第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」ことを経営理念とし、「人々の生活と環境に貢献し、社会的存在感のある企業」を目指している。当社グループは、経営の基本方針である「機能素材メーカーとしての基盤強化」、「企業体質・株主資本の強化」を推進する中で、社会に貢献することこそ、当社グループの企業価値を高め、ひいては株主に貢献できるものと確信している。

当社グループは、昨年5月に公表した中期経営計画「“G”round 20 ~to The Next Stage(ジーラウンド・トゥエンティ ~トゥ ザ ネクスト ステージ)」に掲げる3つの“G”(Growth、Global、Governance)の実現に向け、事業基盤を固め、成長に向けた施策を確実に実行していく。

具体的には、フィルム事業では、包装分野は、原燃料価格、物流費、為替の変動などに柔軟に対応しながらシェアの維持に努めるとともに、「エンブレムHG」など高付加価値品の拡販に注力し、工業分野は、「ユニピール」や耐熱ポリアミドフィルム「ユニアミド」などの高機能フィルムの採用アイテムの拡大を進める。さらに、ナイロンフィルムについては、インドネシアでの新機台の増設を着実に進め、グローバル生産体制の更なる強化を目指していく。樹脂事業では、ナイロン樹脂は、高輝度メタリック着色樹脂「ナノコン」など、高付加価値品の拡販を強化し、「Uポリマー」は、自動車部品用途などで米国や中国を中心としたグローバル展開を更に進める。不織布事業では、東京オリンピック・パラリンピックに向け、建築資材関連の需要の取り込みを図る。また、海外では、タイ子会社のTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.(タスコ)での生産能力増強を契機として、カーペット用途、自動車部品用途などでグローバルに拡販を強化する。

機能材事業では、ガラス繊維事業の産業資材分野は、東京オリンピック・パラリンピックに向けて建築資材用途の拡販に注力するとともに、提案型の営業活動による顧客深耕や新規案件の早期取り込みによる拡販を目指す。電子材料分野のICクロスは、超薄物タイプや高機能製品への商品構成を高めることにより収益の拡大に努める。ガラスビーズ事業では、電子部品や自動車部品用途の拡販を継続するとともに、生産性の向上によるコストダウンに努める。活性炭繊維事業では、水栓一体型を中心に浄水器用途での拡販を進め、海外ではこれまでの中国主体から欧米に軸足を移し、新規顧客を開拓していく。また、VOC除去用途は、引き続き中国向けを中心に欧米も睨んだ海外展開を図る。

繊維事業では、産業繊維事業のポリエステル短繊維は、ポリエステル共重合技術などを活かした高付加価値品の開発・拡販を加速していく。ポリエステル高強力糸は、複合繊維の生産能力を更に高め、拡販を強化する。衣料繊維事業は、原糸・原繊開発に引き続き注力するとともに、ベトナム・インドネシア等の現地法人の活用などによる海外サプライチェーンの構築を加速していく。

研究開発については、経営資源を有効活用して、当社グループが保有する高分子重合・材料設計ならびに高分子改質・加工などのコア技術を発展・深化させるとともに、独自の構造制御技術などを更に強化し、高機能フィルム・樹脂、高耐熱フィルム、高機能不織布・繊維など成長を牽引する製品開発を加速していく。また、分析・評価技術やコンピューターシミュレーションの利用など、研究開発を支える基盤要素技術についても注力する。

財務体質の健全化については、当年度も有利子負債の削減に努める一方、予定通り、C種種類株式の全株式(発行総額100億円)につき、定款及び会社法の規定に基づき平成29年6月30日に取得、消却を実施した。今後も着実に業績を伸ばし、自己資本の蓄積、有利子負債の削減に努める。

ガバナンスについては、コンプライアンス体制の強化、PDCAサイクルの全社浸透等により、事業統制力の向上とリスクマネジメントの徹底を更に推進していく。また、従業員に内部通報制度に係る啓発を改めて実施することで、さらに規範意識を高め、不正を許さない組織風土への改革を進めていく。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

2【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがある。なお、当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避やその影響を最小限に止めるなどの事前対応、または発生した場合の事後対応に努めるものとしている。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。

