(1)業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費の回復への動きは緩慢であったものの、企業収益及び雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな景気回復の動きが見られた。しかしながら、海外では、中国や新興国経済の成長鈍化に加え、英国のEU離脱問題及び米国新政権の政策方針による影響が懸念されるなど、世界経済の不確実性が増大しており、先行き不透明な状況で推移した。
このような状況の下、当社グループは、平成26年度からスタートした中期経営計画に掲げる成長戦略の早期実現に向け、高分子事業を中心とする機能素材メーカーとしての基盤強化や収益改善のための各施策の実行に努めてきた。
また、金融機関からの借入金については、平成29年9月末日までの残高維持を申し入れていたが、一部の弁済及びシンジケートローンの実行により、予定より前倒しで平成29年3月末日をもって残高維持を解消した。
C種種類株式の全株式(発行総額100億円)については、定款及び会社法の規定に基づき、平成29年6月30日に取得、消却を行うことを決定するなど、財務体質の健全化に向けた施策を実施した。
当連結会計年度の売上高は126,219百万円(前期比13.8%減)、営業利益は12,538百万円(同20.0%増)、経常利益は10,483百万円(同53.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,389百万円(同6.6%増)となった。
セグメント別の状況は次のとおりである。
[高分子事業]
フィルム事業では、包装分野は、季節商品が好調であったことに加え、新バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」など、高付加価値品の販売が拡大したこともあり、好調に推移した。また、海外もアジア市況の復調とインドネシア子会社のP.T.EMBLEM ASIA(エンブレムアジア)の生産能力増強により、売上、収益ともに増加した。工業分野は、情報端末機器用途など電気・電子機器分野で販売数量は若干減少したが、シリコーンフリー離型PETフィルム「ユニピール」、耐熱ポリアミドフィルム「ユニアミド」などの高付加価値品の販売が拡大したことにより、収益は増加した。この結果、事業全体で増収増益となった。
樹脂事業では、熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂「エリーテル」は、海外向け太陽電池用途などで好調に推移し、当社独自のポリアリレート樹脂「Uポリマー」も、情報端末機器用途で好調であったが、汎用のエステル樹脂は低調に推移した。当社独自処方の高輝度メタリックナノコンポジットナイロン樹脂等の高付加価値品は、自動車用途等で採用が拡大した。この結果、事業全体で減収増益となった。
不織布事業では、ポリエステルスパンボンドは、インテリア、建築材料などの産業資材用途等で販売数量を伸ばしたが、それ以外の用途では低調に推移した。タイ子会社のTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.(タスコ)は、カーペットなど産業資材用途での海外展開が堅調に推移した。コットンスパンレースは、スキンケア用品などの生活資材用途が好調に推移し、輸出数量も増加した。この結果、事業全体で減収増益となった。
以上の結果、高分子事業の売上高は55,057百万円(前期比2.2%減)、営業利益は10,035百万円(同25.4%増)となった。
[機能材事業]
ガラス繊維事業では、産業資材分野は、土木用途での販売が低調に推移したが、建築用途や環境用途などは堅調に推移した。電子材料分野のICクロスは、情報端末機器用途での需要回復が遅れ、低調に推移した。
ガラスビーズ事業では、反射材用途は一部ユーザーからの受注が減少したが、自動車部品などの工業用途や国内のロードマーキング用途は堅調に推移し、商品構成の改善等の効果もあって、事業全体として収益は増加した。
活性炭繊維事業では、主力の浄水器用途は水栓一体型が好調であったものの、全体的には需要がやや伸び悩んだ。一方、自動車用VOC除去フィルターや工業用フィルター用途などは好調に推移した。
以上の結果、機能材事業の売上高は12,089百万円(同1.5%増)、営業利益は1,130百万円(同21.9%減)となった。
[繊維事業]
産業繊維事業では、ポリエステル高強力糸は、複合繊維など高付加価値品への商品構成シフトが進み、期後半からの土木・建築用途の需要回復もあり、収益は増加した。ポリエステル短繊維は、前期までに実施した構造改革による事業縮小に伴い、売上は減少したが、高付加価値品の拡販を進め、計画どおりの収益を確保した。
衣料繊維事業では、ユニフォーム分野は、ワーキング用途で堅調に推移したことに加え、調達コストの低減もあり収益が改善した。レディス分野では、高発色性高反撥ポリエステル素材「ゼログ」が婦人服市場でヒット商品となった一方で、スポーツや寝装、インナー用途での素材販売及びデニム輸出は振るわず、事業全体の売上は減少した。
以上の結果、繊維事業の売上高は55,535百万円(同15.1%減)、営業利益は1,932百万円(同21.8%増)となった。
[その他]
