第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当期における世界経済は、新興国・資源国経済の動向や欧州債務問題に懸念が残るものの、米国において個人消費が拡大したことや雇用者数が増加したことのほか、欧州において景気の持ち直しの動きが続いていることなどにより、先進国を中心に回復傾向となりました。

わが国経済におきましては、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響がありましたが、雇用・所得環境の改善により個人消費が底堅く推移したことや、企業収益の改善による設備投資の増加などにより、緩やかな回復が続きました。

こうした状況のなかアサヒグループは、平成25年度からスタートした「中期経営計画2015」のもとで、“バリュー&ネットワーク経営”を推進することにより、企業価値の向上に取り組みました。“バリュー&ネットワーク経営”では、これまで育成・獲得してきたブランド・技術・コスト競争力などの「強み」への集中やそれを活かした新たな価値創造・革新に加え、国内外のネットワークの更なる拡大による長期安定的な成長に向けた取組みを推進いたしました。また、売上と利益の成長を最優先に、株主還元の充実などにより資本効率を高めることで、重要業績評価指標であるROE(自己資本利益率)とEPS(1株当たり当期純利益)の持続的な向上にグループ全体で取り組みました。

その結果、アサヒグループの当期の売上高は1兆7,854億7千8百万円(前期比4.2%増)となりました。また、利益につきましては、営業利益は1,283億5百万円(前期比9.2%増)、経常利益は1,331億6千8百万円(前期比7.7%増)、当期純利益は691億1千8百万円(前期比11.9%増)となりました。

 

 

アサヒグループ

アサヒグループホールディングス㈱

売  上  高

1,785,478百万円

(前期比 4.2%増)

87,519百万円

(前期比 75.0%増)

営 業 利 益

128,305百万円

(前期比  9.2%増)

61,772百万円

(前期比 134.9%増)

経 常 利 益

133,168百万円

(前期比  7.7%増)

61,609百万円

(前期比 133.4%増)

当 期 純 利 益

69,118百万円

(前期比  11.9%増)

13,084百万円

(前期比 44.0%減)

 

 

[酒類事業]

酒類事業につきましては、夏場における天候不順などの影響を受けましたが、ビール類が2年連続で前年を上回る販売数量となったことや、洋酒、ワイン、アルコールテイスト清涼飲料の各カテゴリーが前年実績を大きく上回ったことなどにより、売上高は前期比1.7%増の9,419億5千3百万円となりました。のれん等償却前営業利益※は、広告・販売促進活動への積極的な投資や円安の影響などによる原材料コストの増加がありましたが、売上の増加に加え、減価償却費を中心とした固定費全般の削減の結果、前期比2.8%増の1,169億5千万円となりました(営業利益(のれん等償却後)は、前期比2.8%増の1,169億2千4百万円)。

   ※のれん等償却前営業利益=営業利益+のれん償却額と買収に伴う無形固定資産の償却額

 

(アサヒビール株式会社) 

「アサヒビール株式会社」は、お客様に「選択される」企業を目指して、お客様の潜在的なニーズや市場のトレンドを的確に捉えたブランド育成、商品づくりに取り組みました。

ビール類については、ビールにおいて、2月から本格展開した『アサヒスーパードライ ドライプレミアム』が積極的なマーケティング活動などにより好調に推移しました。また、新ジャンルは、『クリアアサヒ』『クリアアサヒ プライムリッチ』のテレビCMと連動した消費者キャンペーンの実施や、期間限定商品『クリアアサヒ 摘みたてホップ』の発売などにより、前年実績を上回りました。さらに、“プリン体ゼロ”と“糖質ゼロ”の発泡酒『アサヒスーパーゼロ』を9月に発売したことなどにより、ビール類全体でも前年を上回る販売数量となりました。その結果、ビール類のシェア※は拡大し5年連続でトップシェアとなりました。

 

ビール類以外の酒類については、洋酒において、ニッカウヰスキー創業80周年及びその創業者である竹鶴政孝生誕120周年にあたり、創業者の名を冠した『竹鶴』ブランドを中心にマーケティング活動を強化しました。また、チリワイン『サンタ・ヘレナ アルパカ』やスペインワイン『ヴィニャ・アルバリ・サングリア』を中心に輸入ワインが好調に推移したことなどにより、全体でも前年の売上を上回りました。

アルコールテイスト清涼飲料については、ビールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロ』の前年に実施したリニューアルの効果や派生商品『アサヒドライゼロブラック』の発売などにより、全体では販売数量が前年実績を上回りました。利益面では、増収効果に加え、設備投資の効率化や缶蓋のコストダウンなどにより、収益性の更なる向上に努めました。 
 ※ビール類のシェアは、国内ビールメーカー大手5社の課税出荷数量によります。

 

[飲料事業]

飲料事業につきましては、夏場の天候不順による影響がありましたが、「アサヒ飲料株式会社」及び「株式会社エルビー」の業績がともに堅調に推移したことにより、売上高は、前期比2.3%増の4,714億5千6百万円となりました。のれん等償却前営業利益は、コスト全般の効率化やグループ内の協業シナジーの創出などにより、前期比27.8%増の264億1千万円となりました(営業利益(のれん等償却後)は、前期比37.9%増の213億1千9百万円)。

 

(アサヒ飲料株式会社)

「アサヒ飲料株式会社」は、「確固たるブランドの育成」と「強靭な収益構造の確立」に取り組むことで、事業基盤の更なる強化を図りました。

成長戦略の根幹をなす商品戦略では、既存商品の販売促進活動の強化や新商品の発売など、主力ブランドにマーケティング投資を集中し、ブランドの強化・育成に取り組みました。

ブランド生誕130周年を迎えた『三ツ矢』ブランドにおいては、復刻商品の発売や『三ツ矢フリージングサイダー』による新価値を提案し、『十六茶』ブランドにおいては、特定保健用食品『アサヒ 食事と一緒に十六茶W(ダブル)』を発売するなど、ブランドの活性化に努めました。

また、ブランド生誕110周年を迎えた『ウィルキンソン』ブランドや『Welch’s(ウェルチ)』ブランドが好調に推移したことに加え、「カルピス株式会社」独自の乳酸菌「プレミアガセリ菌CP2305」を配合した乳性飲料『届く強さの乳酸菌』などの新商品を発売したことなどにより、全体の販売数量では前年実績を上回りました。

利益面では、自社工場の操業度向上の取組みや富士山工場の製造ラインの増設などにより生産性の向上を図るとともに、飲料事業全体でのグループ購買体制の確立や固定費全般の効率化を推進するなど、強靭な収益構造の確立に向けた取組みを強化いたしました。

 

(株式会社エルビー) 

「株式会社エルビー」は、主力のお茶、清涼飲料の各カテゴリーにおける商品開発などを通じて、新鮮さ・おいしさといったチルド飲料がもつ付加価値の提案を強化いたしました。

『味わいカルピス』などの『カルピス』ブランドにおいて、果汁などのさまざまな素材を組み合わせた新商品を発売したほか、乳飲料カテゴリーにおいて、健康意識の高まりにより注目されている「アサイー」と相性の良い果物を組み合わせたシリーズの商品を発売したことなどにより、同社全体では前年実績を上回る売上となりました。

利益面では、グループ購買などによる原材料コストの低減やチルド飲料におけるエリア生産体制への取組みなど、生産・物流コストの効率化に取り組みました。

 

[食品事業]

食品事業につきましては、「アサヒフードアンドヘルスケア株式会社」「和光堂株式会社」「天野実業株式会社」の売上がそれぞれ前年実績を上回り、売上高は前期比3.6%増の1,100億2千4百万円となりました。のれん等償却前営業利益は、製造原価の低減などにより、前期比22.7%増の64億8千4百万円となりました(営業利益(のれん等償却後)は、前期比22.9%増の60億4千7百万円)。

 

 

(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社) 

「アサヒフードアンドヘルスケア株式会社」は、「着実で健全な成長」「お客様の変化に対応できる組織・基盤の整備」「企業ブランド向上と風土改革」に取り組むなど、競合他社にない独自の強みをつくりだすことで、成長と収益性の向上に努めました。

食品事業においては、タブレット菓子『ミンティアブリーズ』の発売や栄養調整食品『1本満足バー』の商品ラインアップの拡充などにより、好調に推移しました。また、ヘルスケア事業におけるパウチタイプのサプリメント『ディアナチュラスタイル』の積極的な販売促進活動などにより、同社全体の売上は前年実績を上回りました。

利益面では、広告販促費の効率的な投入や製造原価の低減などに取り組みました。

 

(和光堂株式会社) 

「和光堂株式会社」は、既存事業における堅実な成長と収益性の強化を図るとともに、成長分野において次の柱となる事業の育成に努めました。

主力のベビーフードにおいては、容器入り幼児食『BIGサイズの栄養マルシェ』や簡単合わせ調味料『おやこdeごはん』を発売したことなどにより、好調に推移しました。また、育児用ミルクにおいて店頭での販売促進活動を強化したことなどにより、同社全体でも前年の売上を上回りました。

利益面では、生産体制の最適化や販売促進費の圧縮による固定費削減に取り組みました。

 

(天野実業株式会社) 

「天野実業株式会社」は、「食品市場における存在感の向上」「収益構造の改革」「お客様の生活を豊かにする創造企業」を基本方針として、事業基盤の強化に取り組みました。

流通販売事業においては、フリーズドライ味噌汁における主力商品のリニューアルや多様な価格帯での商品展開に加え、積極的なマーケティング活動により『アマノ』ブランドの認知度の向上に努めました。さらに、法人向けの業務用販売事業における営業活動の強化などにより、同社全体の売上は前年実績を上回りました。

利益面では、製造工程の見直しにより原材料コストやエネルギーコストの低減を図り、収益性の向上に取り組みました。

 

[国際事業]