(1)原燃料価格の変動にかかるもの

当社グループにおいて、高分子事業及び合成繊維事業にて取り扱う製品は、主としてナフサなどから精製される化学原料を加工したものである。また事業所などで使用される重油、天然ガスなどの燃料も含めて、石化原燃料の購入価格の変動をタイムリーに製品価格への転嫁や生産性向上などの内部努力により吸収することができず、十分なスプレッドを確保できなかった場合は、各原燃料価格の変動が当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性がある。

(2)為替・金利レートの変動にかかるもの

当社グループの海外事業については、円建ての取引を基本としているが、現地通貨建てにて取引を行う項目に関しては、換算時の為替レートにより円換算後の価値が影響を受ける場合がある。これら為替レートの変動が生じた場合、円換算後の売上高やコストへの影響が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性がある。

また金利変動によるリスクについては、為替変動と同様に当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある。

(3)製品の欠陥にかかるもの

当社グループは製品の品質管理に万全を期し、製品の欠陥等の発生を未然に防止している。また、万が一の製品事故に備えた損害保険に加入している。しかしながら、予測できない原因により製品に重大な欠陥が発生した場合、回収費用、社会的信用の毀損、多大な補償・訴訟費用、賠償費用の負担などにより、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある。

(4)海外事業にかかるもの

当社グループは中国、香港、インドネシア、タイなどの東アジア、欧米並びに南米などの地域において事業展開を図っているが、特に中国、東南アジアを中心として、次のようなリスクがある。これらの事象が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある。

・予期し得ない法律や規制、税制等の変更

・不利な政治的要因の発生

・テロ、戦争などによる政治的、社会的混乱

・疫病などの流行

(5)産業事故災害にかかるもの

当社グループにおいて、合繊原料など化学物質を取り扱う工場を中心として、万一、甚大な事故災害が発生した場合は、それに伴って生じる社会的信用の低下、補償などの対策費用、生産活動の停止による機会損失などによって、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある。

(6)貸し倒れにかかるもの

当社グループの取引先の信用不安によって予期せぬ貸し倒れが顕在化し、それに伴う追加の損失や引当の計上が必要となる場合は、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある。

(7)訴訟等にかかるもの

当社グループが事業を遂行していく上で、取引先や第三者との間で訴訟等が発生し、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

また、係争中の訴訟等についての判決等が当社グループの主張や予測と異なる結果となった場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

当社が、愛知県豊橋市(以下「豊橋市」)から昭和26年に譲り受けた工業用地を第三者に売却したことは、用地を譲り受けた際の契約に違反するとして、豊橋市住民が豊橋市長に対し、当社に対して63億円の損害賠償金の支払及びこれに対する平成27年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求するよう求めていた訴訟(当社は補助参加人として参加)で、平成30年2月8日に名古屋地方裁判所において、豊橋市長が当社に対し上記支払を請求するよう命ずる判決が下された。豊橋市長は、当該判決を不服として名古屋高等裁判所へ控訴(当社は補助参加人として参加)している。

 

(8)その他の主な変動要因にかかるもの

上記の他、事故、地震・台風・竜巻などの自然災害、新型インフルエンザなどの感染症の流行などが、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性がある。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用環境の改善が継続する中、個人消費にも持ち直しの動きが見られるなど、緩やかな回復基調が続いた。一方で、欧米の通商政策による海外経済の不確実性や金融市場の変動などの影響が懸念され、地政学リスクへの不安も払拭されず、先行き不透明な状況で推移した。

このような状況の下、当社グループは、昨年5月に公表した中期経営計画「“G”round 20 ~to The Next Stage(ジーラウンド・トゥエンティ ~トゥ ザ ネクスト ステージ)」に掲げる3つの“G”(Growth、Global、Governance)の実現に努めてきた。

この結果、当連結会計年度の売上高は128,388百万円(前期比1.7%増)、営業利益は11,658百万円(同7.0%減)、経常利益は9,972百万円(同4.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8,081百万円(同9.4%増)となった。

事業セグメント別の経営成績は次のとおりである。

[高分子事業]

