当連結会計年度における世界経済は、先進国を中心に底堅さがみられたものの、一部の新興国については経済成長が鈍化したことから、全体としては弱い回復が続いた。
我が国経済においては、政府・日銀による積極的な経済政策の下、個人消費を中心とした内需の拡大が牽引し、企業収益や生産活動に改善の動きがみられるなど、景気は緩やかな回復基調となった。
国内建設市場については、公共投資は東日本大震災からの復興工事を中心に堅調に推移し、民間設備投資も一部では持ち直す動きがみられ、建設投資全体では前連結会計年度を上回る水準となったが、需給逼迫に伴う労務費の上昇等により、厳しい経営環境が続いた。
こうした中、当連結会計年度における当社グループの連結業績は、次のとおりとなった。
建設事業受注高は、当社及び国内関係会社における増加により、前連結会計年度比18.0%増の1兆5,735億円(前連結会計年度は1兆3,332億円)となった。なお、当社の受注高は、開発事業等を含めて同20.0%増の1兆2,646億円(前連結会計年度は1兆536億円)となった。
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比2.4%増の1兆5,211億円(前連結会計年度は1兆4,850億円)となった。
利益面では、当社の建築工事の総利益が減少した一方で、当社の土木工事及び国内・海外の連結子会社の総利益が増加したこと等により、営業利益は前連結会計年度比24.6%増の230億円(前連結会計年度は184億円)となり、経常利益は前連結会計年度比9.6%増の270億円(前連結会計年度は246億円)となった。
当期純利益は、特別利益の減少と税金費用の増加により、前連結会計年度比11.4%減の207億円(前連結会計年度は234億円)となった。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
セグメントの業績は次のとおりである。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
完成工事高は、国内・海外ともに増加し、前連結会計年度比10.9%増の2,988億円(前連結会計年度は2,694億円)となった。
営業損益は、完成工事総利益率が大幅に改善したことにより、350億円(前連結会計年度は81億円の損失)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
完成工事高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比7.5%減の6,900億円(前連結会計年度は7,459億円)となった。
営業損益は、一部の工事における採算が悪化したことにより、316億円の損失(前連結会計年度は99億円の利益)となった。
③ 開発事業等
(当社における都市開発、地域開発など不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比4.9%増の571億円(前連結会計年度は545億円)となった。
営業損益は、開発事業等総利益率が改善したことにより、16億円(前連結会計年度は4億円の損失)となった。
④ 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比5.7%増の3,381億円(前連結会計年度は3,200億円)となった。
営業利益は、建設系の子会社を中心に売上総利益が増加したことにより、前連結会計年度比33.4%増の115億円(前連結会計年度は86億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、米国、欧州、アジアなどの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、前連結会計年度に建設事業受注高が伸びたことを主因に完成工事高が増加したことから、前連結会計年度比18.1%増の2,638億円(前連結会計年度は2,233億円)となった。
営業利益は、前連結会計年度の売上総利益率が高水準であった反動により、前連結会計年度比10.7%減の65億円(前連結会計年度は73億円)となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、329億円の収入超過(前連結会計年度は584億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益428億円に減価償却費182億円等の調整を加味した収入に加えて、未成工事受入金及び開発事業等受入金の増加285億円の収入があった一方で、売上債権の増加628億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、366億円の収入超過(前連結会計年度は367億円の収入超過)となった。これは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入475億円及び投資有価証券の売却等による収入244億円があった一方で、有形固定資産の取得による支出167億円及び貸付けによる支出118億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が106億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額51億円の支出等により、171億円の支出超過(前連結会計年度は586億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から582億円増加の2,594億円(前連結会計年度末は2,011億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の状況」及び「受注の状況」は記載していない。
