第2 【事業の状況】

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度における国内経済は、一部に改善の遅れも見られますが、緩やかな回復基調が続いています。先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、緩やかに回復していくことが期待されますが、海外経済の不確実性や金利の動向等に留意する必要があります。

平成28年度のマンションの新規供給戸数は首都圏で3万6,450戸(前期比4.4%減)と2年連続で3万戸台にとどまりました。また、近畿圏ではワンルームマンションの供給(3,631戸)が高水準であったものの、1万8,359戸(同0.1%減)にとどまりました。初月販売率は首都圏で68.5%(同4.2ポイント減)と、平成20年度(64.1%)以来で60%台に低下し、近畿圏は71.9%(同0.1ポイント増)と70%台を維持しましたが厳しさを増しています。その結果、平成29年3月末の分譲中戸数は首都圏で6,749戸(同11.8%増)、近畿圏で2,493戸(同9.6%増)に増加しています。供給商品内容をみると、首都圏の平均面積が69.19㎡(同2.3%減)に縮小し、平均価格は5,541万円(同1.4%減)に低下しました。また、近畿圏でも平均面積が63.27㎡(同2.6%減)に縮小したことから、平均価格は3,877万円(同0.3%減)となりました。

このような中、中期経営計画「newborn HASEKO Step Up Plan (略称:NBs (エヌ・ビー・エス)計画)」最終年の当連結会計年度につきましては、建設関連事業においてマンション建築工事が好調に推移した中、過去最高の連結経常利益を達成、さらに単体の受注高も3年連続で過去最高を更新することができました。

以上の結果、当連結会計年度における業績は、売上高は7,723億円(同1.9%減)となりましたが、マンション建築工事の完成工事総利益率の改善により、営業利益は890億円同29.5%増)、経常利益は888億円同31.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は588億円同14.7%増)の増益となりました。営業利益率は11.5%(同2.8ポイント増)、経常利益率は11.5%(同2.9ポイント増)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

(単位:億円)

 

建設関連事業

サービス関連事業

海外関連事業

売上高

5,687

(-276)

2,083

(+223)

156

(-17)

営業利益

819

(+106)

97

(+9)

1

(+99)

 

( )内は前期比増減額

 

 

① 建設関連事業

建設関連事業において、建築工事では、当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制等について事業主から評価を頂いている中、物件の大型化等により、受注時の工事採算と当期の完成工事総利益率は共に改善傾向にあります。

分譲マンション新築工事の受注は、首都圏で200戸以上の大規模物件27件を含む72件、近畿圏・東海圏で200戸以上の大規模物件10件を含む35件、東西合計で107件となりました。また、分譲マンション以外の工事として、PFI方式による建替事業である「市営東多聞台住宅建替事業」(神戸市垂水区、425戸)を受注しました。

完成工事につきましては、賃貸住宅等5件を含む計103件を竣工させました。

設計・監理では、60万戸を超える累計施工実績の中で提案してきた企画や技術、ノウハウの蓄積を活用して、マンションの基本性能の充実、可変性の向上、環境・防災性能の確保に積極的に取り組んでおります。

首都圏では、緑豊かな邸宅街に立地した「ブランシエラ浦和駒場」(さいたま市浦和区、146戸)が竣工しました。本件は、マンションの事業企画から開発推進、設計、施工、販売、インテリア・内装、管理までのすべての業務に当社グループの女性社員が携わる初めての物件であり、女性視点で生まれた洗面化粧台「ドレッサーⅢ」を採用する等、女性に優しい住まいを実現しました。女性が活躍できる建設業の魅力を内外に発信する取り組みが、高い評価を得ております。また、約21,000㎡の広大な敷地を最大限に活かし、開放感を重視した全戸南東・南西向きの配棟構成に、共用施設を充実させた「ザ・レジデンス検見川浜ガーデンズ」(千葉市美浜区、545戸)が竣工しました。