フィルム事業では、包装分野は、季節商品の国内販売が堅調に推移し、コンビニエンスストア向け商品などの需要やインバウンド消費が拡大した。加えて、バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」などの高付加価値品の売上も増加した。また、海外でも、好調なアジア市況を背景に、インドネシア子会社のP.T.EMBLEM ASIA(エンブレムアジア)が売上を伸ばした。工業分野は、好調な半導体市況に支えられ、電気・電子機器分野で好調に推移したほか、シリコーンフリー離型PETフィルム「ユニピール」などの高付加価値品の販売も好調であった。この結果、事業全体で増収となったが、原燃料価格上昇などの影響もあり、減益となった。

樹脂事業では、当社独自のポリアリレート樹脂「Uポリマー」は、情報端末機器用途や海外向け自動車用途で売上、収益とも大幅に拡大した。ナイロン樹脂は、自動車用途などで堅調に推移したが、原燃料価格上昇の影響を大きく受けた。熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂「エリーテル」や環境配慮型の水性エマルション「アローベース」は、太陽電池用途での需要減少などにより低調に推移した。この結果、事業全体で増収減益となった。

不織布事業では、ポリエステルスパンボンドは、農業用途や建築資材用途などで売上を伸ばしたが、土木用途などで低調に推移した。タイ子会社のTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.(タスコ)は、新機台製品のスペックインを順次進めており、既存製品では土木用途、カーペット用途などの販売が堅調に推移した。コットンスパンレースは、スキンケア用品などの生活資材用途が引き続き好調で、輸出も堅調に推移した。この結果、事業全体で増収となったが、大型設備投資の償却費計上などの影響もあり、減益となった。

以上の結果、高分子事業の売上高は58,516百万円(前期比6.3%増)、営業利益は9,401百万円(同6.3%減)となった。

[機能材事業]

ガラス繊維事業では、産業資材分野は、建築土木用途での需要が伸び悩んだが、環境関連用途などは堅調に推移した。電子材料分野のICクロスは、高付加価値品である超薄物タイプを中心に、情報端末機器・ネットワーク関連用途での好調な需要に支えられ、販売が堅調に推移した。

ガラスビーズ事業では、電子部品や自動車部品などの工業用途が好調に推移し、路面標示用途も堅調に推移したが、原燃料価格上昇などの影響を受けた。

活性炭繊維事業では、主力の浄水器用途は水栓一体型を中心に好調に推移し、VOC除去用途、工業用途なども好調に推移した。

以上の結果、機能材事業の売上高は12,536百万円(同3.7%増)、営業利益は1,227百万円(同8.6%増)となった。

[繊維事業]

産業繊維事業では、構造改革の実施により事業規模は縮小したが、ポリエステル短繊維は、複合繊維などの高付加価値品の販売を進め、前期並みの売上を確保した。ポリエステル高強力糸は、土木用途などで低調に推移したが、高付加価値品の販売数量は増加し、計画どおりの収益を確保した。

衣料繊維事業では、ユニフォーム分野はワーキング用途を中心に好調に推移し、寝装分野も需要の回復により堅調に推移したが、レディス分野や原糸販売などは不振が続き、売上が減少した。海外向けでは、デニムの需要が回復し、好調に推移した。

以上の結果、繊維事業の売上高は53,612百万円(同3.5%減)、営業利益は1,290百万円(同33.2%減)となった。

[その他]

その他の事業については、売上高は3,723百万円(同5.3%増)、営業損失は277百万円(前期は578百万円の損失)となった。

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ10,721百万円減少し、26,169百万円となった。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益に減価償却費などを加えた資金収入や、繊維事業における独占禁止法関連の支払いなどの支出により、9,739百万円の資金の増加(前期比46.2%減)となった。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、高分子事業を中心とした設備投資に伴う支出などにより、3,231百万円の資金の減少(前期は4,158百万円の資金の減少)となった。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、C種種類株式の取得及び消却などにより、17,207百万円の資金の減少(前期は19,089百万円の資金の減少)となった。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社グループの生産活動の大半は、当社、日本エステル㈱、ユニチカテキスタイル㈱、ユニチカグラスファイバー㈱、㈱ユニオン、P.T.EMBLEM ASIA及びTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.で行われているため、これらの会社の実績により記載している。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