国際事業につきましては、各地域の事業が堅調に推移したことに加え、東南アジアの新規連結子会社の業績の上乗せ効果などにより、売上高は前期比21.4%増の2,331億8千4百万円となりました。のれん等償却前営業利益は、各地域の事業の収益性向上により、前期比53.1%増の127億1千5百万円となりました(営業損失(のれん等償却後)は、前期に比べ33億6千1百万円改善し、12億4百万円)。

 

(オセアニア事業) 

オセアニア事業では、地域統括会社である「Asahi Holdings (Australia) Pty Ltd」を中心に、各地域事業会社の主力ブランドの育成や成長分野における事業展開に加え、グループ内でのシナジーの創出などにより、飲料・酒類をあわせた総合飲料事業としての成長に取り組みました。

飲料事業においては、『Schweppes』『Solo』『Pepsi』ブランドといった主力の炭酸飲料カテゴリーで販売を強化したほか、市場が拡大しているミネラルウォーターでテレビCMの投入や新商品の発売など積極的なマーケティング活動を展開いたしました。酒類事業においては、主力の低アルコール飲料カテゴリーにおける基幹ブランドのリニューアルや新商品の発売など、ブランド力の強化を図りました。また、輸入ビールにおける『アサヒスーパードライ』や成長分野であるサイダー(りんご酒)の主力ブランドが好調に推移したことにより、オセアニア事業全体では前年実績を上回る売上となりました。

さらに、生産・物流拠点の統廃合による効率化のほか、組織統合による間接部門の機能の最適化や原材料の共同調達の推進など、グループシナジーの最大化に努めました。

 

(中国事業) 

中国事業では、『アサヒ』ブランドの売上拡大による市場での地位向上を図るとともに、生産拠点の集約化を更に進めることで、品質の向上と収益性の改善を目指しました。

『アサヒ』ブランドにおいては、従来の日本料理店から韓国などの外国料理店やバー業態まで取扱店舗の拡大を推進したことに加え、量販店や成長著しいインターネット通信販売業態へ積極的に営業活動を展開したことにより、販売数量は前年実績を上回りました。

さらに、「北京啤酒朝日有限公司」での販売体制の見直しと『アサヒ』ブランドの生産機能の集約による生産性の向上のほか、現地生産拠点におけるアルミ缶などの原材料のコスト低減により、収益性の改善を図りました。

 

(東南アジア事業) 

東南アジア事業では、マレーシアの飲料会社「Permanis Sdn. Bhd.」における主力ブランドの強化に加え、インドネシアにおける飲料事業の事業基盤を構築していくことで、東南アジアの事業ネットワークの拡大を図りました。

マレーシアでは、「Permanis Sdn. Bhd.」において、主力ブランドの炭酸飲料が好調に推移したことや『アサヒ』ブランドの缶コーヒー『ワンダ』の広告販促活動などを強化した結果、前年実績を上回る売上となりました。さらに、砂糖・アルミ缶などの原材料調達における効率化や物流コストの削減などにより、収益性の向上を図りました。また、乳製品を製造・販売する「Etika Dairies Sdn. Bhd.」他15社を7月から新たに連結子会社に加え、同地域における事業基盤の更なる強化を推進しました。

インドネシアでは、「PT Indofood CBP Sukses Makmur Tbk」との合弁会社において、緑茶とコーヒーカテゴリーにおける積極的な販売促進活動に加え、『ICHI OCHA GREEN TEA HONEY』を発売するなど、商品の認知度向上を図りました。また、『Pepsi』やミネラルウォーター『Club』ブランドの販路拡大に取り組むなど、事業基盤の構築に努めました。

 

[その他の事業]

その他の事業につきましては、物流業務全般の受託の拡大に努めましたが、売上高は前期比0.6%減の288億5千9百万円となりました。のれん等償却前営業利益は、前期比67.5%減の2億2百万円となりました(営業利益(のれん等償却後)は、同額の前期比67.5%減の2億2百万円)。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加や減損損失といった非キャッシュ費用の増加などがあった一方、法人税等の支払額の増加や売上債権の増加による収入減などがあったことにより、前期比で収入が104億6千9百万円減少し、1,467億8千3百万円の収入となりました。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、東南アジアや国内における子会社株式を取得したことなどにより、前期比では支出が264億7千9百万円増加し、921億8千3百万円の支出となりました。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に自己株式の取得による支出の増加があった一方、短期借入金など金融債務の借入を実施したため、前期比で490億9千6百万円支出が減少し、358億4千2百万円の支出となりました。
 以上の結果、当連結会計年度末では、前連結会計年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は211億1千8百万円増加し、622億3千5百万円となりました。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。

 

セグメントの名称

数量又は金額

単位

前年同期比

酒            類

2,366,688

KL

101.1  %

飲            料

472,321

百万円

104.6  %

食            品

107,936

百万円

104.3  %

国            際

217,574

百万円

120.5  %

 

(注) 1 金額は、販売価格によっております。

2 酒類事業の生産数量、飲料事業及び食品事業の生産高には、外部への製造委託を含めております。

3 上記金額には消費税等は含まれておりません。

 

(2) 受注実績

当社では受注生産はほとんど行っておりません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。

 

セグメントの名称

金額

前年同期比

酒           類

941,953

百万円

101.7

飲           料

471,456

百万円

102.3

食           品

110,024

百万円

103.6

国           際

233,184

百万円

121.4

そ     の    他

28,859

百万円

99.4

合           計

1,785,478

百万円

104.2

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記金額には消費税等は含まれておりません。

3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

 

相手先

販売高

割合

販売高

割合

 

 

(百万円)

(%)

(百万円)

(%)

 

国分㈱

187,232

10.9

200,157

11.2

 

伊藤忠食品㈱

188,669

11.0

195,819

11.0

 

 

 

3 【対処すべき課題】

「アサヒグループホールディングス株式会社」は、厳しさを増す経営環境の変化やステークホルダーのニーズの多様化などに対応するために「長期ビジョン2020」と、その実現に向けた3か年計画である「中期経営計画2015」を策定し、平成25年度から“バリュー&ネットワーク経営”を推進することにより、企業価値の向上を目指しています。“バリュー&ネットワーク経営”では、これまで育成・獲得してきたブランド・技術・コスト競争力などの「強み」への集中やそれを活かした新たな価値創造・革新に加え、国内外のネットワークを更に拡大することで、長期安定的な成長を図ります。また、売上と利益の成長を最優先に、株主還元の充実などによって資本効率を高めることで、重要業績評価指標であるROE(自己資本利益率)とEPS(1株当たり当期純利益)の持続的な向上にグループ全体で取り組んでいきます。

当社は、株主や投資家の皆様、消費者の皆様をはじめとするステークホルダーの方々のご期待に応える企業活動を実現するために、アサヒグループのコーポレート・ガバナンスの充実を経営の最優先課題と考え、グループ経営の強化、社会との信頼関係の強化、企業の社会性・透明性の向上に積極的に取り組んでいます。また、本年6月には、国内の取引所に上場する会社を対象とする「コーポレートガバナンス・コード」の適用が予定されております。

当社は、本コードを適切に実践し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることで、ステークホルダーの方々、ひいては経済全体の発展にも寄与するという考え方に賛同し、以下のとおり取り組んでいきます。

・ 株主総会招集ご通知の早期発送や資本政策の開示など、株主様の権利が実質的かつ平等に確保されるよう、引き続き適切な対応を行うとともに、その権利を適切に行使することができる環境の整備を進めます。 

・ 持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、ステークホルダーの方々のご支援によるものであることを認識し、社会のサスティナビリティを巡る問題や多様性を取り込んだ組織運営などにおいて、取締役会・経営陣はリーダーシップを発揮し、ステークホルダーの方々との適切な協働に努めます。

・ 財政状態・経営成績などの財務情報のみならず、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報などの非財務情報についても、決算説明会やインターネットによる情報開示などにより、分かりやすく有用性が高い情報提供に積極的に取り組みます。

・ 取締役会は、株主の皆様への受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に取り組み、収益力・資本効率などの改善を進めます。また、独立社外取締役を含めて経営能力を向上させ、適切にその役割・責務を果たします。

・ 持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを車の両輪として、IR(インベスター・リレーションズ)・SR(シェアホルダー・リレーションズ)活動や株主様工場見学会などを継続して実施することにより、株主や投資家の皆様との間で建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)を推進します。

 

[酒類事業]

(アサヒビール株式会社) 

 「アサヒビール株式会社」は、多様な価値観やライフスタイルの広がりがますます進むことが予測されるなか、「総合酒類提案を通じて“最強のパートナー企業”を目指す!」をスローガンに、「夏場依存」からの脱却と「“コト”消費の創出」による需要拡大などに取り組み、「お客様のうまい!」に向けた活動を積極化します。

 ビール類については、主力ブランドの強化とともに、イベントや催事に合わせたマーケティング活動の強化に取り組みます。『アサヒスーパードライ』では時間の経過による味の変化を抑制する「新・仕込み技術」を導入することで、「飲みごたえ」と「キレ」の向上を図り、更に味を「進化」させます。また、期間限定商品『アサヒスーパードライ エクストラシャープ』の発売や『アサヒスーパードライ ドライプレミアム』の更なる販売強化など、より一層のブランド価値の向上に努めていきます。さらに、健康意識の高まりを背景に“糖質ゼロ”の発泡酒『アサヒスタイルフリー』の“プリン体ゼロ”の派生商品や新ジャンル『クリアアサヒ 糖質0(ゼロ)』を発売するなど、多様なニーズに対応した商品ラインアップの拡充を図ります。これらの取組みにより、ビール類において3年連続で前年を上回る販売数量を目指していきます。

 