その他の事業については、前期に実施した事業ポートフォリオ改革に伴う子会社の株式譲渡・清算、事業譲渡の影響などにより、売上高は3,536百万円(同72.4%減)、営業損失は578百万円(前期は630百万円の損失)となった。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,133百万円減少し、36,890百万円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益に減価償却費などを加えたキャッシュ・イン・フローなどにより、18,111百万円の資金の増加(前期比55.3%増)となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に伴う支出などにより、4,158百万円の資金の減少(前期は4,124百万円の資金の増加)となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済などにより、19,089百万円の資金の減少(前期は5,010百万円の資金の減少)となった。
(1)生産実績
当社グループの生産活動の大半は、当社、日本エステル㈱、ユニチカテキスタイル㈱、ユニチカグラスファイバー㈱、㈱ユニオン、P.T.EMBLEM ASIA及びTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.で行われているため、これらの会社の実績により記載している。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
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高分子事業 |
54,092 |
△8.9 |
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機能材事業 |
8,683 |
0.6 |
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繊維事業 |
6,276 |
△28.1 |
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報告セグメント計 |
69,053 |
△10.0 |
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その他 |
- |
- |
|
合計 |
69,053 |
△10.0 |
(注)1.生産高を明確に表示するため、外注生産高を含む総生産高で記載している。
2.上記の金額には消費税等は含まれていない。
(2)受注状況
当社グループは主として見込生産を行っている。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
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高分子事業 |
55,057 |
△2.2 |
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機能材事業 |
12,089 |
1.5 |
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繊維事業 |
55,535 |
△15.1 |
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報告セグメント計 |
122,682 |
△8.2 |
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その他 |
3,536 |
△72.4 |
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合計 |
126,219 |
△13.8 |
(注)1.上記の金額には消費税等は含まれていない。
2.販売実績が総販売実績の10%以上の相手先はない。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」ことを経営理念とし、「人々の生活と環境に貢献し、社会的存在感のある企業」を目指している。当社グループは、経営の基本方針である「機能素材メーカーとしての基盤強化」、「企業体質・株主資本の強化」を推進する中で、社会に貢献することこそ、当社グループの企業価値を高め、ひいては株主に貢献できるものと確信している。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業活動の成果を示す売上高、営業利益、経常利益を重視している。また、財務体質強化の観点からは、自己資本比率の向上、有利子負債の削減を念頭に置くとともに、キャッシュ・フローについても重要視し、重点管理している。
(3)中長期的な会社の経営戦略と会社の対処すべき課題
当社グループは、平成26年度からスタートした中期経営計画の下、事業を推進してきた。その結果、計画に掲げた構造改革を概ね完了させ、財務体質についても前倒しで健全化を図ることができたため、更なる飛躍に向け成長への基盤固めを行うべく、平成29年度を初年度とし、Growth、Global、Governanceの3つの“G”を柱とする新中期経営計画「“G”round 20 ~to The Next Stage(ジーラウンド・トゥエンティ ~トゥ ザ ネクスト ステージ)」を策定した。
個々の事業戦略及び課題については次のとおりである。