近畿圏では、総開発面積約8.4ha、住・商一体の駅前大規模再開発「ZUTTOCITY(ズットシティ)」街区内のマンション第2弾として、駅徒歩2分のマンション「プラウドシティ塚口 マークフォレスト」(兵庫県尼崎市、587戸)が竣工しました。また、JR尼崎駅前の大規模再開発エリア内で駅徒歩1分に立地する「ローレルコート・クレヴィア尼崎駅前」(兵庫県尼崎市、131戸)が竣工しました。

海外では、ベトナム・ハノイ市において、当社のベトナム第1号プロジェクトとして邦人向けサービスアパートメント「THE AUTHENTIC」(110戸)が竣工しました。

マンション分譲では、当期において新たに完成した21物件他の販売及び引渡しを行いました。

以上の結果、当セグメントにおいては、売上高5,687億円(前期比4.6%減)となり、主に完成工事総利益率の改善により、営業利益819億円(同14.8%増)となりました。

 

当期の主な受注及び完成工事物件は以下のとおりです。

[主な受注工事] 

 

 

名称

所在

規模

ドレッセ中央林間

神奈川県大和市

   857戸

プライムパークス品川シーサイド ザ・タワー

東京都品川区

   817戸

グランドメゾン品川シーサイドの杜

東京都品川区

   687戸

ローレルスクエア健都ザ・レジデンス

大阪府摂津市

   824戸

プラウドシティ伊丹

兵庫県伊丹市

   447戸

グリーンゲートレジデンス ブライトウイング

愛知県岡崎市

   147戸

 

 

[主な完成工事]

 

 

名称

所在

規模

グレーシアシティ川崎大師河原

川崎市川崎区

   558戸

ザ・レジデンス検見川浜ガーデンズ

千葉市美浜区

   545戸

シティテラス東陽町

東京都江東区

   522戸

プラウドシティ塚口 マークフォレスト

兵庫県尼崎市

   587戸

ブランズシティ天神橋筋六丁目

大阪市北区

   420戸

セントアイナ藤が丘

愛知県長久手市

   291戸

 

 

② サービス関連事業

サービス関連事業においては、大規模修繕工事・インテリアリフォームでは、受注高は、当社グループの管理物件以外からの受注増大に努めた結果、366億円(前期比17.1%増)となりました。

賃貸マンション運営管理・社宅管理代行の運営管理戸数は、社宅管理代行事業の既存クライアント企業からの追加受託が順調に伸展し、両事業合計で143,895戸(前期末比3.0%増)となりました。

新築マンションの販売受託では、マンションの新規供給が低調な中、駅近再開発や複合開発の大規模物件が好調に推移したため、契約戸数が増加しました。

不動産流通仲介では、リノベーション事業の販売戸数は減少しましたが、分譲マンション用地や投資用不動産等の仲介の取扱件数が増加しました。

分譲マンション管理では、当社土地持込の大型物件の受注等の影響により、分譲マンション管理の管理戸数は369,288戸(同2.2%増)となりました。

不動産分譲では、新築マンションの販売が好調に推移したとともに、商業施設の売却が業績に寄与しました。

シニアサービスでは、グループ内での事業再編及び認知症専門の地域密着型介護サービスを展開する会社の株式取得を行いました。有料老人ホーム・高齢者向け住宅の稼働数は、2,010戸(同2.1%減)となりました。

以上の結果、当セグメントにおいては、売上高は2,083億円(前期比12.0%増)、営業利益は97億円(同10.5%増)となりました。

 

③ 海外関連事業

ハワイ州オアフ島におきまして、戸建分譲事業の契約戸数・引渡戸数の減少により、売上高が減少しました。

以上の結果、当セグメントにおいては、売上高156億円(前期比9.6%減)、営業利益1億円(前期は営業損失97億円)となりました。

なお、前期において営業損失を計上したのは、たな卸資産評価損99億円を売上原価として計上したことによるものです。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の656億円の収入超過と比較して439億円増加し、1,095億円の収入超過となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益783億円の計上などによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の308億円の支出超過と比較して110億円増加し、198億円の支出超過となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出241億円などによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の163億円の支出超過と比較して239億円減少し、402億円の支出超過となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出627億円などによるものであります。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末の1,521億円より493億円増加し、2,015億円となりました。