 ビール類以外の酒類については、各カテゴリーにおいて中核ブランドの育成と強化を図ります。洋酒では、「ニッカウヰスキー株式会社」の創業者の名前を冠した『竹鶴』の情報発信を中心に、『ブラックニッカ フリージングハイボール』の展開や復刻版の商品の発売など、積極的なマーケティング活動を展開していきます。また、「Brown-Forman Corporation」の『ジャック ダニエル』『アーリータイムズ』などの商品情報を積極的に発信することで、主力ブランドの認知度の向上に努めます。また、ワインでは、輸入デイリーワイン『サンタ・ヘレナ アルパカ』を中心に販売促進活動を強化していきます。

 アルコールテイスト清涼飲料については、“糖質ゼロ”“カロリーゼロ”のビールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロ』ブランドで“プリン体ゼロ”を実現した『アサヒドライゼロフリー』を発売するなど、市場における存在感を高めていきます。

 また、缶蓋の変更による原材料コストの削減や減価償却費を中心とした固定費全般の効率化などにより、盤石な収益構造の確立を図ります。

 

[飲料事業]

(アサヒ飲料株式会社) 

 「アサヒ飲料株式会社」は、「ブランド強化を軸にした売上成長」と「より強靭な収益構造の確立」に取り組み、柔軟かつスピーディーな改革を推進し、更なる飛躍を目指します。

 成長戦略の根幹をなす商品戦略として、既存商品の販売促進活動の強化や新商品の発売など、主力ブランドにマーケティング投資を集中することに加えて、新たな定番商品の育成を図ります。また、おいしさ価値の深化と健康価値を付加した商品の展開を通じて、更なるブランド価値の向上を図ることにより、市場における存在感を高めていきます。自動販売機の事業においては、売上の増加と合わせて資産の効率的な運用を進めて、安定した業績の確立に努めます。

 さらに、操業度の向上による自社工場の生産性の向上やグループ購買の推進のほか、「カルピス株式会社」との最適生産物流体制の構築により、一層の収益構造の改革を推進いたします。

 

(株式会社エルビー) 

 「株式会社エルビー」は、新価値を提案する商品開発力の強化と販路の拡大、生産・物流コストの効率化により、成長戦略と収益構造改革の実現を目指します。

 『カルピス』ブランドを中心にアサヒグループのブランドを活用した商品の積極的な展開などによる新価値の提案に加え、新規取引先獲得のための営業を強化することで売上の拡大を図ります。

 また、需給調整能力の向上やグループ購買の推進による生産コストの低減など、収益構造の改革を進めます。

 

[食品事業]

(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社) 

 「アサヒフードアンドヘルスケア株式会社」は、「着実で健全な成長」「お客様の変化に対応できる組織・基盤の整備」「企業ブランド向上と風土改革」に取り組み、お客様の支持を得て成長する企業への発展を目指します。

 タブレット菓子『ミンティア』ブランドの既存商品の強化や新商品の発売のほか、サプリメント『ディアナチュラ』における販売促進活動などの展開や、指定医薬部外品『エビオス錠』でパウチタイプの新商品を発売することなどにより、売上の拡大に努めます。

 また、最適需給体制の構築による在庫の適正化や生産性の向上に取り組むことで、収益構造の強化を図ります。

 

(和光堂株式会社) 

 「和光堂株式会社」は、既存事業において生産性・収益性を高めるとともに、成長分野と位置づける高齢者向け事業や海外事業の育成を強化します。

 容器入りベビーフード『栄養マルシェ』のリニューアルや簡単合わせ調味料『おやこdeごはん』の商品ラインアップの拡充に取り組むとともに、高齢者向け事業における営業活動を強化し、売上の拡大を図ります。

 さらに、省エネ設備の導入による生産性の向上や原材料のコストダウンなどにより、収益性の向上に努めます。

 

 

(天野実業株式会社) 

 「天野実業株式会社」は、「食品市場における存在感の向上」「収益構造の改革」「お客様の生活を豊かにする創造企業」を基本方針として取り組んでいきます。

 流通販売事業においては、主力のフリーズドライ味噌汁『いつものおみそ汁』や、『にゅうめん』の積極的な販売促進活動を展開します。通信販売事業では、新規顧客の獲得に向けた通信販売専用の商品の展開などにより、売上の拡大を目指します。

 また、グループ購買の推進による原材料のコストダウンや、最適生産体制の整備などにより収益性の強化に努めます。

 

[国際事業]

(オセアニア事業) 

 オセアニア事業については、地域統括会社である「Asahi Holdings (Australia) Pty Ltd」を中心に、各地域事業会社の主力ブランドの育成や成長分野におけるマーケティング投資に加えて、生産・物流拠点の統合や組織統合シナジーの最大化などにより、飲料・酒類をあわせた総合飲料事業としての成長を目指します。 

 飲料事業では、成長カテゴリーにおける新商品の展開や健康志向へのニーズに対応した炭酸飲料の糖分カット商品の販売強化などにより、飲料市場全体における存在感を高め、売上の拡大を図ります。酒類事業では、主力の低アルコール飲料やサイダー(りんご酒)、『アサヒスーパードライ』に集中したマーケティング活動を通じて、持続的な成長を目指します。

 さらに、引き続き最適な生産・物流体制の構築に向けた取組みを強化するとともに、組織統合による原材料の共同調達や間接部門の合理化などを推進し、更なるシナジーの創出を追求していくことで安定的かつ盤石な収益基盤を確立します。

 

(東南アジア事業)  

 東南アジア事業については、主力商品を中心にブランド力を強化するとともに、生産体制の整備を推進し、競争力のある収益構造を確立していくことで、成長基盤の構築を図ります。

 マレーシアでは、4月に予定されている物品・サービス税の導入による厳しい経済環境を想定し、「Permanis Sdn. Bhd.」において、果汁飲料『Tropicana』や炭酸飲料『Mountain Dew』など主力ブランドを強化するほか、『ワンダ』のブランド力を高めるため、テレビCMやサンプリングなどの積極的なマーケティング活動を行い、売上の拡大を図ります。また、配送方法の見直しによる物流コストの効率化や原材料コストの削減に努め、収益性を高めていきます。「Etika」グループにおいては、主力のコンデンスミルク事業で業務用市場での販売を強化するとともに、成長著しいフレッシュミルク事業では販路の拡大に取り組みます。また、機能性を付加した容器の展開や生産工程の見直しによる生産性向上などにより、収益基盤の拡大を目指します。

 インドネシアでは、「PT Indofood CBP Sukses Makmur Tbk」との合弁会社において、既存商品のブランド力の強化と新商品の投入などにより、市場における存在感を高めていくとともに、『Pepsi』や『Club』ブランドにおける販売促進活動を強化していきます。また、安定した生産体制を構築することでコスト競争力を向上させ、事業基盤の強化を図ります。

 

(中国事業) 

 中国事業については、プレミアムビール市場での『アサヒ』ブランドの地位向上を図るとともに、生産拠点における品質の向上と収益性の改善を目指します。

 最重点市場の上海エリアを中心に、引き続き業態別営業体制による専門性の高い営業活動を推進していきます。業務用の営業において、中華料理店や韓国などの外国料理店での新たな取扱店の獲得を目指すとともに、インターネット通信販売の取扱い拡大や量販店での地位向上を通じて、売上の拡大を図っていきます。

 また、現地生産拠点において、製造品種の最適化による生産性の向上を図るとともに、原材料コストやエネルギーコストの削減などに取り組むことで、安定した収益基盤を構築していきます。

 

 

なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(会社法施行規則第118条第3号本文に規定される事項)を定めており、その内容等は次の通りであります。

 

①基本方針の内容

当社では、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者とは、アサヒグループの企業価値の源泉である“魅力ある商品づくり”“品質・ものづくりへのこだわり”“お客様へ感動をお届けする活動”や有形無形の経営資源、将来を見据えた施策の潜在的効果、その他アサヒグループの企業価値を構成する事項等、さまざまな事項を適切に把握したうえで、当社が企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保、向上していくことを可能とする者でなければならないと考えています。

当社は、当社株式について大量買付がなされる場合、当社取締役会の賛同を得ずに行われる、いわゆる「敵対的買収」であっても、企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。また、株式会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるかどうかの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えています。
 しかしながら、株式の大量買付のなかには、その目的等から見て企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が株式の大量買付の内容等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社が買収者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買収者との交渉を必要とするものなど、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さないものも少なくありません。
 このように当社株式の大量買付を行う者が、アサヒグループの企業価値の源泉を理解し、中長期的に確保し、向上させられる者でなければ、アサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益は毀損されることになります。
 そこで当社は、このような大量買付に対しては、アサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益を守る必要があると考えます。

 

②基本方針実現のための取組み

(a) 基本方針の実現に資する特別な取組み

当社では、「『食の感動(おいしさ・喜び・新しさ)』を通じて、世界で信頼される企業グループを目指す」ことを掲げた「長期ビジョン2020」を策定するとともに、その実現に向け “バリュー&ネットワーク経営” を推進することによる企業価値の向上を目指した3か年計画として「中期経営計画2015」の取組みをグループ全体で開始いたしました。
 この「中期経営計画2015」では、これまで育成・獲得してきたブランド・技術・コスト競争力などの「強み」への集中やそれを活かした新たな価値創造・革新に加え、国内外のネットワークを更に拡大することで、長期安定的な成長を図ります。また、売上と利益の成長を最優先に、株主還元の充実などによって資本効率を高めることで、重要業績評価指標であるROE(自己資本利益率)とEPS(1株当たり当期純利益)の持続的な向上に取り組んでいます。

「長期ビジョン2020」の達成に向けた「中期経営計画2015」をグループ全体で着実に実行していくことが、アサヒグループとステークホルダーとの信頼関係を一層強固に築き上げ、企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上につながるものであると考えております。
 なお、当社は、前記の諸施策のため、コーポレート・ガバナンスの更なる強化を図っています。

