(1)経営成績に関する分析
① 当連結会計年度の概況
当連結会計年度においては、原油価格の緩やかな回復およびその後の安定を受けて、産油・産ガス諸国においては設備投資計画を再開する動きが出てきており、当社グループを取り巻く事業環境の改善が見られました。今後も産油・産ガス諸国においては、自国の人口増加および経済成長のためのエネルギー・電力需要への対応ならびに外貨獲得を目的としたエネルギー輸出の拡大を背景として、大型のオイル&ガス案件等の設備投資計画の着実な進展が期待されます。
このような状況のもと、当社グループは中東・北アフリカにおけるガス関連プロジェクトや、アジア・国内における発電プロジェクトの受注等により、連結受注高は5,062億円となりました。
今後、当社グループとしては、大型LNG(液化天然ガス)計画の進展まで数年かかると予測される環境下、LNG以外のオイル&ガス分野およびインフラ分野の優良案件を確実に受注していくことが重要であると認識しております。引き続き、全社を挙げて付加価値の向上やコスト競争力の強化を推進し、受注活動に取り組んでまいります。また、既受注案件では、LNG分野を中心とする大型案件の確実な遂行に注力いたしましたが、米国で遂行中の石油化学プロジェクトおよび中東で遂行中の石油精製プロジェクト等において、建設工事費用の大幅な増加により損失を計上したことから、当社グループの当連結会計年度の業績等については、以下のとおりとなり、親会社株主に帰属する当期純損失は、220億57百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益427億93百万円)となりました。
経営成績
|
|
当連結会計年度 |
前年同期増減率 (%) |
|
売上高 |
693,152 |
△21.2 |
|
営業損失(△) |
△21,496 |
- |
|
経常損失(△) |
△15,215 |
- |
|
親会社株主に帰属する 当期純損失(△) |
△22,057 |
- |
受注高
|
地域 |
当連結会計年度 |
割合 (%) |
|
海外 |
311,596 |
61.5 |
|
国内 |
194,696 |
38.5 |
|
合計 |
506,293 |
100.0 |
この結果、当連結会計年度末の受注残高は、為替変動による修正および契約金額の修正・変更を加え、1兆456億円となりました。
② セグメント別状況
総合エンジニアリング事業
EPC(設計・調達・建設)事業では、日本国内をはじめ中東、アフリカ、東南アジア、北米地域およびロシア・CIS等において受注活動に取り組み、オイル&ガス分野では、2016年10月に当社グループ会社であるJGC Gulf International Co., Ltd.がバーレーンにおけるガスパイプラインおよびガス貯蔵タンク建設プロジェクトを受注したほか、当社は当社グループ会社であるJGC America, Inc.とともにカナダにおけるLNGプラントの基本設計役務を受注し、同年12月にアルジェリアにおける昇圧設備増設プロジェクトを当社グループ会社であるJGC Algeria S.p.A.とともに受注いたしました。さらに国内では、同年11月に愛媛県におけるメチオニン製造装置建設プロジェクトを受注いたしました。
インフラ分野では、2016年7月にフィリピンにおける火力発電所建設プロジェクトを当社グループ会社であるJGC PHILIPPINES, INC.とともに受注いたしました。また、当社は、同年9月に北海道室蘭市におけるバイオマス発電所建設プロジェクトを受注し、同年11月に岩手県においてソーラー発電所建設プロジェクトを受注したほか、2017年3月には岡山県においてソーラー発電所建設プロジェクトを受注いたしました。
受注済みプロジェクトにおいては、LNG分野を中心とする大型案件の確実な遂行に注力いたしましたが、米国で遂行中の石油化学プロジェクト、中東で遂行中の石油精製プロジェクトおよび国内で遂行中の新規分野プロジェクトにおいて、建設工事費用の大幅な増加が発生いたしました。
事業投資では、2016年9月に東燃ゼネラル石油株式会社とともに北海道室蘭市においてバイオマス発電事業を実施することを決定いたしました。
触媒・ファイン事業
触媒事業では、国内シェアの回復、輸出案件の拡販および既存顧客の深耕等を重点施策として取り組んだ結果、FCC触媒の新規開拓案件やインドネシア向け大口案件を受注したほか、脱硝触媒原料の欧米向け輸出も好調に推移いたしました。
ファイン事業においては、光学材料の中国向け輸出が減速したものの、機能性塗料材の出荷が増加し、有機EL用露光装置部品および光通信関連部品の受注が好調に推移いたしました。
その他の事業
その他の事業では、引き続き国内における大規模太陽光発電(メガソーラー)事業等を実施しております。
以上のような取組みのもと、当社グループの当連結会計年度のセグメント別の業績については、以下のとおりとなりました。
当連結会計年度
|
|
総合エンジニア リング事業 |
前年同期 増減率 (%) |
触媒・ファイン 事業 (百万円) |
前年同期 増減率 (%) |
その他の事業 |
前年同期 増減率 (%) |
|
売上高 |
643,377 |
△22.3 |
39,918 |
6.1 |
9,857 |
△29.2 |
|
営業利益又は 営業損失(△) |
△29,399 |
- |
6,121 |
71.4 |
1,606 |
△7.1 |
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較し新規連結を伴う増加を除き623億46百万円減少し、1,856億3百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、税金等調整前当期純損失の193億49百万円に加え、売上債権の増加などにより、結果として288億84百万円の減少(前連結会計年度は497億64百万円の減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、有形固定資産の取得、短期貸付金の増加などにより、129億79百万円の減少(前連結会計年度は86億96百万円の増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、長期借入金の返済、配当金の支払いなどにより196億74百万円の減少(前連結会計年度は43億74百万円の減少)となりました。
「生産、受注及び販売の状況」に記載している諸数値には消費税等を含めておりません。
(1)生産実績
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
総合エンジニアリング事業 |
- |
- |
|
触媒・ファイン事業 |
38,470 |
106.2 |
|
報告セグメント計 |
38,470 |
106.2 |
|
その他の事業 |
- |
- |
|
合計 |
38,470 |
106.2 |
(注)金額は販売価格によっている。
(2)受注実績
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
