当連結会計年度における世界経済は、米国が底堅く推移した一方で、中国等の一部の新興国においては景気減速がみられたことから、全体としては弱い回復に留まった。
我が国経済においては、消費税率引き上げの影響により個人消費や生産活動は力強さを欠いたものの、政府・日銀の連携した経済政策を背景に企業収益や雇用・所得環境が改善するなど、基調としては緩やかな回復が続いた。
国内建設市場については、公共投資は高水準を維持し、民間設備投資も一部で回復がみられた中で、労務需給の逼迫が続いたことから工事利益や工程の確保に努力を要するなど、依然として厳しい経営環境が続いた。
こうした中、当連結会計年度における当社グループの連結業績は、次のとおりとなった。
建設事業受注高は、当社における減少により、前連結会計年度比6.3%減の1兆4,748億円(前連結会計年度は1兆5,735億円)となった。なお、当社の受注高は、開発事業等を含めて同5.6%減の1兆1,938億円(前連結会計年度は1兆2,646億円)となった。
売上高は、当社及び海外連結子会社の完成工事高が増加したことを主因に、前連結会計年度比11.3%増の1兆6,936億円(前連結会計年度は1兆5,211億円)となった。
利益面では、当社の開発事業等及び国内・海外の連結子会社の総利益が増加したものの、当社の海外土木工事において採算が悪化したこと等により、営業利益は前連結会計年度比44.9%減の126億円(前連結会計年度は230億円)となり、経常利益は同20.9%減の213億円(前連結会計年度は270億円)となった。
当期純利益は、投資有価証券売却益を特別利益に計上し、税制改正に伴う繰延税金資産の取崩しを行ったこと等により、前連結会計年度比27.0%減の151億円(前連結会計年度は207億円)となった。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
セグメントの業績は次のとおりである。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
完成工事高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比7.5%減の2,764億円(前連結会計年度は2,988億円)となった。
営業損益は、一部の海外工事において採算が悪化したことにより、155億円の損失(前連結会計年度は350億円の利益)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
完成工事高は、前連結会計年度の受注高が高水準であったことにより、前連結会計年度比13.2%増の7,808億円(前連結会計年度は6,900億円)となった。
営業損益は、一部の工事において採算が悪化したことにより、234億円の損失(前連結会計年度は316億円の損失)となった。
③ 開発事業等
(当社における都市開発、地域開発など不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
不動産市況の回復を背景に物件売却が進展したことにより、売上高は前連結会計年度比46.5%増の837億円(前連結会計年度は571億円)となり、営業利益は前連結会計年度比12倍超の209億円(前連結会計年度は16億円)となった。
④ 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比8.4%増の3,664億円(前連結会計年度は3,381億円)となった。
営業利益は、全ての子会社において売上総利益が増加したことにより、前連結会計年度比65.8%増の191億円(前連結会計年度は115億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、米国、欧州、アジアなどの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、米国において完成工事高が増加したことを主因に、前連結会計年度比28.9%増の3,401億円(前連結会計年度は2,638億円)となった。
営業利益は、欧州において開発物件の売却があったことを主因に、前連結会計年度比69.7%増の111億円(前連結会計年度は65億円)となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、592億円の収入超過(前連結会計年度は329億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益398億円に減価償却費171億円等の調整を加味した収入に加えて、仕入債務の増加730億円の収入があった一方で、未成工事受入金及び開発事業等受入金の減少249億円及び法人税等の支払額249億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、83億円の収入超過(前連結会計年度は173億円の収入超過)となった。これは、投資有価証券の売却等による収入237億円及び定期預金の純減224億円の収入があった一方で、有形固定資産の取得による支出224億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が642億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額51億円の支出等により、707億円の支出超過(前連結会計年度は171億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から24億円増加の2,425億円(前連結会計年度末は2,401億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の状況」及び「受注の状況」は記載していない。