当社においては、平成12年3月30日に執行役員制度を導入したことにより、経営の意思決定と業務執行機能を分離し、業務の迅速な執行を図るとともに、取締役会における監督機能の強化に努めてまいりました。これに加え、3名の社外取締役と3名の社外監査役を、東京証券取引所の定める独立役員として指定し、同取引所に届け出ております。
 また、当社取締役会の諮問機関であり社外取締役も委員となっている「指名委員会」及び「報酬委員会」の設置により、社外役員によるチェックが機能しやすい体制としております。

さらに、株主の皆様に対する経営陣の責任をより一層明確にするため、平成19年3月27日開催の第83回定時株主総会において、取締役の任期を2年から1年に短縮いたしました。

平成23年7月1日には純粋持株会社制へ移行することで、各事業部門の権限と責任の明確化や専門性の追求により事業基盤の強化を図るとともに、企業価値の向上を目指した国内外の事業ネットワークの拡大を推進いたしました。

 

 

(b) 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

当社は、大量取得行為を行おうとする者に対しては、大量取得行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間の確保に努めるなど、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じてまいります。

 

③具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由

② (a)に記載した各取組みは、①に記載した基本方針に従い、当社をはじめとするアサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益に沿うものであり、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。

 

4 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。

(1)国内市場・経済の動向及び人口の変動による影響について

 アサヒグループの売上高において酒類事業の占める割合は約53%となっており、またその大部分は国内市場での売上となっております。今後の国内景気の動向によって、酒類消費量に大きな影響を与える可能性が考えられます。また、日本国内での人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類の消費量の減少、また酒類のみならず飲料事業、食品事業における消費量にも影響を与え、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2)税制改正について

 消費税や酒税の増税が行われた場合、販売価格の上昇によって酒類事業、飲料事業、食品事業における消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3)特定商品への依存について

 アサヒグループの売上高の中で重要な部分を占めるのが、ビール類販売による売上であります。アサヒグループとしましては、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させ売上高を増加させるとともに、酒類事業以外に飲料、食品といった事業の拡大を図っております。しかしながら、市場の需要動向によってビール類消費量の大幅な減少を余儀なくされる等、予期せぬ事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(4)食品の安全性について

 アサヒグループは、最高の品質をお客様にご提供することを経営理念として掲げており、グループ内の万全な検査管理体制によって食品の安全性を確立しております。しかしながら、食品業界を取り巻く昨今の環境においては、放射能汚染、鳥インフルエンザ、残留農薬、遺伝子組替、アレルギー物質の表示、異物混入等様々な問題が発生しております。また、従来の食品安全の取り組みに加え、意図的な異物混入を防止するフードディフェンスの取り組みの必要性が増しております。アサヒグループとしましては、そのリスクを事前に察知あるいは評価し、顕在化する前に対処するよう取組みを強化しておりますが、アサヒグループの取組みの範囲を超える事態が発生した場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(5)原材料価格の変動について

 アサヒグループの製品に使用する主要な原材料の価格は、天候、自然災害等によって変動します。価格が高騰した場合には製造コストの上昇に繋がり、また市場の状況によって販売価格に転嫁することができない場合があり、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(6)気象条件、自然災害等による影響について

 アサヒグループの酒類及び飲料の売上については、異常気象や天候不順によって市場が低迷した場合、その販売量が影響を受ける可能性があります。また、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等の影響で製造、物流設備等が損害を被ることにより、資産の喪失、商品の滞留等による損失計上、設備復旧のための費用、生産、物流の停止による機会損失が考えられ、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(7)情報システムのリスクについて

 アサヒグループは、販促キャンペーン、通信販売等により多数のお客さまの個人情報を保持しております。アサヒグループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、システムを含め情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しております。しかしながら、停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウィルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超える出来事により、情報システムの崩壊、停止または一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクがあります。このような事態が発生した場合、営業活動に支障をきたし、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)海外事業におけるリスクについて

 アサヒグループは、アジア、オセアニア及び欧米にて海外での事業を展開しております。アサヒグループとしましては、そのリスクを事前に察知し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組んでおりますが、以下のような予期できない、または予測の範囲を超える変化があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
     ・ 予期できない租税制度や法律、規制等の改正
     ・ 政治的要因及び経済的要因の変動
     ・ 伝染病の流行による社会的・経済的混乱
     ・ 予測の範囲を超えた市場の変動、為替レートの変動
     ・ テロ・戦争の勃発による社会的・経済的混乱
     ・ 異常気象や地震等の自然災害の発生

(9)環境に関するリスクについて

 アサヒグループは、廃棄物再資源化、省エネルギー、二酸化炭素排出の削減、容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していくうえで環境に関連する各種法律、規制を遵守しております。しかしながら、関係法令等の変更によって、新規設備の投資、廃棄物処理方法の変更等による大幅なコストの増加が発生する場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(10)法律、規制等の変更によるリスクについて

 アサヒグループは、国内で事業を遂行していくうえで、酒税法、食品衛生法、製造物責任法等様々な法的規制の適用を受けております。また海外事業を展開していくうえでも関係する法律、規制等の適用を受けております。これらの法律、規制等が変更された場合、または予期し得ない法律、規制等が新たに導入された場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(11)アルコール飲料規制の動きについて

 アサヒグループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任(CSR)を果たすため、広告の表現や容器への表示に関して細心の注意をはらうとともに、未成年飲酒・妊産婦飲酒の防止等、適正飲酒の啓発活動に積極的に取り組んでおりますが、国際的にアルコール問題が議論される中、予想を大幅に超える規制が行われた場合、酒類消費量が減少し、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(12)訴訟のリスクについて

 アサヒグループは、事業を遂行していくうえで、各種関係法令を遵守し、また社員がコンプライアンスを理解し、実践することに最善の努力をしております。しかしながら、国内国外を問わず事業を遂行していくうえで、訴訟提起されるリスクを抱えております。万一アサヒグループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(13)保有資産の価格変動について

 アサヒグループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(14)退職給付関係について

 アサヒグループの従業員及び元従業員の退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で使用される割引率、年金資産の期待運用収益率等に基づき算出されております。年金資産の時価変動、金利の変動、年金制度の変更等、前提条件に大きな変動があった場合、アサヒグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(15)事業・資本提携について

 アサヒグループは、中期経営計画に沿って、成長基盤確立の一環として国内外他社との事業・資本提携を推進しています。しかしながら、アサヒグループ、提携先及び出資先を取り巻く事業環境の変化等の影響によって、当初想定していたシナジー効果を得られない可能性があります。また、そのような環境変化によって、提携先及び出資先の事業、経営及び財務状況の悪化等が生じた場合、アサヒグループの事業、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
 また、出資に伴い、「のれん」の償却が多額に発生した場合、あるいは出資先が業績不振となり多額の減損損失を計上する必要が生じた場合、アサヒグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

業務提携等に関する契約

会社名

契約事項

契約締結先

締結年月

発効年月

有効期限

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国における「アサヒスーパードライ」及び「アサヒビール」の製造ライセンス供与のための「深圳青島啤酒朝日有限公司」の合弁契約

伊藤忠商事株式会社
住金物産株式会社
(中国)
青島啤酒股份有限公司

平成9年
10月

平成10年
8月

平成36年
7月

アサヒビール
株式会社
(連結子会社)

沖縄県及び鹿児島県奄美大島群島を除く日本における「アサヒ オリオンドラフト」の販売契約

オリオンビール株式会社

平成14年
11月

平成14年
11月

自動更新

アサヒビール
株式会社
(連結子会社)

沖縄県における「アサヒスーパードライ」等の製造販売ライセンスの供与契約

オリオンビール株式会社

平成15年
5月

平成15年
5月

自動更新

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

飲料事業、チルド事業、食品事業、海外事業、調達・物流等の機能面における業務提携契約

カゴメ株式会社

平成19年
2月

平成19年
2月

自動更新

アサヒビール
株式会社
(連結子会社)

欧州ロシア・周辺11カ国における「アサヒスーパードライ」の製造販売ライセンスの供与契約

(ロシア)
Baltika Breweries

平成20年
1月

平成20年
1月

平成27年
12月
(更新規定あり)

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

台湾におけるアサヒグループ製品販売のための「三商朝日股份有限公司」の合弁契約

(台湾)
三商行股份有限公司

平成20年
9月

平成20年
9月

無期限
(但し一定の終了事由あり)

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国におけるビール生産・販売等の事業についての戦略的提携

(中国)
青島啤酒股份有限公司

平成21年
8月

平成21年
8月

青島啤酒股份有限公司の株式を保有しなくなった12ヶ月後

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国における飲料事業「康師傅飲品控股有限公司」の株主間契約

康師傅控股有限公司
開曼島商頂新控股有限公司 他

平成22年
9月

平成22年
11月

無期限
(但し一定の終了事由あり)

アサヒグループホールディングス株式会社
(提出会社)

中国における食品事業「開曼島商頂新控股有限公司」の株主間契約

(英領ヴァージン諸島)
Ho Te Investments Limited
伊藤忠商事株式会社他

平成22年
9月

平成22年
11月

無期限
(但し一定の終了事由あり)

アサヒ飲料
株式会社
(連結子会社)

「シャンソン十六茶」バルクの継続的売買及び商標の使用許諾に関する契約
(注)

株式会社シャンソン化粧品

平成4年
12月

平成4年
12月

自動更新

 

(注)  「シャンソン十六茶」バルクとは、アサヒ飲料社商品「十六茶」の原料茶葉であります。

 

 

6 【研究開発活動】

アサヒグループでは、第5次中期経営計画の達成に向けて、酒類、飲料、食品の各事業において革新的で差別化された商品の開発、及びそのベースとなる技術開発を行っています。また、アサヒグループの次世代を担う新たな事業の創出のための研究開発も行っています。さらに、国内外の社外研究機関を活用し、研究開発のスピードアップを図っています。一方、2011年の純粋持株会社制移行後、グループ内のシナジーを発揮するための横串の取り組みを積極的に進めています。
 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、10,718百万円です。なお、研究開発費については、研究開発にかかわる費用をセグメント別に関連づけることが困難であるため、その総額を記載しています。