高分子事業では、フィルム事業は、包装分野において、国内外ともに「エンブレムHG」などバリアフィルムの拡販に注力し、工業分野は、「ユニアミド」や「ユニピール」などの高機能フィルムの採用拡大を進める。さらに、ナイロンフィルムについては、海外生産体制の強化に向けた投資の検討を進める。樹脂事業では、ナイロン樹脂は、ナノコンメタリックなど特殊コンパウンドグレードの海外拡販を強化し、「Uポリマー」や「アローベース」など当社の独自素材では、既存顧客の深耕等による拡販を進める。不織布事業のポリエステルスパンボンドでは、THAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.(タスコ)での生産設備増強をてこに、カーペット用途や自動車部品用途での拡販に努める。コットンスパンレースは、生活資材用途の拡販を継続するとともに、衛材用途での海外展開を進める。
機能材事業では、ガラス繊維事業の産業資材分野は、引き続き建築用途での拡販を強化するとともに、各分野のトップ企業との協業による商品開発を進める。電子材料分野のICクロスは、超薄物タイプなどの高付加価値品の商品構成を高めることにより収益の拡大に努める。ガラスビーズ事業では、高付加価値品の拡販の継続、生産工程改善による品質向上とコストダウンに努める。活性炭繊維事業では、浄水器用途で堅調な需要が見込まれる水栓一体型を中心に、引き続き拡販を進め、海外ではこれまでの中国主体から欧米に軸足を移し、新規顧客獲得を目指す。
繊維事業では、産業繊維事業のポリエステル短繊維は、ポリエステル共重合技術などを活かした高付加価値品の開発・拡販を加速する。ポリエステル高強力糸は、土木・建築分野の拡販を更に強化する。衣料繊維事業は、今後も原繊開発に注力するとともに、ベトナム、インドネシア等の海外現地法人の活用などによりグローバル商流の構築を目指す。
なお、当社は平成29年3月10日に、防衛装備庁が発注する難燃ビニロン又はビニロンを材料として使用する繊維製品の入札に関して、公正取引委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令及び課徴金納付命令を受けた。当社はコンプライアンスの徹底に努めてきたが、この度の命令を受けたことを厳粛かつ真摯に受け止め、改めてガバナンスの強化と更なるコンプライアンスの徹底により再発防止に努める。
新中期経営計画の最終年度である平成31年度は、当社にとって創立130周年、かつ、ユニチカ発足50周年の節目となる。当社を支えてくださる皆様のご期待に応えられるよう、更に努力する所存である。
当社グループの経営成績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがある。なお、当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避やその影響を最小限に止めるなどの事前対応、または発生した場合の事後対応に努めるものとしている。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。
(1)原燃料価格の変動にかかるもの
当社グループにおいて、高分子事業及び合成繊維事業にて取り扱う製品は、主としてナフサなどから精製される化学原料を加工したものである。また事業所などで使用される重油、天然ガスなどの燃料も含めて、石化原燃料の購入価格の変動をタイムリーに製品価格への転嫁や生産性向上などの内部努力により吸収することができず、十分なスプレッドを確保できなかった場合は、各原燃料価格の変動が当社グループの業績及び財務状況等に影響を与える可能性がある。
(2)為替・金利レートの変動にかかるもの
当社グループの海外事業については、円建ての取引を基本としているが、現地通貨建てにて取引を行う項目に関しては、換算時の為替レートにより円換算後の価値が影響を受ける場合がある。これら為替レートの変動が生じた場合、円換算後の売上高やコストへの影響が生じ、当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性がある。
また金利変動によるリスクについては、為替変動と同様に当社グループの業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
(3)製品の欠陥にかかるもの
当社グループは製品の品質管理に万全を期し、製品の欠陥等の発生を未然に防止している。また、万が一の製品事故に備えた損害保険に加入している。しかしながら、予測できない原因により製品に重大な欠陥が発生した場合、回収費用、社会的信用の毀損、多大な補償・訴訟費用、賠償費用の負担などにより、当社グループの業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
(4)海外事業にかかるもの
当社グループは中国、香港、インドネシア、タイなどの東アジア、欧米並びに南米などの地域において事業展開を図っているが、特に中国、東南アジアを中心として、次のようなリスクがある。これらの事象が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
・予期し得ない法律や規制、税制等の変更
・不利な政治的要因の発生
・テロ、戦争などによる政治的、社会的混乱
・疫病などの流行
(5)産業事故災害にかかるもの