高分子事業

58,828

8.8

機能材事業

9,111

4.9

繊維事業

5,109

△18.6

報告セグメント計

73,049

5.8

その他

合計

73,049

5.8

 (注)1.生産高を明確に表示するため、外注生産高を含む総生産高で記載している。

2.上記の金額には消費税等は含まれていない。

b.受注実績

当社グループは主として見込生産を行っている。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

高分子事業

58,516

6.3

機能材事業

12,536

3.7

繊維事業

53,612

△3.5

報告セグメント計

124,665

1.6

その他

3,723

5.3

合計

128,388

1.7

 (注)1.上記の金額には消費税等は含まれていない。

2.販売実績が総販売実績の10%以上の相手先はない。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としている。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している。

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、事業活動の成果を示す売上高、営業利益、経常利益を重視している。また、中期経営計画「“G”round 20 ~to The Next Stage」では、最終年度である平成32年3月期の数値目標として、連結売上高1,400億円、営業利益134億円、経常利益102億円、親会社株主に帰属する当期純利益47億円を、持続的成長に向けたひとつの通過点として掲げており、今後の成長への基盤強化のため、3つの“G”、Growth「事業成長戦略の推進」、Global「グローバル事業展開の強化・推進」、Governance「グループガバナンスの強化」という視点から施策を推進・実行し、その実現を目指している。

財務体質強化の観点からは、自己資本比率の向上、有利子負債の削減を念頭に置くとともに、キャッシュ・フローについても重要視し、重点管理している。

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ロ.経営成績及び財政状態の分析

a.売上高

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ2,169百万円(1.7%)増収の128,388百万円となった。構造改革の影響等で繊維事業が減収となったが、それ以外の事業で概ね堅調に推移したことにより、全体の売上が増加したためである。

b.営業利益

当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ879百万円(7.0%)減益の11,658百万円となった。高付加価値品の販売は増加したが、原燃料価格の上昇などによるコスト影響を大きく受け、全体では減益となった。セグメント別では、原燃料価格上昇の影響を大きく受けた高分子事業と繊維事業が減益となった。

c.営業外損益と経常利益

当連結会計年度の営業外損益については、営業外収益は、327百万円(33.9%)減少の639百万円となり、営業外費用は、有利子負債の削減に伴う支払利息の減少などにより696百万円(23.1%)減少の2,325百万円となった。これらの要因と、営業利益段階での減益により、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ510百万円(4.9%)減益の9,972百万円となった。

d.特別損益

当連結会計年度の特別損益については、特別利益は、投資有価証券売却益の減少などにより、前連結会計年度に比べ187百万円(18.6%)減少の822百万円となった。一方、特別損失は、固定資産処分損の減少や、前連結会計年度に計上した独占禁止法関連損失などの影響により、前連結会計年度に比べ1,774百万円(51.6%)減少の1,666百万円となった。

e.親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益については、特別損益の好転が大きく影響し、前連結会計年度に比べ692百万円(9.4%)増加の8,081百万円となった。

なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、「2.事業等のリスク」に記載のとおりである。当連結会計年度においては、特に原燃料価格等の上昇が当社グループの経営成績に影響を及ぼしたが、今後も原燃料価格や為替の変動などに迅速かつ柔軟に対応しながら、業績の拡大に努める。

f.総資産

総資産は、前連結会計年度末に比べ8,546百万円減少し、203,326百万円となった。これは、主として現金及び預金が減少したことや、繊維事業の事業撤退に関連した有形固定資産の減損損失の計上などによる固定資産の減少によるものである。負債は、前連結会計年度末に比べ4,012百万円減少し、162,596百万円となった。これは、主として有利子負債が減少したことによるものである。純資産は、前連結会計年度末に比べ4,534百万円減少し、40,729百万円となった。これは、主としてC種種類株式の取得及び消却により資本剰余金が減少したことによるものである。

ハ.セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析

当連結会計年度の事業セグメント別の経営成績については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりである。

ニ.資本の財源及び資金の流動性について

a.キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。

 

b.契約債務

平成30年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりである。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超