 

[酒類事業] 
(商品開発関連)
 アサヒビール㈱はビール市場のさらなる活性化を目指し、『アサヒスーパードライ』に高度な酵母管理技術「S-3(エススリー)」※1を導入し、“洗練されたクリアな味”をさらに進化させました。「S-3」の導入によって厳選された優良な酵母は発酵力に優れ、またビールの泡を分解する酵素の溶出量が少ないという特長をもっているため、“辛口”のうまさはそのままに、“キレ”と“泡のきめ細かさ”をそれぞれ1割向上させることが可能となりました。

 昨年にギフト限定で発売した、「アサヒスーパードライ」ブランド初のプレミアム商品『アサヒスーパードライ ドライプレミアム』は、お客様のご要望にお応えして通年商品として発売しました。アルコール度数を従来の5.5%から6%に変更し、『アサヒスーパードライ ドライプレミアム』の特長である「贅沢なコクとキレ」をさらに向上させました。また、『アサヒスーパードライ ドライプレミアム 香りの琥珀』を歳暮ギフト限定で発売しました。7種類の厳選したホップと黒麦芽由来の麦芽エキスを原材料の一部に使用することで奥行きのある芳醇な香りを実現し、スーパードライ酵母を使用することで琥珀色の液色でありながらキレ味のよい、爽快な味わいに仕上げました。さらに、『アサヒスーパードライ ドライプレミアム 初仕込みプレミアム』を期間限定で発売しました。2014年に収穫した国産ゴールデン麦芽、国産ホップ(一部使用)、国産米を使用し、爽やかなホップの香りと麦のうまみを実感いただける味わいに仕上げました。

 発泡酒市場では、“プリン体ゼロ”と“糖質ゼロ※2”が特長で、本格的な飲みごたえとキレのあるのどごしを実現した発泡酒『アサヒ スーパーゼロ』を発売しました。『アサヒ ドライゼロ』などのアルコールテイスト清涼飲料の開発で培った調合技術に加え、新たな原料として“米乳酸発酵液※3”を採用することによって、ビールに近い本格的な飲みごたえを実現しました。アルコール度数は5.5%です。 

 新ジャンル市場では、“糖質ゼロ※2”でありながらしっかりとした“飲みごたえ”が特長の新ジャンル『アサヒ アクアゼロ』を発売しました。仕込み工程において、酵母の発酵に影響を与えることが知られている3種のミネラル(マグネシウム、カルシウム、カリウム)を補いました。また、さらに食物繊維を使用することで従来の糖質に配慮した新ジャンルと比較して、よりビールに近い“飲みごたえ”を実現しました(当社比)。この他、期間限定の新ジャンルとして、ソチオリンピック開催時期に合わせた『アサヒクリスタルゴールド』、「クリアアサヒ」ブランドから山形県産ホップを使用した『クリアアサヒ 摘みたてホップ』、「深煎り麦芽※4」を一部使用した芳醇なコクと味わいが特長の秋限定『アサヒ 深煎りの秋』、麦由来の贅沢なコクとフルーティな香りが特長の冬限定『アサヒ 冬の贈り物』を発売しました。

 ビアカクテル市場においては、これまで期間限定で発売したトマトのビアカクテル『アサヒ レッドアイ』を通年商品として発売しました。さらにコーラのビアカクテル『アサヒ コーラ&モルト』、白ワインのビアカクテル『アサヒ ビアスプリッツァー』を期間限定で発売しました。また、「ドライブラック」の新しい楽しみ方を提案する『アサヒスーパードライ ドライブラック バースタイル』を期間限定で発売しました。氷を入れたグラスに「ドライブラック」を注ぎ、柑橘系フルーツを加えミントを添えた「爽快なキレ味」が引き立つ、新しい味わいが特長です。

 RTD市場においては、新ブランド『アサヒ辛口焼酎ハイボール』を発売しました。アルコール度数8%で、当社RTD商品の中で最も炭酸感が強く、焼酎をベースにした、甘くない本格的な辛口の味わいが特長です。力強い飲みごたえで、キレのある爽快なのどごしが楽しめます。さらに、糖質ゼロ※2、プリン体ゼロを実現しました。「アサヒ ハイリキ ザ・スペシャル」ブランドでは新フレーバーとして『グレープスプラッシュ』を発売しました。「アサヒSlat(すらっと)」ブランドでは新フレーバーとして『シークァーサーサワー』、期間限定では『アサイー&ブルーベリーサワー』、『アップル&ジンジャーサワー』を発売しました。「アサヒ チューハイ果実の瞬間」ブランドでは秋限定の新フレーバーとして『山梨産ピオーネ』、『国産和梨』を発売しました。「アサヒカクテルパートナー」ブランドでは新フレーバーとして『桃とマンゴーとオレンジ』、冬季限定品として『ストロベリー&ピーチ』、『マスカット&レモン』を発売しました。「カルピスサワー」ブランドでは期間限定の新フレーバーとして『白桃』、『完熟いちご』を発売しました。

 ビールテイスト清涼飲料市場においては、世界初※5となる “カロリーゼロ※2” と“糖質ゼロ※2”を実現した黒ビールテイスト清涼飲料『アサヒ ドライゼロブラック』を発売しました。カクテルテイスト清涼飲料市場においては、「アサヒゼロカク」の新提案として、『ぎゅっとカシスのノンアルコール』を発売しました。あわせて、期間限定の新フレーバーとして『ピーチスパークリングテイスト』、『モヒートテイスト』、『パイン&ライムテイスト』、『ヨーグルトフィズテイスト』、『ストロベリースパークリングテイスト』を発売しました。

 本年はウイスキー製造会社であるニッカウヰスキー㈱が創業80周年、創業者・竹鶴政孝の生誕120周年を迎えました。そこで洋酒市場においては、“日本のウイスキーの父”と呼ばれる竹鶴政孝が目指した理想のウイスキーづくりを継承してつくりあげたプレミアム・ブレンデッドウイスキーの新ブランド「ザ・ニッカ」を発売しました。モルトの比率をグレーンの比率より多くしており、しっかりとしたモルトのコクが感じられながらもグレーン本来の甘くまろやかな味わいとしました。また、数ヶ月間の再貯蔵(マリッジ※6)を行うことで、調和のとれたおいしさを実現しました。『ザ・ニッカ40年』は、ニッカウヰスキー㈱に現存する最古の原酒を一部使用したニッカ史上最高傑作となるプレミアム・ブレンデッドウイスキーで、数量限定として発売しました。 通年販売の『ザ・ニッカ12年』は、12年以上貯蔵した原酒を厳選してブレンドしたプレミアム・ブレンデッドウイスキーです。モルトとグレーンを絶妙なバランスで仕上げた香りと味わいが楽しめます。また、ニッカウヰスキー㈱の創業80周年記念限定商品として、『竹鶴21年ピュアモルト ポートウッドフィニッシュ』、『竹鶴21年ピュアモルト マディラウッドフィニッシュ』、『竹鶴21年ピュアモルト ノンチルフィルタード』、『ニッカ アップルブランデーリタ 30年』を数量限定で発売しました。さらに、缶入りハイボールとして『竹鶴ハイボール』、『リタハイボール』を期間限定で発売しました。

 焼酎市場においては、昨年数量限定で新発売した『麦焼酎樽かのか』を『麦焼酎琥珀かのか』と商品名を変更し、通年商品として全国で発売しました。樽貯蔵原酒由来の樽熟成の香りと、芳醇な味わいが特長の麦焼酎です。

 ワイン市場においては、国産ワイン「サントネージュ リラ」ブランドのプレミアムタイプとして『サントネージュ リラ プレミアムこく赤』を発売しました。色と果実味が濃く凝縮感のある黒ぶどうを使用することで、果実味が豊かでコクが感じられるリッチな味わいのワインに仕上げており、既存の『サントネージュ リラ赤』と比較すると、ポリフェノールの含有量が1.2倍となりました。リンゴ100%のスパークリングワイン「ニッカシードル」ブランドでは、夏限定として『ニッカシードルサマースパークリング“ふじリンゴ”』、『ニッカ シードルヌーヴォスパークリング2014』を発売しました。

 業務用チューハイ市場における新たな価値のご提案として、“氷点下のとろけるチューハイ”が楽しめる「樽ハイ倶楽部」専用のディスペンサー『ICE DISPENSER(アイス ディスペンサー)』を開発し、首都圏と近畿圏エリアの飲食店に導入しました。

 

 ※1:「S-3」独自の酵母管理技術「Super Screening System」の略称

 ※2:栄養表示基準による

※3:米をエキス化し、乳酸発酵させた後にろ過して清澄化させたもの。乳酸発酵により、香り・味に複雑味やふくらみが付与される。米乳酸発酵液の使用に関する特許を出願中。

※4:クリスタル麦芽と呼ばれるほのかに甘い風味をもつ麦芽の一種を、通常より深くローストすることにより濃い色に仕上げた麦芽の一つ。

※5:アルコール0.00%の黒ビールテイスト清涼飲料において、世界で初めてカロリーゼロと糖質ゼロを実現(当社調べ)。

※6:モルト原酒とグレーン原酒をブレンドした後で、両者をなじませるために、再び樽に詰めて、数ヶ月程度熟成させることです。マリッジとは結婚の意味で、主にブレンデッドウイスキーに用いられる製法。

 

(技術開発関連)
 アメリカの国際的ビールコンテストである「ワールドビアカップ2014」において、アサヒビール㈱の『アサヒ スーパードライ』は、インターナショナルスタイルラガー部門においてゴールドメダルを獲得しました。58カ国、1,403ヶ所の醸造所から4,754品のエントリーがあり、31カ国から選ばれた219名の審査員によって審査されました。「ワールドビアカップ」はブリュワーズアソシエイションによって、ビール醸造における優れた技術を賞賛するために、1996年から2年に1度開催されています。