総合エンジニアリング事業 |
496,106 |
161.2 |
|
触媒・ファイン事業 |
- |
- |
|
報告セグメント計 |
496,106 |
161.2 |
|
その他の事業 |
10,186 |
79.1 |
|
合計 |
506,293 |
157.9 |
(3)売上実績
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
総合エンジニアリング事業 |
643,377 |
77.7 |
|
触媒・ファイン事業 |
39,918 |
106.1 |
|
報告セグメント計 |
683,295 |
78.9 |
|
その他の事業 |
9,857 |
70.9 |
|
合計 |
693,152 |
78.8 |
(注)完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高およびその割合は、次のとおりである。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
当連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
||
|
完成工事高 (百万円) |
割合(%) |
完成工事高 (百万円) |
割合(%) |
|
|
ヤマール エルエヌジー社 |
121,632 |
13.8 |
136,567 |
19.7 |
|
イクシス エルエヌジー社 |
178,667 |
20.3 |
116,156 |
16.8 |
(参考)連結ベースの受注高、売上高および受注残高 (単位:百万円)
|
区分 |
前連結会計年度末 受注残高 |
当連結会計年度 受注高 |
当連結会計年度 売上高 |
当連結会計年度末 受注残高 |
|
国内 |
|
|
|
|
|
石油・ガス・資源開発関係 |
188 |
508 |
623 |
73 |
|
石油精製関係 |
20,844 |
20,019 |
19,870 |
20,993 |
|
LNG関係 |
22,707 |
2,239 |
11,469 |
13,477 |
|
化学関係 |
6,338 |
38,414 |
20,793 |
23,960 |
|
発電・原子力・新エネルギー関係 |
57,817 |
115,973 |
34,267 |
139,523 |
|
生活関連・一般産業設備関係 |
10,523 |
6,430 |
9,851 |
7,102 |
|
環境・社会施設・情報技術関係 |
12,316 |
3,458 |
8,361 |
7,413 |
|
その他 |
584 |
7,651 |
7,504 |
730 |
|
計 |
131,321 |
194,696 |
112,743 |
213,274 |
|
海外 |
|
|
|
|
|
石油・ガス・資源開発関係 |
165,672 |
159,080 |
92,499 |
232,253 |
|
石油精製関係 |
243,350 |
5,479 |
88,265 |
160,564 |
|
LNG関係 |
590,090 |
100,380 |
316,074 |
374,396 |
|
化学関係 |
61,505 |
11,988 |
35,423 |
38,071 |
|
発電・原子力・新エネルギー関係 |
434 |
20,140 |
1,992 |
18,582 |
|
生活関連・一般産業設備関係 |
- |
138 |
98 |
39 |
|
環境・社会施設・情報技術関係 |
314 |
81 |
201 |
195 |
|
その他 |
△64 |
14,307 |
5,936 |
8,306 |
|
計 |
1,061,304 |
311,596 |
540,491 |
832,410 |
|
総合エンジニアリング事業 |
1,192,136 |
496,106 |
643,377 |
1,044,865 |
|
その他の事業 |
489 |
10,186 |
9,857 |
819 |
|
計 |
1,192,625 |
506,293 |
653,234 |
1,045,684 |
|
触媒・ファイン事業 |
- |
- |
39,918 |
- |
|
合計 |
1,192,625 |
506,293 |
693,152 |
1,045,684 |
(注)1.総合エンジニアリング事業およびその他の事業の「前連結会計年度末受注残高」は当連結会計年度の為替変動
による修正および契約金額の修正・変更をそれぞれ次のとおり含んでいる。 (単位:百万円)
|
区分 |
為替変動による修正 |
契約金額の修正・変更 |
計 |
|
石油・ガス・資源開発関係 |
1,475 |
△ 118 |
1,357 |
|
石油精製関係 |
3,540 |
6,845 |
10,386 |
|
LNG関係 |
△ 27,614 |
△ 22,643 |
△ 50,258 |
|
化学関係 |
△ 4,998 |
△ 9,994 |
△ 14,992 |
|
発電・原子力・新エネルギー関係 |
△ 55 |
△ 3,202 |
△ 3,257 |
|
生活関連・一般産業設備関係 |
- |
△ 1 |
△ 1 |
|
環境・社会施設・情報技術関係 |
- |
△ 643 |
△ 643 |
|
その他 |
△ 280 |
△ 20 |
△ 301 |
|
計 |
△ 27,932 |
△ 29,778 |
△ 57,710 |
|
総合エンジニアリング事業 |
△ 27,748 |
△ 29,941 |
△ 57,690 |
|
その他の事業 |
△ 183 |
163 |
△ 20 |
2.記載金額は百万円未満を切り捨てて表示している。
(参考)当社単体の受注高、売上高および受注残高 (単位:百万円)
|
区分 |
前事業年度末 受注残高 |
当事業年度 受注高 |
当事業年度 売上高 |
当事業年度末 受注残高 |
|
国内 |
|
|
|
|
|
石油・ガス・資源開発関係 |
36 |
99 |
125 |
9 |
|
石油精製関係 |
17,333 |
12,910 |
10,635 |
19,608 |
|
LNG関係 |
22,707 |
2,154 |
11,384 |
13,477 |
|
化学関係 |
3,021 |
23,587 |
4,874 |
21,735 |
|
発電・原子力・新エネルギー関係 |
50,650 |
102,043 |
28,571 |
124,121 |
|
生活関連・一般産業設備関係 |
10,478 |
6,395 |
9,783 |
7,090 |
|
環境・社会施設・情報技術関係 |
11,699 |
2,798 |
7,796 |
6,701 |
|
その他 |
94 |
197 |
110 |
181 |
|
計 |
116,021 |
150,186 |
73,282 |
192,925 |
|
海外 |
|
|
|
|
|
石油・ガス・資源開発関係 |
110,980 |
145,551 |
68,121 |