当社グループにおいて、合繊原料など化学物質を取り扱う工場を中心として、万一、甚大な事故災害が発生した場合は、それに伴って生じる社会的信用の低下、補償などの対策費用、生産活動の停止による機会損失などによって、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
(6)貸し倒れにかかるもの
当社グループの取引先の信用不安によって予期せぬ貸し倒れが顕在化し、それに伴う追加の損失や引当の計上が必要となる場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性がある。
(7)その他の主な変動要因にかかるもの
上記の他、事故、地震・台風・竜巻などの自然災害、新型インフルエンザなどの感染症の流行などが、当社グループの業績及び財務状況等に影響を与える可能性がある。
1.合弁関係
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契約会社 |
相手先 |
対象国 |
契約内容 |
契約締結年月日 (有効期間) |
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当社 |
PT.GRAHA UPAYA MANDIRI 丸紅株式会社 |
インドネシア |
左記2社との共同出資によるナイロン6同時二軸延伸フィルム製造販売会社設立 資本金US$1,000万 (提出日現在:資本金US$3,240万 (平成7年11月15日P.T.EMBLEM ASIA設立) |
平成7年5月29日 (契約発効後、合弁会社の存続する期間) |
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当社 |
三井物産株式会社 三井物産(中国)有限公司 |
中国 |
左記2社との共同出資によるナイロン6同時二軸延伸フィルム製造販売会社設立 資本金US$1,850万 当社出資比率70% (平成16年1月7日尤尼吉可高分子科技(中国)有限公司設立) |
平成15年12月1日 (契約発効後、合弁会社の存続する期間) |
2.金融支援の要請
当社及び当社グループは、中期経営計画に基づく財務体質の健全化策の一環として、借入先金融機関に対して債務残高の維持を目的とした債務返済条件の変更等(以下「本件条件変更等」という。)を要請し、平成26年7月17日に対象金融機関全社より本件条件変更等に関する同意書を取得した。
なお、金融機関からの借入金については、平成29年9月末日までの残高維持を申し入れていたが、一部の弁済及びシンジケートローンの実行により、予定より前倒しで平成29年3月末日をもって残高維持を解消した。
当社グループの研究開発活動は、長年にわたり蓄積してきた技術力を基盤とし、新技術の開発、応用を進めて、多様化する社会のニーズに応える商品開発を図り、もって事業基盤の強化と新規事業の拡大を行うことを目標としている。
当連結会計年度の研究開発費は、3,142百万円であり、この中には中央研究所で行っている全社共通テーマの各事業部門に配賦できない費用735百万円が含まれている。
(1)高分子事業
フィルム事業は、高付加価値品の展開および拡大を推進している。高耐熱性ポリアミドフィルムは、製品ブランドを「ユニアミド」と決定し、平成28年1月に当社宇治事業所(京都府宇治市)の既存設備を改造し、量産体制を整えた。すでに、耐熱性と溶融加工性が評価されポリイミドフィルムの代替としてモバイル機器向けに採用されており、販売量は着実に増加している。今後はFPC(フレキシブルプリント基板)および関連基材や、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が使用されている振動板、耐熱性と無色透明性の特長を活かした各種工程フィルムなどへの展開を検討している。柔軟性のある有機系バリア層をナイロンフィルムに積層した新規バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」も平成27年10月に既存設備を改造し、量産化技術を確立した。ボイル・レトルト用途に対する高いガスバリア性能と食品の色目保持効果が格段に高いことから、漬物、惣菜、農産加工品を中心に採用が拡大している。シリコーンフリー離型PETフィルム「ユニピール」は、さらなる高品位用途へ対応できるように生産設備を改造し、量産化技術を確立した。これにより、表面の凹凸がほとんどない超平滑ユニピールを上市することができた。その他新規商品として、表面粗度がサンドマットと同等レベルで、フィルムを加熱してもオリゴマーによる汚染が極端に少ない高粗度PETフィルムを開発し、市場評価を進めている。
樹脂関連では、自動車などの軽量化に有効なナイロン系射出発泡用樹脂「フォーミロン」を平成28年3月にプレスリリースし、商品展開に注力している。当社固有のエンジニアリングプラスチックであるポリアリレート樹脂「Uポリマー」については、その広い温度域における性能、寸法の安定性から、スマートフォン、タブレット用途で引き続き好調に販売を伸ばしているほか、新たに溶剤可溶タイプのポリアリレート樹脂「ユニファイナー」Vシリーズ、高耐熱成形用途Tシリーズについてもプレスリリースを平成28年3月に行った。優れた耐熱性と電気特性から、多用途で評価が進められており、早期実績化を目指している。高耐熱性ポリアミド樹脂である「ゼコット」は電気・電子用途で採用が進み、宇治事業所内の中量産プラントの稼働率が向上しつつある。オレフィン系エマルションである「アローベース」はエネルギー関連用途、食品用途などでの接着層、コーティング層として順調に拡大している。