第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度の世界経済は、米国や欧州では、一部に改善の遅れが見られたものの、景気は回復基調が持続した。中国は景気が持ち直しに向かい、他の多くの新興国でも景気は持ち直しの動きが見られた。国内経済については、雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな景気回復が続いた。
 為替は、米国ドルをはじめ主要通貨に対して前年よりも円高の水準で推移し、海外子会社の円換算売上高・利益が減少するなどの影響を受けた。
 このような事業環境の中で、当社グループは、2014年度から2016年度の3ヵ年を期間とする中期経営課題“プロジェクトAP-G 2016”に基づき、「成長分野、成長国・地域での事業拡大」と「競争力強化」を要とした成長戦略を実行した。
 以上の結果、当社グループの連結業績は、売上高は前連結会計年度比3.7%減の2兆265億円、営業利益は同4.9%減の1,469億円、経常利益は同4.3%減の1,437億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同10.3%増の994億円となった。

 

セグメント別の業績は、次のとおりである。

 

(繊維事業)

国内では、衣料用途・産業用途とも需要が引き続き低調に推移する中で、全般的に拡販に努めるとともに、糸綿/テキスタイル/製品一貫型ビジネスの推進をはじめとする事業の高度化や原価改善を進めることで採算の改善に注力した。
 海外では、衣料用途を中心に、東南アジアなど一部子会社の業績が欧州や中国などにおける最終需要低迷の影響を受けた。一方、自動車関連用途向けや衛生材料向けは総じて堅調に推移した。
 以上の結果、繊維事業全体では、売上高は前連結会計年度比4.0%減の8,561億円、営業利益は同3.1%減の668億円となった。

主要な製品の生産規模は、ナイロン糸が前連結会計年度比7.2%減の約435億円(販売価格ベース)、ポリエステル糸が同9.9%減の約569億円(販売価格ベース)、ポリエステルステープルが同5.3%減の約505億円(販売価格ベース)となった。

 

(プラスチック・ケミカル事業)

樹脂事業は、自動車関連用途向けの出荷が国内外とも概ね堅調に推移した。自動車以外の用途でも、ABS樹脂やPPS樹脂などの拡販を進めた。フィルム事業は、海外では欧米の一部用途の需要が低調であったが、アジアなどで高付加価値品の拡販を進め、国内では包装用途向けが堅調であった。
 また、多くの製品が国内外で価格競争の影響を受けたが、高付加価値品の拡販や原価改善に注力することで採算の改善に努めた。
 以上の結果、プラスチック・ケミカル事業全体では、売上高は前連結会計年度比4.2%減の4,991億円、営業利益は同15.0%増の338億円となった。

主要な製品の生産規模は、ABS樹脂が前連結会計年度比5.5%減の約724億円(販売価格ベース)、ナイロン樹脂とPBT樹脂が同1.4%減の約202億円(販売価格ベース)、ポリエステルフィルム ルミラー®が同18.8%減の約566億円(販売価格ベース)となった。

 

 

(情報通信材料・機器事業)

フラットパネルディスプレイ向けでは、スマートフォンやタブレット端末の関連材料は、有機EL用途向けの出荷が拡大するなど、堅調に推移した。
 リチウムイオン二次電池向けバッテリーセパレータフィルムは、需要の伸長を背景に、出荷が拡大した。
 多くの用途で価格競争の影響を受けたが、高付加価値品の拡販や原価改善に注力することで採算の改善に努めた。
 以上の結果、情報通信材料・機器事業全体では、売上高は前連結会計年度比1.3%増の2,544億円、営業利益は同16.7%増の305億円となった。

主要な製品の生産規模は、ポリエステルフィルム ルミラー®が前連結会計年度比2.8%減の約619億円(販売価格ベース)となった。

 

(炭素繊維複合材料事業)

航空機の最終需要は堅調に推移したが、サプライチェーンにおける在庫調整などを反映して、炭素繊維中間加工品(プリプレグ)の需要は弱含みで推移した。圧縮天然ガスタンク向けでは、原油価格下落の影響を受けて、需要が低調に推移した。一方、風力発電翼用途は、需要の拡大を背景に、出荷を拡大した。
 以上の結果、炭素繊維複合材料事業全体では、売上高は前連結会計年度比13.2%減の1,616億円、営業利益は同33.6%減の240億円となった。