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 平成24年4月1日 至 平成25年3月31日) | 当連結会計年度 (自 平成25年4月1日 至 平成26年3月31日) | 増減(△)率 | |||||
土木事業 | (百万円) | 269,492 | ( | 18.2%) | 298,806 | ( | 19.7%) | 10.9 |
建築事業 | (百万円) | 741,620 | ( | 49.9%) | 681,932 | ( | 44.8%) | △8.0 |
開発事業等 | (百万円) | 53,015 | ( | 3.6%) | 56,248 | ( | 3.7%) | 6.1 |
国内関係会社 | (百万円) | 197,562 | ( | 13.3%) | 220,419 | ( | 14.5%) | 11.6 |
海外関係会社 | (百万円) | 223,329 | ( | 15.0%) | 263,784 | ( | 17.3%) | 18.1 |
合計 | (百万円) | 1,485,019 | ( | 100 %) | 1,521,191 | ( | 100 %) | 2.4 |
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
〔参考〕提出会社単独の受注高及び売上高の状況
期別 | 種類別 | 期首繰越高 | 当期受注高 | 計 | 当期売上高 | 期末繰越高 | ||
前事業 | 建 | 建築工事 | 790,752 | 754,704 | 1,545,457 | 745,925 | 799,531 | |
自 | 至 | 土木工事 | 436,954 | 241,357 | 678,311 | 269,492 | 408,819 | |
計 | 1,227,706 | 996,061 | 2,223,768 | 1,015,417 | 1,208,351 | |||
開発事業等 | 17,798 | 57,549 | 75,347 | 54,508 | 20,839 | |||
合計 | 1,245,505 | 1,053,611 | 2,299,116 | 1,069,925 | 1,229,190 | |||
当事業 | 建 | 建築工事 | 799,531 | 841,830 | 1,641,362 | 690,020 | 951,342 | |
自 | 至 | 土木工事 | 408,819 | 369,237 | 778,056 | 298,806 | 479,250 | |
計 | 1,208,351 | 1,211,067 | 2,419,418 | 988,826 | 1,430,592 | |||
開発事業等 | 20,839 | 53,607 | 74,446 | 57,181 | 17,265 | |||
合計 | 1,229,190 | 1,264,674 | 2,493,865 | 1,046,007 | 1,447,857 | |||
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
官公庁 | 民間 | (百万円) | (百万円) | ||
前事業年度 (自 平成24年4月1日 至 平成25年3月31日) | 建築工事 | 60,255 | 694,440 | 8 | 754,704 |
土木工事 | 117,692 | 101,811 | 21,853 | 241,357 | |
計 | 177,947 | 796,252 | 21,861 | 996,061 | |
当事業年度 (自 平成25年4月1日 至 平成26年3月31日) | 建築工事 | 162,777 | 679,040 | 12 | 841,830 |
土木工事 | 212,166 | 128,427 | 28,643 | 369,237 | |
計 | 374,943 | 807,468 | 28,656 | 1,211,067 | |
期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) | |||
前事業年度 (自 平成24年4月1日 至 平成25年3月31日) | 建築工事 | 52.8 |
| 47.2 |
| 100 |
|
土木工事 | 20.0 |
| 80.0 |
| 100 |
| |
当事業年度 (自 平成25年4月1日 至 平成26年3月31日) | 建築工事 | 45.4 |
| 54.6 |
| 100 |
|
土木工事 | 17.1 |
| 82.9 |
| 100 |
| |
(注) 百分比は請負金額比である。
期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
官公庁 | 民間 | (百万円) | (百万円) | ||
前事業年度 (自 平成24年4月1日 至 平成25年3月31日) | 建築工事 | 78,725 | 667,191 | 8 | 745,925 |
土木工事 | 168,915 | 94,744 | 5,832 | 269,492 | |
計 | 247,641 | 761,935 | 5,841 | 1,015,417 | |
当事業年度 (自 平成25年4月1日 至 平成26年3月31日) | 建築工事 | 69,854 | 620,152 | 12 | 690,020 |
土木工事 | 178,875 | 104,051 | 15,879 | 298,806 | |
計 | 248,729 | 724,203 | 15,892 | 988,826 | |
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
発注者 | 工事名称 |
○ ヤマト運輸㈱ | 羽田クロノゲート新築工事 |
○ 国土交通省東北地方整備局 | 胆沢ダム堤体盛立工事 |