188,410 |
|
石油精製関係 |
236,666 |
4,415 |
85,432 |
155,649 |
|
LNG関係 |
398,183 |
68,697 |
202,142 |
264,738 |
|
化学関係 |
1,108 |
1,529 |
1,335 |
1,303 |
|
発電・原子力・新エネルギー関係 |
- |
7,484 |
1,097 |
6,387 |
|
生活関連・一般産業設備関係 |
- |
138 |
98 |
39 |
|
環境・社会施設・情報技術関係 |
314 |
81 |
201 |
195 |
|
その他 |
- |
60 |
60 |
- |
|
計 |
747,253 |
227,959 |
358,489 |
616,723 |
|
合計 |
863,274 |
378,145 |
431,771 |
809,648 |
(注)1.「前事業年度末受注残高」は当事業年度の為替変動による修正および契約金額の修正・変更をそれぞれ次のとおり含んでいる。 (単位:百万円)
|
区分 |
為替変動による修正 |
契約金額の修正・変更 |
計 |
|
石油・ガス・資源開発関係 |
5,216 |
△133 |
5,083 |
|
石油精製関係 |
3,701 |
- |
3,701 |
|
LNG関係 |
△18,790 |
△21,222 |
△40,012 |
|
化学関係 |
- |
- |
- |
|
発電・原子力・新エネルギー関係 |
- |
△3,202 |
△3,202 |
|
生活関連・一般産業設備関係 |
- |
△1 |
△1 |
|
環境・社会施設・情報技術関係 |
- |
- |
- |
|
その他 |
- |
- |
- |
|
計 |
△9,872 |
△24,559 |
△34,431 |
2.記載金額は百万円未満を切り捨てて表示している。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
2017年1月、日揮グループは、企業活動を行う上での軸・拠り所となる企業理念「JGC Way」を制定いたしました。
「JGC Way」は3つの要素から構成されており、Mission(経営理念)として、「私たちは、世界を舞台に、技術と知見を結集して、人と地球の豊かな未来を創ります」を掲げ、日揮グループ共通のValues(価値観)として、4つのちから、即ち、「挑戦」、「創造」、「結集」、「完遂」を定め、さらに「尊重」、「誠実」を2つの誓いとして明らかにしております。そして、Vision(目指す姿)として、「私たちは、エンジニアリングをコアとして、エネルギーとインフラの世界で、新たな価値を創り出す企業グループを目指します」を掲げております。
日揮グループは、企業理念「JGC Way」に基づき企業活動を進めていくことで、企業価値の一層の向上を図り、企業グループとして持続的な発展・拡大の実現に努め、以て社会と地球の持続的な成長に貢献してまいります。
(2)目標とする経営指標、経営環境、中長期的な経営戦略および会社の対処すべき課題
中期経営計画「Beyond the Horizon」の確実な実行
当社グループは、2016年度から2020年度までの5か年を対象とする中期経営計画「Beyond the Horizon」を推進しております。この計画では、目標とする経営指標として、2020年度の売上高1兆円以上、親会社株主に帰属する当期純利益600億円を掲げ、ROEについては引き続き10%以上としております。また、基本方針としてコアビジネスであるオイル&ガス分野のEPC事業の拡大を図りつつ、インフラ分野へのEPC事業の拡大および非EPC事業からの安定的な利益創出に注力し、企業価値向上を図っていくこととしております。
計画の初年度である2016年度においては、特に、インフラ分野へのEPC事業の拡大として、フィリピンの火力発電所建設プロジェクト、国内のソーラー発電所建設プロジェクトおよびバイオマス発電所建設プロジェクトを受注する等、着実に成果をあげることができました。なお、中期経営計画「Beyond the Horizon」の概要は以下のとおりです。
<中期経営計画「Beyond the Horizon」について(2016年5月12日発表内容)>
1)位置づけ
中期経営計画「Beyond the Horizon」は、「Program Management Contractor & Investment Partner」という日揮グループが目指す企業体への変貌に向けて、10年後、即ち2025年時点の企業グループとしての方向性と事業領域を明らかにし、売上高、親会社株主に帰属する当期純利益等の経営数値を拡大させ、さらなる変革を実現していくための前半5か年の成長戦略であります。
2)策定にあたっての前提
日揮グループの強み、優位性、即ちコアコンピタンスおよびマーケット環境の変化は以下のとおりと認識しております。
①日揮グループのコアコンピタンス
・ハイドロカーボン・ダウンストリーム分野のEPCコントラクターとして、困難な状況、複雑かつ高度なプロジェクトにおいても完遂するデリバリー能力を基盤とする世界屈指の実績とパフォーマンス
・技術力とマネジメント力に立脚し、人、物、情報をグローバル規模でインテグレートし、かつEPCの事業領域の拡大と新事業の展開を追求しうる優れた人材群
・10年に及ぶ事業投資の経験を通じて蓄積した事業運営会社としての知見とノウハウ
・強固な財務基盤およびさらなる成長戦略投資を可能にする豊富な資金力
②マーケット環境の変化
現在、プラントマーケットは、2014年からの原油価格の急激な下落とそれを背景とするメジャーオイルや産油国の設備投資の削減から、大変厳しい状況が続いております。
しかしながら、中長期的には、新興国の人口増大や経済発展を背景としたハイドロカーボンエネルギー需要の増大トレンドは不変であり、中期経営計画の後半以降に、原油やLNG等のエネルギー需給の逼迫を見据えた設備投資計画が本格化する状況が訪れるとともに、以下のとおりプラントマーケットは変化していく可能性が高いと予測しております。
・中央アジア、イラン、イラク等の新たなEPCマーケットが出現
・世界的な環境保全への関心の高まりを背景に再生可能エネルギー利用が着実に進展
・新興国の人口増大や経済発展を背景に、世界で都市化が進展し、インフラ(電力、交通)需要が増大
・中国ならびに東南アジア諸国における医薬・医療ニーズが拡大
・資源開発計画における3D化(Difficult, Deep, Distance)によるプロジェクト遂行技術の高度化ニーズが拡大
・ビッグデータを活用したIoT等、IT技術利用による産業の変革が進展
3)目指す方向性と事業領域
以上のような日揮グループのコアコンピタンスおよびマーケット環境の変化を踏まえ、10年後の2025年に日揮グループは、「オイル&ガス分野を中心とし、インフラ分野への事業領域拡大」を目指します。
4)目標とする経営指標
中期経営計画では、数値目標として2020年度の売上高1兆円以上、親会社株主に帰属する当期純利益600億円を掲げ、ROEについては引き続き10%以上といたします。