 ニッカウヰスキー㈱が製造する『竹鶴17年ピュアモルト』は、ウイスキーの国際的コンテスト「ワールド・ウイスキー・アワード2014」(WWA)において、「ワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキー」を受賞し、“世界最高賞”のブレンデッドモルトウイスキー(ピュアモルトウイスキー)として認定されました。『竹鶴17年ピュアモルト』が世界最高賞を受賞するのは、2012年に続き今回で2回目となりました。また、『竹鶴21年ピュアモルト』が07年、09年、10年、11年にワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキーを4回受賞していることから、「竹鶴」ブランドとしては今回で6回目の受賞となりました。ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)とは、英国のウイスキー専門誌「ウイスキーマガジン」が2007年から開催している国際的ウイスキーコンテストです。

 また、『竹鶴ピュアモルト』など全8アイテム(『竹鶴ピュアモルト』・『竹鶴21年ピュアモルト』・『鶴17年』・『シングルモルト余市12年 ウッディ&バニリック』・『シングルモルト宮城峡12年』・『ニッカピュアモルト ホワイト』・『フロム・ザ・バレル』・『ニッカ カフェモルト』)は、世界的な酒類品評会である「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2014」において金賞を受賞しました。ISCで、ニッカブランドのウイスキーが金賞を受賞するのは7年連続となります。ISCとは毎年イギリスの酒類専門出版社「ドリンクス・インターナショナル」が主催している酒類品評会です。ウイスキー部門のほか、ブランデー、テキーラ、ジン、ウォッカなどの部門があります。ウイスキー部門については、世界の著名なウイスキー蒸溜所のブレンダーやディスティラーなどが審査員となっています。

 

[飲料事業] 
(商品開発関連)
 アサヒ飲料㈱は、「確固たるブランドの育成」を成長戦略に掲げ、自社の持つ強みのさらなる強化と新たな需要創造のための新価値の提案に取り組んでまいりました。

 具体的には、ブランド生誕130周年を迎える「三ツ矢サイダー」、110周年を迎える「ウィルキンソン」、「ワンダ」、「十六茶」、「おいしい水」といった優位性のあるブランドへ経営資源を集中し“選ばれ続けるブランド”への育成を目指すとともに、お客様のニーズに対応した新たな提案や、市場の変化を先取りした新市場創造型の提案に積極的に取り組みました。

 「三ツ矢」ブランドでは、革新的な商品の提案として、専用冷蔵庫により凍る直前マイナス5℃まで冷やし、開栓時に中味が凍結する現象を体感できる“氷点下の三ツ矢サイダー”『三ツ矢フリージングサイダー』をセブン‐イレブン店舗にて発売しました。中味は、氷点下という条件で最もおいしく飲める味わいを追求し、氷点下においてもしっかりとした『三ツ矢サイダー』の味わいをお楽しみいただくため、通常の『三ツ矢サイダー』より少し濃い目の設計といたしました。

 また、「三ツ矢にしかつくれないものを、つくる。」をスローガンに、産地・品種指定果汁を国内はじめ世界中から厳選して使用したプレミアム果汁炭酸「ぜいたく三ツ矢」シリーズとして『ぜいたく三ツ矢 ニュージーランド産グリーンキウイ』、『ぜいたく三ツ矢 青森県産王林』、『ぜいたく三ツ矢 長野県産巨峰』を発売しました。“磨かれた水”や“果実などから集めた香り”といった「三ツ矢サイダー」ブランドのこだわりをベースに、「三ツ矢サイダー」ブランドが長年培ってきた独自の技術を進化させて完成した「フルーツクオリティ製法」を採用し、香り高く、上品に甘い、爽やかな味わいを実現しました。

 「ワンダ」ブランドでは、『ワンダ モーニングショット』、『ワンダ 金の微糖』、『ワンダ ゼロマックスプレミアム』、『ワンダ 特製カフェオレ』などの定番商品のブラッシュアップを行いました。『ワンダ モーニングショット』については深煎り豆を増量し、さらに朝にふさわしいおいしさに仕上げました。『ワンダ 金の微糖』については、ブラジルの輸出規格品における最高等級の高級豆を中心にブレンドすることで豊潤なコクとまろやかな味わいを実現しました。また『金の微糖』から初のエクステンション品として厳選高級豆をブレンドした、上質で深い味わいが特長のプレミアムブラック缶コーヒー『ワンダ ゴールドブラック -金の無糖-』を発売。中味は、コーヒーの専門的技能者であるQ-Grader(キューグレーダー)がコーヒー豆の選定やテイスティングを監修。アラビカ種100%のコーヒー豆を使用し、複数の高級豆をブレンドすることで深いコクと豊潤な味わいを実現しました。さらに、「ワンダ」ブランドの新提案としてコーヒー由来のカフェインとブレンド果汁を配合した朝にふさわしい新飲料 「ワンダ カフェズメニュー」として『ワンダ カフェズメニュー フルーツカフェ アクティブベリー』と『ワンダ カフェズメニュー フルーツカフェ ファインシトラス』を発売するなど、ブランド価値の向上に努めました。

 「アサヒ 十六茶」ブランドについては、2005年より「カフェインゼロ」として生まれ変わり、10年目を迎えました。“健康的な水分補給” ד明るく元気”というブランドコンセプトの更なる強化を目的として中味のリニューアルを実施いたしました。「あわ」「きび」に替えて健康素材として知られる「大麦若葉」と、さわやかな香味の「仙草」を採用。「カフェインゼロ」はそのままに、素材本来の旨み・甘味を活かしながら、無糖茶の嗜好のトレンドに合致したすっきり香ばしいおいしさに仕上げました。また、活性化する特保飲料市場に対して、『アサヒ 食事と一緒に十六茶W(ダブル)』を発売。「中性脂肪対策」「血糖値対策」の2つのヘルスクレームを有する、W(ダブル)の特保という新しい価値を提案いたしました。

 「ウィルキンソン」ブランドは、110周年を迎え大人向け炭酸ブランドとしての更なる確固たる地位を築くため、主力である『ウィルキンソン タンサン』『ウィルキンソン タンサン レモン』の炭酸水ラインにて“絶対的炭酸水No.1ブランド”の確立を目指すと共に、エントリー層拡大のためのフレーバーラインの継続展開として、『ウィルキンソン ミキシング グレープフルーツ』のリニューアルを実施いたしました。更に後味をすっきり感じられるようにブラッシュアップを実施。甘さはありつつも、すっきりとした一味違う味わいを楽しんでいただけるよう改良を行いました。

 カルピス㈱においては、飲用層が拡大し続けている炭酸飲料カテゴリーにおいて、甘さを抑えた「カルピスソーダ」を、強めの炭酸とほろ苦いグレープフルーツピールのアクセントでキレのある後味に仕立てたカロリーオフの『カルピスソーダ NEO DRY』、さらに、強めの炭酸と大人に相応しいジンジャーの本格的な刺激が楽しめる『カルピスソーダ NEO ジンジャースパーク』を開発いたしました。また昨年度日常の水分補給シーンに適したソルティテイストの新しい乳性飲料として発売した『カルピスオアシス』については、液色をスポーツドリンクに近づけ、さらに甘味・酸味・塩味及びフレーバーを調整することでカルピス本来の美味しさと、止渇感向上を目指したリニューアルを行いました。加えて夏場の需要期に向けて、炭酸入りの『カルピスオアシス スパークリングウォーター』の開発も行いました。「カルピスフルーツパーラー」においては、混濁果汁を使用し、大人品質で満足度の高いリッチな味わいを目指して『カルピスフルーツパーラー 濃い目ピンクグレープフルーツ&カルピス』を開発いたしました。「Welch’s」ブランドにおいては、丸ごとクラッシュした果汁を活かした炭酸入り果汁飲料である『Welch’s クラッシュグレープ』、『Welch’s クラッシュピンクグレープフルーツ』、『Welch’s クラッシュマスカット』の開発を行い「Welch’s」ブランドの価値向上に努めました。ストレスの増大や生活習慣の変化といった社会背景から、カラダの中から強くなりたいという健康ニーズはますます高まりを示し、お客様の乳酸菌への期待は、以前から知られていた腸内環境の改善による整腸に止まることはなく、様々な特徴を持った乳酸菌が注目を集めております。またヨーグルトに代表される、生きた乳酸菌を含む食品だけではなく、殺菌乳酸菌の菌体においても様々な機能が見出されてきています。そこで昨年度、清涼飲料カテゴリーにおいて、カルピス㈱の中で数多くの乳酸菌の中から選び抜かれた独自の「L-92乳酸菌」を配合した乳性飲料『守る働く乳酸菌』が発売され売上を伸ばしています。また、さらに「L-92乳酸菌」に続いて見出された「プレミアガセリ菌CP2305」を配合した乳性飲料『届く強さの乳酸菌』を本年度開発いたしました。カルピス㈱は、今後もこれらの乳酸菌の可能性について研究を続けるとともに、新しい乳酸菌及び乳酸菌飲料の価値を提案していきます。

 ㈱エルビーにおけるデイリーチルド及びロングライフ(LL)紙容器飲料では、まず基幹カテゴリーであるデイリーチルド無糖茶の品質向上に向け、緑茶、烏龍茶、むぎ茶の中味・デザインをリニューアルする一方、各コンビニエンスストアチェーンとの取組み強化によるシェア拡大を図りました。カロリーゼロのデイリーチルド紅茶飲料(「大人の紅茶」シリーズ)は好調に推移しており、差別化商品として紅茶市場における地位を確立しつつあります。