○ 台湾台北市政府捷運工程局北区工程處 | 台北市地下鉄新荘線CK570C工区建設工事(台湾) |
○ マルイト㈱ | ホテルモントレ沖縄 スパ&リゾート新築工事 |
○ イオンモール㈱ | イオンモール東員新築工事 |
○ 大鵬薬品工業㈱ | 北島工場建設工事 |
○ 国土交通省関東地方整備局 | 357号東京港トンネル工事 |
○ 東雲グリーンフロンティアPFI㈱ | 東雲合同庁舎(仮称)整備等事業 |
○ 川口金山町12番地区市街地再開発組合 | サウスゲートタワー川口建設工事 |
区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
官公庁 | 民間 | (百万円) | (百万円) | |
建築工事 | 193,495 | 757,846 | ― | 951,342 |
土木工事 | 291,319 | 138,504 | 49,426 | 479,250 |
計 | 484,814 | 896,351 | 49,426 | 1,430,592 |
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
発注者 | 工事名称 |
○ アルジェリア公共事業省高速道路公団 | 東西高速道路東工区建設工事(アルジェリア) |
○ ㈱西武プロパティーズ | (仮称)紀尾井町計画オフィス・ホテル棟新築工事 |
○ 宮城県 | 災害廃棄物処理業務(石巻ブロック) |
○ 首都高速道路㈱ | 中央環状品川線シールドトンネル(北行)工事 |
○ 勝どき五丁目地区市街地再開発組合 | 勝どき五丁目地区第一種市街地再開発事業 |
施設建築物等新築工事 | |
○ 三菱地所㈱、JXホールディングス㈱、 | (仮称)大手町1-1計画A棟新築工事 |
大手町デベロップメント特定目的会社 | |
○ 二子玉川東第二地区市街地再開発組合 | 二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業に係る |
施設建築物新築工事(Ⅱ-a街区) | |
○ (独)水資源機構 | 武蔵水路中流部改築工事 |
当社グループでは、事業環境の変化に柔軟に対応し、持続的な成長を実現していくため、中期的な視点に立って以下に掲げる施策を推進していく。
国内建設事業については、社員の効率的配置や優良な協力会社の確保により適切な施工体制を維持するとともに、採算重視の受注方針の徹底と現場における生産性向上の取り組みを継続することにより収益力の強化に繋げる。
海外建設事業については、施工中の大型工事における採算の改善に継続して傾注する一方で、成長力に富む東南アジアに経営資源を重点的に配分して、事業の拡充を図る。
建設関連分野については、都市計画・設計等の上流分野から、リニューアルや維持・更新分野に至る一連の機能を強化し、多様な収益源の確立に取り組む。重点強化分野としている開発事業については、日本を含むアジア、北米、欧州でバランスのとれた収益を確保する。また、エンジニアリング事業については、技術提案から設計、施工マネジメントまでの多様なサービスの提供を拡充する。
これらの施策を、グループ各社の機能の強化と会社間の連携の深化により推進し、グループ全体の経営資源の効率的活用と収益性の向上に取り組む。
以上のような取り組みを実行することにより、安定的に利益を創出するとともに、財務体質の改善・強化に引き続き注力していく。
最後に、当連結会計年度に発生した都内のマンション工事における重大な施工不具合を深く反省し、再発防止活動を全社的に展開するとともに、企業存続の根幹である品質・安全衛生・環境の確保を改めて徹底することにより、顧客や社会からの信頼回復に努めていく。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として以下のようなものがある。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
想定を上回る建設需要の減少や主要資材価格等の急激な上昇、不動産市場における需給状況や価格の大幅な変動等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
長期大型工事において、主要資材価格の急激な上昇等により、想定外に建設コストが増加した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
販売用不動産、事業用不動産及び有価証券等の保有資産の時価が著しく下落した場合又は収益性が著しく低下した場合等には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、米国・欧州・アジアをはじめとした世界各国での事業展開を図っており、当該進出国の政治・経済情勢、法制度等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
PFI事業の推進にあたり、長期に亘る運営期間の中で、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、設計、施工をはじめとする様々なサービスを提供しているが、万が一、重大な瑕疵が発生した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
発注者、協力会社、共同施工会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度末において計上している繰延税金資産については、今後の利益(課税所得)をもって全額回収可能と考えているが、制度面の変更等によっては、一部取崩しを求められる可能性がある。