5)基本方針
コアビジネスであるオイル&ガス分野のEPC事業の拡大を図りつつ、インフラ分野へのEPC事業の拡大および非EPC事業からの安定的な利益創出に注力し、企業価値向上を図ってまいります。その実現のための財務戦略を含め、中期経営計画の基本方針を以下のとおりといたします。
≪基本方針1≫ EPC事業の拡大(オイル&ガス分野の拡大、インフラ分野への拡大)
≪基本方針2≫ 非EPC事業(事業投資・製造業)の利益拡大
≪基本方針3≫ 基本方針1および2を実現するための財務戦略の策定
6)基本方針に基づく戦略
≪基本方針1≫ EPC事業の拡大(オイル&ガス分野の拡大、インフラ分野への拡大)
EPC事業の拡大のため、以下の事業戦略を推し進めます。
戦略1)マーケット拡大
現有マーケットに加え、東アフリカ、中央アジア、イラン、イラク等へのマーケット拡大を図ります。
戦略2)プロジェクト遂行力強化
国内外EPCグループ会社との連携強化、幅広いJVパートナーとの協業促進、世界三極体制確立のための欧州拠点の設置および新興国対応のグループ会社の設置により、プロジェクト遂行力強化を図ります。
戦略3)事業領域拡大
アップストリーム分野への領域拡大、発電(化石燃料、原子力、再生可能エネルギー)分野の強化、交通インフラ分野への領域拡大、医薬・医療分野の海外展開の促進およびプラントの事業価値向上に向けたO&Mサービス事業への進出により、事業領域の拡大を志向してまいります。
戦略4)技術優位性追求による受注競争力強化
LNG分野のさらなる技術力向上、モジュール工法等プロジェクト遂行技術高度化のさらなる追求、プラントの事業価値向上に向けたIoT活用の推進および高度先端医療に対応する医薬分野の技術力向上により、受注競争力強化に取り組みます。
≪基本方針2≫ 非EPC事業(事業投資、製造業)の利益拡大
事業投資においては、目標IRRは引き続き12%以上とすることを定めたうえで、各事業分野を、以下のとおり分類し事業投資に取り組んでまいります。
<拡大分野> 既存事業のうち、引き続き積極的に取り組む分野
・発電・造水(IWPP)事業
・環境・新エネルギー事業
・メディカル事業
<維持分野> 当面継続するが、マーケット状況を考慮して将来性を検討する分野
・資源開発事業
・上下水道事業
・都市開発事業
<将来分野> 将来のポテンシャルの大きさを考慮し、チャレンジする新規分野
・空港運営事業
・アグリ事業
・中国事業
・ビッグデータソリューション事業
また、触媒事業等の製造業においては、世界的な需要増大を捉え、新商品、新製品開発に資する技術開発の促進に加えて、技術獲得のための国内外企業のM&A、アライアンスの検討および海外展開のさらなる促進により、売上高および利益の拡大を目指してまいります。
≪基本方針3≫ 基本方針1および2を実現するための財務戦略の策定
自己資本比率については50%以上を安定的に維持すること、また資本効率も意識し、自己資本利益率(ROE)については引き続き10%以上とすることを目標として定めたうえで、以下を目途として手元資金の配分を行ってまいります。
|
対象 |
配分の目途 |
|
EPC事業に関する運転資金 |
30% |
|
成長戦略投資(※) |
30% |
|
株主還元 |
20% |
|
事業投資 |
10% |
|
設備投資(社屋維持、グループ会社関連) |
10% |
|
合計 |
100% |
(※)基本方針に基づく次の諸施策。欧州拠点の設置、新興国対応のグループ会社の設置、アップストリーム分野や交通インフラ分野への領域拡大、ビッグデータソリューション事業の推進等。
プロジェクトマネジメント力のさらなる強化
2016年度において、当社は、米国で遂行中の石油化学プロジェクトおよび中東で遂行中の石油精製プロジェクト等において大幅な採算悪化を招くこととなりました。これらプロジェクトにおける採算悪化を重く受け止め、発生原因の分析を進め、損失の発生防止はもとよりプロジェクトからの確実な利益実現に向けて、リスク管理を含むプロジェクトマネジメント力のさらなる強化に取り組んでまいります。
日揮グループの事業その他に関するリスクで、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、平成29年3月31日現在において日揮グループ全体を視野に入れて判断したものであります。
①海外要因のリスク
日揮グループの事業は海外売上高が全体の8割超を占め、相手国における経済リスク、政治・社会リスクなどのいわゆるカントリーリスクにさらされております。具体的には、不安定な政情、戦争、革命、内乱、テロ、経済政策・情勢の急変、対外債務不履行および為替・税金制度の変更などが考えられます。日揮グループは、これらのリスクに起因する事業への影響をできるだけ少なくするために、リスク管理体制の見直し・強化をはじめ、貿易保険の利用、代金の早期回収および企業連合の組成などの方策を講じておりますが、想定を超える事業環境の変化が発生した場合には、プロジェクトの中止、中断および遅延などによって、日揮グループの業績に影響を与える可能性があります。
②プロジェクト遂行上のリスク
日揮グループのプロジェクト契約形態はその多くがランプサム・フルターンキー契約(一括請負契約)でありますが、一部にはリスクを低減するためのコストプラスフィー契約(実費償還型契約)、コスト開示型見積方式による契約などもあり、プロジェクトに応じて採用しております。日揮グループは過去の経験を十分に活用し、プロジェクト遂行中の各種リスクへの対応を織り込んで契約を行っておりますが、資機材価格・レーバーコストの急激な変動、自然災害および疾病の発生など、想定を超えるプロジェクト遂行上の問題および自己責任によるプラントに係る重大な事故が発生した場合には、プロジェクトの採算が悪化し、日揮グループの業績に影響を与える可能性があります。
③投資事業リスク
日揮グループでは、石油・ガス・資源開発関連事業、発電・造水事業および農業・都市開発・インフラ整備事業などへの投資を行っております。新規投資および再投資実行の際にはリスク評価を行うとともに、既存事業については適時モニタリングを行うことで、適切なリスク管理を実施しておりますが、原油・ガスなどのエネルギー資源の急激な価格変動に代表される投資環境の劇的な変化や推定埋蔵量の変化など、想定を超える事態が発生した場合には、日揮グループの業績に影響を与える可能性があります。
④為替リスク
日揮グループの事業は、海外売上高のほとんどが外貨建て契約となっております。この為替リスク回避策として、マルチカレンシー建てによるプロジェクトの受注契約をはじめ、海外調達、外貨建ての発注および為替予約などの対策を状況に応じて採用しております。しかしながら、急激な為替変動は、日揮グループの業績に影響を与える可能性があります。
(1)当社が技術援助等を受けている契約
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契約先 |
内容 |
契約期間 |
契約年月 |