ポリエステル樹脂としては、ダイレクトブロー用に開発した共重合品のラインナップに耐衝撃グレードを加え、採用が拡大している。接着剤・コート剤用共重合ポリエステルである「エリーテル」は電気・電子用途の海外需要の増加に伴い、引き続き海外での用途展開が堅調である。また、ナノ多孔膜を形成することができるポリイミドワニスについて平成27年11月にプレスリリースを行い、リチウムイオン電池の熱暴走を防ぐ新たな技術として高い関心が寄せられている。ナノコンについては、メタリック着色、ピアノブラック着色等の高外観グレードで、家電関係や自動車関係に採用が増えており、特に欧州での自動車業界から注目を浴びている。中央研究所発の技術として「セルロースナノファイバー配合ナイロン6」を平成28年4月にプレスリリースした。重合工程でセルロースナノファイバーを樹脂中に均一に分散させる独自の製造方法により得られるこの樹脂は、発泡成形すると気泡の大きさが均一になる特色があり、すでに複数のユーザーで評価が進んでいる。「樹脂化」、「軽量化」のキーワードで注目を浴びている。
不織布関連においてスパンボンドでは、極太の異形断面糸である「ディラ」は、類をみない繊維構造で硬さと高通気性からフィルター材、ワイパー材他、多様な用途への展開を図り、採用実績に繋がっている。また、「ディラ」の特長を活かして、他不織布、他素材との複合品の開発も行っており、さらなる拡販を行う。農業分野へは多様なニーズに応えるべく開発を進めている。従来からのべたがけシートは透光・保温を兼ね備え、耐久性アップを目指した開発を進め完成した。今年度から本格販売を行う。また、透明性を高めた高透光性シートや遮熱材と複合した遮熱性シートなど新たな用途への開発を進めている。土木分野では複合繊維エルベスを使用したガス透過性防水シートは、その性能の優位性から東北地方の除染廃棄物仮置き場に採用され、本年も引き続き順調に推移した。また、メガソーラー向けの雑草抑制の防草シートなどの開発を行い、販売中である。タイ国における新機台の増設により、今までと違った材料を提供することが可能となり、新規用途を含めた開発を進めている。スパンレースではコットンの素材の持つ優位性から国内外の衛材用途を中心に積極的な開発を推し進めている。撥水や抗菌等の機能性付与や他シートとの複合、柄付け等の意匠性の開発により採用実績に繋がっている。今後ともお客様のご要望に応える製品をタイムリーに提供できるよう開発を進めていく。
バイオマスプラスチック関連では、バイオマスプラスチックの普及に向けた研究開発を引き続き進めている。前述した「ゼコット」は、スーパーエンジニアリングプラスチックでありながらバイオマスを原料とした樹脂であり、ポリ乳酸を用いた環境素材「テラマック」とともに、ユニチカの高い環境意識を象徴した製品としての役割も期待されている。用途開発においては、それぞれの特性をユーザーのニーズと一致させることに注力しており、「ゼコット」の電気、自動車用途への適用に加えて、「テラマック」の包装フィルム用マスターバッチや、後述の3Dプリンター用フィラメントなど、その成果を示す例が出てきている。このほかにも新規バイオマスプラスチックの開発に関して、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「木質バイオマスからの各種化学品原料の一貫製造プロセスの開発」プロジェクトに平成25年度から参加し、次世代のバイオマスプラスチックの開発を行っている。
当事業に係る研究開発費は1,864百万円である。
(2)機能材事業
ガラス繊維関連では、産業資材用途で顧客ニーズに応えたガラスクロス及びそれら処理加工品の製品開発を進め、ユーザーから好評価を得ている。また、電子材料用途では、超薄クロスの生産技術革新に取り組むとともに、高性能な新規ICクロスも開発中である。
活性炭繊維関連では、液相分野においては、浄水器用及び工業フィルター用の高性能化とコストダウンにより国内外での競争力の強化を図っている。また、気相分野においては、自動車用に加え、空気清浄機やマスクなど、空気脱臭用の高性能化とコストダウンにより海外展開を進めていく。
業界で初めて製品化したナイロン6樹脂製の中空糸膜フィルターは、これまでの平膜タイプの同樹脂製フィルターに比べて高流量で長寿命であり、有機溶剤系での使用にも耐えられることから、半導体や化学分野で使用される薬物に含まれる不純物の除去などの用途で採用が続いている。さらに、高性能・高機能なフィルターを実現させるため、研究開発を加速化している。
当事業に係る研究開発費は356百万円である。
(3)繊維事業
繊維事業においては、多様化するライフスタイルに対応した衣料用途共通素材として高度な防透性を有するポリエステル素材「クールアート20」を開発。独自のノズル、ポリマー、紡糸・延伸技術により、3層構造からなる特殊な断面形状を有し、これまでにない防透性とUVカット性、軽量性を兼ね備えた新素材であり、スポーツ、レディス、インナー、ユニフォーム等の各分野に対し提案、高い評価を得ているとともに、レディス用途で採用が決定している。
スポーツ用素材として当社独自の特殊加工技術により生地表面に凹凸構造を形成し、長時間の降雨に優れた水滴転がり性を発揮する「タクティーム」シリーズを拡充した。レギュラータイプに加え、高密度タイプ、杢タイプのほか、ナイロンタイプも開発し、様々なスポーツ・アウトドアアパレルから高い評価を得ている。
