第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

※アサヒグループは当連結会計年度(2016年1月1日から2016年12月31日まで)より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前年度の数値をIFRSに組み替えて比較分析を行っております。

 

(1) 業績

当期における世界経済は、中国を始めとした新興国の景気減速や、英国のEU離脱問題などに伴い不透明感が高まりましたが、米国経済の回復が続いたことなどにより、全体としては緩やかな回復となりました。日本経済におきましては、輸出・生産面に鈍さがみられたものの、雇用・所得環境の改善を背景にした個人消費の持ち直しなどにより、景気は緩やかな回復基調が続きました。

こうした状況のなかアサヒグループは、新たに策定した『中期経営方針』のもとで、「『稼ぐ力』の強化」、「資産・資本効率の向上」、「ESGへの取組み強化」の3つを重点課題として、これまで推進してきた「企業価値向上経営」の更なる深化に取り組みました。

特に「『稼ぐ力』の強化」においては、国内では、高付加価値化、差別化を基軸とした収益基盤の盤石化を図るとともに、海外では、既存事業のブランド強化・育成を軸とした成長戦略の推進や日本発の「強み」を活かす新たな成長基盤の獲得などに取り組みました。

その結果、アサヒグループの当期の売上収益は1兆7,069億1百万円(前期比1.0%増)となりました。また、利益につきましては、事業利益は1,484億8千6百万円(前期比5.5%増)、営業利益は1,368億8千9百万円(前期比41.7%増)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は892億2千1百万円(前期比17.8%増)となりました。

 ※1 事業利益は、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を
             測る利益指標です。

   アサヒグループの実績    (単位:百万円)

 

実績

前期比

売 上 収 益

1,706,901

1.0%

事 業 利 益

148,486

5.5%

営 業 利 益

136,889

41.7%

親会社の所有者に
帰属する当期利益

89,221

17.8%

 

 

  セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。

 

    報告セグメント別の実績                               (単位:百万円)

 

売上収益

前期比

事業利益

前期比

売上収益事業利益率

営業利益

前期比

酒類

976,649

0.6%

120,823

0.9%

12.4%

111,192

5.1%

飲料

363,905

3.9%

32,335

28.0%

8.9%

32,775

92.2%

食品

110,824

△0.4%

10,256

21.4%

9.3%

11,377

63.9%

国際

250,316

△0.1%

12,348

△11.5%

4.9%

△8

その他

102,279

5.2%

2,000

△18.3%

2.0%

1,983

△10.5%

調整額計

△97,073

△23,028

△20,430

無形資産償却費

△6,249

合計

1,706,901

1.0%

148,486

5.5%

8.7%

136,889

41.7%

 

 

[酒類事業]

酒類事業につきましては、「No.1ブランドの育成、創出を通じて“総合酒類提案のリーディングカンパニー”を目指す!」をスローガンに、既存ブランドの価値向上とイノベーションによる新価値・新需要の創造に取り組みました。

ビール類については、『アサヒスーパードライ』において、「飲みごたえ」と「キレ」の向上により更に味を「進化」させるとともに、季節に合わせたパッケージデザインの商品や、発酵度とアルコール度数を高めた超辛口の『アサヒスーパードライ エクストラシャープ』を期間限定で発売するなど、ブランド価値の向上に取り組みました。また、健康意識の高まりを背景に、“糖質ゼロ”発泡酒『アサヒスタイルフリー』の“プリン体ゼロ”の派生商品や新ジャンル『クリアアサヒ 糖質0(ゼロ)』を発売するなど、多様なニーズに対応した商品ラインアップの拡充に努めました。

 

ビール類以外の酒類については、RTD※3において“収穫後24時間以内搾汁”の果汁を使用し、つくりたてのおいしさを維持する独自技術を採用した『アサヒもぎたて』を発売するなど、新たな価値提案に取り組みました。また、洋酒において発売60周年を迎えた『ブラックニッカ』や蒸溜所創業150周年を迎えた『ジャックダニエル』のマーケティング活動を積極的に推進し、ワインにおいては、『サンタ・ヘレナ・アルパカ』を中心とした輸入ワインの販売促進活動を強化しました。

アルコールテイスト清涼飲料については、『アサヒドライゼロ』において、飲みごたえをアップさせたリニューアルを実施したほか、特定保健用食品の『アサヒ ヘルシースタイル』を発売し、市場の活性化に努めました。

以上の結果、酒類事業の売上収益は、ビール類の販売数量が増加したことや、ビール類以外の酒類とアルコールテイスト清涼飲料の売上がそれぞれ前年を上回ったほか、2015年に新たに連結子会社となった「エノテカ株式会社」の業績が通年で加わったことにより、前期比0.6%増9,766億4千9百万円となりました。

事業利益については、広告販促費が増加しましたが、増収効果のほか、缶蓋の軽量化などの製造原価低減の取組みにより、前期比0.9%増1,208億2千3百万円となりました。(営業利益は前期比5.1%増1,111億9千2百万円

 ※1 100ml当たりプリン体0.5㎎未満を「プリン体0」と表示しております。
    ※2 栄養表示基準に基づき、100ml当たり糖質0.5g未満を「糖質0」と表示しております。
    ※3 RTD:Ready to Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどをいいます。

[飲料事業]

飲料事業につきましては、重点ブランドに集中したマーケティング投資や健康を軸とした商品開発に加えて、物流インフラの再整備や工場における生産効率の最大化と操業度の向上に取り組むことで、「確固たるブランドの育成」と「強靭な収益構造の確立」を目指しました。

主力ブランドにおいては、透明果汁※1を使用した『三ツ矢 澄みきるサイダー』や老舗珈琲店監修の缶コーヒー『ワンダ 極』、コーラの香りの無糖炭酸水『ウィルキンソン タンサン ドライコーラ』を発売するなど、ブランド価値の向上を図りました。また、天然水に『カルピス』の乳酸菌を加えた『アサヒ おいしい水プラス「カルピス」の乳酸菌』を発売し、ブランド資産を活用した新価値提案を行いました。

さらに、特定保健用食品において、『三ツ矢サイダーW(ダブル)』の発売や『アサヒ 食事と一緒に十六茶W(ダブル)』のリニューアルを行うなど、健康機能領域における存在感の向上に努めました。
 チルド飲料については、『味わいカルピス』のリニューアルや、さまざまな果物の果実感を楽しめる『潤う果実』の発売のほか、市場ニーズに対応し小容量の商品の販路を拡大しました。

以上の結果、飲料事業の売上収益は、炭酸飲料やコーヒー飲料の販売数量が前年実績を上回ったことなどにより、前期比3.9%増3,639億5百万円となりました。
 事業利益については、増収効果のほか、品種・容器構成比の改善や最適生産物流体制の構築に向けた取組みにより、前期比28.0%増323億3千5百万円となりました。(営業利益は前期比92.2%増327億7千5百万円

 ※1 透明果汁とは、固形分が残って濁った状態の搾汁後の果汁(混濁果汁)から、液中の固形分を分解しさ
         らにろ過した、固形分がない果汁のことです。

 

 

[食品事業]

食品事業につきましては、事業会社3社を「アサヒグループ食品株式会社」に集約し、事業やブランドの「強みへの集中」と統合シナジーの創出に取り組みました。

タブレット菓子『ミンティア』においては、発売20周年を記念した期間限定のパッケージデザイン商品の発売や消費者キャンペーンの展開、大粒タイプ『ミンティアブリーズ』の商品ラインアップの拡充などにより、ブランド価値の向上を図りました。

ベビーフードについては、粉末タイプ『手作り応援』において新商品を発売するなど、売上拡大に取り組みました。また、育児用ミルクについては、『和光堂レーベンスミルクはいはい』『和光堂フォローアップミルクぐんぐん』のリニューアルを実施し、ブランド力の強化を図りました。

フリーズドライ食品については、『いつものおみそ汁』の量販店における取扱店舗数の拡大や5食入りパック『うちのおみそ汁』の商品ラインアップの拡充など、積極的な商品展開を推進しました。
 サプリメントについては、『ディアナチュラゴールド』の販売促進活動に努めるとともに、『シュワーベギンコ イチョウ葉エキス』を発売するなど、機能性表示食品の展開を強化しました。

以上の結果、食品事業の売上収益は、事業ポートフォリオの見直しの影響があったものの、主力ブランドを中心に好調に推移し、前年並みの1,108億2千4百万円となりました。
 事業利益については、主力ブランドが好調に推移したことや、原材料を中心とした製造原価の低減などにより、前期比21.4%増102億5千6百万円となりました。(営業利益は63.9%増113億7千7百万円

 

[国際事業]

国際事業につきましては、各事業の成長ポートフォリオの強化・拡充や統合シナジーの最大化を図るとともに、中国・東南アジアにおける成長基盤の拡大に取り組みました。

オセアニア事業については、飲料において、主力の炭酸飲料カテゴリーでブランド力の向上に努めたことに加え、市場が拡大しているミネラルウォーターカテゴリーでは『Cool Ridge』『Frantelle』などの販売強化に取り組みました。また、酒類においては、主力の低アルコール飲料のほか、『アサヒスーパードライ』などのビールや成長カテゴリーであるサイダー(りんご酒)における積極的な販売促進活動を展開し、安定成長に向けた事業構造を確立しました。

東南アジア事業については、マレーシアの『ワンダ』やインドネシアの『ICHI OCHA』など各国の主力ブランドを中心に販売促進活動を拡大しました。また、マレーシアにおいて新たに『カルピス』を展開、インドネシアにおいては『カフェラ エクスプレッソ』を発売するなど、自社ブランド商品の市場における存在感の向上に努めました。

中国事業については、飲食店における樽生ビール取扱店の新規開拓に加え、スーパーなどの量販店への提案型営業の強化などにより、『アサヒスーパードライ』の販売数量の拡大を図りました。