3年以内

3年超

5年以内

5年超

短期借入金

2,450

2,450

長期借入金

102,801

2,720

100,041

39

リース債務

732

57

519

155

0

 

c.財務政策

当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしている。また、運転資金の効率的な調達を行うため、当社と取引銀行1行との間で5,000百万円のコミットメントライン契約を締結し、資金の流動性を確保している。なお、当連結会計年度末における借入実行残高はない。

財務体質の健全化については、在庫削減等による運転資金の効率化によって有利子負債の圧縮に努めている。

4【経営上の重要な契約等】

合弁関係

契約会社

相手先

対象国

契約内容

契約締結年月日

(有効期間)

当社

PT.GRAHA UPAYA MANDIRI

丸紅株式会社

インドネシア

左記2社との共同出資によるナイロン6同時二軸延伸フィルム製造販売会社設立

 資本金US$1,000万
 当社出資比率60.00%

(提出日現在:資本金US$4,119万
      当社出資比率86.46%)

(平成7年11月15日P.T.EMBLEM ASIA設立)

平成7年5月29日

(契約発効後、合弁会社の存続する期間)

当社

三井物産株式会社

三井物産(中国)有限公司

中国

左記2社との共同出資によるナイロン6同時二軸延伸フィルム製造販売会社設立

 資本金US$1,850万

 当社出資比率70%

(平成16年1月7日尤尼吉可高分子科技(中国)有限公司設立)

平成15年12月1日

(契約発効後、合弁会社の存続する期間)

 

5【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、長年にわたり蓄積してきた技術力を基盤とし、新技術の開発、応用を進めて、多様化する社会のニーズに応える商品開発を図り、もって事業基盤の強化と新規事業の拡大を行うことを目標としている。

当連結会計年度の研究開発費は3,274百万円であり、この中には中央研究所で行っている全社共通テーマの各事業部門に配賦できない費用680百万円が含まれている。

(1)高分子事業

フィルム事業は、高付加価値品の展開および拡大を推進している。高耐熱性ポリアミドフィルムは、製品ブランドを「ユニアミド」と決定し、平成28年1月に当社宇治事業所(京都府宇治市)の既存設備を改造し、量産体制を整えた。すでに、耐熱性と溶融加工性が評価されポリイミドフィルムの代替としてモバイル機器向けに採用されており、販売量は着実に増加している。今後はFPC(フレキシブルプリント基板)および関連基材や、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が使用されている振動板、耐熱性と無色透明性の特長を活かした各種工程フィルムなどへの展開を検討している。柔軟性のある有機系バリア層をナイロンフィルムに積層した新規バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」も平成27年10月に既存設備を改造し、量産化技術を確立した。ボイル・レトルト用途に対する高いガスバリア性能と食品の色目保持効果が格段に高いことから、漬物、惣菜、農産加工品を中心に採用が拡大している。シリコーンフリー離型PETフィルム「ユニピール」は、さらなる高品位用途へ対応できるように生産設備を改造し、量産化技術を確立した。これにより、表面の凹凸がほとんどない超平滑ユニピールを上市することができた。その他新規商品として、表面粗度がサンドマットと同等レベルで、フィルムを加熱してもオリゴマーによる汚染が極端に少ない高粗度PETフィルムを開発し、市場評価を進めている。