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ソシエテ・テクニーク・プーレ・エネージイ・アトミク(フランス) |
放射性廃棄物を熱硬化性樹脂中に固化する処理技術 |
昭和61年4月10日以降は当事者の一方が6カ月前に解約通知しなければ1年毎に更新 |
昭和54年1月 |
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シェル・リサーチ・リミテッド(イギリス) |
硫黄回収装置から出されるガスより酸性ガスを除去する方法(SCOT法)に関する技術 |
昭和59年8月31日以降は当事者の一方が3カ月前に通知することにより終結 |
昭和58年6月 |
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ルルギガスーウント ミネラレール テクニック ゲー・エム・ベー・ハー (ドイツ) |
硫黄回収技術 |
平成13年12月31日以降は当事者の一方が1年前に解約通知しなければ1年毎に更新 |
平成4年1月 |
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スルザー・ブラザース・リミテッド(スイス)およびスルザー・ブラザース・ケムテック・ピィーティーイー・リミテッド (シンガポール) |
塔内充填物および付帯機器類に関する技術 |
平成9年4月23日以降は当事者の一方が6カ月前に解約通知しなければ1年毎に更新 |
平成4年4月 |
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ユー・オー・ピー (アメリカ) |
既設リファイナリーの収益性改善のためのコンサルティング手法 |
平成15年8月31日以降は、当事者の一方が6カ月前に解約通知しなければ1年毎に更新 |
平成10年9月 |
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マモー・トランスポート・ビー・ヴィ(オランダ)および日本通運株式会社 |
超重量物の据付に用いる油圧ジャッキ式門型クレーンの国内使用に関する協力 |
平成15年9月1日以降は当事者の一方が3カ月前に解約通知しなければ1年毎に更新 |
平成12年9月 |
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アスペン・テクノロジー・インク(アメリカ) |
プロセス、機器設計、コスト推算およびプロセスデータベースソフト等の高度制御用ソフトウェア |
平成32年11月30日まで |
平成21年9月 |
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ビーエーエスエフ・エスイー(ドイツ) |
天然ガスからの酸性ガス除去プロセスの技術 |
平成36年4月9日まで |
平成26年4月 |
(2)当社が技術援助等を与えている契約
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契約先 |
内容 |
契約期間 |
契約年月 |
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ユー・オー・ピー (アメリカ) |
初期投資の大幅軽減と短納期を実現する新しい製油所設計技術 |
平成12年7月22日以降は1年毎に更新 |
平成9年7月 |
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ユー・オー・ピー (アメリカ) |
天然ガスコンデンセート中の水銀とヒ素を除去する技術 |
平成15年1月14日以降は当事者の一方が6カ月前に解約通知しなければ1年毎に更新 |
平成10年1月 |
(3)その他当社が締結している重要な契約
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契約先 |
内容 |
契約期間 |
契約年月 |
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アジャンス・ナショナル・プーラ・ゲション・デュ・ディシュ・ラディオアクティス(フランス) |
放射性廃棄物処分技術に関する技術情報の交換および同分野におけるテクニカルサービス等の提供のための協力 |
平成15年9月14日以降は当事者の一方が6カ月前に解約通知しなければ1年毎に更新 |
平成10年9月 |
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シュナイダーエレクトリック株式会社 |
高度制御用ソフトウェアパッケージ、オンライン最適用ソフトウェアパッケージの販売、導入に関する営業活動およびプロジェクト遂行のための協力 |
平成14年2月1日まで。ただし、当事者の一方より契約満了日の30日前までに解約通知しなければ1年毎に更新 |
平成13年2月 |
(4)関係会社が締結している重要な契約
該当事項なし。
中期経営計画「Beyond the Horizon」の開始年度である当連結会計年度は、差別化技術に基づいたビジネス開発を推進してきました。重点戦略を①開発技術の早期商業化とライセンスビジネスの拡大、②成長分野における新規ビジネスの創出と推進、③オープンイノベーションの活用による社外との連携強化とし、資源、環境、ライフサイエンス、新エネルギー、ものづくりの各分野に注力してきました。その結果、海外への技術ライセンス供与の実績をあげ、成長分野における新規ビジネスの創出を図るとともに、将来ビジネスの核となる技術獲得のために産官学の連携による開発を推進することができました。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、51億75百万円(消費税等は含まない)です。
① 総合エンジニアリング事業
設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野
コアビジネスである設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野においては、既存のハイドロカーボン分野、ノンハイドロカーボン分野に加えて、EPCビジネスの領域拡大を目指し、洋上LNG(フローティングLNG)分野、インフラ分野に取り組んできました。また、近年の動向として、オフショアだけでなく、オンショアにおいても大型モジュール工法が採用される事例が増えてきており、これらのプロジェクトに対しても設計製作から輸送まで難度の高い同工法を適用しています。さらには、同工法を極寒地での建設にも利用するなどの適用範囲の拡大や、さらなる工法の開発・工夫による競争力強化に取り組んでいます。
石油資源・精製分野