また、10月に欧州においてAnheuser-Busch InBev SA/NVから、同社が買収したSABMiller plcが保有していた『Peroni』『Grolsch』『Meantime』の各ブランド及び製造・販売会社を取得しました。これら各ブランドと『アサヒスーパードライ』の欧州での成長による事業基盤の更なる拡大に向けて、製造・販売・マーケティングなど幅広い分野でのシナジー創出に取り組みました。

以上の結果、国際事業の売上収益は、円高の影響があったものの、各地域の事業が堅調に推移したほか、欧州ビール事業の業績の上乗せもあり、前年並みの2,503億1千6百万円となりました。
 事業利益については、各地域の事業が堅調に推移したことに加え、製造原価低減の取組みによる効果もありましたが、豪州などの通貨安の影響や、欧州ビール事業買収に伴う一時的な費用の発生などにより、前期比11.5%減123億4千8百万円となりました。(営業損失は、前期に比べ160億5千4百万円改善し8百万円)

 

[その他の事業]

その他の事業につきましては、売上収益は、健康食品の販売促進活動を強化したことなどにより、前期比5.2%増1,022億7千9百万円となりました。
 事業利益については、貨物運送業における拠点の増設に伴う固定費の増加などにより、前期比18.3%減20億円となりました。(営業利益は前期比10.5%減19億8千3百万円

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が1,500億6千8百万円となりましたが、売上債権等の運転資金増減による法人所得税等の支払いによる減少があった一方で、減価償却費や減損損失等の非キャッシュ項目による増加があり、1,544億5千2百万円(前期比:379億8千2百万円の収入増)の収入となりました。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、欧州における子会社株式の取得などにより、2,685億7百万円(前期比:1,914億2千4百万円の支出増)の支出となりました。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に長期借入金の借入による金融債務の増加があり、1,195億5千4百万円(前期比:1,948億5百万円の収入増)の収入となりました。
 以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は51億6千8百万円増加し、484億5千9百万円となりました。

 

(3) 並行開示情報

連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」)により作成した要約連結財務諸表、要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更及びIFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。

なお、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。

また、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、百万円未満を切り捨てて表示しております。

 

① 要約連結貸借対照表

 

 

(単位:百万円)

 

前年度

(2015年12月31日)

当年度

(2016年12月31日)

資産の部

 

 

 流動資産

600,498

654,461

 固定資産

 

 

  有形固定資産

582,098

632,769

  無形固定資産

235,549

486,338

  投資その他の資産

483,408

359,620

  固定資産合計

1,301,056

1,478,728

 資産合計

1,901,554

2,133,190

負債の部

 

 

 流動負債

715,193

816,798

 固定負債

294,531

414,194

 負債合計

1,009,725

1,230,993

純資産の部

 

 

 株主資本

750,537

807,276

 その他の包括利益累計額

127,134

84,012

 非支配株主持分

14,157

10,908

 純資産合計

891,829

902,197

負債純資産合計

1,901,554

2,133,190

 

 

 

② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書
要約連結損益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前年度

(自 2015年1月1日

至 2015年12月31日)

当年度

(自 2016年1月1日

至 2016年12月31日)

売上高

1,857,418

1,890,310

売上原価

1,100,519

1,098,085

売上総利益

756,899

792,225

販売費及び一般管理費

621,779

651,437

営業利益

135,119

140,788

営業外収益

19,389

4,659

営業外費用

8,562

8,016

経常利益

145,946

137,430

特別利益

7,961

34,760

特別損失

41,157

48,875

税金等調整前当期純利益

112,750

123,315

法人税等

37,611

42,364

当期純利益

75,138

80,951

非支配株主に帰属する当期純利益

△1,288

△834

親会社株主に帰属する当期純利益

76,427

81,786

 

 

要約連結包括利益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前年度

(自 2015年1月1日

至 2015年12月31日)

当年度

(自 2016年1月1日

至 2016年12月31日)

当期純利益

75,138

80,951

その他の包括利益合計

△10,005

△43,764

包括利益

65,133

37,187

(内訳)

 

 

 親会社株主に係る包括利益

67,869

38,664

 非支配株主に係る包括利益

△2,736

△1,476

 

 

③ 要約連結株主資本等変動計算書

前年度(自 2015年1月1日 至 2015年12月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益
累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

745,120

135,970

15,419

896,510

 会計方針の変更に
 よる累積的影響額

△29,809

△277

 

△30,086

会計方針の変更を
反映した当期首残高

715,311

135,693

15,419

866,423

当期変動額

35,226

△8,558

△1,261

25,406

当期末残高

750,537

127,134

14,157

891,829

 

 

当年度(自 2016年1月1日 至 2016年12月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益
累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

750,537

127,134

14,157

891,829

当期変動額

56,739

△43,122

△3,249

10,368

当期末残高

807,276

84,012

10,908

902,197

 

 

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前年度

(自 2015年1月1日

至 2015年12月31日)

当年度

(自 2016年1月1日

至 2016年12月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

112,765

150,377

投資活動によるキャッシュ・フロー

△75,583

△267,169

財務活動によるキャッシュ・フロー

△73,044

122,290

現金及び現金同等物に係る換算差額

△4,558

642

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△40,421

6,140

現金及び現金同等物の期首残高

62,235

43,290

連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

21,476

現金及び現金同等物の期末残高

43,290

49,431

 

 

 

⑤ 要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更

 

前年度

(自 2015年1月1日

至 2015年12月31日)

当年度

(自 2016年1月1日

至 2016年12月31日)

1 連結の範囲に関する事項
 エノテカ株式会社他4社、Mountain Goat Beer Pty Ltdにつきましては株式を取得したため、株式会社シーエフアイにつきましては自己株式の取得に伴い当社の議決権比率が増加したため、株式会社ロッテアサヒ酒類につきましては株式の追加取得に伴い当社の議決権比率が増加したため、また、アサヒグループ食品株式会社、アサヒカルピスウェルネス株式会社、CALPIS VIETNAM CO.,LTD、CALPIS BEVERAGE U.S.A., INC.につきましては新たに設立したため、それぞれ当年度より連結の範囲に含めております。

2 持分法の適用に関する事項
 康師傅飲品控股有限公司の関係会社7社につきましては新規設立等のため、それぞれ当年度より持分法適用会社の範囲に含めております。株式会社シーエフアイ、株式会社ロッテアサヒ酒類につきましては連結の範囲に含めたため、持分法適用会社の範囲から除外しております。

3 会計方針の変更
 (1) 「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号 2012年5月17日。以下「退職給付会計基準」という。)及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第25号 2015年3月26日。以下「退職給付適用指針」という。)を、退職給付会計基準第35項本文及び退職給付適用指針第67項本文に掲げられた定めについて当年度より適用し、退職給付債務及び勤務費用の計算方法を見直し、退職給付見込額の期間帰属方法を期間定額基準から給付算定式基準へ変更するとともに、割引率の決定方法を平均残存勤務期間に近似した年数に基づく割引率から退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用する方法へ変更いたしました。
 退職給付会計基準等の適用については、退職給付会計基準第37項に定める経過的な取扱いに従っており、当年度の期首において、退職給付債務及び勤務費用の計算方法の変更に伴う影響額を利益剰余金に加減しております。
 この結果、当年度の期首の退職給付に係る資産が159百万円増加、退職給付に係る負債が2,653百万円減少し、利益剰余金が1,835百万円増加しております。なお、当年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益に与える影響は軽微であります。また1株当たり純資産額が、4円1銭増加しております。なお、1株当たり当期純利益金額及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額に与える影響は軽微です。

1 連結の範囲に関する事項
 Asahi Europe Ltdにつきましては新たに設立したため、Birra Peroni S.r.l.、Royal Grolsch N.V.、Meantime Brewing Company Ltd.、Asahi UK Ltd (旧Miller Brands (UK) Ltd.)につきましては株式を取得したため、それぞれ当年度より連結の範囲に含めております。
2 持分法の適用に関する事項
 康師傅飲品控股有限公司」の関係会社3社につきましては新規設立等のため、持分法の適用の範囲に含めております。
 「上海嘉柚投資管理有限公司」につきましては売却により持分法の適用の範囲から除外しております。

3 表示方法の変更
 「連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第2号 2013年9月13日)第39項に掲げられた定め等を適用し、当期純利益等の表示の変更及び少数株主持分から非支配株主持分への表示の変更を行っております。当該表示の変更を反映させるため、前年度については、要約連結財務諸表の組替えを行っております。

 (2) 「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 2013年9月13日。以下「企業結合会計基準」という。)、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 2013年9月13日。以下「連結会計基準」という。)、及び「事業分離等に関する会計基準」(企業会計基準第7号 2013年9月13日。以下「事業分離等会計基準」という。)、「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」(会計制度委員会報告第8号 2014年11月28日)等が2014年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用できることになったことに伴い、当年度よりこれらの会計基準等(ただし、連結会計基準第39項に掲げられた定めを除く。)を適用し、支配が継続している場合の子会社に対する当社の持分変動による差額を資本剰余金として計上するとともに、取得関連費用を発生した連結会計年度の費用として計上する方法に変更いたしました。また、当年度の期首以後実施される企業結合については、暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しを企業結合日の属する連結会計年度の連結財務諸表に反映させる方法に変更いたします。
 連結キャッシュ・フロー計算書においては、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得又は売却に係るキャッシュ・フローについては、「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得関連費用若しくは連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得又は売却に関連して生じた費用に係るキャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する方法に変更しております。
 企業結合会計基準等の適用については、企業結合会計基準第58-2項(3)、連結会計基準第44-5項(3)及び事業分離等会計基準第57-4項(3)に定める経過的な取扱いに従っており、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の当連結会計年度の期首時点の累積的影響額を資本剰余金及び利益剰余金に加減しております。
 なお、連結キャッシュ・フロー計算書においては、連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針第26-4項に定める経過的な取扱いに従っており、比較情報の組替えは行っておりません。
 この結果、当年度の期首において、のれん31,922百万円、資本剰余金22,443百万円、利益剰余金9,201百万円及び為替換算調整勘定277百万円が減少しております。また、当年度の営業利益が1,801百万円、経常利益及び税金等調整前当期純利益が2,225百万円増加しております。また、当年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより、連結株主資本等変動計算書の資本剰余金の期首残高は22,443百万円、利益剰余金の期首残高は9,201百万円、為替換算調整勘定の期首残高は277百万円減少しております。また1株当たり純資産額が、69円71銭減少し、1株当たり当期純利益金額及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額は、それぞれ4円84銭増加しております。