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 平成25年4月1日 至 平成26年3月31日) | 当連結会計年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 増減(△)率 | |||||
土木事業 | (百万円) | 298,806 | ( | 19.7%) | 276,430 | ( | 16.3%) | △7.5 |
建築事業 | (百万円) | 681,932 | ( | 44.8%) | 776,838 | ( | 45.9%) | 13.9 |
開発事業等 | (百万円) | 56,248 | ( | 3.7%) | 80,983 | ( | 4.8%) | 44.0 |
国内関係会社 | (百万円) | 220,419 | ( | 14.5%) | 219,288 | ( | 12.9%) | △0.5 |
海外関係会社 | (百万円) | 263,784 | ( | 17.3%) | 340,117 | ( | 20.1%) | 28.9 |
合計 | (百万円) | 1,521,191 | ( | 100 %) | 1,693,658 | ( | 100 %) | 11.3 |
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
〔参考〕提出会社単独の受注高及び売上高の状況
期別 | 種類別 | 期首繰越高 | 当期受注高 | 計 | 当期売上高 | 期末繰越高 | ||
前事業 | 建 | 建築工事 | 799,531 | 841,830 | 1,641,362 | 690,020 | 951,342 | |
自 | 至 | 土木工事 | 408,819 | 369,237 | 778,056 | 298,806 | 479,250 | |
計 | 1,208,351 | 1,211,067 | 2,419,418 | 988,826 | 1,430,592 | |||
開発事業等 | 20,839 | 53,607 | 74,446 | 57,181 | 17,265 | |||
合計 | 1,229,190 | 1,264,674 | 2,493,865 | 1,046,007 | 1,447,857 | |||
当事業 | 建 | 建築工事 | 951,342 | 742,538 | 1,693,880 | 780,841 | 913,039 | |
自 | 至 | 土木工事 | 479,250 | 339,908 | 819,158 | 276,430 | 542,727 | |
計 | 1,430,592 | 1,082,446 | 2,513,038 | 1,057,271 | 1,455,767 | |||
開発事業等 | 17,265 | 111,367 | 128,632 | 83,742 | 44,890 | |||
合計 | 1,447,857 | 1,193,813 | 2,641,671 | 1,141,014 | 1,500,657 | |||
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
官公庁 | 民間 | (百万円) | (百万円) | ||
前事業年度 (自 平成25年4月1日 至 平成26年3月31日) | 建築工事 | 162,777 | 679,040 | 12 | 841,830 |
土木工事 | 212,166 | 128,427 | 28,643 | 369,237 | |
計 | 374,943 | 807,468 | 28,656 | 1,211,067 | |
当事業年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 建築工事 | 98,968 | 643,567 | 2 | 742,538 |
土木工事 | 210,123 | 129,455 | 329 | 339,908 | |
計 | 309,092 | 773,023 | 331 | 1,082,446 | |
期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) | |||
前事業年度 (自 平成25年4月1日 至 平成26年3月31日) | 建築工事 | 45.4 |
| 54.6 |
| 100 |
|
土木工事 | 17.1 |
| 82.9 |
| 100 |
| |
当事業年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 建築工事 | 59.6 |
| 40.4 |
| 100 |
|
土木工事 | 23.2 |
| 76.8 |
| 100 |
| |
(注) 百分比は請負金額比である。
期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
官公庁 | 民間 | (百万円) | (百万円) | ||
前事業年度 (自 平成25年4月1日 至 平成26年3月31日) | 建築工事 | 69,854 | 620,152 | 12 | 690,020 |
土木工事 | 178,875 | 104,051 | 15,879 | 298,806 | |
計 | 248,729 | 724,203 | 15,892 | 988,826 | |
当事業年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 建築工事 | 99,619 | 681,219 | 2 | 780,841 |
土木工事 | 164,669 | 126,849 | △15,087 | 276,430 | |
