第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当期における世界経済は、中国を始めとした新興国の景気が減速したものの、米国において雇用者数と個人消費が増加したことや、欧州において景気が緩やかに回復したことなどにより、全体として緩やかな成長が続きました。

わが国経済におきましては、訪日外国人需要の増加などにより企業収益が改善したほか、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費が底堅く推移したことにより、景気は緩やかな回復が続きました。

こうした状況のなかアサヒグループは、当期を最終年度とする「中期経営計画2015」のもとで、“バリュー&ネットワーク経営”を推進することにより、企業価値の向上に取り組みました。“バリュー&ネットワーク経営”では、これまで育成・獲得してきたブランド・技術・コスト競争力などの「強み」への集中やそれを活かした新たな価値創造・革新に加え、国内外のネットワークの更なる拡大による長期安定的な成長に向けた取組みを推進いたしました。また、売上と利益の成長を最優先に、株主還元の充実などにより資本効率を高めることで、重要業績評価指標であるROE(自己資本利益率)とEPS(1株当たり当期純利益)の持続的な向上にグループ全体で取り組みました。

その結果、アサヒグループの当期の売上高は1兆8,574億1千8百万円(前期比4.0%増)となりました。また、利益につきましては、営業利益は1,351億1千9百万円(前期比5.3%増)、経常利益は1,459億4千6百万円(前期比9.6%増)となりました。当期純利益は764億2千7百万円(前期比10.6%増)となりました。

 

   アサヒグループの実績    (単位:百万円)

 

実績

前期比

売  上  高

1,857,418

4.0%

営 業 利 益

135,119

5.3%

経 常 利 益

145,946

9.6%

当 期 純 利 益

76,427

10.6%

 

 

    事業セグメント別の実績                                      (単位:百万円)

 

売上高

前期比

のれん等償却前営業利益

前期比

営業利益

前期比

酒類

972,924

3.3%

119,496

2.2%

118,732

1.5%

飲料

490,186

4.0%

25,596

△3.1%

22,409

5.1%

食品

115,035

4.6%

8,446

30.2%

8,074

33.5%

国際

249,734

7.1%

15,468

21.7%

3,519

その他

29,537

2.3%

1,305

545.8%

1,305

545.8%

調整額

△18,923

△18,923

合計

1,857,418

4.0%

151,390

2.4%

135,119

5.3%

 

 ※のれん等償却前営業利益=営業利益+のれん償却額と買収に伴う無形固定資産の償却額

 

 

[酒類事業]

酒類事業につきましては、多様な価値観やライフスタイルの広がりがますます進むことが予測されるなか、「総合酒類提案を通じて“最強のパートナー企業”を目指す!」をスローガンに、夏場依存からの脱却と“コト”消費の創出による需要拡大などに取り組みました。

ビール類については、『アサヒスーパードライ』において、「飲みごたえ」と「キレ」の向上により更に味を「進化」させるとともに、季節に合わせたパッケージデザインの商品や、発酵度とアルコール度数を高めた超辛口の『アサヒスーパードライ エクストラシャープ』を期間限定で発売するなど、ブランド価値の向上に取り組みました。また、健康意識の高まりを背景に、“糖質ゼロ”発泡酒『アサヒスタイルフリー』の“プリン体ゼロ”の派生商品や新ジャンル『クリアアサヒ 糖質0(ゼロ)』を発売するなど、多様なニーズに対応した商品ラインアップの拡充に努めました。

ビール類以外の酒類については、『竹鶴』ブランドや『ブラックニッカ』ブランドを始めとする洋酒や、チリワイン『サンタ・ヘレナ・アルパカ』を中心とした輸入ワインが好調に推移しました。アルコールテイスト清涼飲料については、“カロリーゼロ”“糖質ゼロ”に加え、“プリン体ゼロ”を実現したビールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロフリー』の発売などにより、前年実績を大きく上回りました。

さらに、ワインの輸入・販売を行う「エノテカ株式会社」を3月から新たに連結子会社に加え、酒類事業の基盤を強化しました。

以上の結果、酒類事業の売上高は、ビール類の市場全体の縮小により販売数量が減少しましたが、ビール類以外の酒類やアルコールテイスト清涼飲料の売上がそれぞれ前年を上回ったほか、新規連結子会社の業績が上乗せになったことなどにより、前期比3.3%増の9,729億2千4百万円となりました。

のれん等償却前営業利益については、販売促進費が増加しましたが、増収効果や製造原価の低減などにより、前期比2.2%増の1,194億9千6百万円となりました(営業利益(のれん等償却後)は、前期比1.5%増の1,187億3千2百万円)。

 

[飲料事業]

飲料事業につきましては、主力ブランドへのマーケティング投資の集中や新たな価値の提案のほか、最適生産物流体制の構築により、一層のブランド価値の向上と収益構造の改革を推進しました。

『三ツ矢』ブランドにおいて、果汁炭酸『三ツ矢フルーツサイダー』シリーズの本格展開などによりブランド価値の向上を図るとともに、『ワンダ』ブランドにおいては、ボトル缶入りの『ワンダ グランドワンダ』シリーズや深みのある味わいと“糖類ゼロ”を実現した『ワンダ エクストラショット』などの新商品を発売し、認知度向上に取り組みました。『カルピス』ブランドにおいては、主力の『カルピスウォーター』や『カルピスソーダ』をリニューアルしたことに加え、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した販売促進活動を展開するなど、ブランドの活性化に努めました。

さらに、特定保健用食品『三ツ矢サイダー プラス』や『アサヒ 食事と一緒に十六茶W(ダブル)』をリニューアルしたほか、機能性表示食品『「アミール」WATER(ウォーター)』、『アサヒ めめはな茶』を発売するなど、新たな価値の提案に取り組みました。

チルド飲料については、『大人の紅茶PREMIUM』シリーズの商品ラインアップの拡充により紅茶カテゴリーが好調に推移したほか、市場ニーズに対応し小容量の商品の販路を拡大しました。

以上の結果、飲料事業の売上高は、「アサヒ飲料株式会社」及び「株式会社エルビー」の売上がそれぞれ前年実績を上回ったことにより、前期比4.0%増の4,901億8千6百万円となりました。
 のれん等償却前営業利益については、増収効果はありましたが、販売促進費の積極的な投入や品種・容器構成比の変化による採算性の悪化などにより、前期比3.1%減の255億9千6百万円となりました(営業利益(のれん等償却後)は、前期比5.1%増の224億9百万円)。

 

 

[食品事業]

食品事業につきましては、各事業会社が「強み」のあるブランドや事業への集中を図るとともに、生産工程の見直しにより製造原価を低減することで、着実な売上成長と収益性向上に取り組みました。

「アサヒフードアンドヘルスケア株式会社」においては、タブレット菓子『ミンティア』や栄養調整食品『1本満足バー』が商品ラインアップの拡充などにより好調に推移しました。また、サプリメント『ディアナチュラ』では、機能性表示食品『ディアナチュラゴールド』の新発売や、広告と連動した店頭での販売促進活動を展開しました。

「和光堂株式会社」においては、容器入りベビーフード『栄養マルシェ』のリニューアルや簡単合わせ調味料『おやこdeごはん』の新商品を発売したほか、育児用ミルクにおける販売促進活動を強化しました。また、業務用の製造受託においては、提案力の強化による新規取引先の獲得を推進しました。

「天野実業株式会社」においては、主力のフリーズドライ味噌汁『いつものおみそ汁』の量販店における取扱店舗数の拡大などにより、『アマノ』ブランドの認知度の向上を図りました。また、『三ツ星キッチン』パスタシリーズや『フリーズドライのお惣菜』シリーズなどを新たに発売し、さまざまな食のスタイルを提案しました。

以上の結果、食品事業の売上高は、事業会社3社がそれぞれ前年実績を上回ったことにより、前期比4.6%増の1,150億3千5百万円となりました。
 のれん等償却前営業利益については、増収効果のほか、広告販促費の効率的な投入や製造原価の低減などにより、前期比30.2%増の84億4千6百万円となりました(営業利益(のれん等償却後)は、前期比33.5%増の80億7千4百万円)。

 

[国際事業]

国際事業につきましては、各地域の事業における成長基盤の強化とオセアニアにおける統合シナジーの創出などにより、事業全体の売上の拡大と収益性の向上に取り組みました。

オセアニア事業については、飲料において『Schweppes』『Solo』など主力の炭酸飲料カテゴリーで販売強化に取り組むとともに、市場が拡大しているミネラルウォーターカテゴリーでは『Cool Ridge』『Frantelle』など多様な商品ラインアップを活用し、積極的な販売促進活動を行いました。また、酒類においては、成長分野であるサイダー(りんご酒)の『Somersby』が好調に推移したほか、輸入ビール『アサヒスーパードライ』のテレビCMの展開やオーストラリア限定のビール『アサヒ爽快』の発売により、『アサヒ』ブランドの認知度向上を図りました。

東南アジア事業については、マレーシアの主力の炭酸飲料『Mountain Dew』が好調に推移したことに加え、マレーシアの『ワンダ』やインドネシアの『ICHI OCHA』を始めとする自社ブランド商品の積極的な販売促進活動を展開することで、市場における存在感の向上に努めました。

中国事業については、中華料理店や韓国料理店などにおける『アサヒスーパードライ』の販売数量が前年実績を上回ったほか、現地の量販店における新規取扱の開始など、『アサヒ』ブランドの確立を目指しました。