 

4 表示方法の変更
 (1)連結損益計算書関係
 アサヒグループの国内会計システムの統一を図る中で、グループ統一の勘定科目体系を採用したことに伴い区分掲記の見直しを行いました。
 この結果、前年度の連結損益計算書において「販売費及び一般管理費」の「その他」に含めて表示していた1,348百万円を「給料手当及び賞与」として組替を行っております。
 また、区分掲記の見直しと併せてアサヒグループの営業活動実態により即した明瞭な表示とするため、従来、「販売費及び一般管理費」で区分掲記していた「販売手数料」を「販売促進費」として表示することとしました。
 この結果、前年度の連結損益計算書において「販売費及び一般管理費」の「その他」に含めて表示していた6,223百万円を「販売促進費」として組替を行っております。

 (2) 連結キャッシュ・フロー計算書関係
 前年度において、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の「その他」に含めて表示しておりました「為替差損益」は、金額的重要性が増したため、当年度より区分掲記することとしました。この表示方法の変更を反映させるため、前年度の連結財務諸表の組替えを行っております。
 この結果、前年度の連結キャッシュ・フロー計算書において「営業活動によるキャッシュ・フロー」の「その他」に表示しておりました△415百万円を、「為替差損益」として組み替えております。

 

 

 

 

⑥ IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項

 

前年度

(自 2015年1月1日

至 2015年12月31日)

当年度

(自 2016年1月1日

至 2016年12月31日)

第5 経理の状況 連結財務諸表に対する注記「41 IFRSへの移行に関する開示」をご参照ください。

1 連結貸借対照表関係

 日本基準では退職給付に係る負債(資産)の純額(数理計算上の差異)の増減による資本の増減影響は、「その他の包括利益」に表示しておりますが、IFRSでは、「その他の資本の構成要素」に認識した上で「利益剰余金」に振り替えております。この影響により、当年度末におけるIFRSの「その他の資本の構成要素」及び「利益剰余金」は、日本基準の「その他の包括利益累計額」及び「利益剰余金」に比べてそれぞれ10,706百万円増加し、減少しております。

2 連結損益計算書関係

 日本基準では、のれんは、その効果が発現すると見積もられる期間で償却することとしておりました。IFRSでは、IFRS移行日以降、のれんの償却は行っておりません。この影響によりIFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費は10,814百万円減少しております。

 

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。

 

セグメントの名称

数量又は金額

単位

前年同期比

酒            類

2,400,921

KL

△1.0

 %

飲            料

514,976

百万円

3.2

 %

食            品

108,908

百万円

△2.9

 %

国            際

222,605

百万円

△2.3

 %

 

(注) 1 金額は、販売価格によっております。

2 酒類事業の生産数量、飲料事業及び食品事業の生産高には、外部への製造委託を含めております。

3 上記金額には消費税等は含まれておりません。

 

(2) 受注実績

当社では受注生産はほとんど行っておりません。

 

(3) 販売実績

当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。

 

セグメントの名称

金額

前年同期比

酒           類

976,649

百万円

0.6

飲           料

363,905

百万円

3.9

食           品

110,824

百万円

△0.4

国           際

250,316

百万円

△0.1

そ     の    他

102,279

百万円

5.2

調     整    額

△97,073

百万円

 

合           計

1,706,901

百万円

1.0

 

(注) 1 調整額はセグメント間取引であります。

2 上記金額には消費税等は含まれておりません。

3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

 

 

前年度

当年度

 

相手先

販売高

割合

販売高

割合

 

 

(百万円)

(%)

(百万円)

(%)

 

国分ホールディングス㈱

202,490

12.0

202,116

12.0

 

伊藤忠食品㈱

184,633

10.9

195,136

11.5

 

 

3 【対処すべき課題】

2017年度は、国内外で経済の不確実性が高まることが想定されますが、アサヒグループは『中期経営方針』に基づいて、国内では主力ブランドの価値向上を軸として収益基盤の更なる盤石化に取り組みます。また海外では、2016年に取得したイタリア、オランダ、英国の西欧ビール事業と、取得を予定しているチェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニアの中東欧ビール事業において、有力なプレミアムブランドや広範な販売網を生かしたシナジーを創出することなどにより、国内外で「稼ぐ力」を強化していきます。さらに、保有資産の見直しなど、資産・資本効率の向上を目指した事業ポートフォリオの最適化を推進していく方針です。

これらの取組みにより、2017年度の連結売上収益は1兆8,200億円、事業利益は1,650億円、営業利益は1,460億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は960億円を見込んでおります。

 

 

4 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。

(1)国内市場・経済の動向及び人口の変動による影響について

 アサヒグループの売上収益において酒類事業の占める割合は約56%となっており、またその大部分は国内市場での売上となっております。今後の国内景気の動向によって、酒類消費量に大きな影響を与える可能性が考えられます。また、日本国内での人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類の消費量の減少、また酒類のみならず飲料事業、食品事業における消費量にも影響を与え、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)税制改正について

 消費税や酒税の増税が行われた場合、販売価格の上昇によって酒類事業、飲料事業、食品事業における消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)特定商品への依存について

 アサヒグループの売上収益の中で重要な部分を占めるのが、ビール類販売による売上であります。アサヒグループとしましては、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させ売上収益を増加させるとともに、酒類事業以外に飲料、食品といった事業の拡大を図っております。しかしながら、市場の需要動向によってビール類消費量の大幅な減少を余儀なくされる等、予期せぬ事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)食品の安全性について

 アサヒグループは、最高の品質をお客様にご提供することを経営理念として掲げており、グループ内の万全な検査管理体制によって食品の安全性を確立しております。しかしながら、食品業界を取り巻く昨今の環境においては、放射能汚染、鳥インフルエンザ、残留農薬、遺伝子組替、アレルギー物質の表示、異物混入等様々な問題が発生しております。また、従来の食品安全の取り組みに加え、意図的な異物混入を防止するフードディフェンスの取り組みの必要性が増しております。アサヒグループとしましては、そのリスクを事前に察知あるいは評価し、顕在化する前に対処するよう取組みを強化しておりますが、アサヒグループの取組みの範囲を超える事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)原材料価格の変動について

 アサヒグループの製品に使用する主要な原材料の価格は、天候、自然災害等によって変動します。価格が高騰した場合には製造コストの上昇に繋がり、また市場の状況によって販売価格に転嫁することができない場合があり、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)気象条件、自然災害等による影響について

 アサヒグループの酒類及び飲料の売上については、異常気象や天候不順によって市場が低迷した場合、その販売量が影響を受ける可能性があります。また、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等の影響で製造、物流設備等が損害を被ることにより、資産の喪失、商品の滞留等による損失計上、設備復旧のための費用、生産、物流の停止による機会損失が考えられ、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)情報システムのリスクについて

 アサヒグループは、販促キャンペーン、通信販売等により多数のお客さまの個人情報を保持しております。アサヒグループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、システムを含め情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しております。しかしながら、停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクがあります。このような事態が発生した場合、営業活動に支障をきたし、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)海外事業におけるリスクについて

アサヒグループは、アジア、オセアニア及び欧米にて海外での事業を展開しております。アサヒグループとしましては、海外事業におけるリスクを事前に察知し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組んでおりますが、以下のような予期できない、または予測の範囲を超える変化があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
     ・ 予期できない租税制度や法律、規制等の改正
     ・ 政治的要因及び経済的要因の変動
     ・ 伝染病の流行による社会的・経済的混乱
     ・ 予測の範囲を超えた市場の変動、為替レートの変動
     ・ テロ・戦争の勃発による社会的・経済的混乱
     ・ 異常気象や地震等の自然災害の発生

 

(9)環境に関するリスクについて

 アサヒグループは、廃棄物再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守しております。しかしながら、関係法令等の変更によって、新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)法律、規制等の変更によるリスクについて

 アサヒグループは、国内で事業を遂行していくうえで、酒税法、食品衛生法、製造物責任法等様々な法的規制の適用を受けております。また海外事業を展開していくうえでも関係する法律、規制等の適用を受けております。これらの法律、規制等が変更された場合、または予期し得ない法律、規制等が新たに導入された場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)アルコール飲料規制の動きについて

 アサヒグループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任(CSR)を果たすため、広告の表現や容器への表示に関して細心の注意をはらうとともに、未成年飲酒・妊産婦飲酒の防止等、適正飲酒の啓発活動に積極的に取り組んでおりますが、国際的にアルコール問題が議論される中、予想を大幅に超える規制が行われた場合、酒類消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)訴訟のリスクについて

 アサヒグループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、また社員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしております。しかしながら、国内国外を問わず事業を遂行していくうえで、訴訟提起されるリスクを抱えております。万一アサヒグループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)保有資産の価格変動について

アサヒグループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)退職給付関係について

 アサヒグループの従業員及び元従業員の退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で使用される割引率等に基づき算出されております。制度資産の公正価値変動、金利の変動、年金制度の変更等、前提条件に大きな変動があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)事業・資本提携について

 アサヒグループは、中期経営方針に沿って、成長基盤確立の一環として国内外他社との事業・資本提携を推進しています。しかしながら、アサヒグループ、提携先及び出資先を取り巻く事業環境の変化等の影響によって、当初想定していたシナジー効果を得られない可能性があります。また、そのような環境変化によって、提携先及び出資先の事業、経営及び財務状況の悪化等が生じた場合、アサヒグループの事業、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 また、出資先が業績不振となり、出資に伴い発生した「のれん」等について多額の減損損失を計上する必要が生じた場合、アサヒグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