計 | 264,289 | 808,068 | △15,085 | 1,057,271 | |
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
発注者 | 工事名称 |
○ 宮城県 | 災害廃棄物処理業務(石巻ブロック) |
○ 首都高速道路㈱ | 中央環状品川線シールドトンネル(北行)工事 |
○ (学)愛知医科大学 | 新病院等建設工事 |
○ 三井不動産㈱、日本郵便㈱ | 札幌三井JPビルディング新築工事 |
○ 西新橋デベロップメント特定目的会社 | 西新橋スクエア新築工事 |
○ 北海道電力㈱ | 京極発電所新設土木本工事(第1工区) |
○ 東日本旅客鉄道㈱ | 東北縦貫線南部工区建設工事 |
○ 川崎重工業㈱ | 名古屋第1工場東工場建設工事の内土木建築工事 |
区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
官公庁 | 民間 | (百万円) | (百万円) | |
建築工事 | 192,844 | 720,194 | ― | 913,039 |
土木工事 | 336,773 | 141,111 | 64,843 | 542,727 |
計 | 529,617 | 861,306 | 64,843 | 1,455,767 |
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
発注者 | 工事名称 |
○ アルジェリア公共事業省高速道路公団 | 東西高速道路東工区建設工事(アルジェリア) |
○ ㈱西武プロパティーズ | (仮称)紀尾井町計画オフィス・ホテル棟新築工事 |
○ 勝どき五丁目地区市街地再開発組合 | 勝どき五丁目地区第一種市街地再開発事業 |
○ 銀座六丁目10地区市街地再開発組合 | 銀座六丁目10地区第一種市街地再開発事業 |
○ 三菱地所㈱、JXホールディングス㈱、 | (仮称)大手町1-1計画A棟新築工事 |
大手町デベロップメント特定目的会社 | |
○ 二子玉川東第二地区市街地再開発組合 | 二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業に係る |
施設建築物新築工事(Ⅱ-a街区) | |
○ (独)水資源機構 | 武蔵水路中流部改築工事 |
○ 東北電力㈱ | 女川原子力発電所防潮堤かさ上げ工事 |
当社グループは「中期経営計画(2015~2017年度)」をスタートした。これは、中核である当社建設事業を再生・強化し、当社グループの強みを活かせる事業領域を拡充するとともに、これらの施策を推進する経営基盤の確立により各事業の質的向上と相乗効果を実現し、業績の回復・拡大を目指すものである。
すなわち、当社建設事業については、適正利益及び施工能力を勘案した工事受注の徹底や協力会社との協働による確実な施工体制の構築、機械化・省力化を含む生産性の向上等に取り組み、収益の改善・向上を図る。
当社グループの強みを活かせる事業領域として、国内開発事業については、効果的な投資による優良プロジェクトの創出やノンアセットビジネスの推進に取り組む。海外の建設・開発事業については、既存事業の深耕と新市場・新分野の開拓による着実な成長を図る。建設事業の上流・下流分野については、エンジニアリングや環境、PFI分野を軸として、より上流段階からのプロジェクトへの関与の拡充や、維持管理・運営等の下流分野の収益化により、利益水準の底上げと収益源の多様化を目指す。
これらの施策を推進するために、グループ各社の連携強化や事業戦略に即した技術開発の促進、人材の確保・育成等に取り組むことにより、グループ全体で事業の好循環を生み出す体制を構築するとともに、財務体質の改善・強化に引き続き注力し、経営基盤を確立していく。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として以下のようなものがある。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
想定を上回る建設需要の減少や主要資材価格等の急激な上昇、不動産市場における需給状況や価格の大幅な変動等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
長期大型工事において、主要資材価格の急激な上昇等により、想定外に建設コストが増加した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
販売用不動産、事業用不動産及び有価証券等の保有資産の時価が著しく下落した場合又は収益性が著しく低下した場合等には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、米国・欧州・アジアをはじめとした世界各国での事業展開を図っており、当該進出国の政治・経済情勢、法制度等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
PFI事業の推進にあたり、長期に亘る運営期間の中で、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、設計、施工をはじめとする様々なサービスを提供しているが、万が一、重大な瑕疵が発生した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
発注者、協力会社、共同施工会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度末において計上している繰延税金資産については、今後の利益(課税所得)をもって全額回収可能と考えているが、制度面の変更等によっては、一部取崩しを求められる可能性がある。