以上の結果、国際事業の売上高は、各地域の事業が堅調に推移したことに加え、「Etika」グループの業績が上乗せとなったことにより、前期比7.1%増の2,497億3千4百万円となりました。
 のれん等償却前営業利益については、増収効果のほか、ペットボトル容器の内製化や物流費の効率化など、オセアニアにおける統合シナジーの最大化に努めたことなどにより、前期比21.7%増の154億6千8百万円となりました(営業利益(のれん等償却後)は、前期比47億2千3百万円増の35億1千9百万円)。

 

[その他の事業]

その他の事業につきましては、物流業務全般における受託の拡大などにより、売上高は、前期比2.3%増の295億3千7百万円となりました。
 のれん等償却前営業利益は、前期比545.8%増の13億5百万円となりました(営業利益(のれん等償却後)は、前期比545.8%増13億5百万円)。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が1,127億5千万円となりましたが、減価償却費や減損損失等の非キャッシュ項目による増加要因があった一方で、持分法による投資損益や段階取得による差損益の非キャッシュ項目による減少要因に加えて、売上債権や仕入債務等の運転資金増減による減少や法人税等の支払いによる減少があり、1,127億6千5百万円(前期比:340億1千7百万円の収入減)の収入となりました。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、国内外で子会社株式を取得したことや、有形および無形の固定資産を取得したことなどにより、755億8千3百万円(前期比:165億9千9百万円の支出減)の支出となりました。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払による支出に加えて、主に短期借入金の返済による金融債務の減少があり、730億4千4百万円(前期比:372億2百万円の支出増)の支出となりました。
 以上の結果、当連結会計年度末では、前連結会計年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は189億4千4百万円減少し、432億9千万円となりました。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。

 

セグメントの名称

数量又は金額

単位

前年同期比

酒            類

2,425,055

KL

2.5

 %

飲            料

499,178

百万円

5.7

 %

食            品

112,183

百万円

3.9

 %

国            際

227,787

百万円

4.7

 %

 

(注) 1 金額は、販売価格によっております。

2 酒類事業の生産数量、飲料事業及び食品事業の生産高には、外部への製造委託を含めております。

3 上記金額には消費税等は含まれておりません。

 

(2) 受注実績

当社では受注生産はほとんど行っておりません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。

 

セグメントの名称

金額

前年同期比

酒           類

972,924

百万円

3.3

飲           料

490,186

百万円

4.0

食           品

115,035

百万円

4.6

国           際

249,734

百万円

7.1

そ     の    他

29,537

百万円

2.3

合           計

1,857,418

百万円

4.0

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記金額には消費税等は含まれておりません。

3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

 

相手先

販売高

割合

販売高

割合

 

 

(百万円)

(%)

(百万円)

(%)

 

国分㈱

200,157

11.2

218,718

11.8

 

伊藤忠食品㈱

195,819

11.0

204,442

11.0

 

 

 

3 【対処すべき課題】

(「中期経営計画2015」の総括)

当社は平成25年からスタートした『中期経営計画2015』において、重要業績評価指標にROEとEPSの向上を掲げ、売上と利益の成長を最優先としつつ、株主還元の充実など資本効率の向上を図ることにより、企業価値の向上に取り組んでまいりました。
『中期経営計画2015』の期間中は、国内外ともに厳しい事業環境となりましたが、「強み」に集中した価値創造やネットワークの拡大に加えて、計画を上回る収益構造改革、株主還元の充実などに努め、以下のとおり目標達成に繋げることができました。
 一方で、競争環境が激化するなか、主力の酒類事業や飲料事業における更なる高付加価値化や新需要の創出などに課題を残すとともに、海外では、オセアニアや東南アジアの成長戦略の加速に加えて、グローバルな成長基盤の拡大が急務となっております。

 

(今後の経営環境の変化)

今後のアサヒグループを取り巻く経営環境としては、国内では、20年来続いたデフレからの脱却が正念場を迎えるなか、消費税率の引上げや酒税の見直しなどにより、消費の更なる多様化が見込まれます。また海外では、新興国経済の成長が鈍化するなか、グローバルな大型再編が進行するなど、多様な「リスクと機会」が顕在化してくることが想定されます。
 さらに、日本版スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの策定に応じて、日本企業の経営スタイルや株主様をはじめとしたステークホルダーの視点は、より持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にシフトしていくものと思われます。

 

(中長期的な会社の経営戦略)

アサヒグループは、経営理念を起点として「長期ビジョン」と「中期経営方針」を策定しております。10年程度先を見据えた「長期ビジョン」では、「食の感動(おいしさ・喜び・新しさ)を通じて、世界で信頼される企業グループを目指す。」、「全てのステークホルダーの満足を追求し、持続的な企業価値の向上を図る。」ことを掲げ、グループ全体のありたい姿と各ステークホルダーに対するビジョンを定めています。

 

(「中期経営方針」の重点課題)

こうした総括と経営環境の変化を踏まえ、「長期ビジョン」の実現に向けた「中期経営方針」では、以下の3つの重点課題を設定し、「企業価値向上経営」の更なる深化を目指していきます。

 

 ① 国内収益基盤の盤石化と国際事業の成長エンジン化による「稼ぐ力」の強化
  ・高付加価値化、差別化を基軸としたイノベーションの促進とリーダーシップの発揮
  ・事業統合やバリューチェーンの高度化による収益構造改革、ビジネスモデルの進化
  ・日本発の「強み」を活かす海外を中心とした成長基盤の獲得
 ② 資本コストを踏まえた資産・資本効率の向上
  ・エクイティスプレッド(ROE-株主資本コスト)を重視した資本効率の向上
  ・ROIC(投下資本利益率)を活用した事業管理、事業ポートフォリオの再構築
 ③ サステナビリティの向上を目指したESGへの取組み強化
  ・自然、社会関係資本や人材など「見えない資本」の高度化、CSV戦略への発展
  ・企業価値向上経営の実行に資する「攻めのコーポレートガバナンス」の推進

 

 

今後は、こうした『長期ビジョン』と『中期経営方針』を「エンゲージメント・アジェンダ(建設的な対話の議題)」として、株主や投資家の皆様をはじめとしたステークホルダーとの対話を深め、持続的な企業価値の向上を目指していきます。

 

 

なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(会社法施行規則第118条第3号本文に規定される事項)を定めており、その内容等は次の通りであります。

 

①基本方針の内容

当社では、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者とは、アサヒグループの企業価値の源泉である“魅力ある商品づくり”“品質・ものづくりへのこだわり”“お客様へ感動をお届けする活動”や有形無形の経営資源、将来を見据えた施策の潜在的効果、その他アサヒグループの企業価値を構成する事項等、さまざまな事項を適切に把握したうえで、当社が企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保、向上していくことを可能とする者でなければならないと考えています。

当社は、当社株式について大量買付がなされる場合、当社取締役会の賛同を得ずに行われる、いわゆる「敵対的買収」であっても、企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。また、株式会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるかどうかの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えています。
 しかしながら、株式の大量買付のなかには、その目的等から見て企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が株式の大量買付の内容等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社が買収者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買収者との交渉を必要とするものなど、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さないものも少なくありません。
 このように当社株式の大量買付を行う者が、アサヒグループの企業価値の源泉を理解し、中長期的に確保し、向上させられる者でなければ、アサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益は毀損されることになります。
 そこで当社は、このような大量買付に対しては、アサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益を守る必要があると考えます。

 

②基本方針実現のための取組み

(a) 基本方針の実現に資する特別な取組み

当社では、平成25年に「『食の感動(おいしさ・喜び・新しさ)』を通じて、世界で信頼される企業グループを目指す。」ことを掲げた「長期ビジョン2020」を策定するとともに、その実現に向け “バリュー&ネットワーク経営” を推進することによる企業価値の向上を目指した3か年計画として「中期経営計画2015」の取組みをグループ全体で行ってまいりました。
 この「中期経営計画2015」の総括と経営環境の変化を踏まえ、「長期ビジョン2020」を本年2月に、基本方針を踏襲しつつ10年程度先を見据えた事業の将来像を付加した「長期ビジョン」として更新しました。また、「中期経営計画」については「中期経営方針」として改め、従来のアクションプラン型の内容から、ビジョンの実現に向けた中期的な方向性に重点を置いた形式に移行しました。
 こうした経営方針を設定し実行していくことが、経営戦略の柔軟性を担保するとともに、「エンゲージメント・アジェンダ(建設的な対話の議題)」としてステークホルダーとの対話を深め、持続的な企業価値の向上ひいては株主共同の利益の確保につながるものであると考えております。

なお、当社は、前記の諸施策のため、コーポレート・ガバナンスの更なる強化を図っています。

当社においては、平成12年3月30日に執行役員制度を導入したことにより、経営の意思決定と業務執行機能を分離し、業務の迅速な執行を図るとともに、当社取締役会における監督機能の強化に努めてまいりました。これに加え、3名の社外取締役と3名の社外監査役を、東京証券取引所の定める独立役員として指定し、同取引所に届け出ております。
 また、当社取締役会の諮問機関であり社外取締役も委員となっている指名委員会及び報酬委員会の設置により、社外役員によるチェックが機能しやすい体制としております。

さらに、株主の皆様に対する経営陣の責任をより一層明確にするため、平成19年3月27日開催の第83回定時株主総会において、取締役の任期を2年から1年に短縮いたしました。

平成23年7月1日には純粋持株会社制へ移行することで、各事業部門の権限と責任の明確化や専門性の追求により事業基盤の強化を図るとともに、企業価値の向上を目指した国内外の事業ネットワークの拡大を推進いたしました。

 

 

(b) 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

当社は、大量取得行為を行おうとする者に対しては、大量取得行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間の確保に努めるなど、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じてまいります。

 