当社グループの属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法等により法的規制を受けている。そのため、上記法律の改廃や新たな法的規制の新設、適用基準の変更等によっては、業績等に影響を及ぼす可能性がある。なお、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
特記事項なし。
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は78億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。
コンクリートの収縮ひび割れを極限まで抑える無収縮コンクリート「クラフリート※Hyper」を住友大阪セメント㈱と共同で開発し、その実用性と性能を実建物で確認した。コンクリートのひび割れは耐久性の低下や漏水の原因になることから、ひび割れを生じさせない技術が望まれていたが、これまでの技術では非常に高価な材料が必要であるなどの課題があった。今回開発した「クラフリート※Hyper」は、汎用材料のみの構成で膨張量と収縮量を制御し、長期的に膨張ひずみが残存する無収縮性能を実現するものである。
型枠にシートを貼るだけでコンクリートの耐久性向上が可能となる「美(うつく)シール※工法」を積水成型工業㈱及び東京大学の石田哲也教授と共同で開発した。コンクリート構造物の耐久性向上には、コンクリートの表層部分の品質が重要なポイントとなるが、本技術は、高撥水性特殊シート「美(うつく)シート※」を型枠表面に予め貼り付けてコンクリートを打設することにより、コンクリート表面の緻密性を改善し、劣化因子の浸透による品質低下を防止することで、低コストでの耐久性向上を可能とするものである。
東京電力福島第一原子力発電所の建屋解体工事で発生する高線量がれきの廃棄物貯蔵施設への搬送について、作業時の被ばく線量の低減と作業効率や安全性の向上を目的として、汎用のクローラダンプ及びフォークリフトに障害物や走行ルートを自律的に認識、判断しながら走行する機能を付加した自動搬送システムを開発し、実工事に適用した。
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染工事を効率的に実施するため、除染効果を測定する放射線モニタリング調査について、全地球測位システムを用いた軽量かつ高精度な測量装置と、放射線計測データをオンラインで伝送するシステムを開発した。また、膨大な数の作業員の労務管理を確実に実施するため、入退場時の本人確認に指紋認証を用いるシステムを開発した。更に、工事の進捗把握を省力化するため、除染業務フローを地理情報システム上に実装し、作業指示及び作業実績を電子化するとともに、除染の進捗状況をインターネット上で把握することができるシステムを開発した。
超高強度繊維補強コンクリートを用いて、鋼床版と同等の重量でより高い疲労耐久性を有する道路橋床版を阪神高速道路㈱と共同で開発した。都市部で道路橋を建設する場合には、軽量の鋼床版を使用する頻度が高くなっているが、近年、鋼床版を使った道路橋において金属疲労亀裂が顕在化していることから、軽量で耐久性が高く、かつ製造コストも鋼床版と同程度のコンクリート系道路橋床版を開発し、実際の道路橋への適用が可能となった。
駅改良工事などにおける、歩行者の安全性確保と円滑な通行に配慮した施工計画の立案支援を目的として、歩行者シミュレーションシステム「Sim-Walker※(シム・ウォーカー)」を開発した。本システムにより、時々刻々と変化する駅構内の歩行者流動を動的に再現し、改良工事中に制約を受ける歩行空間を多面的かつ定量的に評価することで、工事中のボトルネックを把握するとともに、改善案の効果を事前に予測・評価することが可能となった。
医薬品工場からの排水に含まれる有害な微生物・ウイルス等の無害化(不活化)を目的とした連続熱式不活化処理装置のユニット化を図り、大幅な省スペース・高品質化を実現した。また、本処理装置の開発と関連して、これまで蓄積してきた微生物・ウイルスを不活化するために必要な温度や時間に関する不活化条件をデータベース化したことで、対象とする製剤の特性に応じて不活化条件を迅速に提案することを可能とした。更に、今回新たに開発したシミュレーション解析プログラムにより、必要とされる不活化条件を満たすことを装置の設計段階で検証することが可能となった。
長周期地震動に対する超高層ビルの揺れを大幅に低減させるため、超大型制震装置「D3SKY※(Dual-direction Dynamic Damper of Simple Kajima stYle)」を開発し、既存超高層ビル「新宿三井ビルディング」の屋上への設置工事を実施中である。「D3SKY※」は、従来は風揺れ対策用であったTMD(振り子式の錘)を大地震用に大幅に発展させたもので、既存型の制震装置がもたらす眺望の阻害や有効床面積の減少などの問題点を回避するとともに、居室内工事が不要となることでテナントへの影響を大幅に低減させることが可能となった。同ビルは、現時点においても高い安全性を有する建物であるが、本装置の設置により、長周期地震動に対しても最新鋭の超高層ビル並みに揺れを抑えることが可能となる。
持続可能な社会に向けて当社が果たすべき役割を「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」として取りまとめ、その実現に向けた研究開発に取り組んでいる。具体的な開発事例として、建設現場におけるCO2排出量削減計画の立案と実行を社内のイントラネット上で管理するためのツール「現場deエコ※」を開発した。また、建物周りの温熱環境の改善について、山崎産業㈱と共同でデザイン性と施工性を兼ね備えた壁面緑化「緑彩マルチパネル※」を開発した。更に、当社の技術研究所本館研究棟において、エネルギー効率を高めた結果、2012年度の年間CO2排出量を東京都の平均値比で62%削減することに成功した。