 またグループシナジーとして、「カルピス」ブランドでは、デイリーチルドのナタデココ、アロエ、タピオカ等の食感素材入りシリーズ、ラテ風仕立ての「カルピス オリジナルカフェスタイル」シリーズ、「味わいカルピス」シリーズ、またLLでは宅配専用『守る働く乳酸菌』、『カルピス フルーツパーラー厳選巨峰』等を発売しました。アサヒ飲料ブランドでは、LL「バヤリース とろける」シリーズのリニューアル及び『バヤリース とろけるフルーツミックス』の新発売をいたしました。

 自社ブランドのLLでは新たに『毎朝1本バナナオレ』、『アサイーバナナ』の発売等、前述のカルピス、アサヒ飲料ブランド商品と合わせLL商品の強化を行っております。

 なお、昨年発売した高単価商品(税抜150円/500ml)「アサイー」シリーズについては定番化されており、酸性乳飲料として差別化された独自の地位を確立いたしました。

 カップ飲料については、コンビニエンスストアチェーンとの取組みを強化、独自技術を応用したタピオカ、白玉といった食感素材入りカップ飲料、独自製法による果汁100%スムージー飲料を開発・発売、また「カルピス」ブランドでカットゼリー入りの『カルピス&ミキシングゼリー』を発売しました。

 

(技術開発関連)
 アサヒ飲料㈱では、アサヒグループの「環境ビジョン2020」に基づき「低炭素社会」及び「循環型社会」の構築に貢献できる技術開発を推進してまいりました。 

 生産技術開発におきましては、工場にて製品製造時に使用する水や燃料などを削減する目的で、水と空気を混合噴射させ、効率よくPETボトルを洗浄するエアインダクションノズルを開発。これにより、大幅なユーティリティーの削減(使用水の50%~75%、CO2換算で11~15t)を実現しました。この技術につきましては「日本清涼飲料研究会 第23回 研究発表会 奨励賞」を受賞しております。

 容器包装資材に関する取組については、カートン素材の軽量化と積み付け時の強度を両立するための函形状について最適化を行いました。また、キャップメーカーとの共同開発にて国内最軽量クラスのアセプティック充填用キャップの開発を行い、キャップ重量を従来から約20%削減することが可能となりました。これら2つの技術開発につきましては「2014年第52回全日本包装技術研究大会」において発表を行い、ともに「優秀発表賞」を受賞いたしました。

 この他、製品、工程、苦情品解析に必要な安心安全技術(新規分析技術、解析技術)の拡充と有害微生物の検出技術、同定技術、静菌技術の研究についても継続して取り組みました。

 カルピス㈱では、人々の心とからだの健康に役立つ商品・技術を提供することを目指し、乳酸菌や微生物を活用した研究に取り組みました。その中で、永井克也大阪大学名誉教授の監修のもと、当社独自の乳酸菌と酵母を活用した乳酸菌飲料のおいしさ研究において、乳酸菌単独では作りだせない“乳酸菌と酵母”で発酵して作られる独特の“香り”には、自律神経に働きかけて、日周リズムの改善や不安を和らげるなどの“癒し”効果がある可能性を動物実験にて確認し、日本農芸化学会で発表しました。今後も、さらに研究をすすめ、“乳酸菌と酵母”で発酵した乳酸菌飲料の香りの作用に関する科学的な知見を深めてまいります。

 そして、高齢化が進む社会への貢献を目指し、昨年度に引き続き、愛媛大学大学院医学系研究科公衆衛生・健康医学分野及び、特定非営利活動法人しまの大学(愛媛県越智郡上島町、代表理事 村上律子)のご協力をいただき、乳酸菌飲料<希釈タイプ>の継続飲用が高齢者の心身に与える健康への影響を調査しました。50年後の日本の高齢者比率に近いとされている愛媛県越智郡(おちぐん)上島町(かみじまちょう)岩城島(いわぎじま)の住民の方々118名(平均71.4歳)を対象に、乳酸菌飲料<希釈タイプ>を自身で希釈して、1日1杯、8週間にわたって継続飲用した前後の心身の健康度への影響を健康関連QOL尺度SF-8™※1やアンケートを用いて評価しました。その結果、高齢者のQOLの向上が認められると共に、精神健康度や体調アンケート(便秘の症状など)においても、有意なスコアの向上や改善が認められ、これら研究成果を、日本公衆衛生学会にて発表しました。今後は都市部など他の地域での調査を実施し、高齢者のQOL改善効果の検証を進めます。

 また、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部ストレス制御医学分野 六反一仁教授との共同研究の成果で、Lactobacillus gasseri CP2305株(「プレミアガセリ菌CP2305」)が、腸から脳への神経伝達を通じて中枢神経へ働きかけること(脳腸相関※2)で、整腸効果や安眠効果などの有益な生体機能調節作用を発現することを確認し、国際乳酸菌シンポジウムや、日本睡眠学会で発表しました。カルピス社独自の乳酸菌素材の有効性、信頼性がさらに高まる結果となりました。

 さらに、小学校で実施している食育・理科・キャリア教育が複合的に学べる出前授業「『カルピス』こども乳酸菌研究所」が、株式会社リバネス(本社:東京都新宿区、代表取締役 丸 幸弘)が運営する教育応援プロジェクト主催の『教育CSRシンポジウム2014』において有識者及び全国の教員・教育関係者が選ぶ『出前実験教室(小学生部門)』で大賞を、『中高生が選ぶ教育CSR活動』で大賞を受賞しました。本出前授業は製品「カルピス」を題材に「カルピス」の原料となる生乳の特徴や、「カルピス」の味をつくる 〝発酵〟のしくみについて、五感を使った体験をしながら学び、社員とのディスカッションにより未来の夢を考える体験型のプログラムです。学校教育の中の食育教育においてお子様たちに「カルピス」の良さを認知していただくことができました。

  ※1:米国のJohn Ware博士らによって開発された健康関連のQOL(生活の質)を評価するための調査票

  ※2:腸と脳が自律神経系を通じて双方向の情報伝達を行いながら、生体機能の恒常性を保つ仕組みのこと

 

[食品事業]
(商品開発関連)
 アサヒフードアンドヘルスケア㈱は、食品事業分野において「ミンティア」ブランドのエクステンション商品、「ミンティア ブリーズ」シリーズを発売しました。これは1粒で5分間、ミントのさわやかな清涼感が続く“おいしいミント”の中粒錠菓です。また、「バランスアップ」ブランドでは、健康感のある素材「ライ麦、グラノーラ、オーツ麦、小麦ブラン、玄米」を生地に練り込んで堅く焼き上げた新シリーズ『ベイクド玄米ブラン』を発売しました。一方、ヘルスケア事業分野におきましては「エビオス」ブランドを一層身近なものと感じていただくためのエクステンション品『ビール酵母(栄養酵母)粉末200g』を発売しました。さらには、シェア拡大を続けるサプリメント分野においても「ディアナチュラスタイル」シリーズのラインナップ展開も実施いたしました。また、調味料事業分野においても、『ハイパーミーストHG』を軸として、風味にバラエティーを持たせた酵母エキスである『ハイパーミーストCH-01(チーズ風味)』、『セサミーストMT(ごま風味)』が堅調に売り上げを伸ばすとともに、カツオ風味酵母エキス『ハイパーミーストRFK-Ps』を上市するなど着実な事業発展に努めました。

 和光堂㈱は、ベビーフード市場での強みを活かし、新たな幼児食分野に商品提案を行いました。家にある食材を用い、親子が一緒のおかずを手軽に作って食べられる簡単合わせ調味料「おやこdeごはん」全4品、従来の「栄養マルシェ」シリーズの高月齢向けとしてレンジ対応の新容器を使ったカップ容器入りベビーフード『BIGサイズの栄養マルシェ』全10品を新提案しました。この新容器は「持ちやすさ」や「食べさせやすさ」にも配慮した形状とし、合わせて添付スプーンにつきましても同様の配慮を行いました。また、お母様方の要望が多い沢山の野菜を充足できるレトルトベビーフード『1食分の野菜が摂れるグーグーキッチン』全7品を投入しました。ベビースキンケアシリーズにおいては、育児用ミルクの研究を活かし、母乳にも含まれる保湿成分を配合した「ミルふわ」シリーズに『ベビーUVケア』2商品を追加しました。シニア向けの介護食品では、レトルトパウチ「食事は楽し」シリーズの中でも人気の高い『ふっくら雑炊』全7品を、創業315周年となる日本橋の鰹節専門店㈱にんべんと共同で旨味と素材の風味を生かせるだしを選定し、リニューアル新発売いたしました。シニア向けの口腔ケア商品では、手軽に口腔にうるおいをもたせることで口中を浄化し、口臭を予防する『口腔用スプレーうるおいミスト』を新発売しました。「牛乳屋さん」シリーズにおいては、他社にない冷水溶解性のある新商品『牛乳屋さんのミルクココア』を投入し、ブランド力強化に努めました。さらに、冷水でも溶解可能なクリーミングパウダーの追加により、業務用途への展開を広げました。また、コンビニエンスストアのカウンターコーヒー用にトッピングパウダー2品を追加発売しました。