③具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由

② (a)に記載した各取組みは、①に記載した基本方針に従い、当社を始めとするアサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益に沿うものであり、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。

 

4 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。

(1)国内市場・経済の動向及び人口の変動による影響について

 アサヒグループの売上高において酒類事業の占める割合は約52%となっており、またその大部分は国内市場での売上となっております。今後の国内景気の動向によって、酒類消費量に大きな影響を与える可能性が考えられます。また、日本国内での人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類の消費量の減少、また酒類のみならず飲料事業、食品事業における消費量にも影響を与え、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2)税制改正について

 消費税や酒税の増税が行われた場合、販売価格の上昇によって酒類事業、飲料事業、食品事業における消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3)特定商品への依存について

 アサヒグループの売上高の中で重要な部分を占めるのが、ビール類販売による売上であります。アサヒグループとしましては、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させ売上高を増加させるとともに、酒類事業以外に飲料、食品といった事業の拡大を図っております。しかしながら、市場の需要動向によってビール類消費量の大幅な減少を余儀なくされる等、予期せぬ事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(4)食品の安全性について

 アサヒグループは、最高の品質をお客様にご提供することを経営理念として掲げており、グループ内の万全な検査管理体制によって食品の安全性を確立しております。しかしながら、食品業界を取り巻く昨今の環境においては、放射能汚染、鳥インフルエンザ、残留農薬、遺伝子組替、アレルギー物質の表示、異物混入等様々な問題が発生しております。また、従来の食品安全の取り組みに加え、意図的な異物混入を防止するフードディフェンスの取り組みの必要性が増しております。アサヒグループとしましては、そのリスクを事前に察知あるいは評価し、顕在化する前に対処するよう取組みを強化しておりますが、アサヒグループの取組みの範囲を超える事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(5)原材料価格の変動について

 アサヒグループの製品に使用する主要な原材料の価格は、天候、自然災害等によって変動します。価格が高騰した場合には製造コストの上昇に繋がり、また市場の状況によって販売価格に転嫁することができない場合があり、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(6)気象条件、自然災害等による影響について

 アサヒグループの酒類及び飲料の売上については、異常気象や天候不順によって市場が低迷した場合、その販売量が影響を受ける可能性があります。また、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等の影響で製造、物流設備等が損害を被ることにより、資産の喪失、商品の滞留等による損失計上、設備復旧のための費用、生産、物流の停止による機会損失が考えられ、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(7)情報システムのリスクについて

 アサヒグループは、販促キャンペーン、通信販売等により多数のお客さまの個人情報を保持しております。アサヒグループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、システムを含め情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しております。しかしながら、停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクがあります。このような事態が発生した場合、営業活動に支障をきたし、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)海外事業におけるリスクについて

 アサヒグループは、アジア、オセアニア及び欧米にて海外での事業を展開しております。アサヒグループとしましては、そのリスクを事前に察知し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組んでおりますが、以下のような予期できない、または予測の範囲を超える変化があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
     ・ 予期できない租税制度や法律、規制等の改正
     ・ 政治的要因及び経済的要因の変動
     ・ 伝染病の流行による社会的・経済的混乱
     ・ 予測の範囲を超えた市場の変動、為替レートの変動
     ・ テロ・戦争の勃発による社会的・経済的混乱
     ・ 異常気象や地震等の自然災害の発生

(9)環境に関するリスクについて

 アサヒグループは、廃棄物再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守しております。しかしながら、関係法令等の変更によって、新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(10)法律、規制等の変更によるリスクについて

 アサヒグループは、国内で事業を遂行していくうえで、酒税法、食品衛生法、製造物責任法等様々な法的規制の適用を受けております。また海外事業を展開していくうえでも関係する法律、規制等の適用を受けております。これらの法律、規制等が変更された場合、または予期し得ない法律、規制等が新たに導入された場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(11)アルコール飲料規制の動きについて

 アサヒグループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任(CSR)を果たすため、広告の表現や容器への表示に関して細心の注意をはらうとともに、未成年飲酒・妊産婦飲酒の防止等、適正飲酒の啓発活動に積極的に取り組んでおりますが、国際的にアルコール問題が議論される中、予想を大幅に超える規制が行われた場合、酒類消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(12)訴訟のリスクについて

 アサヒグループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、また社員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしております。しかしながら、国内国外を問わず事業を遂行していくうえで、訴訟提起されるリスクを抱えております。万一アサヒグループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(13)保有資産の価格変動について

 アサヒグループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(14)退職給付関係について

 アサヒグループの従業員及び元従業員の退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で使用される割引率、年金資産の期待運用収益率等に基づき算出されております。年金資産の時価変動、金利の変動、年金制度の変更等、前提条件に大きな変動があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(15)事業・資本提携について

 アサヒグループは、中期経営計画に沿って、成長基盤確立の一環として国内外他社との事業・資本提携を推進しています。しかしながら、アサヒグループ、提携先及び出資先を取り巻く事業環境の変化等の影響によって、当初想定していたシナジー効果を得られない可能性があります。また、そのような環境変化によって、提携先及び出資先の事業、経営及び財務状況の悪化等が生じた場合、アサヒグループの事業、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
 また、出資に伴い、「のれん」の償却が多額に発生した場合、あるいは出資先が業績不振となり多額の減損損失を計上する必要が生じた場合、アサヒグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1)業務提携等に関する契約

会社名

契約事項

契約締結先

締結年月

発効年月

有効期限

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国における「アサヒスーパードライ」及び「アサヒビール」の製造ライセンス供与のための「深圳青島啤酒朝日有限公司」の合弁契約

伊藤忠商事株式会社
住金物産株式会社
(中国)
青島啤酒股份有限公司

平成9年
10月

平成10年
8月

平成36年
7月

アサヒビール
株式会社
(連結子会社)

沖縄県及び鹿児島県奄美大島群島を除く日本における「アサヒ オリオンドラフト」の販売契約

オリオンビール株式会社

平成14年
11月

平成14年
11月

自動更新

アサヒビール
株式会社
(連結子会社)

沖縄県における「アサヒスーパードライ」等の製造販売ライセンスの供与契約

オリオンビール株式会社

平成15年
5月

平成15年
5月

自動更新

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

飲料事業、チルド事業、食品事業、海外事業、調達・物流等の機能面における業務提携契約

カゴメ株式会社

平成19年
2月

平成19年
2月

自動更新

アサヒビール
株式会社
(連結子会社)

欧州ロシア・周辺11カ国における「アサヒスーパードライ」の製造販売ライセンスの供与契約

(ロシア)
Baltika Breweries

平成20年
1月

平成20年
1月

平成27年
12月
(更新規定あり)

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

台湾におけるアサヒグループ製品販売のための「三商朝日股份有限公司」の合弁契約

(台湾)
三商行股份有限公司

平成20年
9月

平成20年
9月

無期限
(但し一定の終了事由あり)

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国におけるビール生産・販売等の事業についての戦略的提携

(中国)
青島啤酒股份有限公司

平成21年
8月

平成21年
8月

青島啤酒股份有限公司の株式を保有しなくなった12ヶ月後

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国における飲料事業「康師傅飲品控股有限公司」の株主間契約

康師傅控股有限公司
開曼島商頂新控股有限公司 他

平成22年
9月

平成22年
11月

無期限
(但し一定の終了事由あり)

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国における食品事業「開曼島商頂新控股有限公司」の株主間契約

(英領ヴァージン諸島)
Ho Te Investments Limited
伊藤忠商事株式会社他

平成27年
3月

平成27年
3月

無期限
(但し一定の終了事由あり)

アサヒ飲料
株式会社
(連結子会社)

「シャンソン十六茶」バルクの継続的売買及び商標の使用許諾に関する契約
(注)

株式会社シャンソン化粧品

平成4年
12月

平成4年
12月

自動更新

 

(注)  「シャンソン十六茶」バルクとは、アサヒ飲料社商品「十六茶」の原料茶葉であります。

 

(2)吸収分割契約、吸収合併契約

平成28年1月1日付で国内の飲料事業と食品事業の再編を実施いたしました。飲料事業では、カルピス株式会社を分割会社とし、吸収分割によりカルピスフーズサービス株式会社及びアサヒカルピスウェルネス株式会社に一部の事業を承継いたしました。承継を実施した後のカルピス株式会社を、アサヒ飲料株式会社を存続会社として吸収合併いたしました。カルピスフーズサービス株式会社をカルピス株式会社へ商号変更いたしました。

食品事業では、吸収分割によりアサヒフードアンドヘルスケア株式会社、和光堂株式会社、天野実業株式会社の一部の事業をアサヒグループ食品株式会社へ承継いたしました。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)」に記載しております。

 

6 【研究開発活動】

アサヒグループでは、第5次中期経営計画の達成に向けて、酒類、飲料、食品の各事業において革新的で差別化された商品の開発、及びそのベースとなる技術開発を行ってまいりました。また、アサヒグループの次世代を担う新たな事業の創出のための研究開発も行っています。さらに、国内外の社外研究機関を活用し、研究開発のスピードアップを図っています。一方、2011年の純粋持株会社制移行後、グループ内のシナジーを発揮するための横串の取り組みを積極的に進めています。
 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、10,399百万円です。なお、研究開発費については、研究開発にかかわる費用をセグメント別に関連づけることが困難であるため、その総額を記載しています。

 