サンゴを自然定着させて育てる人工基盤「コーラルネット※」及びサンゴの生息環境の定量的評価技術を開発した。港湾・空港整備や航路浚渫事業では、環境面に配慮した効果的なサンゴ再生技術が強く望まれているが、「コーラルネット※」によるサンゴの再生技術は、従来のサンゴ移植に代わるもので、網状の人工基盤にサンゴを自然定着させて成育させる新技術である。また、「コーラルネット※」の最適な設置場所を事前に選定・評価するモデルを確立したことにより、サンゴの再生をより効果的に行うことが可能となった。
施工合理化技術である「転圧管理システム(ICT施工)」の活用範囲を拡大する技術を開発し、実工事に適用した。また、低騒音性と遮水性の両方を併せ持つ新発想のコンクリート舗装である「ハイブリッドコンクリート舗装」や舗装の健全度評価を行う「舗装診断技術」等について引き続き研究開発を進めている。
土壌汚染物質である塩素有機化合物を原位置で浄化する「バイオジェット※工法」を開発した。本工法は、活性化剤をジェットグラウトによりスライス状に噴射することにより、地中に生息する塩素を分解する微生物を活性化させ、浄化を効果的に進める工法であり、従来工法では微生物による浄化が不可能とされていた難透水層の地盤に特に有効である。
(開発事業等及び海外関係会社)
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
当社グループにおける財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は、前連結会計年度と同水準で推移した。
利益面では、当社の建築工事の総利益が減少した一方で、当社の土木工事及び国内・海外の連結子会社の総利益が増加したこと等により、営業利益及び経常利益は増益となったが、当期純利益は、特別利益の減少と税金費用の増加により、減益となった。
土木・建築・開発事業を柱として、連結経常利益350億円以上を安定的に確保できる企業体質の確立を目指す方針である。
当連結会計年度末の手許資金(現金及び現金同等物)の残高は、前連結会計年度末に比べ582億円増加し、2,594億円(前連結会計年度末は2,011億円)となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、329億円の収入超過(前連結会計年度は584億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益428億円に減価償却費182億円等の調整を加味した収入に加えて、未成工事受入金及び開発事業等受入金の増加285億円の収入があった一方で、売上債権の増加628億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、366億円の収入超過(前連結会計年度は367億円の収入超過)となった。これは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入475億円及び投資有価証券の売却等による収入244億円があった一方で、有形固定資産の取得による支出167億円及び貸付けによる支出118億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が106億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額51億円の支出等により、171億円の支出超過(前連結会計年度は586億円の支出超過)となった。
なお、当社においては、緊急時の資金調達手段の確保等を目的として、総額1,500億円のコミットメントライン契約を締結している。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比1,034億円増加し、1兆7,894億円(前連結会計年度末は1兆6,860億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の増加691億円及び現金預金の増加666億円があった一方で、販売用不動産の減少332億円があったこと等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比574億円増加し、1兆4,253億円(前連結会計年度末は1兆3,679億円)となった。これは、未成工事受入金の増加301億円、繰延税金負債の増加160億円及び支払手形・工事未払金等の増加123億円があった一方で、有利子負債残高※が354億円減少したこと等によるものである。その結果、当連結会計年度末の有利子負債残高は、4,447億円(前連結会計年度末は4,801億円)となった。
純資産合計は、株主資本2,692億円、その他の包括利益累計額989億円、少数株主持分△41億円を合わせて、前連結会計年度末比460億円増加の3,641億円(前連結会計年度末は3,181億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比1.6ポイント好転し、20.6%(前連結会計年度末は19.0%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
我が国経済の今後の見通しについては、世界経済の緩やかな回復が続き、各種政策効果が発現する中で、消費・生産・所得の好循環が動き出すことにより、次第に景気回復に向かっていくと考えられる。
国内建設市場においては、復興需要に加え、東京オリンピックを見据えた公共投資や民間非製造業の設備投資が底堅く推移すると見込まれるが、需要増加に伴う労務費や資材費の上昇基調も踏まえると、建設業界を取り巻く経営環境は厳しさが続くものと思われる。
こうした中、当社グループでは、事業環境の変化に柔軟に対応し、持続的な成長を実現していくため、各事業の収益性の向上及びグループ各社の連携強化を推進することで、安定的な利益を確保するとともに、財務体質の改善に努めていく方針である。