 天野実業㈱は、お客様の多様なニーズに応えることを事業方針とし、流通事業では大きく二つに分類して展開をしました。一つ目は、主力商品の「フリーズドライみそ汁」のラインアップ強化をしました。品質と価格のバランスを最良化し、保管に便利なチャック付き袋の個包装5食入り「うちのおみそ汁」全4品(小売売価70円/食)、お求めやすいワンコインプライス「いつものおみそ汁」定番全10品、減塩全5品(小売売価100円/食)、ひと手間の美味しさを加えた高級タイプ「味わうおみそ汁」全8品(小売売価130円/食)と多くのラインアップを図り、3月の発売とあわせて東京銀座プランタンや東京駅アンテナショップにて約8,000人にサンプリングを実施しました。二つ目は、「フリーズドライみそ汁」以外のカテゴリーごとの商品フルラインアップに取り組みました。米飯類では和風系の「おかゆ・雑炊」に加えて、洋風系「ビストロリゾット」シリーズ全4品と中華系「中華粥」シリーズ全2品、スープ類では野菜の素材感を楽しむ濃厚な「ポタベジ ほっこりポタージュ」シリーズ全3品、にゅうめん類では「CAFÉにゅうめん」シリーズ全4品と幅広い層の方に喜んでいただける商品を展開し、フリーズドライ食品の魅力の提案をしました。通販事業では、自社流通商品と差別化した通販ならではの商品展開に取組みました。一つ目は、主力フリーズドライみそ汁の「国産具材使用」を差別化の柱とし「定番みそ汁」全12品、「減塩みそ汁」全10品を国産具材へとリニューアルしました。二つ目は、四季を感じていただけるこだわりの商品を季節ごとに展開しました。年初には業界初となるフリーズドライ「一人鍋」を発売し、多くのお客様から好評を戴きました。また、四季シリーズの「四季のお味噌汁」各季節2品、「四季のにゅうめん」秋と冬に各1品をラインアップ強化し発売しました。

 

(技術開発関連)
 アサヒフードアンドヘルスケア㈱では、グルコサミンサプリメント『筋骨グルコサミン』に配合した筋骨草中の有効成分を明らかにし、キチンキトサン国際学会誌に投稿しました。また、食物繊維を1日必要量の1/3(6g)配合した焼き菓子で排便改善効果に関する人試験を行い、その効果を確認して第21回日本未病システム学会でポスター発表を行いました。

 和光堂㈱では、牛乳で美味しく作れるヨーグルト風ドリンク粉末を独自製法で開発し、特許を出願しました。

 天野実業㈱では、「フリーズドライ固形みそ汁」の新たな製法開発に取り組み、具材感(大きさや食感)を向上させる製法技術を確立しました。新たな製法での商品開発を進めています。

 

[食の安心安全]
 食品の安全性に対するお客様の期待が高まる中、食品に含まれる微量成分を網羅的に分析することが可能な最新の飛行時間型質量分析計を導入しました。本分析機器を活用して、食品の原材料、とくに食品添加物や容器包装資材を精密に分析することで、安全な製品づくりに貢献しています。また、水・原料・製品の安全性を正確かつ迅速に評価するために、最先端の分析技術を駆使し、残留農薬、残留動物用医薬品、カビ毒、有害金属、その他食品リスクとなる化学物質の高感度・高精度そして高速分析が可能な分析法を新規開発・改良し、品質確認のための分析体制を常に最先端のものに更新しています。各種学会や社外研究機関において密な情報交流を行うことで食品リスクに関する情報をいちはやく入手し、新規リスクの迅速な分析技術確立や新規技術導入に役立てています。グループ各社の分析部門と連携し、原料・製品の品質保証体制の更なる充実に貢献しました。

 

[新規事業関連] 
 バイオエタノールに関する研究開発では、砂糖とエタノールの同時増産を実現する新プロセス“逆転生産プロセス”を開発しました。サトウキビは、ショ糖(砂糖原料)と還元糖(砂糖生産を阻害するブドウ糖,果糖)の2種類の糖分を含有しています。多くの収穫量が期待できる高バイオマス量サトウキビや収穫期間外のサトウキビなどは、還元糖の含有率が高いため、砂糖の生産効率を低下させるという課題がありました。今回開発した逆転生産プロセスは、従来の砂糖・エタノールという製造順序を逆転させ、砂糖生産効率を下げる原因となる還元糖のみを先に選択的にエタノールに変換した後に、砂糖を生産するという画期的な同時生産プロセスです。バイオエタノールを生産することによって、砂糖生産効率を大幅に向上させ、これまでの収穫期間(工場稼働期間)を延長することができる革新的な技術で、国内外で特許登録が進んでいます。本技術は2013年度にマスコミ向けに発表を行い、地球規模で懸念される食料・エネルギー問題の解決に貢献する技術として、砂糖産業など多くの関係者から関心を集めています。現在、事業化を目指して本技術を実用レベルに高めるための技術開発を推進しています。

 一方、副産物としての酵母を活用した農業資材などの新規事業開発についても実用化を目指して技術開発を推進しています。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

 

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

①売上高

当連結会計年度の売上高は、前期比4.2%増、712億4千1百万円増収の1兆7,854億7千8百万円となりました。酒類事業においては、ビール類が2年連続で前年を上回る販売数量となったことや、洋酒、ワイン、アルコールテイスト清涼飲料の各カテゴリーが前年実績を大きく上回ったことなどにより、前期比1.7%増、160億7千5百万円増収の9,419億5千3百万円となりました。飲料事業においては、「アサヒ飲料株式会社」及び「株式会社エルビー」の業績がともに堅調に推移したことにより、前期比2.3%増、104億2百万円増収の4,714億5千6百万円となりました。食品事業においては、「アサヒフードアンドヘルスケア株式会社」「和光堂株式会社」「天野実業株式会社」の売上がそれぞれ前年実績を上回り、前期比3.6%増、37億8千3百万円増収の1,100億2千4百万円となりました。国際事業においては、各地域の事業が堅調に推移したことに加え、東南アジアの新規連結子会社の業績の上乗せ効果などにより、前期比21.4%増、411億4千9百万円増収の2,331億8千4百万円となりました。その他の事業においては、物流業務全般の受託の拡大に努めましたが、前期比0.6%減、1億6千9百万円減収の288億5千9百万円となりました。

②営業利益

当連結会計年度の営業利益は、前期比9.2%増、108億3千8百万円増益の1,283億5百万円となりました。酒類事業においては、広告・販売促進活動への積極的な投資や円安の影響などによる原材料コストの増加がありましたが、売上の増加に加え、減価償却費を中心とした固定費全般の削減の結果、前期比2.8%増、31億8千万円増益の1,169億2千4百万円となりました。飲料事業においては、コスト全般の効率化やグループ内の協業シナジーの創出などにより、前期比37.9%増、58億6千1百万円増益の213億1千9百万円となりました。食品事業においては、製造原価の低減などにより、前期比22.9%増、11億2千8百万円増益の60億4千7百万円となりました。国際事業においては、各地域の事業の収益性向上により、前期に比べ33億6千1百万円改善し、12億4百万円の営業損失となりました。その他の事業においては、前期比67.5%減、4億1千9百万円減益の2億2百万円となりました。

③営業外損益・経常利益

当連結会計年度の営業外収益は前期比6千万円増加の131億6千1百万円、営業外費用は前期比13億4千3百万円増加の82億9千9百万円となりました。その結果、営業外損益は前年同期に比べ12億8千2百万円減少しました。これは主に、為替差益の発生や金融収支の改善があったものの、持分法による投資利益が減少したことによります。
 以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、前期比7.7%増、95億5千6百万円増益の1,331億6千8百万円となりました。

 

④特別損益

当連結会計年度の特別利益は前期比297億5千5百万円増加の340億9千9百万円、特別損失は前期比206億4千5百万円増加の381億3千1百万円となりました。特別利益の増加は、主に固定資産売却益が増加したことや、海外連結子会社において受取和解金が発生したことによるものです。特別損失の増加は、主に減損損失が増加したことによるものです。その結果、特別損益は前年同期に比べ91億9百万円改善しました。
(受取和解金、減損損失については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載しております。)

⑤当期純利益

当連結会計年度の当期純利益は、前期比73億6千9百万円増益の691億1千8百万円となりました。当期純利益では14年連続で過去最高益を更新いたしました。
 また、1株当たり当期純利益は148.92円(前年同期135.73円)となり、自己資本利益率は8.1%(前年同期8.0%)となりました。

(3) 財政状態の分析

①総資産

当連結会計年度末の連結総資産は1兆9,366億9百万円となり、前年同期に比べ1,450億5千3百万円増加いたしました。これは、東南アジアや国内において買収した企業を新たに連結の範囲に含めたことによる資産の増加や当該企業結合により発生したのれんの増加、為替相場の変動による在外子会社の資産の増加、株式相場の上昇に伴う投資有価証券の増加などによるものです。

②純資産

純資産は8,965億1千万円となりました。純資産より少数株主持分を除いた自己資本は8,810億9千1百万円となり、前年同期の自己資本8,192億9千4百万円と比較し、617億9千6百万円増加しました。これは、自己株式の取得を行ったことや配当金支出による利益剰余金の減少があったものの、当期純利益の計上による利益剰余金の増加、株価上昇に伴うその他有価証券評価差額金の増加、為替円安による為替換算調整勘定の増加などがあったことによるものです。
 以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、45.5%となりました。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

①キャッシュ・フロー分析

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。

 

 

平成24年12月期

平成25年12月期

平成26年12月期

 

自己資本比率(%)

41.8

45.7

45.5

 

時価ベースの自己資本比率(%)

49.4

76.5

89.5

 

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

4.7

3.0

3.4

 

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

25.6

40.9

39.9

 

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

※  各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※  株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

※  キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。

②資金の調達

アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなりますが、当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げております。しかしながら、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。資金需要の発生した時点で、金利コストの最小化を図れるような調達方法を熟慮し、資金需要に対応しております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。

③資金の流動性

当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。

(5) 戦略的現状と見通し

2015年12月期は、「長期ビジョン2020」の達成を目指して策定された「中期経営計画2015」の最終年度として、各事業における主力商品のブランド強化に経営資源を集中するとともに、引き続きコスト競争力を強化することによりグループ全体の収益性の向上に取り組んでまいります。また、グループ全体の企業価値向上を目指し、最適な財務、キャッシュ・フロー戦略を実行していきます。投資においては、成長基盤の強化を優先事項とし、国内外を問わず戦略的事業投資や事業提携の検討・実施をしていきます。また、設備投資においては生産、物流体制の効率化や環境投資に重点をおいて実施します。

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「第2 事業の状況 3 対処すべき課題」に記載のとおりであります。

(7) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載のとおりであります。