業務提携等に関する契約

会社名

契約事項

契約締結先

締結年月

発効年月

有効期限

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国における「アサヒスーパードライ」及び「アサヒビール」の製造ライセンス供与のための「深圳青島啤酒朝日有限公司」の合弁契約

伊藤忠商事株式会社
日鉄住金物産株式会社
(中国)
青島啤酒股份有限公司

1997年
10月

1998年
8月

2024年
7月

アサヒビール
株式会社
(連結子会社)

沖縄県及び鹿児島県奄美大島群島を除く日本における「アサヒ オリオンドラフト」の販売契約

オリオンビール株式会社

2002年
11月

2002年
11月

自動更新

アサヒビール
株式会社
(連結子会社)

沖縄県における「アサヒスーパードライ」等の製造販売ライセンスの供与契約

オリオンビール株式会社

2003年
5月

2003年
5月

自動更新

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

飲料事業、チルド事業、食品事業、海外事業、調達・物流等の機能面における業務提携契約

カゴメ株式会社

2007年
2月

2007年
2月

自動更新

アサヒビール
株式会社
(連結子会社)

欧州ロシア・周辺11カ国における「アサヒスーパードライ」の製造販売ライセンスの供与契約

(ロシア)
Baltika Breweries

2008年
1月

2008年
1月

2016年
12月
(更新規定あり)

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

台湾におけるアサヒグループ製品販売のための「三商朝日股份有限公司」の合弁契約

(台湾)
三商行股份有限公司

2008年
9月

2008年
9月

無期限
(但し一定の終了事由あり)

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国におけるビール生産・販売等の事業についての戦略的提携

(中国)
青島啤酒股份有限公司

2009年
8月

2009年
8月

青島啤酒股份有限公司の株式を保有しなくなった12ヶ月後

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国における飲料事業「康師傅飲品控股有限公司」の株主間契約

康師傅控股有限公司
開曼島商頂新控股有限公司 他

2010年
9月

2010年
11月

無期限
(但し一定の終了事由あり)

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国における食品事業「開曼島商頂新控股有限公司」の株主間契約

(英領ヴァージン諸島)
Ho Te Investments Limited
伊藤忠商事株式会社他

2015年
3月

2015年
3月

無期限
(但し一定の終了事由あり)

アサヒ飲料
株式会社
(連結子会社)

「シャンソン十六茶」バルクの継続的売買及び商標の使用許諾に関する契約
(注)

株式会社シャンソン化粧品

1992年
12月

1992年
12月

自動更新

 

(注)  「シャンソン十六茶」バルクとは、アサヒ飲料社商品「十六茶」の原料茶葉であります。

 

 

6 【研究開発活動】

アサヒグループでは、第6次中期経営計画の達成に向けて、酒類、飲料、食品の各事業において革新的で差別化された商品の開発、及びそのベースとなる技術開発を行っています。また、アサヒグループの次世代を担う新たな事業の創出のための研究開発も行っています。さらに、国内外の社外研究機関を活用し、研究開発のスピードアップを図っています。
 当年度におけるグループ全体の研究開発費は、9,550百万円です。なお、研究開発費については、研究開発にかかわる費用をセグメント別に関連づけることが困難であるため、その総額を記載しています。
 

[酒類事業] 
(商品開発関連)
 アサヒビール㈱は、“究極のコクキレ”(※1)に加え“糖質50%オフ”(※2)を実現した本格生ビール『アサヒ       ザ・ドリーム』を発売しました。『アサヒ ザ・ドリーム』は、麦芽使用比率を通常の1.2倍に高め、しっかりとしたコクのある味わいをお楽しみいただけるとともに、高度な酵母管理技術を採用し発酵度を極限まで高めることで、爽快なキレ味を実現し、合わせて“糖質50%オフ”の機能を備えました。

「スーパードライ」ブランドからは、超辛口の「スーパードライ」、『アサヒスーパードライ エクストラシャープ』を発売しました。ブレミアム商品である「ドライプレミアム」については、クオリティアップを行い、コク・香り・アルコール分のすべてにおいて深みを追求した『アサヒドライプレミアム豊醸』を発売しました。『アサヒドライプレミアム豊醸』は、濃厚で深みのある味わいと広がりのある華やかな香りを実現するため、麦芽量を1.2倍に高めるとともに、希少素材であるアマリロホップとファインアロマホップを採用したプレミアムビールです。また、濃厚な味わいと華やかな香りに合わせてアルコール度数を6.5%に高めることで、しっかりとした飲みごたえを実現しました。また、ベルギービール「ヒューガルデン」ブランドから、『ヒューガルデンホワイト』、『ヒューガルデンロゼ』を発売しました。台湾においては、台湾限定で販売しているアサヒブランド『朝日乾杯』をリニューアルしました。

発泡酒市場においては、糖質ゼロ(※3)発泡酒のパイオニアである『アサヒスタイルフリー』をクオリティアップしました。また、プリン体0(※4)、糖質ゼロ、人工甘味料0、食物繊維入りが特長の『アサヒスタイルフリー パーフェクト』を発売し、期間限定フレーバーとして、『アサヒスタイルフリー フルーツビアカクテル キウイ』、『アサヒスタイルフリー フルーツビアカクテル ベリーミックス』をそれぞれ発売しました。また、甘酸っぱさが特長のカシスリキュールを使用したビアカクテル『アサヒ カシスビアカクテル』を、期間限定で発売しました。また、オリオンビール㈱との共同開発商品『アサヒオリオン シークァーサーのビアカクテル』のクオリティアップを行いました。

新ジャンル市場においては、「クリアアサヒ」ブランド3商品、『クリアアサヒ』、『クリアアサヒ プライムリッチ』、『クリアアサヒ 糖質0(※3)』のクオリティアップを行いました。『クリアアサヒ プライムリッチ』では、「国産ゴールデン麦芽」を新たに一部使用、「アロマホップ」100%使用により、「プライムリッチ」ならではの“最高級のコク(※5)”と“最高級の香り(※6)”を強化しました。また、関西エリア限定、数量限定で『クリアアサヒ 関西仕立て』、期間限定で『クリアアサヒ 桜の宴』、『クリアアサヒ クリスタルクリア』、『クリアアサヒ 秋の琥珀』、『クリアアサヒ 吟醸』、『クリアアサヒ 初摘みの贅沢』をそれぞれ発売しました。また、プリン体0、糖質0の『アサヒ オフ』はクオリティアップを行い、新たに人工甘味料0を実現し、さらに厳選した麦芽を使用したことで、『アサヒ オフ』ならではの麦本来の飲みごたえを実現しました。また、リオデジャネイロ2016オリンピック日本代表選手団応援商品として、『アサヒ ヴィクトリーロード(VICTORY ROAD)』、『アサヒ ゴールドラッシュ(GOLD RUSH)』をそれぞれ発売しました。また、オリオンビール㈱との共同開発商品『アサヒオリオン 沖縄だより』を発売しました。

ビールテイスト清涼飲料市場においては、『アサヒドライゼロ』のクオリティアップを実施しました。今回のクオリティアップでは、ビールに近い味わいはそのままにホップによる苦みのバランスを調整することで、「より食事に合うすっきりとした後味」を実現しました。また、特定保健用食品のビールテイスト清涼飲料として、『アサヒ ヘルシースタイル』を発売しました。『アサヒ ヘルシースタイル』は、「食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにするビールテイスト清涼飲料」として、初めて消費者庁長官に許可された特定保健用食品です。ビールらしいコクと、食事に合うすっきりとした味わいを両立した“カロリーゼロ(※3)”“糖質ゼロ”のビールテイスト清涼飲料です。

RTD(※7)市場においては、新ブランド「アサヒもぎたて」を発売しました。「アサヒもぎたて」は、収穫後24時間以内に搾汁された果汁のみを使用し、独自技術の「アサヒフレッシュキープ製法」(※8)を採用することで、果実本来の香味成分の劣化を抑制し、作りたてのおいしさと新鮮な果実の味わいを実現した缶チューハイです。「アサヒもぎたて」は、この“新鮮”という価値にこだわり、約3年かけて開発した新ブランドです。「プリン体ゼロ(※4)・糖類ゼロ(※3)・着色料ゼロ」という機能性に加え、ウオッカをベースとした「アルコール度数9%」のしっかりとした飲みごたえも特長です。基幹フレーバーとして『新鮮レモン』、『新鮮グレープフルーツ』、『新鮮ぶどう』、『新鮮オレンジライム』、期間限定フレーバーとして『新鮮白桃』、『新鮮シークァーサー』をそれぞれ発売しました。