世界の石油需要が長期的に増大する傾向がある中、豊富な埋蔵量のカナダオイルサンドや南米の超重質油、東アフリカの高流動点原油など、非在来型重質油の開発が注目されています。これら重質原油の多くが既発見ながら未開発のままである主たる理由として、粘度が高く消費地までのパイプラン輸送が困難であることが挙げられます。当社は独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で、超臨界水を利用したSCWC(Supercritical Water Cracking)プロセスを開発し、カナダに設置したパイロット装置で連続運転を終了しました。その結果、パイプラインで輸送できるまでに粘度を低減できること、副生するピッチはボイラー用燃料に加え、道路用アスファルトの原料として使用できることを確認しました。カナダをはじめベネズエラ、コロンビア、ウガンダなどの未開発原油の開発を推進し、我が国の資源獲得に貢献します。
また、天然ガスの需要増加に伴い、その副生物として生産量が増えているコンデンセートは、原油に比べて軽質留分を多く含むため輸送燃料のみならず石油化学原料としても需要が増えています。コンデンセートに含まれる硫黄分を一つの反応器で一括して脱硫処理するシンプルな脱硫技術を確立しました。コンデンセートを各留分に分けた後に脱硫処理する従来法に比べて、設備費と運転費を大幅に削減できることを確認し、産ガス国に対してプロモーションを行っています。
天然ガス分野
温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められている昨今、当社ではCO2の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を積上げています。分離回収においては、吸収法による高圧再生型CO2回収(HiPACT®)プロセスを保有し、天然ガス処理や合成ガス精製過程でCO2をより高圧で回収することで、地中貯留(CCS: Carbon dioxide Capture and Storage)のために新たに必要となる圧縮エネルギーとコストを大幅に削減することができます。さらには、今後の資源開発が見込まれる高濃度CO2含有天然ガス田に含まれるCO2を、特殊なセラミック膜で効率的に分離回収する技術を開発し、フィールド実証を計画しています。両技術ともCO2の有効利用先として原油増進回収(CO2-EOR: Enhanced Oil Recovery)への展開が期待されています。実油田を対象に実施したCO2-EOR適用可能性調査などの知見と合わせて、産油ガス国/企業向けにCO2問題に対するトータルソリューションを提供していきます。
また、海洋ガス田向けの洋上LNGプラントや中小ガス田向けの陸上小型LNGプラントの技術開発に継続して取り組んできた結果、東南アジアの洋上LNGプラントのEPCビジネスに結びつきました。現在、複数のプロジェクトを手掛けており、さらに複数のFEED業務(Front End Engineering and Design)を遂行中です。また、陸上LNGプラントのEPCと連携したO&M(Operation and Maintenance)手法の基本スキームを開発しており、O&Mサービスの販売活動を展開しています。空気冷却式の陸上LNGプラントでは、操業場所の気象条件も考慮したプラント周辺の熱風のシミュレーションによる生産性の高いプラントを設計する解析技術(AIRLIZE LNG®)を確立し、幅広い顧客のニーズに対して、多彩なソリューションを提案しています。
ケミカル分野
シェールガスをはじめとする天然ガスは、液体燃料製造や高付加価値の化学品製造の原料としても期待されています。天然ガスなどから合成されるメタノールを原料とするプロピレン製造プロセス(DTP®)は、現在産ガス国や化学会社などに対して営業活動を展開しています。また、次世代の高性能触媒も継続して開発中です。
環境分野
経済産業省は2016年3月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ改訂版」を発表しました。この中では、燃料電池自動車の導入とともに、水素発電やCO2フリー水素の導入についても実用化までのステップが示されています。
CO2フリー水素を用いた発電において、水素の輸送形態(エネルギーキャリア)として、アンモニアが着目されています。当社は、内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトに参画し、再生可能エネルギーなどからCO2フリーアンモニアを製造するシステムを開発しており、2019年に産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所内で実証試験を行う計画です。本開発では、太陽光や風力の不安定な出力を平準化するために、蓄電池や水電気分解などを組み合わせた全体システムとして最適化も検討しています。
排ガスからSOxおよびNOxを効率的に除去する乾式脱硫脱硝システムの技術は、昨今問題となっている中国やインドにおける環境汚染対策に非常に有効です。各国での技術検討や実証などを推進し、これら新興国への本システムの導入を、引き続き進めていきます。
ライフサイエンス分野
ライフサイエンス分野では、バイオ医薬品製造技術としてマイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクターやシングルユース機器のハンドリング技術の開発を行っています。また、視覚・触覚のフィードバックを伴うマスター・スレーブ方式の遠隔操作による無人(塵)化対応、粉体コンテナのドライ洗浄、高薬理活性物質の飛散性測定、原薬および製剤の連続製造など、多角的な技術開発を行っています。
再生医療分野では再生医療関連施設の多くの実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築や再生医療関連要素技術の高度化を進めています。病院建設では、病院総合運営パートナー事業にも踏み込んだ展開を国内外で進めた結果、カンボジアで病院建設、運営を行うに至っています。
原子力分野
東日本大震災により発生した放射能を含んだ瓦礫、廃棄物、あるいは汚染土壌の一部は焼却処理や熱処理により除染することが検討されています。しかし、このような除染により除去され濃縮された放射能を処分するための処理方法はいまだ決定されていません。そこで、当社では、これらの放射能の高い汚染物に対して、新たな固化体を用いた封じ込め性の高い固化処理技術の開発に着手しました。また、発電所サイト内に貯蔵されている塩分を含んだ放射性廃液の処理技術の開発も進めています。
新規事業創出分野
低品位炭を原料とする石油代替燃料(JGC Coal Fuel: JCF®)への変換技術は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成により、インドネシアで年産1万トン規模のJCF製造およびその燃料を用いた発電実証を行い、商業化への目途を得ました。このプロセスはインドネシアに多く存在する未利用低品位炭を高圧熱水により改質させた後、水と混合してスラリー燃料に加工する当社の独自技術で、今後インドネシアのエネルギー自給への貢献が期待されています。