レディス用素材としては、鞘部が繊維表面にミクロクレーターを発現させた高発色ポリエステル、芯部が高収縮ポリエステルから構成される芯鞘複合糸で、高発色性、ストレッチ性、ハリ・コシ感等を兼備した「ゼログ」が好調に推移している。平成28年度の販売は前年比3倍の10,000反に達する見込みである。この高い評価から平成28年度の繊研合繊賞「グランプリ」を受賞した。
ユニフォーム素材としては、高ストレッチ素材「フリーアクションZ」を開発。ユニフォームアパレルへの採用に向けて営業活動を開始した。また、ISO規格による高視認性基準をクリアした「プロテクサHV」は道路工事などの安全作業服として各ユニフォームアパレルからの引き合いも継続している。
生活資材用素材としては、ポリ乳酸繊維「テラマック」100%のボディタオル素材を開発し、昨秋より店頭にて販売している。また、融着性ポリエステル繊維「メルセット」を使用したかつら用ベースネットを開発し、大手かつらメーカーに採用された。
産業繊維事業では、ポリ乳酸成形技術による光沢や透明性、そしてモノフィラメント製造技術による真円性、耐屈曲性や配向(結晶)性を有し、クリアで易取扱い性(耐折れ性)に優れた「Material Extrusion方式(熱で融解した造形材料を少しずつ積み重ねていく方式)」に使用される3Dプリンター用フィラメントは生産技術を確立した着色グレードも品揃えに加え、販路が拡大した。またこの製品は、繊維紡糸技術の応用としても高く評価され、平成27年度の繊研合繊賞エコロジー部門を受賞し、さらに平成28年11月には日本バイオマス推進協議会より「第6回バイオマス製品普及推進功績賞」を受賞した。
当事業に係る研究開発費は180百万円である。
(1)財政状態の分析
総資産は、前連結会計年度末に比べ8,084百万円減少し、211,872百万円となった。これは、主として現金及び預金、たな卸資産が減少したことによる。負債は、前連結会計年度末に比べ15,412百万円減少し、166,608百万円となった。これは、主として仕入債務が増加したものの、有利子負債が減少したことによる。純資産は、前連結会計年度末に比べ7,327百万円増加し、45,264百万円となった。これは、主として親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによる。
(2)経営成績の分析
①売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ20,255百万円(13.8%)減収の126,219百万円となった。減収の主要因は、構造改革に伴う繊維事業の事業縮小並びに事業ポートフォリオ改革に伴う事業譲渡・子会社の株式譲渡などが影響し、全体の売上が減少したためである。
②営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ2,088百万円(20.0%)増益の12,538百万円となった。高分子事業における成長戦略の進展や原燃料価格のプラス影響などにより、全体として増益となった。セグメント別では、高分子事業の増益が大きく、繊維事業でも構造改革の進展により増益となった。
③営業外損益と経常利益
当連結会計年度の営業外損益については、営業外収益は、23百万円(2.5%)増加の966百万円となり、営業外費用は、前連結会計年度に計上した為替差損の影響や有利子負債の減少に伴う支払利息の減少などにより1,550百万円(33.9%)減少の3,021百万円となった。これらの要因と、営業利益段階での増益により、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ3,662百万円(53.7%)増益の10,483百万円となった。
④特別損益
当連結会計年度の特別損益については、特別利益は、固定資産売却益など事業ポートフォリオ改革に伴う特別利益が減少し、前連結会計年度に比べ898百万円(47.1%)減少の1,009百万円となった。一方、特別損失は、独占禁止法関連損失などを計上したが、前連結会計年度に計上した関係会社株式売却損の減少などにより、前連結会計年度に比べ513百万円(13.0%)減少の3,440百万円となった。
⑤親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益については、法人税、住民税及び事業税、並びに法人税等調整額は前連結会計年度に比べマイナス要因となったが、経常利益段階での増益が大きく影響したため、前連結会計年度に比べ455百万円(6.6%)増加の7,389百万円となった。
(3)キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,133百万円減少し、36,890百万円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益に減価償却費などを加えたキャッシュ・イン・フローなどにより、18,111百万円の資金の増加(前期比55.3%増)となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に伴う支出などにより、4,158百万円の資金の減少(前期は4,124百万円の資金の増加)となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済などにより、19,089百万円の資金の減少(前期は5,010百万円の資金の減少)となった。