[酒類事業] 
(商品開発関連)
 アサヒビール㈱は、ビール市場のさらなる活性化を目指して、主要商品である『アサヒスーパードライ』について、“洗練されたクリアな味、辛口”の味はそのままに、新・仕込み技術を導入する事で、更に際立つ飲みごたえ、冴えわたるキレを実現しました。具体的には、厳選優良ドライ酵母を使用しながら、「原料投入時の温度最適化により、酵素の働きを抑える技術」と、「麦汁製造時の過度な熱負荷を軽減する技術」を新たに製造工程に導入するにより、時間経過による味の変化を抑制し“飲みごたえ”と“キレ”がそれぞれ1割向上することを可能としました。

 プレミアム商品である『アサヒスーパードライ ドライプレミアム』においては、その特長である“贅沢なコクとキレ”を実現する、フレッシュな状態の「ゴールデンドライ酵母」および厳選した「国産ゴールデン麦芽」の使用はそのままに、新たにチェコザーツ産の最高級ファインアロマホップを一部使用し、さらに煮沸工程の後半から終了にかけてホップを添加するレイトホッピング製法を採用する事で、よりフルーティーで華やかな香りを実現しました。また、香ばしいコクにこだわった『アサヒスーパードライ ドライプレミアム 煎りたてコクのプレミアム』、香りと味わいにこだわった『アサヒスーパードライ ドライプレミアム 贅沢香り仕込み』、芳醇なホップ香と香ばしいロースト香の調和をお楽しみいただける『アサヒスーパードライ ドライプレミアム 香りの琥珀』、2015年に収穫した国産ゴールデン麦芽、国産ホップ(一部使用)、国産新米を使用し、爽やかなホップの香りと麦のうまみを実感いただける『アサヒスーパードライ ドライプレミアム 初仕込みプレミアム』を限定商品として、それぞれ発売いたしました。

 また、『アサヒスーパードライ』が、2014年に累計出荷数35億箱(1箱は大びん633ml×20本換算。以下同様)を突破したことを記念して、『アサヒスーパードライ エクストラシャープ』を、期間限定で発売いたしました。『アサヒスーパードライ エクストラシャープ』は、氷点下でろ過する “エクストラコールドろ過製法”と、発酵度を高めアルコール度数を5.5%に高めたことによって、“超辛口の「スーパードライ」”を実現したものです。

 ビール文化を広く一般に伝えていく取組の一環として展開している「アサヒ クラフトマンシップ」シリーズからは、上面発酵酵母とシトラホップを一部使用した、フルーティーな香りとホップの軽快な苦みが特長の『アサヒ クラフトマンシップ ドライセゾン』、ミュンヘン麦芽を一部使用し、豊かな麦芽の香りとまろやかな甘みが特長の『アサヒ クラフトマンシップ ドライメルツェン』を発売いたしました。また、クリスマスシーズンに合わせ、『アサヒ ザ・クラフトマンシップ クリスマスビア』として、国産ゴールデン麦芽を一部使用し、麦芽由来のコクとほのかな甘みが特長の『メリーゴールド』、国産ゴールデン麦芽を一部使用し、麦芽由来の香ばしく豊かな味わいがありながらキレのある後味がお楽しみいただける『イヴ・アンバー』の2品種を発売いたしました。

 発泡酒市場においては、「アサヒスタイルフリー」ブランド初のエクステンション商品となる『アサヒスタイルフリー プリン体ゼロ』を発売しました。「スタイルフリー」ブランドならではの“糖質ゼロ※1”機能に加え、ビールテイスト清涼飲料やビアカクテルの開発などで培ってきた技術を結集し“プリン体ゼロ”を新たに実現した発泡酒です。また、「スタイルフリー」ならではの爽快な飲み口とすっきりした味わいはそのままに、アルコール度数を6%まで高めることでしっかりした飲みごたえを実現しました。また、日本初のコラーゲンを含有した糖質オフの発泡酒である『アサヒ スマートオフ』を発売しました。

 新ジャンル市場においては、主要ブランドである「クリアアサヒ」ブランドのクオリティアップを行いました。『クリアアサヒ』は仕込工程を通常より高い温度で行う“鮮度製法”を新たに採用して爽快な飲みごたえをアップし、『クリアアサヒ プライムリッチ』は最高級ホップを使用することで、華やかな香りを訴求しました。また、糖質ゼロの新ジャンル商品『クリアアサヒ 糖質0(ゼロ)』を発売しました。『クリアアサヒ 糖質0(ゼロ)』は、醸造工程において麦汁にアルコールを加え発酵させる新技術(特許出願中)を採用することで、これまでの糖質オフ商品では難しかった、しっかりした飲みごたえを実現したものです。機能性新ジャンルの主力ブランド『アサヒ オフ』においては、醸造工程においてプリン体を含む酵母等をこまめに取り除き、最適な温度帯をコントロールすることでプリン体の含有量を低減させる「プリン体最少化技術」を新たに採用し、“プリン体ゼロ”“糖質ゼロ”の機能を実現しました。このほか、期間限定商品として、収穫後に乾燥したホップを氷点下に冷却し粉砕後、葉などを取り除き苦みや香りのもとになるルプリンを抽出した「氷点下ホップ」を使用し、氷点下でろ過・貯蔵することで、「クリアアサヒ」ブランドならではの澄みきった“クリアな後味”をさらに追求した『クリアアサヒ クリスタルクリア』、4種の麦芽と7種のホップを組み合わせることにより、香ばしいコクがありながらクリアな後味が特長の『クリアアサヒ 秋の琥珀』、2015年に収穫した山形県産ホップを使用して爽やかな香りと爽快な飲みごたえを実現した『クリアアサヒ 初摘みの香り』、カスケードホップとシトラホップを一部使用したことによる華やかでややスパイシーな香りと、アルコール分6%の飲みごたえが特長の冬限定『アサヒ 冬の乾杯』を、それぞれ発売しました。

 ビールテイスト清涼飲料市場においては、「アサヒドライゼロ」ブランドの特長である“アルコール0.00%”“カロリーゼロ”“糖質ゼロ”の3つのゼロに、さらに“プリン体0.0”を加えて4つのゼロを実現した『アサヒドライゼロフリー』を発売いたしました。「ドライゼロ」ブランド独自の“ドライ鮮度製法※2”により、コクとキレのあるドライな味わいはそのままに、スッキリとした飲みやすさをお楽しみいただける味わいに仕上げました。また、「機能性表示食品」として、食事の脂肪や糖分が気になる方に適したビールテイストおよびRTDテイスト清涼飲料の『アサヒスタイルバランス』を新たに発売いたしました。「機能性表示食品」としてRTDテイスト清涼飲料が受理されたのは、初めてのことです。『アサヒスタイルバランス』は、難消化性デキストリン(食物繊維)を5g含有し、“食事の脂肪の吸収を抑える”“食事の糖分の吸収を抑える”ビールテイスト清涼飲料、および“食事の脂肪や糖分の吸収を抑える”RTDテイストの清涼飲料で、共通して“アルコール0.00%”“カロリーゼロ”“糖類ゼロ”で、毎日飲んでも飲み飽きない、食事に合うすっきりとした味わいが特長です。

 RTD※3市場においては、「アサヒカクテルパートナー」ブランドから、新フレーバーとして『完熟ぶどう&シャルドネ』、『はちみつレモネード』を、夏限定フレーバーとして、『太陽のマンゴー&トロピカルフルーツ』、『渚のパイン&パッション&ココ』を、冬限定のフレーバーで『ベリーミックスパンチボウル』『ラ・フランスミックスパンチボウル』を、「特濃シリーズ」の期間限定のフレーバーとして『はちみつグレープフルーツ』、『はちみつ柚子みかん』をそれぞれ発売しました。「アサヒSlat(すらっと)」ブランドからは、期間限定フレーバーとして、『シチリア産ブラッドオレンジサワー』、『アサイー&ブルーベリーサワー』、『ひんやりみかんサワー』、『フルーツサングリアサワー』、『アップル&ジンジャーサワー』を発売しました。「アサヒ辛口焼酎ハイボール」ブランドからは、基幹2フレーバーの『プレーン』、『レモン』に加えて、新フレーバーとして、『ドライクリア』を発売しました。また、期間限定フレーバーとして、『青ゆず』、『赤ウメ』、『青みかん』、『青しそ』、『冬しょうが』、『かぼす&すだち』を、それぞれ発売しました。「アサヒハイリキザ・スペシャル」ブランドからは、新フレーバーとして『メロンソーダサワー』、『フルーツパンチサワー』、期間限定フレーバーとして『アイスマンゴー』、『ストロングゴールド』を、それぞれ発売しました。

 ウイスキー市場においては、主力ブランドである「ブラックニッカ」から、『ブラックニッカ ディープブレンド』を発売しました。ホワイトオークの新樽で熟成を重ねたモルト原酒と、樽熟成したカフェグレーン原酒を調和させた深いコクと豊かで伸びのある甘い味わい、心地よいピートの香りとビターな樽の余韻が特長です。また、蒸溜所の個性を際立たせた新たな「シングルモルト」※4として、重厚で力強い味わいの『シングルモルト余市』、華やかでスイートな味わいの『シングルモルト宮城峡』を刷新し発売しました。復刻版シリーズとしては、『初号ブラックニッカ復刻版』、『初号ハイニッカ復刻版』、『初号スーパーニッカ復刻版』を数量限定で発売しました。そのほか、ピートを燻したモルトでつくられる“ヘビーピートモルト原酒”のみを厳選してヴァッティング※5した『シングルモルト余市 ヘビリーピーテッド』、スペインの酒精強化ワインであるシェリーの貯蔵に使われた樽を使って熟成させた“シェリー樽熟成原酒”のみを厳選してヴァッティングした『シングルモルト宮城峡 シェリーカスク』を発売しました。