炭素繊維複合材料の生産規模は前連結会計年度比13.4%減の約1,588億円(販売価格ベース)となった。

 

(環境・エンジニアリング事業)

水処理事業は、逆浸透膜などの拡販を進めたが、日本からの輸出は円高進行の影響を受けた。
 国内子会社では、エンジニアリング子会社の医薬関連プラント工事やリチウムイオン二次電池関連機器などが堅調に推移した。
 以上の結果、環境・エンジニアリング事業全体では、売上高は前連結会計年度比1.5%増の1,861億円、営業利益は同3.3%増の99億円となった。

 

(ライフサイエンス事業)

医薬事業は、経口そう痒症改善剤レミッチ®*が、2015年に取得した効能追加承認を背景に販売数量は堅調に推移したが、2016年4月の薬価改定の影響を受けた。天然型インターフェロンβ製剤フエロン®や経口プロスタサイクリン誘導体製剤ドルナー®の出荷は、代替治療薬や後発医薬品の影響を受けて低調に推移した。
 医療機器事業は、ダイアライザーの出荷が国内外で堅調に推移した。
 以上の結果、ライフサイエンス事業全体では、売上高は前連結会計年度比3.0%減の542億円、営業利益は同30.0%減の21億円となった。

医療機器の生産規模は前連結会計年度比7.8%減の約207億円(販売価格ベース)となった。

 

*レミッチ®は鳥居薬品㈱の登録商標である。

 

(その他)

売上高は前連結会計年度比1.5%増の149億円、営業利益は同1.4%増の20億円となった。

 

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加が投資活動による資金の減少を387億円上回った一方、財務活動による資金の減少が180億円となり、連結の範囲の変更に伴う資金の増加や為替換算差額等を含めると、当連結会計年度末には前連結会計年度末比216億円(19.7%)増の1,314億円となった。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動による資金の増加は、前連結会計年度比222億円(11.3%)減の1,740億円となった。これは、税金等調整前当期純利益が1,390億円(前連結会計年度比12億円増)、減価償却費が891億円(同21億円減)であった一方、売上債権の増加額が250億円(同42億円増)、法人税等の支払額が283億円(同8億円増)であったこと等によるものである。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動による資金の減少は、前連結会計年度比192億円(12.4%)減の1,352億円となった。これは、有形固定資産の取得による支出が1,411億円(前連結会計年度比183億円増)であったこと等によるものである。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動による資金の減少は、前連結会計年度比596億円(76.8%)減の180億円となった。これは、長期借入金の返済による支出が493億円(前連結会計年度比176億円減)、配当金の支払額が224億円(同32億円増)であった一方、長期借入れによる資金の調達が509億円(同373億円減)であったこと等によるものである。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。

このため生産、受注及び販売の状況については、「1 業績等の概要」における各セグメントの業績に関連付けて示している。

 

3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は「新しい価値の創造を通じて社会に貢献する」ことを企業理念として掲げ、これに基づき経営基本方針を以下のとおり定めている。
 
 お客様のために  新しい価値と高い品質の製品とサービスを
 社員のために   働きがいと公正な機会を
 株主のために   誠実で信頼に応える経営を
 社会のために   社会の一員として責任を果たし相互信頼と連携を
 
 即ち、当社は、社会の中でお客様、社員、株主など数多くのステークホルダーによって支えられていることを認識し、それぞれに対して責任を果たし、広く社会に貢献することを経営の基本方針としている。
 