CO2の排出量削減に向けて、バイオマス由来燃料の開発が世界的に進められています。非食物系バイオマスを原料にした酵素法エタノール製造プロセスは、NEDOからの委託事業が終了し、基礎技術の確立に到りました。その成果を実用化に結びつけるため、バイオマス利用を目指す企業と共同で実証開発を実施しています。
なお、当事業での研究開発費は23億46百万円(消費税等は含まない)です。
② 触媒・ファイン事業
石油精製分野
国内では、将来的な石油需要の減衰に対応するエネルギー供給構造高度化法により、石油精製各社の精製能力削減および経営統合による生産効率化や重質油の白油化よる高付加価値化が進んでいます。東南アジアでは燃料油生産とともに石油化学原料も生産する大型石油コンビナートの増設や船舶燃料油の硫黄規制強化への対応の動きが見られるようになってきています。これらの動きに対応すべく、石化型流動接触分解装置に好適な触媒の実証化を進めています。また、重質油を効率的に分解する流動接触分解触媒は既に実績が得られていますが、さらなる高活性化を目指した次世代触媒の開発も進めています。石化型流動接触装置に有効なアディティブ触媒については、世界トップクラスのプロピレン増産用アディティブが国内外の製油所で採用され始めており、さらに高性能なプロピレン増産およびブテン選択性の高いアディティブを開発、実証化を進めています。
一方、新興国を中心に環境規制強化に対応するために、水素化脱硫触媒の需要は堅調に伸びていくと予想されています。高い脱硫活性と安定性を兼ね備えた革新的な軽油サルファーフリー脱硫触媒が国内製油所で初めて採用になり、その実績を基に拡販を進めていく計画です。また、残油水素化処理装置用の高い脱硫活性と活性安定性を有する直接脱硫触媒が国内製油所で良好な性能を実証し、今後拡販を進めていきます。また、本実証知見に基づき次世代の触媒開発にも取り組んでいます。一方、石油精製会社の研究所と共同開発した軽油サルファーフリー脱硫触媒や水素化分解触媒は、製油所ニーズを取り込んで収益向上に貢献しています。
顧客に対して魅力ある触媒の提案や運転サポートなど、ソリューションプロバイダー型の技術サービス体制を整え、国内外の石油精製会社との共同研究、実証化も進めています。
石油化学分野
国内ナフサクラッカーの休止や統合など、顧客は厳しい環境の中で、付加価値の高い製品開発や新しいビジネスモデルの構築を模索しています。このような状況の中で、顧客のニーズ変化に対応するケミカル触媒の受託研究・工業化に取り組むとともに、ニッケル触媒をはじめ石油化学向け触媒の活性金属の担持・成型・還元技術をブラッシュアップし、触媒特性を向上させる開発・工業化の検討を進めています。また、ケミカルプロセスで反応器の前後で使用する不純物吸着剤(原料であるハイドロカーボン中の硫化カルボニル除去など)の開発・工業化およびテクニカルサービスを強化し、拡販を進めています。
環境保全分野
環境保全分野では、CO2削減の観点から、福島復興プロジェクトの一環として石炭ガス化発電(IGCC)が計画されており、用いられる排ガス処理材料の実証化に取り組んでいます。さらに木質バイオマスを混焼させる石炭火力発電所に加え、バイオマス専焼の発電も増えている中、国内企業との共同研究により触媒被毒成分による触媒劣化を抑制した脱硝触媒の開発を進め、実ガスによる実証化試験を行っています。さらに中国や欧州向けにディーゼル車排ガス浄化触媒の開発を行っています。
中国ではコークス炉ガスの燃焼排ガスおよびセメントキルンの排ガス浄化触媒のニーズが高まり、前者には乾式脱硫と低温触媒を組み合わせたシステムが採用され、低温型脱硝触媒を納入しました。低温脱硝触媒についてはより低温で性能を発揮する触媒開発に取り組んでいます。
クリーンエネルギー分野
政府が2020年夏に東京で開催するオリンピック・パラリンピックに向けて、水素エネルギーの導入を促進する中、燃料電池自動車や定置型燃料電池の普及が拡大するものと予想されます。また、IoTを支える自律型センサーの需要が高まっており、独立電源に用いられる低照度光発電用材料のニーズが高まってきています。当社は次世代の新エネルギー関連材料を国内大学と共同開発を行っており、燃料電池関連材料や色素増感型太陽電池材料の製品ラインナップの充実に努めています。
生活関連・化粧品分野
眼鏡レンズのハードコートラッカー塗料用の高屈折率酸化物ゾルについて、耐候性を改善した開発品で眼鏡レンズ用の販売を強化するべく展開中です。多用途への展開では、車部材やLCDパネルのハードコート用にサンプルワークを継続しており、新しい展開分野を探索しています。一方、ラッカー塗料は硬度を向上した眼鏡レンズで顧客の採用が進みつつあります。今後も主要特性と生産性を高めて、眼鏡分野のシェア拡大と多用途展開による規模拡大を図ります。
化粧品分野では、国連環境計画など地球規模の環境汚染の懸念が指摘されているプラスチック製マイクロビーズの代替材料として開発したシリカビーズが注目され、スクラブ材への採用に繋がりました。また、トイレタリー分野への展開も進めており、ヘアケア製品で採用、商品化されました。さらに、かねてより顧客と共同開発を進めてきた紫外線遮蔽効果を増幅する光学材についても商品化され、次いで第二世代の材料開発に着手しました。
電子材料分野
記録メディア市場はクラウドの需要により維持されており、高記憶容量化に向けたさらなる研磨面精度が求められています。従来の2次仕上げ研磨用に加え、1次研磨用にも当社の高面精度、高研磨速度シリカ研磨砥粒が適用され業界トップシェアを維持しています。また、半導体用CMP分野では、半導体デバイスの微細化・多層化が進んでおり、高平坦性・低欠陥と高研磨速度が両立する研磨砥粒が求められています。このニーズに対応する無機ハイブリッド型研磨砥粒の顧客評価が順調に進んでおり採用間近の状況にあります。
また、半導体実装材料分野で採用されたドライ研磨用の多孔質粒子が半導体市場伸長とともに需要が拡大しています。引き続き拡大基調への生産対応を図るとともに次世代の材料開発も開始しています。
光学フィルム用機能性光学材料は、かねてより開発に取り組んできた高画質4Kテレビの視認性を向上させる反射防止フィルムに用いる高性能タイプの低屈折率粒子の需要が拡大しています。そこで、新たに次世代用としてさらなる高性能タイプを開発しサンプルワークを開始しました。引き続きテレビ用途の拡大を図るとともにPCモニタ、スマートフォン、タブレット用途でも継続的な拡大を図ります。
ファインセラミックス分野
ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LED照明など、高電力用のパワーデバイスを支える放熱用基板としての「高熱伝導率窒化珪素基板」の性能向上を目的とした開発を行っています。また、NEDO事業として3D革新的設計生産技術に参加しています。その他、材料による差別化を図るため、非酸化物系セラミックスの材料開発ならびにシリーズ化、セラミックス金属複合材(MMC)の開発に注力しています。
なお、当事業での研究開発費は27億21百万円(消費税等は含まない)です。
また、総合エンジニアリング事業および触媒・ファイン事業に加え、その他の事業において1億7百万円(消費税等は含まない)の研究開発費を計上しております。
1.経営成績