 焼酎市場においては、「かのか」ブランドから、自然由来の香りにこだわった氷を入れて注ぐだけで楽しめるRTS新商品として『季節香るかのか 大人のカシス』と『季節香るかのか 和みのゆず』を発売しました。また、『季節香る かのか ホットハニージンジャー』を期間限定で発売しました。

 ワイン市場においては、国産ワイン「サントネージュ リラ」ブランドより新たなラインナップとして『サントネージュ リラ スパークリングロゼ』を発売しました。また、「酸化防止剤無添加」シリーズとして『サントネージュ リラ ぶどう香る酸化防止剤無添加ワイン(赤・白)』を、「フルーツ」シリーズとして『サントネージュ リラ フルーツ ベリーと赤ワイン』、『サントネージュ リラ フルーツ 洋なしと白ワイン』を発売し、既存の「スタンダート」シリーズにおいては2,700ml大容量の『サントネージュ リラ(赤・白・プレミアムこく赤)』を追加発売しました。日本ワイン※6の「サントネージュ エクセラント」シリーズからは、山形県蔵王山麓かみのやまで栽培され厳選した国産ぶどうを100%使用した『サントネージュ エクセラント かみのやま スパークリングロゼ』を発売しました。また、製造元であるサントネージュワイン㈱が自社畑「牧丘 倉科畑」で収穫したぶどうを100%使用した『サントネージュ エクセラント 牧丘 倉科畑収穫カベルネ・ソーヴィニヨン2013』『同 シャルドネ2014』を数量限定で発売しました。リンゴ100%のスパークリングワイン「ニッカシードル」ブランドからは、生産量の少ない国産の紅玉リンゴのみを使用した『ニッカシードル紅玉リンゴ』、果汁が多く、甘味と酸味のバランスの良い国産ふじリンゴを100%使用した『ニッカシードルサマースパークリングふじリンゴ』、2015年に収穫した早生(わせ)品種“国産つがるリンゴ”を100%使用した『ニッカ シードルヌーヴォスパークリング2015』を、期間限定でそれぞれ発売しました。
業務用ハイボール市場においては、飲食店向けに『ブラックニッカ フリージングハイボール』の展開を開始しました。『ブラックニッカフリージングハイボール』は、氷点下(-2℃~0℃)の温度帯で楽しむ新しいハイボールです。氷点下にすることで、「ブラックニッカ クリア」ならではの“クリアな味わい”はそのままに、ほのかな甘さが引き立ち、炭酸がきめ細やかで鮮烈になり、爽快感が際立ちます。『ブラックニッカ フリージングハイボール』は、提供品質が一定であることや、オペレーションコストが抑えられることなどから売上アップにも貢献する商材として飲食店にも高く評価されています。

 

※1:栄養表示基準による。以下同じ。

※2:1.酸化しにくい原材料を厳選、2.熱によるダメージを低減し不快な香りを抑制、3.氷点貯蔵・ろ過により雑味成分を低減、4.製造工程内の酸素を低減し香味の劣化を抑制、により、最もビールに近い味を目指し、ドライなうまさにこだわった製法。

※3:Ready to Drinkの略。缶チューハイや缶カクテルなど、そのまま楽しめる低アルコール飲料のこと。

※4:1つの蒸溜所のモルトウイスキーだけでつくられたウイスキー。その蒸溜所の気候や風土などを反映した個性的な味わいが楽しめる。

※5:モルトウイスキーとモルトウイスキーを混和(ブレンド)すること。

※6:原料ぶどうに国産ぶどうを100%使用して製造したワインのこと。

 

(技術開発関連)
 アサヒビール(株)の『アサヒスーパードライ』は、2014年にアメリカで開催された国際的なビールコンテスト「ワールドビアカップ」での金賞受賞に続き、ベルギーの国際的なビールコンテストである「ブリュッセルビアチャレンジ2015」において、日本のビールメーカーとして初めてゴールドメダルを獲得しました。同コンテストでは、30カ国から1,111ブランドのエントリーがあり、世界各国から選ばれた総勢75名のプロの審査員による厳正なる審査の上、それぞれの賞が決定されました。その結果、『アサヒスーパードライ』がラガー・インターナショナルスタイルピルスナー部門でゴールドメダルを獲得し、スタウトエクスポート部門では、『アサヒスタウト』が優秀賞を受賞しました。「ブリュッセルビアチャレンジ」は国際的なビアコンペティションであり、世界中のビール生産者が、最高の品質を競い合うという機会を提供することを目的に、2012年から毎年開催されています。

 ニッカウヰスキー㈱が製造するブレンデッドウイスキー『フロム・ザ・バレル』は、世界的な酒類品評会である「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2015」のウイスキー部門において、450品を超えるエントリーの中からカテゴリー最高賞となる“トロフィー”を受賞しました。ニッカブランドが“トロフィー”を受賞するのは、2009年の『竹鶴21年ピュアモルト』に次いで2度目となります。同時に、ニッカウヰスキー(株)が、“ディスティラー オブ ザ イヤー”を受賞しました。高品質で優れた製品を生み出したメーカー(ディスティラー)の中から、1社だけに贈られる非常に名誉ある賞で、ニッカウヰスキーとしては初めての受賞となります。また、『竹鶴25年ピュアモルト』・『竹鶴21年ピュアモルト』・『ピュアモルトレッド』・『フロム・ザ・バレル』・『スーパーニッカ』・『鶴17年』・『カフェグレーン』・『カフェモルト』の8アイテムが金賞を受賞しました。インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)とは 、毎年イギリスの酒類専門出版社「ドリンクス・インターナショナル」が主催している酒類品評会です。ウイスキー部門のほか、ブランデー、テキーラ、ジン、ウォッカなどの部門があり、審査はブラインド・テイスティングによって行われます。各部門のカテゴリーから、金賞、銀賞、銅賞などが選ばれ、金賞の中から最高賞である“トロフィー”を選出します。ウイスキー部門については、世界の著名なウイスキー蒸溜所のブレンダーやディスティラーなどが審査員となっています。

 また、『竹鶴17年ピュアモルト』は、ウイスキーの国際的コンテスト「ワールド・ウイスキー・アワード2015」(WWA)において、「ワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキー」を受賞し、“世界最高賞”のブレンデッドモルトウイスキー(ピュアモルトウイスキー)として認定されました。『竹鶴17年ピュアモルト』が世界最高賞を受賞するのは、2012年、2014年に続き今回で3回目となります。『竹鶴21年ピュアモルト』が07年、09年、10年、11年にワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキーを4回受賞していることから、「竹鶴」ブランドとしては今回で7回目の受賞となります。1ブランドが7回世界最高賞を受賞するのは、WWA史上初となります。

 同じく、ニッカウヰスキー㈱が製造するスパークリングワインである『ニッカシードル・ロゼ』は、シードルの国際品評会「インターナショナル サイダー チャレンジ2015(International Cider Challenge)」において、銀賞を初受賞しました。同時に、『ニッカシードル・ドライ』は2度目の銀賞受賞、『ニッカシードル・スイート』は銅賞を受賞しました。

 サントネージュワイン㈱が製造した『サントネージュ エクセラント かみのやま 佐竹畑収穫シャルドネ 2014』は、「Japan Wine Competition(日本ワインコンクール) 2015」で金賞を受賞しました。サントネージュワイン(株)として、日本ワインコンクールの金賞受賞は初めてのことです。また、『サントネージュ エクセラント かみのやま 渡辺畑収穫カベルネ・ソーヴィニヨン2013』『サントネージュ エクセラント かみのやま 奈良崎畑収穫メルロー2012』の2アイテムは銅賞を受賞しました。

 

[飲料事業] 
(商品開発関連)
 アサヒ飲料社は、「ブランド強化を軸にした売上成長」を成長戦略に掲げ、ブランドの育成を軸とし新商品への積極的なチャレンジをして新価値創造に取り組んで参りました。

 具体的には、100年以上もお客様に愛され続ける「三ツ矢サイダー」、「ウィルキンソン」、そしてまもなく100年目を迎える「カルピス」をはじめ、「ワンダ」、「十六茶」、「おいしい水」、「バヤリース」、「Welch’s」といった当社にしかないブランドを永続的にお客様に支持していただける強固なブランドへ育成していく事を目指しました。また、お客様のニーズに対応した新たな提案や、市場の変化を先取りした新市場創造型の提案にも積極的に取り組んで参りました。

 「ワンダ」ブランドでは、『モーニングショット』、『金の微糖』、『ゴールドブラック-金の無糖-』の3本柱を中心とした継続育成に加え、伸長するボトル缶市場、PET市場に対して新商品の展開を行いました。

 『ワンダ モーニングショット』は、香り高く風味豊かなアラビカ種の新豆を100%使用し、コーヒー抽出時や充填時の酸化を防止する抗酸化製法で仕上げることで、“焼きたて、挽きたて、淹れたて”の目覚めるおいしさにすることに加え、本年のリニューアルでは後味の良さを改良し、さらに朝にふさわしいおいしさに仕上げました。

 また、近年のコーヒーの飲用機会拡大に伴い、コーヒーの質や製法にこだわるユーザーが増えていることに着目し、質や製法にこだわった新たな缶コーヒーの提案として、世界最大級の焙煎機メーカーである「PROBAT」(プロバット)社とタイアップした「焙煎を極めた缶コーヒー」が特長の「グランドワンダ」シリーズを本年発売いたしました。