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題等

当社グループは2011年に長期経営ビジョン“AP-Growth TORAY 2020”を策定した。その第1ステージとして、2013年度までの3ヵ年は中期経営課題“プロジェクトAP-G 2013”に取り組み、2016年度までの3ヵ年は第2ステージとして中期経営課題“プロジェクトAP-G 2016”に取り組むことで、成長分野、成長国・地域での事業拡大と競争力の強化を柱とした成長戦略を実行してきた。
 2017年2月には、長期経営ビジョンの具現化に向けた取り組みの第3ステージとなる新たな中期経営課題“プロジェクトAP-G 2019”を発表した。2019年度までの3ヵ年を対象期間とする“プロジェクトAP-G 2019”では、これまで進めてきた経営課題への取り組みを仕上げていくと同時に、2020年以降の持続的成長と企業価値向上を担う新たな収益源の創出についての取り組みも強化していく。
 2017年度の世界経済は、米国を中心に先進国経済が回復基調を維持するほか、新興国経済も上向きになることで、全体として緩やかな回復が続くと想定している。ただし、先進国での保護主義的な政策圧力の強まり、米国の金融政策正常化の影響、地政学的緊張の高まり等のリスク要因に注意を払う必要がある。日本経済についても、雇用・所得環境の改善が続く中、緩やかな景気回復が続くことを想定しているが、海外経済の不確実性や金融・資本市場の変動が景気を押し下げる懸念がある。
 このような状況の下、当社グループは、先端材料、コア技術、グローバルな事業基盤という強みを活かして事業拡大を進める。成長分野、成長国・地域には、設備投資や研究・技術開発といった経営資源を重点的に配分する。また、当社の強みを活かしてシナジーの発揮が期待できる場合には、M&Aやアライアンスを機動的に行うことで、既存事業の成長を増幅・補完していく。
 為替や原燃料価格の変動などに対しては、グローバルな事業基盤を活用することで、こうした外部要因の影響をできるだけ受けない企業体質の確保に引き続き努めていく。そして、中長期的視点に立った設備投資や研究・技術開発、人材育成を行っていくことで持続的な成長を図り、ステークホルダーの信頼に応える経営を実践していく。
 配当については、引き続き業績の改善に連動して安定的、継続的に配当を増加させていくことを基本方針とする。
 安全・防災・環境保全、企業倫理・法令遵守をはじめとしたCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)は最優先の経営課題であり、取り組みを一層強化していく。2019年度までの3ヵ年を期間とする「第6次CSRロードマップ」を策定し、事業活動のあらゆる側面におけるCSRを引き続き体系的に推進する。「CSRロードマップ」により経営戦略とCSRを連動させ、当社グループの持続的発展とCSRの両立を図っていく。
 当社グループは、すべての製品の元となる素材には、社会を本質的に変える力があるという信念のもと、常に世界に先駆けた技術革新に挑戦し、最先端の技術や新素材を生み出し事業化することを目指している。そして、企業活動のあらゆる場面で現場力を重視し、徹底的な現状把握と現状分析に基づいて問題を克服していくことで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を具現化していく。

 

 

4 【事業等のリスク】

「第2 事業の状況」、「第5 経理の状況」等での記載事項に関して、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは、以下のとおりである。当社グループは、日常的にこれら潜在するリスクからの回避、又はその影響の低減に努めるとともに、不測の事態が発生した場合には迅速な対応と的確な情報開示を実施しうる体制を構築すべく努めている。なお、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、事業等のリスクはこれらに限定されるものではない。また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2017年6月27日)現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 国内外の需要、製品市況の動向等に関わるリスク

当社グループは基礎素材製品を広範な産業に供給しており、世界的あるいは地域的な需給環境の変動や素材代替の進行、取引先の購買方針の変更等により当社グループの製品に対する需要が急速に減退する可能性がある。また、当社グループの様々な事業は他企業との厳しい競争状態にあり、新規参入の脅威に曝されているものもあるほか、医薬・医療事業には薬価並びに償還価格改定による価格変動要因がある。当社グループは持続的に競争優位の確保に努めているものの、これら製品の需要が減少あるいは価格が下落した場合、あるいは取引先の与信リスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(2) 原燃料価格の上昇に関わるリスク

当社グループが使用する石油化学原料や燃料は、価格が大きく変動することがあり、これら原燃料の価格上昇分を製品価格に十分に転嫁できない場合、あるいは品種転換による採算の改善が困難な場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(3) 設備投資、合弁事業・提携・買収等に関わるリスク

当社グループは広範囲にわたる事業領域で設備投資を実施しており、また、第三者との間で様々な合弁事業や戦略的提携、事業買収等を行っている。これら設備投資、合弁事業・提携・買収等の実施にあたっては、事前に収益性や投資回収の可能性について様々な観点から検討を行っているが、必ずしも確実に予期したとおりの成果が得られるという保証があるわけではなく、事業環境の急変などにより、予期せぬ状況変化や所期の事業計画からの大幅な乖離が生じた場合、固定資産の減損損失や持分法投資損失等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性がある。