日揮グループの当連結会計年度の業績は、売上高6,931億52百万円(前期比21.2%減)、営業損失214億96百万円(前期は496億61百万円の営業利益)、経常損失152億15百万円(前期は520億47百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失220億57百万円(前期は427億93百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
① 売上高
売上高は一部の手持ち工事の採算悪化等の結果、前連結会計年度に比べて1,868億2百万円減少し、6,931億52百万円となりました。
② 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は売上高の減少に伴い、前連結会計年度に比べて1,152億95百万円減少し、6,917億円となりました。また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べて3億48百万円減少し、229億48百万円となりました。
③ 営業損益
営業損益は完成工事総利益の減少等に伴い、前連結会計年度の496億61百万円(営業利益)から214億96百万円(営業損失)と711億57百万円減少となりました。
④ 営業外損益
営業外損益は、受取配当金の増加等により、前連結会計年度の23億86百万円の利益(純額)から、62億80百万円の利益(純額)と38億94百万円の増加となりました。
⑤ 税金等調整前当期純損益
特別損益は、41億33百万円の損失(純額)となりました。投資損失引当金戻入額等が発生したものの、減損損失等を計上したことが主な原因であります。結果として当連結会計年度における税金等調整前当期純損失は、193億49百万円となり、前連結会計年度に比べて790億6百万円の減少となりました。
⑥ 法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額
法人税、住民税及び事業税は、前連結会計年度に比べて8億95百万円増加し、99億74百万円となりました。一方、法人税等調整額が△74億80百万円となり、税金費用負担額(純額)は24億93百万円となりました。
⑦ 非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べて39百万円増加し、2億14百万円となりました。
⑧ 親会社株主に帰属する当期純損益
結果として、親会社株主に帰属する当期純損失は220億57百万円となり、前連結会計年度に比べて648億51百万円減少となりました。
2.財政状態およびキャッシュ・フロー
当連結会計年度の連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較し新規連結を伴う増加を除き623億46百万円減少し、1,856億3百万円となりました。また、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
営業活動による資金は、税金等調整前当期純損失の193億49百万円に加え、売上債権の増加などにより、結果として288億84百万円の減少(前連結会計年度は497億64百万円の減少)となりました。
投資活動による資金は、有形固定資産の取得、短期貸付金の増加などにより、129億79百万円の減少(前連結会計年度は86億96百万円の増加)となりました。
財務活動による資金は、長期借入金の返済、配当金の支払いなどにより196億74百万円の減少(前連結会計年度は43億74百万円の減少)となりました。なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は下記のとおりとなりました。
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平成27年3月期 |
平成28年3月期 |
平成29年3月期 |
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自己資本比率(%) |
53.8 |
60.7 |
59.1 |
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時価ベースの自己資本比率(%) |
83.7 |
61.6 |
75.5 |
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キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
- |
- |
- |
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インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
- |
- |
- |
(注)自己資本比率 :自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 :有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :キャッシュ・フロー/利払い
*各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算している。
*有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としている。キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用している。また、利払いは連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用している。
*キャッシュ・フローがマイナスの期におけるキャッシュ・フロー対有利子負債比率およびインタレスト・カバレッジ・レシオについては「-」で表示している。
当連結会計年度の連結財政状態は、総資産が6,462億91百万円となり、前連結会計年度比で434億90百万円減少しました。純資産は3,832億60百万円となり前連結会計年度比364億13百万円の減少となりました。
また、連結貸借対照表に係る指標は以下のとおりとなりました。
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平成27年3月 |
平成28年3月 |
平成29年3月 |
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流動比率 |
186% |
232% |
212% |
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固定比率 |
48% |
40% |
43% |
(注)流動比率:流動資産/流動負債
固定比率:固定資産/純資産合計
各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算している。