「ウィルキンソンRTD」ブランドでは、『トニック+ウオッカ』、『ジンジャエール+ウオッカ』をそれぞれリニューアルしました。また、新フレーバーとして『ウィルキンソンジントニック+レモンライム』を発売しました。「アサヒカクテルパートナー」ブランドからは、期間限定フレーバーとして『ラムカイピリーニャ』、『ラムオレンジカーニバル』、『デビルブルーカクテル』、『エンジェルレッドカクテル』、『ベリーベリースパークリング』、『シャルドネスパークリング』をそれぞれ発売しました。「アサヒカクテルパートナー」<特濃シリーズ>からは、新フレーバーとして『はちみつビターオレンジ』、期間限定フレーバーとして『はちみつ日向夏&甘夏』、『はちみつ林檎』、『はちみつ柚子みかん』をそれぞれ発売しました。「ニッカハイボール」ブランドでは、「ニッカハイボール」の商品名を新たに『レモン味のニッカハイボール爽やかレモン』と変更し、期間限定フレーバーとして『ゆずみつ』を発売しました。「ブラックニッカ」ブラントでは、『ブラックニッカ クリアハイボール』をリニューアルしました。「カルピスサワー」ブランドからは、新フレーバーとして『手摘み白桃』、期間限定フレーバーとして『マスカットオブアレキサンドリア』、『濃い贅沢』、『濃い贅沢フルーツミックス』、『濃い贅沢完熟いちご』をそれぞれ発売しました。「アサヒ辛口焼酎ハイボール」ブランドでは、基幹4フレーバーの『プレーン』、『ドライクリア』、『ドライレモン』、『ドライシークァーサー』をそれぞれリニューアルしました。また、新フレーバーとして『ドライグレープフルーツ』、期間限定フレーバーとして『ドライ梅』、『ドライ夏みかん』、『ドライ緑茶』をそれぞれ発売しました。「アサヒハイリキザ・スペシャル」ブランドからは、新フレーバーとして『ソルティライチサワー』、期間限定フレーバーとして『チェリーパンチサワー』、『トロピカルひんやりマンゴー』、『ブルーハワイサワー』をそれぞれ発売しました。「アサヒSlat(すらっと)」ブランドでは、基幹6フレーバー『レモンスカッシュサワー』、『グレープフルーツサワー』、『シャルドネサワー』、『白桃サワー』、『アロエ&ホワイトサワー』、『シークァーサーサワー』をそれぞれリニューアルしました。また、期間限定フレーバーとして『さくら&さくらんぼサワー』、『アサイー&ブルーベリーサワー』、『塩レモンサワー』、『塩グレープフルーツサワー』、『ブラッドオレンジ&アプリコットサワー』、『ゆずれもんサワー』をそれぞれ発売しました。「アサヒチューハイ果実の瞬間」ブランドからは、期間限定フレーバーとして『国産桃とさくらんぼ』、『愛媛産いよかん』、『瀬戸内春かんきつ贅沢ミックス』、『山梨産完熟ピオーネ』、『薫る秋国産和梨』をそれぞれ発売しました。

サワーテイスト清涼飲料市場においては、食事の脂肪や糖分が気になる方に適した機能性表示食品のサワーテイスト清涼飲料「アサヒスタイルバランス」から、新フレーバーとして『ゆずサワーテイスト』、『コーラサワーテイスト』、『梅サワーテイスト』、『ジンジャーサワーテイスト』をそれぞれ発売しました。

カクテルテイスト清涼飲料市場においては、「アサヒゼロカク」ブランドから、期間限定フレーバーとして『チェリー香るピンクサングリアテイスト』、『パイン&ライムスパークリング』、『ピーチロゼスパークリング』、『完熟みかんスパークリング』、『いちごスパークリング』をそれぞれ発売しました。

焼酎市場においては、「かのか」ブランドから、自然由来の香りにこだわった氷を入れて注ぐだけで楽しめるRTS新商品として『季節香るかのか 大人のカシス』と『季節香るかのか 和みのゆず』を発売しました。また、『季節香る かのか ホットハニージンジャー』を期間限定で発売しました。

ワイン市場においては、「サントネージュ リラ」ブランドから『サントネージュ リラ フルーツ いちごとロゼワイン』、『サントネージュ リラ ぶどう香る酸化防止剤無添加ワイン(赤・白)』をそれぞれ発売しました。また、サントネージュワイン㈱が山梨県に所有する自社畑「牧丘 倉科畑」で収穫したぶどうを100%使用した日本ワイン『サントネージュ エクセラント 牧丘 倉科畑収穫』ブランドから、新ヴィンテージとして『サントネージュ エクセラント 牧丘 倉科畑収穫カベルネ・ソーヴィニヨン2014』、『サントネージュ エクセラント 牧丘 倉科畑収穫シャルドネ2015』をそれぞれ発売しました。

焼酎市場においては、「かのか」ブランドから、RTS(※9)の新商品『季節香るかのか 太陽のライチ』を発売しました。発売60周年を迎えた国産リンゴ100%のスパークリングワイン「ニッカ シードル」ブランドにおいては、『ニッカ シードルスイート』、『ニッカ シードルドライ』、『ニッカ シードルロゼ』をそれぞれリニューアルし、期間限定で『ニッカ シードル紅玉リンゴ』、『ニッカ シードルトキりんご』、『ニッカ シードルヌーヴォスパークリング2016』をそれぞれ発売しました。

※1:「コクキレ」とは、当社が目指すコクとキレの最適なバランスのことです。

※2:日本食品標準成分表2015年版(七訂)による。

※3:栄養表示基準による。以下同じ

※4:100ml当たりプリン体0.5mg未満を「プリン体0」または「プリン体ゼロ」と表示しています。以下同じ

※5:発泡酒をベースとした当社「リキュール(発泡性)①」(限定商品を除く)における原麦汁エキス濃度の比較において。

※6:発泡酒をベースとした当社「リキュール(発泡性)①」(限定商品を除く)における複数の香気成分バランスの比較において。

 ※7:「Ready to Drink」の略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
 ※8:果実本来の香味成分の劣化を抑制し、果実のフレッシュな味わいをキープする製法。特許出願中の独自技
   術を掛け合わせています。以下同じ。
 ※9:Ready to Serveの略で、氷を入れて注ぐだけで楽しめるスピリッツやリキュールのことです。
 

(技術開発関連)
 アサヒビール㈱の『アサヒ ザ・ドリーム』は、アメリカの国際的ビールコンテストである「ワールドビアカップ2016」(以下、「WBC2016」)のライトラガー部門において、シルバーメダルを獲得しました。「WBC2016」では、55カ国、1,907ヶ所の醸造所から6,596品のエントリーがあり、31カ国から選ばれた253名の審査員によって審査されました。「WBC」はブリュワーズアソシエイションによって、ビール醸造における優れた技術を賞賛するために、1996年から2年に1度開催されています。

また、『アサヒ ザ・ドリーム』は、ベルギーの国際的なビールコンテストである「ブリュッセルビアチャレンジ2016(以下、「BBC2016」)」のラガー・ライトラガー部門において、ゴールドメダルを獲得しました。「WBC2016」でのシルバーメダル受賞に続き、『アサヒ ザ・ドリーム』の品質の高さが世界的に評価されたことになります。「BBC2016」においては、36ヶ国から1,250ブランドのエントリーがあり、国際的に著名な審査員80名によって厳正なる審査のうえ、それぞれの賞が決定されました。「BBC2016」は国際的なビールコンテストであり、世界中のビール生産者が、最高の品質を競い合う機会を提供することを目的に、2012年から毎年開催されています。
 『クリアアサヒ プライムリッチ』は、iTQi(※1)の世界的な食品・飲料品のコンテストにおいて、“極めて優秀”と認められた製品に贈られる、最高レベルの優秀味覚賞3ツ星を受賞しました。ニッカウヰスキー㈱が製造する『竹鶴ピュアモルト』・『フロム・ザ・バレル』・『カフェグレーン』の全3アイテムは、世界的な酒類品評会である「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2016」において金賞を受賞しました。ニッカブランドのウイスキーが金賞を受賞するのは9年連続となります。ISCは、毎年イギリスの酒類専門出版社「ドリンクス・インターナショナル」が主催している酒類品評会です。ウイスキー部門のほか、ブランデー、テキーラ、ジン、ウォッカなどの部門があり、審査はブラインド・テイスティングによって行われます。各部門のカテゴリーから、金賞、銀賞、銅賞などが選ばれます。ウイスキー部門については、世界の著名なウイスキー蒸溜所のブレンダーやディスティラーなどが審査員となっています。

 ※1:iTQi(International Taste & Quality Institute、国際味覚審査機構)とは、ベルギーブリュッセルに本部を置き、世界中の食品や飲料品の味覚と品質を審査し、優れた製品を表彰・プロモーションする機構です。審査員はヨーロッパで最も権威ある15の調理師協会および国際ソムリエ協会(ASI)に属する一流シェフやソムリエで構成されています。

 

[飲料事業] 
(商品開発関連)
 アサヒ飲料㈱は成長戦略として「確固たるブランドの育成」を掲げ、「重点6ブランドの育成」と「健康を軸とした商品開発」の2軸にて商品開発を行って参りました。

「重点6ブランドの育成」については、「ワンダ」、「三ツ矢」、「カルピス」、「十六茶」、「おいしい水」、「ウィルキンソン」の6ブランドを重点ブランドと位置付け、積極的なマーケティング投資を行う事で、より強固なブランドへの成長を目指して参りました。

「ワンダ」ブランドでは、『モーニングショット』、『金の微糖』などを中心とした主力商品の継続育成に加え、伸長するボトル缶市場に対して新商品の展開を行いました。『ワンダ モーニングショット』は、香り高く風味豊かなアラビカ種の新豆を100%使用し、コーヒー抽出時や充填時の酸化を防止する抗酸化製法で仕上げることで、“焼きたて、挽きたて、淹れたて”の目覚めるおいしさを実現しています。本年は新たに、コーヒー豆の焼き方を4種類→5種類に増やすことで、「コーヒー感」を強化しました。

ボトル缶市場に向けては、創業80年を超える老舗珈琲店「丸福珈琲店」監修のボトル缶コーヒー「ワンダ 極」シリーズを4月より展開しました。当社の調べでは、コーヒー飲用機会の拡大に伴い、コーヒーに「品質の良さ」を求めるお客様が増えてきています。本商品は老舗珈琲店「丸福珈琲店」監修という「品質」をお客様にご提案する商品です。中味は、「深煎りの極み」と呼ばれる「丸福珈琲店」独自の焙煎方法を参考にコーヒー豆を種類ごとに焙煎し、深煎り豆を中心に最適なバランスでブレンドしています。

 