 

(4) 為替相場の変動、金利の変動、有価証券等の価値の変動等に関わるリスク

当社グループの海外事業の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時の為替レート変動の影響を受ける。外国通貨建て取引については、為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じているが、予測を超えた為替変動が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性がある。
 また、予期せぬ金利水準の急激な変動やその他の金融市場の混乱、当社グループの保有する有価証券あるいは年金資産の価値の変動等が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

 

(5) 将来予測等の前提条件の変動に伴う退職給付債務や繰延税金資産に関わるリスク

当社の単独及び連結財務諸表は、将来に関する一定の前提を置いた年金数理計算に基づいて退職給付債務を計上しており、また、将来年度の課税所得の見積額に基づき回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を計上しているが、年金数理計算に使用する前提条件に変動が生じた場合、あるいは将来の課税所得の見積額に変動が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

 

 

(6) 海外での事業活動に関わるリスク

当社グループは、アジア・欧州・米国をはじめ海外で広く事業を展開しているが、各地域において以下のようなリスクがあり、これらの事象が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

①不利な影響を及ぼす租税制度の変更等の予期しない諸規制の設定又は改廃

②予期しない不利な経済的又は政治的要因の発生

③テロ・紛争等による社会的混乱 など

 

(7) 製造物責任に関わるリスク

当社グループは、世界最高水準の品質を追求しているが、予期し得ない重大な品質問題が発生する可能性は皆無ではなく、そうした重大事態が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(8) 訴訟に関わるリスク

当社グループが広範な事業活動を展開する中で、知的財産権、製造物責任、環境、労務等、様々な訴訟の対象となるリスクがある。重大な訴訟が提起された場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(9) 法規制、租税、競争政策、内部統制に関わるリスク

当社グループは、事業活動を行っている各国及び地域において、環境、商取引、労務、知的財産権、租税、為替等の各種関係法令、投資に関する許認可や輸出入規制、独占禁止法に基づく競争政策等の適用を受けている。当社グループは内部統制システムの整備・維持を図り各種法令等の遵守に努めているが、新たな環境規制や環境税の導入、法人税率の変動等これらの法令の改変があった場合や各種法令に違反したと判定された場合、公正取引委員会による行政処分を受けた場合や税務当局から更正通知を受領した場合、あるいは従業員による不正行為があった場合や財務報告に係る内部統制の有効性が維持できなかった場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(10) 自然災害・事故災害に関わるリスク

当社グループは、「安全・防災・環境保全」をあらゆる経営課題に優先し、生産活動の中断による損害を最小限に抑えるため、製造設備の定期的な防災点検及び設備保守、また安全活動を推進しているが、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等で製造設備等が損害を受けた場合や原材料等の供給不足が生じた場合、電力・物流をはじめとする社会インフラの機能が低下した場合等には、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

(11) 情報セキュリティに関わるリスク

当社グループが事業活動を行う上で、情報システム及び情報ネットワークは欠くことのできない基盤であり、構築・運用に当たっては十分なセキュリティの確保に努めているものの、不正侵入、情報の改ざん・盗用・破壊、システムの利用妨害などにより業務の停滞や信用の低下が生じた場合、あるいは機密情報が社外に流出した場合等には、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

契約会社名

相手方の名称

国名

契約の内容

内容

契約期間

東レ株式会社

E.I.DuPont de
Nemours and Co.

アメリカ

ポリイミドフィルム等を製造・販売する合弁会社東レ・デュポン㈱の設立及び運営

1963年2月22日から
合弁会社の存続する期間

東レ株式会社

Dow Corning Co.

アメリカ

シリコーン製品等を製造・販売する合弁会社東レ・ダウコーニング㈱の運営

2005年4月19日から
合弁会社の存続する期間

東レ株式会社

Invista, Inc.

アメリカ

ポリウレタン弾性繊維を製造・販売する合弁会社東レ・オペロンテックス㈱の運営

2003年5月1日から
合弁会社の存続する期間

東レ株式会社

Freudenberg SE

ドイツ

不織布及び不織布関連製品等を製造・加工・販売する合弁会社日本バイリーン㈱の運営

2016年4月1日から
合弁会社の存続する期間

Toray Composites (America), Inc.
(注)

Boeing Co.