 「三ツ矢」ブランドでは、最重点商品である『三ツ矢サイダー』、ならびに『三ツ矢サイダーゼロ』を含めた透明炭酸の商品力強化と新たな魅力のご提案に取り組みました。また、果汁炭酸については、「三ツ矢フルーツサイダー」や、「ぜいたく三ツ矢」シリーズ、『三ツ矢梅』『三ツ矢柚子』といった幅広い層のお客様にご支持頂ける商品提案力の強化により、果汁炭酸市場での「三ツ矢」ブランドの存在感の拡大を目指して参りました。

 さらに、一昨年発売した特保炭酸『三ツ矢サイダープラス』をはじめ、新たな商品提案、新たな価値提案に年間を通して積極的にチャレンジしました。

 「ウィルキンソン」ブランドについては、「シャープな爽快感」という固有の価値を磨き上げ、飲用シーン拡充や利便性を追求した新商品をご提案することで、炭酸水自体の価値に立脚したブランド価値を構築し、永続的なNo.1ブランドとなることを目指して参りました。

 具体的には、主力商品『ウィルキンソン タンサン』、『ウィルキンソン タンサン レモン』に加え、新たに大容量商品『ウィルキンソン タンサン PET1Lビッグボトル』を発売し、お客様の幅広いニーズにお応えできるラインアップとすることで、更なるブランドの成長を目指しました。

 「十六茶」ブランドについては、1993年に発売の『アサヒ 十六茶』が2005年から「カフェインゼロ」として生まれ変わり、今年で12年目をむかえました。無糖茶市場の流れをとらえるとともに、「健康的な水分補給」 ×「明るく元気」というブランドコンセプトの浸透が進み、2010年から5年連続で成長を続け、4年連続2,000万箱を突破しました。本年は、このブランドコンセプトに合わせて中味・パッケージに磨きをかけていくことで、さらなる進化を目指しました。中身については「仙草」に替えて新素材「ナツメ」を採用し、ご好評いただいている「カフェインゼロ」はそのままに、素材本来の旨み・甘味を活かしながら、お客様が求めるすっきり香ばしいおいしさに仕上げました。

 また、『食事と一緒に十六茶W』につきましては、トクホ無糖茶における「カフェインゼロ」ニーズに着目し、カフェインを取り除いたデカフェ茶葉(ウーロン茶葉、緑茶葉)を新たに採用することで、2つのヘルスクレームを持つトクホ茶では史上初の「カフェインゼロ」に中味をブラッシュアップ。さらに今までよりもすっきりとした味わいに仕上げ、より食事との相性を高めました。

 お客様のニーズに対応した新たな提案や、市場の変化を先取りした新市場創造型の商品としては、昨年4月より施行された機能性表示食品制度を活用した“目や鼻の調子を整える”『アサヒ めめはな茶』を発売いたしました。『アサヒ めめはな茶』は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市 理事長 井邊 時雄)との共同研究による成果を活用し、鹿児島で畑作りから取り組んだ国産の「べにふうき」茶葉を100%使用。その「べにふうき」に含まれるメチル化カテキンにより、ほこりやハウスダストによる目や鼻の不快感を緩和する今までにない健康価値を提供する商品を発売しました。

 カルピス㈱においては、『カルピスソーダ』のリニューアルを行うとともに、マンゴー、洋なし、巨峰のバリエーションを開発しました。また炭酸を強めた「カルピスソーダ」にレモンとライムを皮ごと凍結粉砕した果汁を加え、果実そのままの爽やかな風味と炭酸の刺激から生まれる爽快なキレ味にこだわった『「カルピスソーダ」大人のキレ味レモン&ライム』を開発いたしました。果汁入りの「カルピス」RTDとして、『メロン&「カルピス」』、『さくらんぼ佐藤錦&「カルピス」』、『信州巨峰&「カルピス」』、『キウイ&「カルピス」』、『ブラッドオレンジ&「カルピス」』、『いちご&「カルピス」』を開発いたしました。さらにゼリー飲料である『ふっておいしい「カルピス」ゼリー』やニンジン汁入りの「カルピス」RTDの『「カルピス」ベジタラッテ』、「カルピス」にコクを生み出す乳素材を組合せ、宮古島の「雪塩」をひとつまみ入れることで甘みを引き出して、甘みと塩分で疲れた体と心を癒す『夏のコク甘「カルピス」』など数多くの「カルピス」ブランド製品を開発し、「カルピス」ブランドの拡大と価値向上に努めました。「Welch’s」ブランドにおいては、新規なシリーズとして、『「Welch’s」ザ・フルーツマイスターグレープ100』、『ピンクグレープフルーツ100』の開発を行うとともに、新しい「Welch’s」の価値の提供を目指して、家庭で手作りしたような濃厚な食感のスムージーで、サラダボウル1杯分の野菜を加え、飲ごたえのある食感に仕上げた『「Welch’s」Smoothie Kitchen グレープミックス』、『オレンジミックス』、『ストロベリーミックス』の開発を行い「Welch’s」ブランドの価値向上に努めました。その他にも、懐かしい味わいの『味わいメロンクリームソーダ』、『味わいコーラフロート』、『味わいマンゴーオ・レ』など、新しい乳性飲料の提案も行いました。我々は、これからも新しい乳酸菌及び乳酸菌飲料、乳性飲料の価値を提案していきます。

 ㈱エルビーにおけるデイリーチルド及びロングライフ(LL)紙容器飲料では、基幹カテゴリーであるデイリーチルド無糖茶への新たな提案として、『ルイボスティー(1L)』を関東エリア限定にて発売しました。

 健康志向の高まりを背景に好調に推移している、カロリーゼロのデイリーチルド紅茶飲料(「大人の紅茶」シリーズ)では、茶葉を増量、また産地や品種にこだわった果汁を使用した500ml容器で「大人の紅茶PREMIUM」シリーズを新たに投入し、よりこだわったものを求められるお客様のニーズにもお応えしました。

 また食感素材入り飲料としては、独特の食感と健康素材としても近年注目されている「チアシード」とアロエ、ナタデココ、タピオカを組み合わせた「チアシード」シリーズをデイリーチルド500ml容器で新たに展開し、好評を得ました。

 デイリーチルド乳飲料では、アサイーに続き、ココナッツやピタヤ等の新たな素材を使用した飲料を展開しました。

 グループシナジーとしては、「カルピス」ブランドにて基幹商品となる「味わいカルピス」1Lシリーズの強化策として、『味わいカルピス』のリニューアル及び『国産白桃』、『ぶどう』の発売に加え、最盛期に『マンゴー』を投入、定番商品としての基盤をさらに増強しました。その他、タピオカ、ナタデココ、アロエ入りの「食感」シリーズ、クリームやミルクが入り、濃厚な味わいが楽しめる500ml商品の充実を図りました。LL商品においては、健康ニーズにお応えするビタミンやコラーゲン入りの「カルピス」商品、『メロン&「カルピス」』、『信州産巨峰&「カルピス」』を新たに発売いたしました。その他、カップ飲料にて『「カルピス」ゼリー』、『タピオカ&「カルピス」』を展開しました。

 「バヤリース」ブランドではLL商品にて「バヤリース ホテルブレックファースト100%」シリーズのリニューアル及び新たに『トロピカルミックス』を追加、シリーズ強化を行いました。

 その他自社ブランドのLLでは、宅配向け商品として『毎日ベリー習慣』『まるごとみかんのチカラ』を新たに投入、活性化を図りました。一方で『さらりと飲めるあまざけ』『ソイグルト』を開発、今までにない新たな商品提案を行いました。その他、牛乳や豆乳などと混ぜることでとろりとした食感が楽しめ、料理など様々な用途に使える『まぜておいしい黒酢りんご』、秋冬に体が温まり、容器ごとレンジ加温も可能な『素材のチカラ 生姜しぼり』を新容器で発売し、新たな顧客獲得を図りました。

 

(技術開発関連)
 アサヒ飲料㈱では、アサヒグループの環境ビジョン2020に基づき「低炭素社会」ならびに「循環型社会」の構築に貢献できる技術開発を推進して参りました。

 その結果、弊社炭酸飲料ブランドである「三ツ矢サイダー」、「ウィルキンソン」の省資源化と環境負荷低減への取り組みが、リデュース・リユース・リサイクル推進協議会が実施する「平成27年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」において協議会会長賞を受賞しました。

 また、お茶用アセプティックHOT/COLD兼用ボトルの開発を行い、それぞれに高温販売適性と自販機適性を持たせるとともに、軽量化を実現しPET使用量の削減、ならびに同一金型を使用することにより、型替時間を削減しPET成型工程の省力化と効率化を可能にしました。

 この他、製品、工程、苦情品解析に必要な安心安全技術(新規分析技術、解析技術)の拡充と有害微生物の検出技術、同定技術、静菌技術の研究についても継続して取り組みました。

 カルピス㈱では、人々の心とからだの健康に役立つ商品・技術を提供することを目指し、乳酸菌や微生物を活用した研究に取り組みました。その中で、津田彰久留米大学大学院心理学研究科教授の監修のもと、当社独自の乳酸菌と酵母を活用した乳酸菌飲料の機能性研究において、乳酸菌単独では作りだせない“乳酸菌と酵母”で発酵して作られる独特の“香り”には自律神経に働きかけて、リラックスをもたらし不安を和らげるなどの“癒し”効果があることをヒト試験にて確認し、日本生理心理学会で発表しました。今後も、さらに研究をすすめ、“乳酸菌と酵母”で発酵した乳酸菌飲料の香りの作用に関する科学的な知見を深めてまいります。