樹脂事業では、自動車などの軽量化に有効なナイロン系射出発泡用樹脂「フォーミロン」を平成28年3月にプレスリリースし、商品展開に注力しており、引き合いも増加している。当社固有のエンジニアリングプラスチックであるポリアリレート樹脂「Uポリマー」については、その広い温度域における性能、寸法の安定性から、スマートフォン、タブレット用途などのほか、自動車用LEDランプ用途で引き続き好調に販売を伸ばしているほか、新たに溶剤可溶タイプのポリアリレート樹脂「ユニファイナー」Vシリーズ、高耐熱成形用途Tシリーズについてもプレスリリースを平成28年3月に行った。優れた耐熱性と電気特性から、多用途で評価が進んでおり、早期実績化を目指している。高耐熱性ポリアミド樹脂である「ゼコット」は電気・電子用途のほか、摺動用途でも採用が進みつつある。オレフィン系エマルションである「アローベース」はエネルギー関連用途、食品用途などでの接着層、コーティング層として拡大しているほか、金属と樹脂といった異種材料の接着に効果が認められ引き合いが増加している。ポリエステル樹脂としては、ダイレクトブロー用に開発した共重合品のラインナップに耐衝撃グレードを加え、採用が拡大している。接着剤・コート剤用共重合ポリエステルである「エリーテル」は耐熱グレードを開発し、電気・電子用途で求められる高性能化に対応している。また、ナノ多孔膜を形成することができるポリイミドワニスについては、リチウムイオン電池の熱暴走を防ぐ新たな技術として高い関心が寄せられ、ユーザーでの評価が続いている。ナノコンについては、メタリック着色、ピアノブラック着色等の高外観グレードで、家電関係や自動車関係に採用が増えており、特に注目度の高い欧州での自動車内装材への採用が始まった。中央研究所発の新素材技術として「セルロースナノファイバー配合ナイロン6」を平成28年4月にプレスリリースした。重合工程でセルロースナノファイバーを樹脂中にナノレベルで均一に分散させる独自の製造方法により得られるこの樹脂は、発泡成形すると気泡の大きさが均一になる特色があり、すでに複数のユーザーで評価が進んでいる。「樹脂化」、「軽量化」のキーワードで注目を浴びている。また、通常のフィラー配合樹脂では発現しない特性も確認されており、高機能化樹脂としての用途開発を推進している。

不織布事業においてスパンボンドでは、極太の異形断面糸形状である「ディラ」は、類をみない繊維構造で硬さと高通気性からフィルター材、ワイパー材他、多様な用途への展開を図り、採用実績に繋がっている。また、「ディラ」の特長を活かして、他不織布、他素材との複合品の開発も行っており、さらなる拡販を行う。農業分野へは多様なニーズに応えるべく開発を進めている。従来からのべたがけシートは透光・保温を兼ね備え、かつ、さらなる耐久性の向上を目指した開発を進めた結果、開発が完了し、昨年度から本格販売を行い、高評価を得ている。また、透明性を高めた高透光性シートや遮熱材と複合した遮熱性シートなど新たな用途への開発も進めている。土木分野ではメガソーラー向けの雑草抑制の防草シートなどの開発を行い、販売中である。タイ国における新機台の増設により、今までと違った素材を提供することが可能となり、新規用途を含めた開発を進めている。スパンレースではコットン素材の持つ優位性から国内外の衛材用途を中心に積極的な開発を推し進めている。撥水や抗菌等の機能性付与や他シートとの複合、柄付け等の意匠性の開発により採用実績に繋がっている。今後ともユーザーの要望に応える製品をタイムリーに提供できるよう開発を進めていく。

バイオマスプラスチック関連では、バイオマスプラスチックの普及に向けた研究開発を引き続き進めている。前述した「ゼコット」は、スーパーエンジニアリングプラスチックでありながらバイオマスを原料とした樹脂であり、ポリ乳酸を用いた環境素材「テラマック」とともに、ユニチカの高い環境意識を象徴した製品としての役割も期待されている。用途開発においては、それぞれの特性をユーザーのニーズと一致させることに注力しており、「ゼコット」の電気、自動車用途への適用に加えて、「テラマック」の包装フィルム用マスターバッチや、後述の3Dプリンター用フィラメントなど、その成果を示す例が出てきている。このほかにも新規バイオマスプラスチックの開発に関して、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「木質バイオマスからの各種化学品原料の一貫製造プロセスの開発」プロジェクトに平成25年度から参加し、次世代のバイオマスプラスチックの開発を行っている。

当事業に係る研究開発費は1,932百万円である。

 

(2)機能材事業

ガラス繊維事業では、産業資材用途で顧客ニーズに応えたガラスクロス及びそれら処理加工品の製品開発を進め、ユーザーから好評価を得ている。また、電子材料用途では、超薄クロスの生産技術革新に取り組むとともに、高性能な新規ICクロスも開発中である。

活性炭繊維関連では、液相分野においては、浄水器用及び工業フィルター用の高性能化とコストダウンにより国内外での競争力の強化を図っている。また、気相分野においては、自動車用に加え、空気清浄機やマスクなど、空気脱臭用の高性能化とコストダウンにより海外展開を進めていく。