「三ツ矢」ブランドにおいては、最重点商品である『三ツ矢サイダー』、ならびに従来の『三ツ矢サイダー ゼロ』から炭酸感をアップさせ刷新した『三ツ矢サイダー ゼロストロング』をはじめ、透明果汁を使用し着色料を不使用とした透明な果汁炭酸「三ツ矢澄みきるサイダー」シリーズを発売し、透明炭酸の商品力強化と新たな魅力のご提案に取り組みました。また果汁本来のおいしさを追求しご好評いただいております「ぜいたく三ツ矢」シリーズは、従来の「産地・品種指定」に加え新たに「国産果汁」を約束とし、日本の果実の新たな魅力をご提案し、果汁炭酸市場での「三ツ矢」ブランドの存在感の拡大を目指して参りました。

 

「カルピス」ブランドにおいては、コンクタイプの「カルピス」の果汁入りバリエーションとして、通年販売の『巨峰』、に加え、半年毎に『「カルピス」マンゴー』と『「カルピス」みかん』を開発するとともに、季節限定の『キウイ』『白桃』『ラ・フランス』『メロン』および歳暮向けの『はちみつレモン』『苺リッチ』を開発しました。新しい試みとしては300ml容量の牛乳で割って飲む「カルピス」スムージー2品(『アサイー&バナナ』『ヨーグルト&ベリーミックス』)を開発しました。

果汁入りの「カルピス」RTDとしては『とけあうレモン&「カルピス」』『とけあうりんご&「カルピス」』『とけあう葡萄&「カルピス」』『ミルク&「カルピス」いちご』『とけあう白桃&「カルピス」』を開発いたしました。新しい提案としては、ゼリー飲料にナタデココの粒を加え、食感を楽しめる『ふるぷる「カルピスゼリー」』『ふるぷる「カルピスゼリー」オレンジ』を開発致しました(セブン&アイ・ホールディングス様限定発売)。また 「カルピス」そのものの美味しさをお楽しみいただく『濃いめの「カルピス」 』を開発し、お客様の高い評価をいただきました。

「カルピスソーダ」のバリエーションとしては、『爽やかライチ』『夏の爽やかパイン』『マスカット』『白桃』を開発しました。また濃いめに炭酸で割った「カルピス」の美味しさをお楽しみいただく『「カルピスソーダ」濃いめ』も『濃いめの「カルピス」』同様にご好評いただきました。これら数多くの「カルピス」ブランド製品を開発し、「カルピス」ブランドの拡大と価値向上に努めて参りましたが、これからも乳酸菌、乳酸菌飲料、乳性飲料の新しい価値を提案し続けて参ります。

 

「十六茶」ブランドにおいては、『アサヒ 十六茶』が2005年から「カフェインゼロ」として生まれ変わり、2016年で12年目をむかえました。無糖茶市場の流れをとらえるとともに、「健康的な水分補給」、「明るく元気」というブランドコンセプトの浸透が進み、2010年から7年連続で成長を続け、2015年までで5年連続2,000万箱を突破しました。 2016年は、「十六茶」の健康価値の更なる強化に向け、中味・パッケージともに変更し、ブランド価値に磨きをかけました。 中味は、近年注目の健康素材「たんぽぽの根」「ヒマワリの種」を新たに採用し、「カフェインゼロ」というこだわりのもと、すっきりゴクゴク飲めるおいしさに仕上げました。

また、新たな取り組みとして『アサヒ 十六茶 ご当地素材ブレンド』を発売しました。全国を7地域(北海道、東北、関東・甲信越、中部・北陸、関西、中国・四国、九州・沖縄)に分けて、当社が分析した各地域の味の嗜好性を参考に、その地域で採れた素材をブレンドしたご当地商品です。ご当地ならではの素材は、その地域で親しまれている素材であること、お茶としておいしく飲める素材であること、東洋健康思想に基づいて体の健康に役立つ素材であることを重視して選定しました。「十六茶」ならではのすっきりとした味わいはそのままに、選定した素材の特長を活かしつつ、地域の嗜好性に合った味わいに仕立てました。

「おいしい水」ブランドにおいては「人はもっと、自然に。健康に。」を新ブランドスローガンに、お客様がミネラルウォーターに求める「自然」「健康」両方のニーズを満たすブランドにリニューアルしました。定番商品である『アサヒ おいしい水六甲』『アサヒ おいしい水富士山』は「自然のおいしさがそのまま生きている水」をコンセプトに、独自のろ過製法にて、加熱殺菌せずにボトルに詰めた自然のおいしさを訴求して参りました。それ加え、既存商品『アサヒ 富士山のバナジウム天然水』も2016年より「おいしい水」ブランドとして展開することで、「おいしい水」ブランドのブランド価値向上を図りました。また「健康」ニーズを満たす商品として、「おいしい水」ブランド初の新商品となる『アサヒ おいしい水プラス』を発売しました。『アサヒ おいしい水プラス』は東洋の健康思想に基づいた7種類の素材を選定し、伸長するウォーター系飲料市場に向け「健康水」という新たな価値を提案しました。また、「おいしい水プラス」シリーズ第二弾商品として、当社独自の素材である「カルピス」の乳酸菌を加えた『アサヒ おいしい水プラス「カルピス」の乳酸菌』を発売しました。本商品では特許出願中である「クリアウォーター製法」という当社独自の技術で透明な液色を実現しました。

 

「ウィルキンソン」ブランドにおいては、炭酸水の直接飲用という新しいスタイルを提案し、炭酸水市場で売上No.1を記録、独自のポジションを確立した『ウィルキンソン タンサン』は、「シャープな爽快感」という固有の価値をさらに磨き上げるためガス圧を強化し、ブランド価値の強化を目指して参りました。あわせて『ウィルキンソン タンサン レモン』についてもガス圧を強化し、商品の魅力度向上を目指しました。また「ウィルキンソン タンサン」シリーズラインナップに「炭酸水なのにコーラ!」という新感覚の刺激、『ウィルキンソン タンサン ドライコーラ』を加え、炭酸水市場に新たな価値の提案を行い、「ウィルキンソン」ブランドの成長に貢献いたしました。

 

「健康を軸とした商品開発」については、確かなエビデンスに裏付けされた価値を有する「特定保健用食品」「機能性表示食品」の製品だけでなく、「安全」「安心」といった各ブランドがもつベーシックな「健康」価値を強化することで、『アサヒ飲料=健康に強みを持つ会社』というイメージの醸成を目指してきました。
具体的な商品としては、炭酸飲料初となる2つのヘルスクレームを持つWトクホ炭酸『三ツ矢サイダーW』を発売。食物繊維(難消化性デキストリン)の働きにより、「食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」、「食後の血糖値の上昇をおだやかにする」2つの保健用途を持つ特定保健用食品として、既存のトクホ炭酸ユーザーとは異なる新規ユーザー層の開拓にチャレンジしました。「三ツ矢サイダー」ならではの強めの炭酸の刺激、爽やかな甘さとすっきりとした後味はそのままに、長年培った当社の甘味料使用技術によりカロリーゼロを実現することで、炭酸飲料は好きだけどカロリーが気になるお客様にも安心して手に取っていただけるWトクホ炭酸を目指しました。

さらに、「カルピス」由来の乳酸菌科学に基づく乳酸菌「プレミアガセリ菌CP2305」を配合した乳性飲料『届く強さの乳酸菌』を発売。本製品は2014年に一般の清涼飲料水として発売し、ご好評をいただいておりましたが、本年、機能性表示食品としてリニューアル発売致しました。機能性表示食品の届出が受理され、『本品には「プレミアガセリ菌CP2305」(L. gasseri CP2305)が含まれるので、腸内環境の改善に役立つ機能があります。』と製品に表示する事で、お客様の乳酸菌に対する機能期待の高い、腸内環境の改善にお応えできる製品となっております。こうした新たな制度を活用しながら、乳酸菌の持つ機能を分かりやすくお客様に伝え、新しい価値の提案を引き続き行って参ります。

㈱エルビーにおけるデイリーチルド及びロングライフ(LL)紙容器飲料では、基幹カテゴリーであるデイリーチルド無糖茶とLL飲料の宅配向け商品に、新たな提案として機能性表示食品の開発に取組みました。デイリーチルド無糖茶には、食事の糖と脂肪の吸収を抑える『食事のおともに緑茶(1L)』を、宅配向け商品では『ヒザ関節の動きの悩みを緩和 グルコサミン乳酸菌飲料風味』と『肌の潤いに役立つ ヒアルロン酸ヨーグルト風味』の2品を発売し、お客様の健康ニーズに応える商品として定着を目指します。

カロリーゼロのデイリーチルド紅茶飲料として好評を得ている「大人の紅茶」シリーズでは、新たに「糖質0」も訴求に加えた「ダブル0」の商品を投入し、お客様のより高い健康志向に対応すると共に、競合他社製品との差別化を図りました。

デイリーチルド果汁飲料では、こだわりの果汁をみずみずしいおいしさに仕上げ、健康成分が手軽に摂取できる「潤う果実」シリーズを500ml容器で新たに展開しました。

グループシナジーとしては、「カルピス」ブランドにて基幹商品となる「味わいカルピス」1Lシリーズの強化策として、『味わいカルピス』のリニューアル及び『国産白桃』、『ぶどう』の発売に加え、最盛期に『マンゴー』を投入、定番商品としての基盤をさらに増強しました。その他、タピオカ、ナタデココ、アロエ入りの「食感」シリーズ、クリームやミルクが入り、濃厚な味わいが楽しめる500ml商品の充実を図りました。LL商品においては、健康ニーズにお応えするビタミンやコラーゲン入りの「カルピス」商品、『メロン&「カルピス」』、『信州産巨峰&「カルピス」』を新たに発売いたしました。その他、カップ飲料にて『「カルピス」ゼリー』、『タピオカ&「カルピス」』を展開しました。

デイリーチルド乳飲料では、アジアで親しまれている飲料をヒントにして日本人向けにアレンジした『スイカオレ』と『パパイヤオレ』を「一度は飲んでほしい」シリーズとして発売し、これまでにない新しいおいしさを提案しました。