当社グループの属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法等により法的規制を受けている。そのため、上記法律の改廃や新たな法的規制の新設、適用基準の変更等によっては、業績等に影響を及ぼす可能性がある。なお、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
特記事項なし。
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は77億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。
従来のリモコン等による建設機械の遠隔操作と異なり、タブレット端末から位置、範囲、速度などの施工情報を予め送信することで建設機械の自動運転を行う次世代建設生産システム「A4CSEL(クワッドアクセル)TM」を開発した。遠隔操作では1台の機械に1人の操作者が必要であるのに対して、「A4CSELTM」では1人で複数の機械の運転が可能となる。福岡県五ケ山ダム堤体建設工事におけるRCDコンクリート(振動ローラで締固めを行うダムコンクリート)の転圧作業の一部に振動ローラ自動運転システムを導入し、実工事に適用した。
日本コンベヤ㈱と共同で、シールドトンネルの立坑等において掘削土砂を地上に垂直搬送する「スネークベルコン※」を開発した。これまでの搬送システムでは不可能であった高低差100mの垂直搬送が可能となるほか、時間当たりの搬送量が格段に増加するもので、今後予想される更なる大深度・大断面シールドトンネルに、積極的に提案していく方針である。
火災時に刻一刻と変化する熱や煙が人の避難行動に与える影響を考慮し、人や火災の動きを3次元の動画で示すことを可能とした高度な避難シミュレーションシステム「人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS」を開発した。「PSTARS」を活用することで、都心部の再開発案件や鉄道関連施設等の大規模かつ複合化した施設における、避難時間だけでは見えない混雑の危険性や火災に応じた避難状況の違いを視覚化し、法令の基準を上回る詳細かつ高精度の避難安全設計を行うことを可能とした。
カビの発生から建物を守るための総合的な室内カビエンジニアリング技術を確立した。建物の計画・設計段階から施工中・竣工時まで、各段階で展開できる一連の対策技術を確立し、それらを相互に活用することで、より効果的に室内カビの発生を制御することが可能となった。今後、美術館や医薬品施設、学校等の施設をはじめ、地下室や多湿環境等の防カビのニーズが高い場所への適用を幅広く提案していく予定である。
山岳トンネル掘削時の地山調査において、発破用の爆薬を装填する穴やロックボルトの穴を開けるための施工機械(ドリルジャンボ)を利用して、切羽の前方や周辺の地質状態の評価を可能とする地山評価法を確立した。本評価法は、削孔時の削孔速度や打撃圧等のデータの取得・分析に加え、地山等級を評価する「弾性波速度」や岩盤の硬さを示す「圧縮強度」等の基準と関連付けることによって、地山に応じた適切な支保パターンの選択に活用することができる新たな地山評価手法であり、更なる安全性と品質の向上に繋がるものである。
住宅地に近接するトンネル現場において、トンネル掘削時に爆薬を起爆するタイミングを高い精度で制御することができる高精度電子雷管「eDev(*1)Ⅱ」を発破作業に適用し、様々なデータを蓄積しながら、体感的な振動のレベルを抑える高度な制御発破方法を確立した。この制御発破方法は、先行起爆孔と後続起爆孔の振動波形が重なり合うことによる振動の増幅を回避しながら、それぞれの起爆秒時間隔を可能な限り短くすることにより発破継続時間を短縮するもので、振動や騒音等による周辺環境への負荷を抑えることを可能とした。
*1:「eDev」は、Orica Explosives Technology Pty Ltdの登録商標である。
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構及び日本金属化学㈱との共同研究で、水中の放射性セシウム濃度を高速、かつ、より確実に検知する連続モニタリング装置「セシモニウォーター※」を開発した。本装置は、除染に伴い発生した除去土壌等の中間貯蔵施設などに適用することを想定している。中間貯蔵施設では、雨水等による排水が大量に発生することが予想されるが、本装置の開発により、排水中に含まれる放射性セシウム濃度の連続モニタリングを行うことを可能とした。
当社は、自らの事業活動における環境負荷軽減を図り、持続可能な社会の実現に貢献すべく、低炭素(Zero Carbon)・資源循環(Zero Waste)・自然共生(Zero Impact)の3つのゼロ実現を目指した「鹿島環境ビジョン:トリプルゼロ2050」を策定している。その一環として、植物油脂由来の廃食用油をリサイクルしたバイオディーゼル燃料の研究開発に取り組み、現場での使用を推進している。CO2排出量削減による「低炭素」とリサイクル燃料による「資源循環」を同時に実現し、2009年の現場適用開始以来、約1,600トン以上のCO2を削減した。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクト(*2)において、㈱竹中工務店、当社、㈱デイ・シイ及び日鉄住金高炉セメント㈱等のグループは、鉄鋼の製造工程において副産物として発生する高炉スラグを有効利用することで、セメント生産におけるエネルギー消費量とCO2排出量を従来のセメントよりも60%以上削減する「ECM(*3)(Energy・CO2・Minimum)セメント」を開発した。