業界で初めて製品化したナイロン6樹脂製の中空糸膜フィルターは、これまでの平膜タイプの同樹脂製フィルターに比べて高流量、かつ、長寿命であり、有機溶剤系での使用にも耐えられることから、半導体や化学分野で使用される薬液に含まれる不純物の除去などの用途で採用が続いている。さらに、高性能・高機能なフィルターを実現させるため、他素材も含めた研究開発を加速化している。

当事業に係る研究開発費は454百万円である。

 

(3)繊維事業

繊維事業においては、多様化するライフスタイルに対応した衣料用途共通素材として、独自のポリマー、ノズル、紡糸・延伸技術による3層特殊断面のポリエステル長繊維素材「クールアート20」を平成28年に開発した。同素材は、これまでに無い高度な防透け性に加え、太陽光に含まれる紫外線遮蔽性、近赤外線遮蔽によるクーリング性及び軽量性を有する。すでに一部有力アパレルでの採用が決定している。スポーツ、レディス、ユニフォームといった各分野での商品提案を進めており、高い評価を得ている。また、太陽光遮蔽性特殊セラミックを高濃度に練込んだポリエステル短繊維素材「サラブリーズ」を開発した。防透け性、紫外線遮蔽性、近赤外線遮蔽によるクーリング性といった機能は、これまで長繊維が中心であったが、新たに短繊維もラインアップすることにより、天然繊維調の表現も可能とした。

スポーツ用素材としては、当社独自の特殊加工技術により生地表面に微細な凹凸構造を形成し、長時間の降雨に優れた水滴転がり性を発揮する「タクティーム」シリーズの売上が急増している。国内外における展示会やオーストリアで開催された56th DORNBIRN MAN-MADE FIBERS CONGRESSでの発信効果等により新たな問合わせも増加しており、今後はさらなる売上げ増が見込まれる。また、これまでは主にユニフォーム用途で展開していた難燃ビニロン繊維による難燃素材「ミューロンFR」をアウトドアウェア用にアレンジし提案した結果、大手アパレルでの採用が進んだ。

レディス用素材としては、新規ポリエステル素材として、特殊異型断面を持つ「セシェ6」を開発した。断面形状に起因する高発色性に加え、独特なドライタッチが特長で、一部有力アパレルにて採用が始まっている。また、スウェード調タッチと独特のコンパクト感を兼備する「フィーリングソフ」も新たに市場へ投入し、安定的な売上で推移している。

さらに、メーカーズシャツ鎌倉(株)と共同で開発したドレスシャツ「SUVIN GOLD」を上市した。厳選されたコットン原料と当社が得意とする細番手紡績技術との組み合わせにより、これまでにない上質なドレスシャツが完成し、市場では発売間もなく完売となった。なお、本商品は平成28年度の経済産業省「モノづくりサプライチェーン再構築支援事業」に採択され、また、繊研新聞社が主催する平成29年度「繊研天然繊維特別賞」を受賞した。

ユニフォーム用素材としては、高耐久性防汚・制電素材「ナノアクア」を開発した。ポリエステル繊維と機能剤とのグラフト重合により、繰返しの工業洗濯にも対応できる耐久性を有する。また、塩素系漂白剤による退色を抑制する「エバーズⅠ」(ポリエステル)、「エバーズⅡ」(ポリエステル/綿混)を開発し、さらには、「タクティーム」に国内外の基準をクリアする高視認性を付加した素材も開発した。これらの素材は、平成29年11月開催のユニフォーム総合素材展に出展した。

産業繊維事業では、ポリ乳酸紡糸技術による「Material Extrusion方式(熱で融解した造形材料を少しずつ積み重ねていく方式)」に使用される3Dプリンター用フィラメントの品揃えに加え、さらなる拡大や深化に貢献すべく開発を進めてきた『3Dプリンター用“感温性”フィラメント』を発表した。

このフィラメントは当社が得意とする独自の特殊ポリエステル樹脂により、造形後に安全な低温域で、自由な形状の変更を可能にする従来品にはない特徴を持っている。

今後、積極的にサンプルワークを進めて素材のブラッシュアップを行った上で、平成29年度中の販売を目指している。

当事業に係る研究開発費は202百万円である。