アメリカ

炭素繊維複合材料の供給

2015年9月30日から
2028年12月31日まで

 

(注)Toray Composites (America), Inc.は、2017年4月1日付でToray Carbon Fibers America, Inc.と合併し、社名をToray Composite Materials America, Inc.に変更した。

 

(連結子会社の吸収合併)

当社は、2016年12月19日開催の取締役会において、当社100%出資の連結子会社である、東レバッテリーセパレータフィルム株式会社を吸収合併することを決議し、同日付で合併契約を締結、2017年4月1日付で吸収合併した。詳細は「第5 経理の状況 2 (1)財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載している。

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)の研究・技術開発は、有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーという当社が培ってきたコア技術をベースに、基幹事業である繊維、プラスチック・ケミカル事業の安定収益基盤強化・収益拡大を推進するとともに、成長する重点4領域(①環境・水・エネルギー、②情報・通信・エレクトロニクス、③自動車・航空機、④ライフサイエンス)に絶え間なく革新的先端材料を供給する役割を担っている。また、地球温暖化防止や環境負荷低減に対して、当社グループの総合力を発揮してソリューションを提供する新たな切り口で、さらなる成長を推進していく。
 2017年2月に策定した中期経営課題“プロジェクトAP-G 2019”では、「グリーンイノベーション」、「ライフイノベーション」事業に重点を置き新技術・新素材を創出するとともに、そうした技術・素材の持つ本質的価値を顕在化させるための取り組みを進めることで収益を確保する。また、知的財産戦略による参入障壁の構築により技術競争力の優位性を堅持していく。

 

当連結会計年度のセグメント別の研究・技術開発の概要は次のとおりである。

 

(1) 繊維事業

基幹事業としての安定収益基盤の強化と収益拡大に向け、極限技術追求による高機能製品や繊維先端材料の創出・拡大に主眼を置いた研究・技術開発を推進している。その成果として、当社が開発した、複合繊維の断面形状を任意にかつ高精度に制御する革新複合紡糸技術“NANODESIGN®”を適用して、超極細繊維特有の滑らかでしなやかな風合いを有しながら、コンパクトな嵩高性や伸縮性を併せ持ったポリエステル超極細微細捲縮テキスタイル“uts-FIT”を開発した。また、生体情報検知機能素材hitoe®の商品開発を推進し、生体情報の連続計測による「hitoe® 作業者みまもりサービス」の提供を開始した。さらに医療分野での用途拡大のため、心電測定用製品の開発を進め、一般医療機器として独立行政法人 医薬品医療機器総合機構へ「hitoe メディカル電極」の届出・登録を完了した。

 

(2) プラスチック・ケミカル事業

基幹事業として安定収益基盤の強化と収益拡大、そして持続可能な循環型社会の発展に主眼を置いた研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、ポリアミドに、分子結合部がスライドする環動ポリマーの構造を組み込むことで、加えられた力を分子レベルで分散し、硬さや強さを保ちながらも、衝撃を受けても壊れにくいポリマー材料を開発することに世界で初めて成功した。また、経口プロスタサイクリン(PGI2)製剤 ラプロス®について、猫の慢性腎臓病治療薬としての製造販売承認を取得した。国内で「腎機能低下の抑制」を効能効果として承認を取得した薬剤はラプロス®が初めてである。そのほか、独自のバリア膜形成技術をベースに、当社現行品と同等の水蒸気バリア性を有しながらも、フレキシブル性を向上させたハイバリアフィルムを開発した。

(3) 情報通信材料・機器事業

戦略的拡大事業として研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として東レ水なし平版®と、当社のコア技術である機能性高分子設計技術を用いて新規開発した親水性ポリマーの適用により、揮発性有機溶剤を用いない究極のエコ印刷方式である水溶性インキを用いた水なしUV印刷システムを開発した。また、半導体型単層カーボンナノチューブにおいて、塗布型半導体として世界最高となる従来比2倍の移動度81cm2/Vsを達成した。この成果により、IoT時代において必須ともいえる通信距離の長いICタグであるUHF帯RFID等の高機能デバイスを、塗布技術により安価に製造できる可能性を世界で初めて示した。そのほか、「有機ELディスプレイ絶縁膜用ポジ型感光性ポリイミドの開発」について、財団法人大河内記念会より「第63回(平成28年度)大河内記念生産賞」を受賞した。

