近両用コンタクトレンズ「プレリーナⅡ Rich®(*2)」を開発した。近年の高年齢化に伴い、コンタクトレンズ装用人口の高年齢層の増加、拡大が進んでおり、手元の見え方が物足りなく感じ始める50代以上を想定した製品である。「やわらかハード」素材を使用しており、手入れ時の破損を最小限に抑えるほか、酸素透過性が高く、眼科医の指導のもと、最長1週間の連続装用が可能である。
 
(*1)レミッチ®は鳥居薬品㈱の登録商標である。
(*2)プレリーナⅡ Rich®は愛称で、医療機器製造販売承認の販売名はプレリーナⅡである。

 

上記セグメントに共通する取り組みとして、ドイツ・ミュンヘン近郊に「オートモーティブセンター欧州」を設立した。環境規制で先行する欧州でのグリーンイノベーション事業関連のR&D機能強化の一環として、炭素繊維複合材料、樹脂、フィルムをはじめとする先端素材(中間基材)と、それらの特性をどのように引き出すかという使いこなしの技術(成形、設計)、実験・評価・技術支援を組み合わせた、総合的なソリューションを提供していく。
 上記セグメントに属さない基礎研究、基盤技術開発として、タイで建設を進めていた、非可食バイオマスから各種バイオ化学品製造の共通原料となる糖を省エネルギーで製造する「膜利用糖化プロセス」の実証プラントが完成し、その稼働を開始した。本プロセスの技術実証と事業化検討を進める。
 また、創立90周年記念の一環として整備を進めている未来創造研究センターは、開発品の試作・評価・実証を推進する「実証研究棟」が完成した。引き続き、アイディア創出機能を有する「融合研究棟」の整備を進め、材料研究の深化と革新を担うグローバル研究のヘッドクォーターとして、未来創造型研究・技術開発を推進・強化していく。

 

当連結会計年度の当社グループの研究開発費総額は、662億円(このうち東レ㈱の研究開発費総額は480億円)である。セグメント別には繊維事業に約8%、機能化成品事業に約32%、炭素繊維複合材料事業に約11%、環境・エンジニアリング事業に約7%、ライフサイエンス事業に約6%、本社研究・技術開発に約36%の研究開発費を投入した。

当連結会計年度の当社グループの特許出願件数は、国内で1,587件、海外で3,839件、登録された件数は国内で578件、海外で1,866件である。