 そして、少子化が進む社会への貢献を目指し、田島信元白百合女子大学生涯発達研究教育センター長の監修のもと、乳酸菌飲料<希釈タイプ>を親子で共同作製することが子と親の心理発達に与える影響を調査しました。親子で共同して希釈作製し、飲用する体験を通じて、豊富な親子のコミュニケーションが生まれ、子が自分で考えて取り組むように成長することが明らかとなり、お絵かきや工作といったその他の発達ツールと比較しても、自分で考える力や、人を思いやる心を育む上で優れていることが明らかとなりました。これら研究成果を、日本発達心理学会、日本教育心理学会にて発表しました。今後は、子と親の心理発達に与える良い影響についてさらに検証を進めます。

 また、これまでアレルギーの改善やインフルエンザの予防効果が報告されてきた「L-92乳酸菌」のさらなる活用を目指し、この摂取により体内でどのような免疫指標が働いているのかをヒト試験において調べたところ、ウイルスや細菌を不活化することが知られている免疫グロブリンAが唾液中で増えていることを見出し、日本食品免疫学会で発表しました。「L-92乳酸菌」が働きかけることによって主要な免疫指標である免疫グロブリンAの働きが強化されるというメカニズムが明らかになってきたため、これを『守る働く乳酸菌』の学術支援や新たな研究開発に役立ててまいります。

 乳酸菌CP2305株(「プレミアガセリ菌CP2305」)については、おなかの健康に役立つ働きを排便回数が少ない人と多い人とを対象として調べたところ、それぞれの方々の排便回数や便性の改善、および腸内環境を改善する新たな試験成績が得られましたので、腸内細菌学会にて発表しました。この成果は『届く強さの乳酸菌』の学術支援や新たな研究開発に役立ててまいります。

 乳酸菌ばかりでなく、枯草菌C-3102株のおなかの健康に役立つ働きを、松井輝明帝京平成大学健康メディカル学部教授の監修のもと、近年多く取り上げられるようになった機能性胃腸症※1に悩む方々に対して調べたところ、胃腸症状や腹部の不快感をいろいろな評価項目において改善する作用を見出し、日本消化吸収学会で発表しました。この当社独自の枯草菌の新しい可能性につきましては、今後の活用に向けてさらに研究を進め、現代人に特有なおなかの悩みに役立てるよう開発につなげてまいります。

 乳酸菌が作り出すユニークな食品成分としては、これまでに血圧が高めの方に適する「ラクトトリペプチド」※2を見出し、『アミールS』に活用して1997年に特定保健用食品の許可を受け発売してまいりましたが、2015年の機能性表示食品制度開始に合わせ、北風政史国立循環器病研究センター臨床研究部・心臓血管内科部長の監修のもと、「ラクトトリペプチド」の日本人を対象とした血圧に関する有効性試験のシステマティックレビューを実施し、検索・選抜された18試験をまとめて評価しても血圧を下げる働きが検証されたことから、PLOS ONEという英文専門誌に発表しました。この成果をもとに、さらに健康な方を対象とした10試験に絞り込み、システマティックレビューを実施したところ、「ラクトトリペプチド」含む食品の形態、原料の種類、試験された1日当たりの摂取量によらず、健康な方においても血圧を下げる働きを検証したことから、これらを根拠として製品『アミールWATER』の機能性表示食品を届出て受理・発売に至りました。これにより「ラクトトリペプチド」の血圧に関する有効性が健康な方にも広く認められ、広く血圧に関する機能性表示が可能になりましたので、今後は各種の製品に活用してまいります。

 

  ※1:内視鏡検査等で異常を認めないにも関わらず腹部の痛みや膨満感を感じる胃腸症状。

※2:乳タンパク質の一種であるβ-カゼインに含まれる、バリン-プロリン-プロリンおよびイソロイシン-プロリン-プロリンという3つのアミノ酸からなる2種類のペプチド(アミノ酸がつながったもの)の呼称で、一部の乳酸菌または麹菌の酵素による分解により得られる。

 

[食品事業]
(商品開発関連)
 アサヒフードアンドヘルスケア㈱の菓子食品事業では、拡大傾向にある錠菓市場でのさらなる伸長を目指して「ミンティア」シリーズの強化に努め、育成ジャンルである中粒錠菓にこれまでに無かった華やかなフレーバーを特徴とする新製品『シャイニーピンク』を提案したのを始めとして新製品17品、リニューアル品3品を投入しました。人気のシリアル市場に向けては、大箱タイプの新製品『大豆グラノーラカカオ&ナッツ』を発売すると共に『フルーツグラノーラ』のリニューアルを行いました。また、キャンディ、グミ、焼き菓子やスープ等のジャンルにおきましても、新価値創出とブランド育成を目標に66品の新製品提案と29品の既存品リニューアルを行っています。一方、ヘルスケア事業におきましては4月にスタートした機能性表示食品制度に着目し、各種原料の有効性データの精査を実施することで信頼性の高い成分を選定して業界トップクラスの9アイテムの受理を得ることに成功。平成27年中には「ディアナチュラ」ブランドを中心に6アイテムの新製品を発売いたしました。また、ダイエット市場におきまして、海外での流行を受けて国内でも取り上げられる事の多くなりつつあるスーパーフードに注目し、15種のスーパーフードを含む25種類の素材をぎゅっと固めた新製品『スリムアップスリム スーパーフードキューブ』を提案したのを始めとして、ダイエット、コラーゲンや化粧品等のジャンルにおいても合計26品の新製品を発売しました。

 和光堂㈱は、ベビーフード市場向けに、幼児食カテゴリーとして親子のおかずを一度につくることのできる「おやこdeごはん」シリーズ3品を追加発売し、さらに親子のスープが一度にできるスープタイプの新商品3品を発売、ラインナップを強化しました。また、そのまま食べられるフルーツピューレの「くだもの食べよっ!」シリーズを刷新し、月齢に合わせてステップアップできる中身設計で、1食分のカップタイプの7品を発売しました。お出かけ時も便利で食事バランスをしっかりケアできるベビーフード「栄養マルシェ」シリーズ30品を、レンジも簡単な新容器にてリニューアル発売しました。シニア向けの介護食品では、水分補給を美味しく手軽にサポートできる「アクアチャージ」シリーズの2品(ゼリー飲料、とろみ付き粉末飲料)を発売。ゼリー飲料では誤飲配慮、開封性の良い容器を採用しました。また、3つの成分で栄養サポートできる粉末嗜好飲料の2品(カフェオレ、ミルクココア)と、しっとりやわらかタイプで食べやすさと美味しさにこだわった一口サイズの和風クッキー3品(かぼちゃ風、抹茶風、あずき風)を新発売し、シニアの間食分野を新規カテゴリーとして提案しました。粉末飲料「牛乳屋さん」シリーズは、いちごとミルクにバニラの香りをやさしく組み合わせた『牛乳屋さんのいちごバニララテ』と、カフェインレス※でやさしい味わいの『牛乳屋さんのやさしいミルクティー』を発売しました(※カフェインを90%以上カット)。業務用として、コンビニエンスストアのカウンターカフェ向けに『抹茶オレ』、『ココアオレ』をパウダータイプにて発売しました。

 天野実業(株)は、フリーズドライ食品を「より多くのお客様に、より多くの場所で、より購入しやすい価格で、よりおいしく食べてもらい驚いてもらう」を事業方針とし、商品開発に取り組みました。

 具体的には、主力である「みそ汁」カテゴリーの主力ブランドを強化、次の柱とする「米飯」、「にゅうめん」カテゴリーのラインナップを強化、フリーズドライの優位性が発揮できる新価値の提案に取り組みました。また、フリーズドライ食品の魅力を情報発信するための開発にも取り組みました。

 流通事業では、「うちのおみそ汁」ブランドでは、追加フレーバー『豚汁』、『赤だしなめこ』、『なす(減塩)』『赤だしなめこ(減塩)』を発売しました。「いつものおみそ汁」ブランドでは、追加フレーバー『赤だしなめこ(減塩)』、『野菜(減塩)』を発売しました。「にゅうめん」ブランドでは、追加フレーバー『梅と豚肉』『なすと水菜』、『生姜のあんかけ風』を発売しました。また、新技術の導入で「炙り雑炊」ブランドと「三ツ星キッチンパスタ」ブランドを展開しました。「炙り雑炊」では、具材を炙る技術を導入し、『炙りかに雑炊、』、『炙りさけ雑炊』、『炙りたらこ雑炊』を発売しました。「三ツ星キッチンパスタ」ブランドでは、コンセプト開発から2年をかけて60秒で復元するパスタを開発し、『3種のチーズのクリームパスタ』、『焼なすとトマトのクリームパスタ』を発売しました。また、2013年より防災食を発売していましたが、お客様のニーズに対応した「容器付き非常食保存食(保存期間5年)」の『ほうれん草のおみそ汁』、『たまごスープ』を発売しました。

 通販事業では、主に新価値の提案に取り組みました。昨年好評だった「一人鍋」シリーズは、『キムチ仕立て』、『豚しゃぶ仕立て』、『みぞれ仕立て』を再提案しました。「にゅうめん」ブランドでは、お客様の減塩ニーズに対応して既存品より25%塩分カットした優しい味わいの『すまし柚子(減塩)』、『まろやか鶏だし(減塩)』、『五種の野菜と味噌(減塩)』を提案しました。「健康軸商品」シリーズでは、グループ会社のカルピスが保有するトクホ関与成分ラクトトリペプチド(LTP)を配合した塩分1%未満の『LTP入り減塩みそ汁』、粒こんにゃくと押し麦が入ったカロリー(73Kcal)に配慮した『粒こんにゃく入りリゾット』を提案しました。「お惣菜」シリーズでは、『ひじきの煮物』、『ポテトサラダ』、『ほうれん草の白和え』、『なすの煮びたし』、『切干大根の煮物』、『卯の花』を提案しました。また、高機能高品質かつこれまでにない驚きある商品として『チキンカツの玉子とじ』を提案し、お湯をかけるだけで揚げ物カツの食感を味わえるフリーズドライの価値を高める商品を開発しました。