(4) 炭素繊維複合材料事業

当社の代表的ナンバーワン事業であり戦略的拡大事業として、グリーンイノベーション事業拡大、アジア・新興国及び米州での事業拡大のための研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、次世代の航空宇宙用途向けに引張強度と耐衝撃性を従来材対比30%向上させた、世界最高性能のトレカ®プリプレグ(炭素繊維樹脂含浸シート)を開発した。本技術はこれまでトレードオフの関係にあり難易度が高いとされてきたマトリックス樹脂の弾性率と靭性を両立させることで、極低温から高温までの使用環境において世界最高性能を発現し、航空宇宙用途で要求される厳しい環境下においても力学特性の大幅な向上が可能となる。そのほか、「反応誘起型ナノ相分離エポキシ樹脂と高性能CFRPの開発」について、公益社団法人日本化学会より「第65回(平成28年度)化学技術賞」を受賞した。

(5) 環境・エンジニアリング事業

情報通信材料・機器、炭素繊維複合材料に続く次の収益拡大の柱とするために、重点育成・拡大事業として研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、水処理関連では、東京大学物性研究所と共同で、これまで未解明であったRO膜の細孔中における水分子の状態と拡散の挙動の詳細解析に取り組み、水分子の動的挙動計測と計算化学の両面から、細孔中の水運動性を明らかにした。本解析結果を活用し、革新省エネルギーRO膜の開発など、先端分離材料の開発を加速していく。また、「高機能性逆浸透膜の開発」について、「第15回GSC(グリーンサステイナブルケミストリー)賞」の「経済産業大臣賞」「環境大臣賞」をダブル受賞した。今回の受賞は、高水質・省エネ特性を飛躍的に向上させた高機能性RO膜を日本発の技術として世界的に展開し、地球規模で深刻化する水問題に対して大きく貢献したことが、グリーンサステイナブルケミストリーの発展に寄与したことを高く評価されたものである。

(6) ライフサイエンス事業

重点育成・拡大事業として研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、固形がんに対する治療薬として当社が独自に開発を進めてきた「TRK-950」について、米国での第I相臨床試験を開始した。今後、欧米でのグローバルな臨床開発を展開し、First-in-class(画期的医薬品)のがん治療薬として、早期承認取得を目指す。また、血液透析患者、慢性肝疾患患者におけるそう痒症改善剤(既存治療で効果不十分な場合に限る)の「レミッチ®*カプセル2.5μg」市場に、新たな剤形として、口腔内崩壊錠の「レミッチ®*OD錠2.5μg」の製造販売承認を取得した。本剤の上市により、患者様の服用の選択肢が広がることとなる。
 
*レミッチ®は鳥居薬品㈱の登録商標である。

 

 

上記セグメントに属さない基礎研究、基盤技術開発として、「全ての事業戦略の軸足を地球環境におき、持続可能な低炭素社会の実現に向けて貢献していく」という経営方針の下、環境関連では、サトウキビ製糖工場で発生するバイオマスを原料とする菌体リサイクル型連続発酵プロセスによるエタノール製造技術において、水処理膜技術とバイオ技術を融合した「膜利用発酵プロセス」のスケールアップ実証に成功した。今回の実証により、従来プロセスに比べ約10倍の高い生産速度で効率よくサトウキビからエタノールを生産することが可能になり、また収量が10~20%向上することでエタノールの増産も可能になる。また、創立90周年記念の一環として創業の地である滋賀事業場に新たな研究拠点として、「未来創造研究センター」の整備を開始した。「未来創造研究センター」では、当社グローバル研究のヘッドクォーターとして、未来社会に必要な機能や仕組を探究し、材料の強みを活かしたコトづくりの実現を目指す未来創造型研究・技術開発を推進・強化していく。

 