グループシナジーとしては、「カルピス」ブランドにて基幹商品となる「味わいカルピス」シリーズにおいて、製品のリニューアル、季節の催事に合わせた「世界名作劇場」パッケージの投入、夏季の新品種『パイナップル』の500ml容量の追加発売など、強化策を積極的に実施し、販売数量を大きく伸ばしました。「カルピス」ブランド以外では、新たに「なだ万」と共同で『甘酒・南高梅仕立て』の開発に取組み、東日本エリアにて発売し好評を得ました。

また、グループ外の企業とのアライアンス強化にも取組み、ヘアケア商品を販売する「アンファー社」と共同開発でLL飲料の『AGAプロテインドリンク カフェオレ味』を発売し、新たな顧客獲得を図りました。
 

(技術開発関連)
  アサヒ飲料㈱では「強靭な収益構造の確立」を目指し、生産効率の最大化と操業度向上に向けた技術開発を行って参りました。具体的には、お茶用アセプティックHOT/COLD兼用350mlボトルの開発を行い、軽量化を実現しPET使用量の削減、ならびに同一金型を使用することにより、型替時間を削減しPET成型工程の省力化と効率化を可能にしました。また、製品、工程、苦情品解析に必要な安全・安心技術(新規分析技術、解析技術)の拡充と有害微生物の検出技術、同定技術、静菌技術の研究についても継続して取り組んで参りました。それに加え、アセプティックライン(無菌充填製造ライン)重点整備における無菌性検証期間短縮技術の開発により、本年、富士山工場における工場稼働日数を年間で2日間増加させ順次他工場にも展開予定です。

また、美粧性を追求した容器開発として江戸切子伝統工芸士と共同で「六条麦茶」用として、江戸切子デザインの660mlPETボトルを開発、市場展開を実施し、(公社)日本包装技術協会 2016年日本パッケージングコンテスト ジャパンスター賞・第54 回全日本包装技術研究大会 優秀発表者、アジア包装連盟アジアスター賞、(公財)日本デザイン振興会2016年度グッドデザイン賞を受賞しました。

また、お茶用アセプティックHOT/COLD兼用ボトルの開発を行い、それぞれに高温販売適性と自販機適性を持たせるとともに、軽量化を実現しPET使用量の削減、ならびに同一金型を使用することにより、型替時間を削減しPET成型工程の省力化と効率化を可能にしました。

さらに、環境配慮型の資材開発においては、循環型社会に繋がる環境負荷低減として、植物由来原料を使用した資材開発を行い、『三ツ矢サイダ―』1.5L製品に使用するボトル、キャップ、ラベルの全資材に植物由来原料を一部採用する商品の展開を業界で初めて実現いたしました。

 

[食品事業]
(商品開発関連)
 アサヒグループ食品㈱の食品菓子事業では、錠菓市場シェアNo.1ブランド「ミンティア」のさらなる成長のため、サブカテゴリーである「ミントのおいしさが味わえて、強い清涼感が持続する大粒タイプのミントタブレット」の「ミンティアブリーズ」シリーズに新製品『クリスタルシルバー』を投入しました。この商品は、甘さを抑えたクリアな味わいと強い清涼感が両立した新しい味感を実現したものです。また、キャンディ、グミの両カテゴリーでは、これまで発売している「三ツ矢サイダー」、「バヤリース」、「カルピス」というアサヒ飲料ブランド商品に加え、アメリカの国民的果汁飲料「ウェルチ」ブランドの新製品を投入しました。この「ウェルチ」ブランドの商品にはジュースで使用しているコンコードグレープ果汁を配合し、ブランド特有の芳醇なグレープ風味を再現しています。2016年に食品菓子事業で発売した製品は、新製品90アイテム、リニューアル品32アイテムの合計122アイテムとなりました。

一方、アサヒヘルスケア事業におきましては、「スリムアップスリム」ブランドの主力商品であるダイエットシェイクに話題の酵素と日本由来のスーパーフードである抹茶を配合した新製品『酵素+スーパーフード抹茶ラテ』を発売し、市場から高い評価を受けています。また、昨年4月からスタートした機能性表示食品制度の新製品として、「血圧が高めの方の血圧低下サポート」を訴求した『サーデンペプチド』を発売しました。

和光堂事業では、和光堂ベビーフード「グーグーキッチン」のシリーズ40品をリニューアルしました。豊富なラインナップとし、7大アレルゲン不使用商品を増やし、より魅力ある商品の拡充を図りました。和光堂ブランドを早期に認知いただくため、妊娠中・授乳中のママ向け商品「ママスタイル」として、キャンディ、粉末飲料、サプリメントの各形態にて2品の追加を含めリニューアルしました。『和光堂レーベンスミルクはいはい』、『和光堂フォローアップミルクぐんぐん』のリニューアルを8年ぶりに行い、赤ちゃんとお子さまの成長に寄与するミルクとして商品価値を高めました。ベビーフード粉末飲料「飲みたいぶんだけ」6品のリニューアルを行うことにより商品特長を分かりやすく伝える販売促進活動に取組み中です。また、おやつシリーズ「スマイルポケット」、「食育ランド」ブランドを見直し、「赤ちゃんのおやつ+Ca」18品、「1歳からのおやつ+DHA」18品として、カルシウムやDHAを配合した新たな付加価値商品として上市しました。簡単に手作りできるおやつ分野では、「赤ちゃんのやさしいホットケーキミックス」3品を発売しました。お子さまの成長に合わせた乳歯ケア用品「にこピカ」シリーズでは、のど突き防止歯ブラシや歯みがきジェルなど2品の追加を含めリニューアルしました。粉末飲料「牛乳屋さん」シリーズは、カフェインレス飲料市場の拡大傾向を受け、ノンカフェインの『牛乳屋さんのルイボスミルクティー キャラメル風味』を発売しました。

和光堂海外事業では、東南アジア(主にベトナム、カンボジア、シンガポール)に向けて、粉ミルク「レーベンス」ブランドの販売拡大をめざし、妊産婦・授乳婦向け粉ミルク、幼児(3歳以降)向け粉ミルクの2品を追加発売しました。

アマノ事業では、2016年もフリーズドライ食品を「より多くのお客様に、より多くの場所で、より購入しやすい価格で、よりおいしく食べていただき驚いていただく」を事業方針とし、商品開発に取り組みました。具体的には、主力である「みそ汁」カテゴリーの主力ブランドを強化、フリーズドライの優位性が発揮できる新価値の提案に取り組みました。また、フリーズドライ食品の魅力を情報発信するための開発にも取り組みました。

流通向け「いつものおみそ汁」ブランドは『あおさ』を追加で発売、「味わうおみそ汁」ブランドは『みぞれ汁』を、「うちのおみそ汁」ブランドは『野菜(減塩)』、『とろみ汁』を追加で発売しました。また、「いつものみそ汁」では『まとめ売り形態マルチパック』も発売し、主要みそ汁3ブランドの活性化を図りました。一方、新たな試みとして、適正な湯量でおいしく食べてもらうことと、容器があることでの喫食シーンの拡大を狙い湯量線付容器で、野菜のスムージーで煮込んだ『畑のカレー』3種類を発売しました。その他では、次の柱とするカテゴリー商品の開発にも取り組み、「三ツ星キッチンパスタ」ブランドでは『枝豆とサーモンのクリームパスタ』を追加発売、「にゅうめん」ブランドでは『揚げなすと青じそ』を、「お茶椀どんぶり」ブランドでは『牛すき丼』を追加発売しました。

通販向けでは、主に新価値の提案に取り組みました。昨年好評だったお湯をかけるだけで揚げ物カツの食感を味わえる「カツ」シリーズの追加として『とんかつの玉子とじ』、『チキンカツのおろしポン酢』を発売しました。「おみそ汁」では、これまで培ってきた技を盛り込んだ、ひと手間かけたおみそ汁『技ありのおいしさうまみ椀(焼きなす、炒め野菜、豚汁、とうふ、きのこ、酒蒸しあさり、みぞれ汁、桜えび、炙り鶏団子、里芋の10種類)』の上級なギフトセットを発売し好評でした。その他、通販ならではの季節を楽しんでいただける「お惣菜シリーズ」、「四季のみそ汁シリーズ」、「炊き込みご飯シリーズ」、「まるごと素材シリーズ」などを発売しました。また、「健康軸商品」では、グループ会社であるアサヒカルピスウェルネス社の乳酸菌研究より発見されたトクホ関与成分ラクトトリペプチド(LTP)を配合した塩分1%未満の『LTP入り減塩みそ汁』が、10月に「機能性表示食品」として受理されましたので、2017年2月より新しいパッケージで発売します。

フリーズドライ食品の魅力の情報発信は、3月にアンテナショップ3店目となる横浜店を立ち上げ、テストマーケッティングや先行発売により、定性・定量の情報収集を行いながら知名度向上に取り組みました。

(技術開発関連)
 アサヒグループ食品㈱では、新規分野への参入・新規商品の開発をにらみ、シニア嚥下補助分野・口腔保湿分野で2件の特許出願を行いました。また、フリーズドライ『とんかつの玉子とじ』が、日本食糧新聞社制定、2016年度「第30回新技術・食品開発賞」を受賞しました。お湯を注ぐだけで豚カツの卵とじが出来上がる革新的な取り組み成果を評価されました。

 

 [新規素材]
 アサヒグループホールディングス㈱では、酵母、乳酸菌、フローラ、独自素材をコアとした研究開発を通して人々の心とからだの健康に役立つ商品・技術を提供することを目指しています。その中で、これまでに、グループ独自の微生物「L-92乳酸菌」については、人の免疫にはたらきかけ、風邪などの感染症の予防やアレルギーの改善に役立つことを明らかにしてきました。しかし、“乳酸菌と免疫”の関係は、未だに謎が多く、乳酸菌が生体内にどのように取り込まれ、免疫細胞にアプローチするのか解明されていませんでした。この謎を解くべく、国立研究開発法人理化学研究所との共同研究をすすめた結果、「L-92乳酸菌」が小腸のM細胞から取り込まれ免疫細胞に渡される様子の顕微鏡撮影に成功しました。さらに、そのメカニズムのひとつとして「L-92乳酸菌」の菌体成分が関与することを明らかにしました。この研究成果を、日本乳酸菌学会2016年度大会で発表したところ、高い評価を受け優秀発表賞を受賞しました。
 