*2:NEDOプロジェクト:省エネルギー革新技術開発事業/実用化開発/エネルギー・CO2ミニマム(ECM)セメント・コンクリートシステムの研究開発(平成23年度~平成25年度)
*3:「ECM」は、㈱竹中工務店、当社、㈱デイ・シイ及び日鉄住金高炉セメント㈱等の登録商標である。
ダムの堤体や貯水池などの斜面舗装を効率的に切削する技術を開発し、アスファルト遮水壁等のリニューアル工事に適用している。また、低騒音性と遮水性の両方を併せ持つ新発想のコンクリート舗装である「ハイブリッドコンクリート舗装」や耐久性能を向上させた「長寿命化舗装」等について、引続き研究開発を進めている。
高圧噴射攪拌工法において本設構造物への適用を目的とした「エコタイト※-S工法」を開発し、同工法では国内初の建築技術性能証明を取得した。本工法の特長は、独自開発した小型噴射装置により、品質のばらつきが小さい地盤改良体を造成できることや、独自開発した小型施工機と組み合わせることで、狭隘な場所や既設構造物の内部からの施工でも従来工法以上の品質で施工できることである。
(開発事業等及び海外関係会社)
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。また、「TM」が付されているものは当社の商標である。
当社グループにおける財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は、当社や海外連結子会社における増加を主因として、4期連続で増収となった。
利益面では、当社の開発事業等及び国内・海外の連結子会社の総利益が増加したものの、当社の海外土木工事において採算が悪化したこと等により、営業利益、経常利益及び当期純利益がいずれも減益となった。
当社グループは「中期経営計画(2015~2017年度)」をスタートした。
平成30年3月期を目途に、売上高は1兆7,500億円程度、経常利益は650億円以上、有利子負債は3,700億円以下、ROEは8.0%以上の達成を目指す。
当連結会計年度末の手許資金(現金及び現金同等物)の残高は、前連結会計年度末に比べ24億円増加し、2,425億円(前連結会計年度末は2,401億円)となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、592億円の収入超過(前連結会計年度は329億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益398億円に減価償却費171億円等の調整を加味した収入に加えて、仕入債務の増加730億円の収入があった一方で、未成工事受入金及び開発事業等受入金の減少249億円及び法人税等の支払額249億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、83億円の収入超過(前連結会計年度は173億円の収入超過)となった。これは、投資有価証券の売却等による収入237億円及び定期預金の純減224億円の収入があった一方で、有形固定資産の取得による支出224億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が642億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額51億円の支出等により、707億円の支出超過(前連結会計年度は171億円の支出超過)となった。
なお、当社においては、緊急時の資金調達手段の確保等を目的として、総額1,500億円のコミットメントライン契約を締結している。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比497億円増加し、1兆8,392億円(前連結会計年度末は1兆7,894億円)となった。これは、保有株式等の時価上昇による含み益の増加を主因とする投資有価証券の増加475億円等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比230億円減少し、1兆4,023億円(前連結会計年度末は1兆4,253億円)となった。これは、支払手形・工事未払金等の増加810億円があった一方で、有利子負債残高※の減少596億円、未成工事受入金の減少260億円及び未払法人税等の減少172億円があったこと等によるものである。その結果、当連結会計年度末の有利子負債残高は、3,850億円(前連結会計年度末は4,447億円)となった。
純資産合計は、株主資本2,835億円、その他の包括利益累計額1,513億円、少数株主持分20億円を合わせて、前連結会計年度末比728億円増加の4,369億円(前連結会計年度末は3,641億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比3.0ポイント好転し、23.6%(前連結会計年度末は20.6%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
今後の我が国経済については、世界経済の緩やかな回復が続く中で、各種政策効果が下支えとなり個人消費の改善や設備投資の増加が見込まれるなど、次第に持続的な成長に向かっていくものと考えられる。
国内建設市場においては、公共・民間ともに建設需要は堅調に推移すると見込まれる一方で、労務費や資材費の動向には引き続き注視が必要であり、施工・利益面では舵取りの難しい局面が続くものと思われる。
こうした中、当社グループは「中期経営計画(2015~2017年度)」をスタートした。すなわち、中核である当社建設事業を再生・強化し、当社グループの強みを活かせる事業領域を拡充するとともに、これらの施策を推進する経営基盤の確立により各事業の質的向上と相乗効果を実現し、業績の回復・拡大を目指す方針である。