 フリーズドライ食品の魅力の情報発信は、創業の地である広島県福山市にアンテナショップ2号店の開設、若年層向けのWEBコンテンツサイト名「アマノ食堂」の運用開始など、ECサイト、アンテナショップとのミニオムニチャネルを実現させ、新製品の「パスタ」、「お惣菜」、「お茶碗丼」ブランド等のテストマーケティングにも取り組みました。

 

(技術開発関連)
 アサヒフードアンドヘルスケア㈱機能性評価部門では、機能性表示食品の開発に際して消費者庁の動向把握に努め、ガイドラインの公表に先行してシステマティックレビューを実施することで、いち早いタイミングで届出の受理に成功し、業界トップレベルのアイテム数を確保することに成功しました。また、酵母関連部門においては特定の菌株向けの培地用酵母エキスの開発に取組み、その第一弾として乳酸菌培養用酵母エキス「CM1」を開発し、商品化を行いました。

 和光堂㈱では、高齢者向けに開発されたクッキーの食べやすい食感を機器測定で評価する方法を検討し、日本咀嚼学会第26回学術大会でポスター発表しました。また、錠剤の製造方法において、圧縮成形性に劣る機能性原料の顆粒化製法を確立し、さらに本製法で作製された原料を含む錠剤が崩壊性に優れていることを見出し、アサヒフードアンドヘルスケア㈱と共同で特許を2件出願しました。

 天野実業(株)では、業界初の熱湯60秒での復元を可能にした「フリーズドライパスタ」を開発しました。

 

[食の安心安全]
 食品の安全性に対するお客様の期待が高まる中、食品に含まれる微量成分を網羅的に分析することが可能な最新の飛行時間型質量分析計を導入しました。本分析機器を活用して、食品の原材料、とくに食品添加物や容器包装資材を精密に分析することで、安全な製品づくりに貢献しています。また、水・原料・製品の安全性を正確かつ迅速に評価するために、最先端の分析技術を駆使し、残留農薬、残留動物用医薬品、カビ毒、有害金属、その他食品リスクとなる化学物質の高感度・高精度そして高速分析が可能な分析法を新規開発・改良し、品質確認のための分析体制を常に最先端のものに更新しています。各種学会や社外研究機関において密な情報交流を行うことで食品リスクに関する情報をいちはやく入手し、新規リスクの迅速な分析技術確立や新規技術導入に役立てています。グループ各社の分析部門と連携し、原料・製品の品質保証体制の更なる充実に貢献しました。

 

 

[新規事業関連] 
 バイオエタノールに関する研究開発では、砂糖とエタノールの同時増産を実現する新プロセス“逆転生産プロセス”を開発しました。サトウキビは、ショ糖(砂糖原料)と還元糖(砂糖生産を阻害するブドウ糖,果糖)の2種類の糖分を含有しています。多くの収穫量が期待できる高バイオマス量サトウキビや収穫期間外のサトウキビなどは、還元糖の含有率が高いため、砂糖の生産効率を低下させるという課題がありました。今回開発した“逆転生産プロセス”は、従来の砂糖・エタノールという製造順序を逆転させ、砂糖生産効率を下げる原因となる還元糖のみを先に選択的にエタノールに変換した後に、砂糖を生産するという画期的な同時生産プロセスです。バイオエタノールを生産することによって、砂糖生産効率を大幅に向上させ、これまでの収穫期間(工場稼働期間)を延長することができる革新的な技術で、国内外で特許登録が進んでいます。本技術は2013年度にマスコミ向けに発表を行い、地球規模で懸念される食料・エネルギー問題の解決に貢献する技術として、砂糖産業など多くの関係者から関心を集めています。現在、事業化を目指して更なる技術開発を推進しています。

 一方、副産物としての酵母を活用した農業資材などの新規事業開発についても実用化を目指して技術開発を推進しています。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

①売上高

当連結会計年度の売上高は、前期比4.0%増719億3千9百万円増収1兆8,574億1千8百万円となりました。酒類事業においては、販売数量が減少しましたが、ビール類以外の酒類やアルコールテイスト清涼飲料の売上がそれぞれ前年を上回ったほか、新規連結子会社の業績が上乗せになったことなどにより、前期比3.3%増309億7千1百万円増収9,729億2千4百万円となりました。飲料事業においては、「アサヒ飲料株式会社」及び「株式会社エルビー」の売上がそれぞれ前年実績を上回ったことにより、前期比4.0%増187億2千9百万円増収4,901億8千6百万円となりました。食品事業においては、「アサヒフードアンドヘルスケア株式会社」「和光堂株式会社」「天野実業株式会社」の売上がそれぞれ前年実績を上回ったことにより、前期比4.6%増50億1千1百万円増収1,150億3千5百万円となりました。国際事業においては、各地域の事業が堅調に推移したことに加え、「Etika」グループの業績が上乗せとなったことにより、前期比7.1%増165億5千万円増収2,497億3千4百万円となりました。その他の事業においては、物流業務全般における受託の拡大などにより、前期比2.3%増6億7千7百万円増収295億3千7百万円となりました。

②営業利益

当連結会計年度の営業利益は、前期比5.3%増68億1千3百万円増益1,351億1千9百万円となりました。酒類事業においては、販売促進費が増加しましたが、売上の増加に加え、製造原価の低減などにより、前期比1.5%増18億8百万円増益1,187億3千2百万円となりました。飲料事業においては、増収効果により、前期比5.1%増10億9千万円増益224億9百万円となりました。食品事業においては、増収効果のほか、広告販促費の効率的な投入や製造原価の低減などにより、前期比33.5%増20億2千7百万円増益80億7千4百万円となりました。国際事業においては、増収効果のほか、ペットボトル容器の内製化や物流費の効率化など、オセアニアにおける統合シナジーの最大化に努めたことなどにより、前期比47億2千3百万円増益35億1千9百万円となりました。その他の事業においては、前期比545.8%増11億3百万円増益13億5百万円となりました。

③営業外損益・経常利益

当連結会計年度の営業外収益は前期比62億2千7百万円増加の193億8千9百万円、営業外費用は前期比2億6千3百万円増加の85億6千2百万円となりました。その結果、営業外損益は前年同期に比べ59億6千3百万円増加しました。これは主に、持分法による投資利益の増益や、受取配当金等の増加による金融収支の改善などによるものです。
 以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、前期比9.6%増、127億7千7百万円増益の1,459億4千6百万円となりました。

 

④特別損益

当連結会計年度の特別利益は前期比261億3千7百万円減少の79億6千1百万円、特別損失は前期比30億2千5百万円増加の411億5千7百万円となりました。特別利益の減少は、主に前連結会計年度の西宮工場跡地売却による固定資産売却益や海外連結子会社における受取和解金がなくなったことによるものです。特別損失の増加は、主に投資有価証券評価損や事業統合関連費用の計上によるものです。その結果、特別損益は前年同期に比べ291億6千3百万円悪化しました。
(受取和解金、減損損失、事業統合関連費用については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載しております。)

⑤当期純利益

当連結会計年度の当期純利益は、前期比10.6%増、73億9百万円増益の764億2千7百万円となりました。当期純利益では15年連続で過去最高益を更新いたしました。
 また、1株当たり当期純利益は166.25円(前年同期148.92円)となり、自己資本利益率は8.8%(前年同期8.1%)となりました。

(3) 財政状態の分析

①総資産

当連結会計年度末の連結総資産は、国内外において買収した企業を新たに新規連結範囲に含めたことや、持分法適用会社を連結範囲に含めたことで、各資産が増加した一方、企業結合会計基準の早期適用やのれん減損によるのれん残高の減少、減価償却や減損による固定資産の減少があり、総資産は前期末と比較して350億5千4百万円減少の、1兆9,015億5千4百万円となりました。

②純資産

純資産は、前期末に比べ46億8千万円減少し、8,918億2千9百万円となりました。これは、当期純利益の計上による利益剰余金の増加やその他有価証券評価差額金の増加があったものの、企業結合会計基準の早期適用、自己株式の取得や配当金の支出による株主資本の減少、為替相場の変動による為替換算調整勘定の減少などによるものです。
 この結果、自己資本比率は46.2%となりました。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

①キャッシュ・フロー分析

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。

 

 

平成25年12月期

平成26年12月期

平成27年12月期

 

自己資本比率(%)

45.7

45.5

46.2

 

時価ベースの自己資本比率(%)

76.5

89.5

91.5

 

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

3.0

3.4

4.2

 

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

40.9

39.9

30.9

 

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

※  各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※  株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

※  キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。

②資金の調達

アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなりますが、当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げております。しかしながら、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。資金需要の発生した時点で、金利コストの最小化を図れるような調達方法を熟慮し、資金需要に対応しております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。

③資金の流動性

当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。

(5) 戦略的現状と見通し

平成28年度は、新たに策定した「中期経営方針」に基づいて、国内収益基盤の盤石化と国際事業の成長エンジン化による「稼ぐ力」の強化を図り、事業全体で着実な増収・増益を目指します。また、資本コストを踏まえた資産・資本効率の向上やサステナビリティの向上を目指したESG(環境・社会・ガバナンス)への取組みを強化することで、“企業価値向上経営”の更なる深化を目指していきます。

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「第2 事業の状況 3 対処すべき課題」に記載のとおりであります。

(7) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載のとおりであります。