高齢化が加速的に進む日本では、健康寿命の延伸を阻む要因のひとつとして認知症が挙げられ、その対策が望まれています。コアテクノロジー研究所では、発酵乳由来成分「ラクトノナデカペプチド*」に記憶力改善効果があることを見出し、ヒトにおける有用性を検証する試験を実施しました。その結果、「ラクトノナデカペプチド」を含む発酵乳の摂取により、物忘れを自覚する中高齢者の認知機能が改善する可能性を確認しました。さらに、疾病モデルマウスを用いた実験で「ラクトノナデカペプチド」の摂取により、アルツハイマー型認知症を予防する可能性があることを確認し、これらの研究成果を第6回日本認知症予防学会学術集会にて発表しました。

乳酸菌、ペプチド素材に加え、枯草菌C-3102株(納豆菌と同種に分類されます)がおなかの健康へ与える効果についても研究しており、軟便者にC-3102を継続摂取させた試験では、腸内フローラを構成する菌種の多様性が高まり軟便の自覚症状が改善すること、また、特に軟便傾向の強い人において下痢などの自覚症状が改善することを確認しました。本研究成果を第19回日本補完代替医療学会学術集会にて発表しました。近年、肥満や糖尿病などの患者は、健康な人に比べて腸内フローラの多様性が低いことが報告されており、健康の維持には腸内フローラの多様性が高いことが重要であると考えられています。今後、さらにC-3102株の健康への関わりを調べると共に、腸内フローラを介した健康施策についても提案して参ります。

※1 アミノ酸が数個つながった状態のものをペプチドといいます。「ラクトノナデカペプチド」は、アサヒグループ独自の発酵乳の中から見つかったアミノ酸が19個つながったペプチドです。

[食の安心安全]
 食品の安全性に対するお客様の期待が高まる中、高分子界面活性剤などの分析を得意とする最新装置MALDI-TOF-MSを導入しました。本分析機器を活用することで、製品に洗剤や市販農薬を混入された際に、これら成分の迅速な検出が可能となり、分析面からフードディフェンスの強化を実現しました。また、水・原料・製品の安全性を正確かつ迅速に評価するために、最先端の分析技術を駆使し、微生物、残留農薬、残留動物用医薬品、カビ毒、有害金属、その他食品リスクの高感度・高精度そして高速分析が可能な分析法を新規開発・改良し、品質確認のための分析体制を常に最先端のものに更新しています。各種学会や公的研究機関と密な情報交流を行うことで食品リスクに関する情報をいちはやく入手し、新規リスクの迅速な分析技術確立や新規技術導入に役立てています。また、海外も含めたグループ各社の品質保証部門と連携し、アサヒグループ全体の品質保証体制の充実に貢献しました。

[新規事業] 
 バイオエタノールに関する研究開発では、砂糖とエタノールの同時増産を実現する新プロセス“逆転生産プロセス”を開発しました。サトウキビは、ショ糖(砂糖原料)と還元糖(砂糖生産を阻害するブドウ糖,果糖)の2種類の糖分を含有しています。多くの収穫量が期待できる高バイオマス量サトウキビや収穫期間外のサトウキビなどは、還元糖の含有率が高いため、砂糖の生産効率を低下させるという課題がありました。今回開発した“逆転生産プロセス”は、従来の砂糖・エタノールという製造順序を逆転させ、砂糖生産効率を下げる原因となる還元糖のみを先に選択的にエタノールに変換した後に、砂糖を生産するという画期的な同時生産プロセスです。バイオエタノールを生産することによって、砂糖生産効率を大幅に向上させ、これまでの収穫期間(工場稼働期間)を延長することができる革新的な技術で、国内外で特許登録が進んでいます。本技術は2013年度に地球環境大賞(グランプリ)を受賞し、地球規模で懸念される食料・エネルギー問題の解決に貢献する技術として、砂糖産業など多くの関係者から関心を集めています。また、2016年12月の国際サトウキビ技術学会(ISSCT2016)において、豪州クイーンズランド工科大学との共同実証試験について、最高優秀論文賞を受賞するなど、国際的にも最高の評価をいただきました。

一方、副産物としての酵母を活用した新規事業開発についても実用化を目指して技術開発を推進しています。酵母細胞壁を活用した農業資材については、2016年4月に地球環境大賞・農林水産大臣賞を受賞いたしました。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表注記 6 重要な会計上の見積り及び判断)」に記載しております。

(2) 当年度の経営成績の分析

①売上収益

アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比1.0%増173億7千4百万円増収1兆7,069億1百万円となりました。酒類事業においては、ビール類の販売数量が増加したことや、ビール類以外の酒類とアルコールテイスト清涼飲料の売上がそれぞれ前年を上回ったほか、2015年に新たに連結子会社となった「エノテカ株式会社」の業績が通年で加わったことにより、前期比0.6%増56億9千万円増収9,766億4千9百万円となりました。飲料事業においては、炭酸飲料やコーヒー飲料の販売数量が前年実績を上回ったことなどにより、前期比3.9%増136億2千2百万円増収3,639億5百万円となりました。食品事業においては、事業ポートフォリオの見直しの影響があったものの、主力ブランドを中心に好調に推移し、前期並みの1,108億2千4百万円となりました。国際事業においては、円高の影響があったものの、各地域の事業が堅調に推移したほか、欧州ビール事業の業績の上乗せもあり、前期並みの2,503億1千6百万円となりました。その他の事業においては、健康食品の販売促進活動を強化したことなどにより、前期比5.2%増50億1千2百万円増収1,022億7千9百万円となりました。

②事業利益

当年度の事業利益は、前期比5.5%増77億9千4百万円増益1,484億8千6百万円となりました。酒類事業においては、販売促進費が増加しましたが、増収効果のほか、缶蓋の軽量化などの製造原価の低減の取組みにより、前期比0.9%増10億8千3百万円増益1,208億2千3百万円となりました。飲料事業においては、増収効果のほか、品種・容器構成比の改善や最適生産物流体制の構築に向けた取組みにより、前期比28.0%増70億7千6百万円増益323億3千5百万円となりました。食品事業においては、主力ブランドが好調に推移したことや、原材料を中心とした製造原価の低減などにより、前期比21.4%増18億9百万円増益102億5千6百万円となりました。国際事業においては、各地域の事業が好調に推移したことに加え、製造原価低減の取組みによる効果もありましたが豪州などの通過安の影響や、欧州ビール事業買収に伴う一時的な費用の発生により、前期比、11.5%減16億5百万円減益123億4千8百万円となりました。その他の事業においては、前期比18.3%減4億4千7百万円減益20億円となりました。

③営業利益

当年度の営業利益は、国内事業の増益に加え、資産の流動化や減損損失の減少などにより前期比41.7%増402億6千3百万円増益1,368億8千9百万円となりました。

④税引前利益

当年度の税引前利益は、金融収益が前期比3.1%増9千4百万円増加31億6百万円となったことや、金融

費用が前期比20.2%減10億2千9百万円減少40億6千6百万円となったことに加え、持分法による投資損益

が前期比88.8%減156億5千2百万円減益19億7千4百万円となったこと、また持分法で会計処理されてい

る投資の売却益の計上などにより前期比27.6%増325億5百万円増益1,500億6千8百万円となりました。

⑤親会社の所有者に帰属する当期利益

親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用の増加はありましたが、税引前利益の増加により前期比17.8%増134億5千万円増益892億2千1百万円となりました。
 また、基本的1株当たり利益は194.75円(前年同期164.82円)となり、親会社所有者帰属持分比率は40.1%(前年同期43.7%)となりました。

(3) 財政状態の分析

①総資産

当年度の連結総資産は、投資有価証券及び関係会社株式売却などの資産キャッシュ化を推進したことで資産の減少があった一方、国外において買収した企業を新たに新規連結範囲に含めたことにより各資産の増加があり、総資産は前年度末と比較して2,817億8百万円増加の、2兆863億8千1百万円となりました。

②負債

負債は、主に金融債務(短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、1年内償還予定の社債、コマーシャル・ペーパー、社債、長期借入金の合計)が増加したことにより、前年度末と比較して2,392億8千5百万円増加し、1兆2,402億7千6百万円となりました。

③資本

資本は、前年度末に比べ424億2千3百万円増加し、8,461億5百万円となりました。これは、配当金支出による利益剰余金の減少があったものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したことなどによるものです。

この結果、親会社所有者帰属持分比率は40.1%となりました。

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

①キャッシュ・フロー分析

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。

 

2015年12月期

2016年12月期

親会社所有者帰属持分比率(%)

43.7

40.1

時価ベースの親会社所有者帰属
持分比率(%)

96.4

81.0

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

4.1

4.1

インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)

30.8

42.2

 

(注) 親会社所有者持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

 ※  各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

 ※  株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

 ※  キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。

②資金の調達

アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなりますが、当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げております。しかしながら、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。資金需要の発生した時点で、金利コストの最小化を図れるような調達方法を熟慮し、資金需要に対応しております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。

③資金の流動性

当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。

(5) 戦略的現状と見通し

2017年度は、新たに策定した「中期経営方針」に基づいて、国内収益基盤の盤石化と国際事業の成長エンジン化による「稼ぐ力」の強化を図り、事業全体で着実な増収・増益を目指します。また、資本コストを踏まえた資産・資本効率の向上やサステナビリティの向上を目指したESG(環境・社会・ガバナンス)への取組みを強化することで、“企業価値向上経営”の更なる深化を目指していきます。

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「第2 事業の状況 3 対処すべき課題」に記載のとおりであります。

(7) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載のとおりであります。