当連結会計年度の当社グループの研究開発費総額は、592億円(このうち東レ㈱の研究開発費総額は419億円)である。セグメント別には、繊維事業に約9%、プラスチック・ケミカル事業に約14%、情報通信材料・機器事業に約19%、炭素繊維複合材料事業に約11%、環境・エンジニアリング事業に約5%、ライフサイエンス事業に約8%、本社研究・技術開発に約34%の研究開発費を投入した。

当連結会計年度の当社グループの特許出願件数は、国内で1,651件、海外で3,981件、登録された件数は国内で613件、海外で1,776件である。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)財政状態

当連結会計年度末の財政状態は、資産の部は、現金及び預金や、受取手形及び売掛金等が増加した結果、流動資産が前連結会計年度末比572億円増加し、固定資産も有形固定資産や投資有価証券の増加を主因に同612億円増加したことから、資産合計では同1,184億円増加の2兆3,968億円となった。 

負債の部は、支払手形及び買掛金や有利子負債が増加したことを主因に前連結会計年度末比431億円増加の1兆2,966億円となった。当連結会計年度末の有利子負債の残高は前連結会計年度末比121億円増加の7,164億円となった。

純資産の部は、純利益の計上による利益剰余金の増加を主因に純資産合計で前連結会計年度末比753億円増加の1兆1,002億円となり、このうち自己資本は1兆213億円となった。当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末比1.1ポイント上昇し42.6%、D/Eレシオは同0.04ポイント改善し0.70となった。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「1 業績等の概要(2)キャッシュ・フロー」に記載のとおり
であり、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いた当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度比30億円減少し、387億円の資金収入となった。

なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は下記のとおりである。

 

回次

第132期

第133期

第134期

第135期

第136期

決算年月

2013年3月

2014年3月

2015年3月

2016年3月

2017年3月

自己資本比率(%)

41.8

40.5

41.8

41.5

42.6

時価ベースの自己資本比率(%)

59.8

52.4

68.3

67.3

65.9

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

5.3

4.1

5.0

3.6

4.1

インタレスト・カバレッジ・
レシオ

18.1

32.5

22.5

37.6

38.0

 

(注)1 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産額

  キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

  インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い

  株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出している。

  また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用している。

   2 第133期より、一部の在外会社において、IAS第19号「従業員給付」(2011年6月16日改訂)を適用している。当該会計方針の変更は遡及適用されるため、第132期の関連するキャッシュ・フロー関連指標について遡及適用後の数値を記載している。

 

(2)経営成績

当連結会計年度の世界経済は、米国や欧州では、一部に改善の遅れが見られたものの、景気は回復基調が持続した。中国は景気が持ち直しに向かい、他の多くの新興国でも景気は持ち直しの動きが見られた。国内経済については、雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな景気回復が続いた。

為替は、米国ドルをはじめ主要通貨に対して前年よりも円高の水準で推移し、海外子会社の円換算売上高・利益が減少するなどの影響を受けた。

このような事業環境の中で、当社グループは、2014年度から2016年度の3ヵ年を期間とする中期経営課題“プロジェクトAP-G 2016”に基づき、「成長分野、成長国・地域での事業拡大」と「競争力強化」を要とした成長戦略を実行した。

以上の結果、「1 業績等の概要(1)業績」に記載のとおり、売上高は、繊維事業、炭素繊維複合材料事業を中心に減収となり、前連結会計年度比780億円、3.7%減収の2兆265億円となった。営業利益は炭素繊維複合材料事業を中心に減益となり、前連結会計年度比76億円、4.9%減益の1,469億円となった。

営業利益の前連結会計年度比増減要因を分析すると、数量増や原料価格下落などによる増益396億円があった一方で、販売価格下落や海外子会社の邦貨換算差などによる減益△472億円があり、差し引き76億円の減益となった。

営業外損益は、持分法による投資利益が増加したことなどにより、前連結会計年度比12億円の増益となり、経常利益は前連結会計年度比64億円、4.3%減益の1,437億円となった。

特別利益は前連結会計年度並みの60億円、特別損失は減損損失が減少したことを主因に前連結会計年度比77億円減の107億円となった。従って、ネット特別損益は前連結会計年度比76億円の増益となったため、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度比12億円増益の1,390億円となった。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比93億円、10.3%増益の994億円となった。自己資本利益率は、10.1%と前連結会計年度比0.8ポイント改善した。