 

「第2 事業の状況」における各項目の記載金額には、消費税等は含まれておりません。

 

2 【受注及び売上の状況】

(1) 受注実績

セグメントの名称

区分

前連結会計年度
(自 平成27年4月1日
 至 平成28年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度
(自 平成28年4月1日
 至 平成29年3月31日)
(百万円)

建設関連事業

建設工事等

493,103

510,974

( 3.6%増)

設計監理

12,642

12,452

( 1.5%減)

505,746

523,425

( 3.5%増)

サービス関連事業

大規模修繕・
内装工事等

45,688

52,110

(14.1%増)

海外関連事業

建設工事等

12

2,275

合計

551,445

577,811

( 4.8%増)

 

(注) 1 当連結企業集団では建設関連事業における建設工事等及び設計監理、サービス関連事業における大規模修繕・内装工事等及び海外関連事業における建設工事等以外の受注実績を把握することが困難であるため記載しておりません。

2 セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2) 売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度
(自 平成27年4月1日
 至 平成28年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度
(自 平成28年4月1日
 至 平成29年3月31日)
(百万円)

建設関連事業

589,054

553,550

( 6.0%減)

サービス関連事業

181,043

203,183

(12.2%増)

海外関連事業

17,257

15,596

( 9.6%減)

合計

787,354

772,328

( 1.9%減)

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(3) 建設関連事業の状況

売上実績

区分

前連結会計年度
(自 平成27年4月1日
 至 平成28年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度
(自 平成28年4月1日
 至 平成29年3月31日)
(百万円)

建設工事等

451,074

426,943

( 5.3%減)

設計監理

12,134

11,438

( 5.7%減)

不動産販売等

124,533

113,388

( 8.9%減)

その他

1,313

1,782

(35.7%増)

合計

589,054

553,550

( 6.0%減)

 

 

 

(4) サービス関連事業の状況

区分

前連結会計年度
(自 平成27年4月1日
 至 平成28年3月31日)

当連結会計年度
(自 平成28年4月1日
 至 平成29年3月31日)

数量

稼働数

売上実績
(百万円)

数量

稼働数

売上実績
(百万円)

不動産賃貸

12,983戸

12,474戸

14,618

12,557戸

12,117戸

17,096

17.0%増)

シニアサービス

2,456戸

2,054戸

10,133

2,423戸

2,010戸

11,559

14.1%増)

マンション建物管理

361,204戸

(4,456棟)

37,573

369,288戸

(4,567棟)

38,214

(   1.7%増)

マンション賃貸管理

127,540戸

 

10,968

131,337戸

 

14,084

28.4%増)

大規模修繕・内装工事等

49,840

51,768

(   3.9%増)

分譲マンション販売受託

5,627

5,693

(   1.2%増)

流通仲介・リノベーション等

19,308

20,092

(   4.1%増)

不動産分譲

20,800

31,476

51.3%増)

その他

12,176

13,201

(   8.4%増)

合計

181,043

203,183

12.2%増)

 

(注) 数量及び稼働数は連結会計年度末現在で表示しております。

 

(5) 海外関連事業の状況

売上実績

区分

前連結会計年度
(自 平成27年4月1日
 至 平成28年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度
(自 平成28年4月1日
 至 平成29年3月31日)
(百万円)

戸建分譲事業等

17,257

15,596

9.6%減)

合計

17,257

15,596

9.6%減)

 

 

 

なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。

建設工事等及び設計監理の状況

① 受注高、売上高、繰越高及び施工高

期別

区分

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期繰越高

当期

施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高

比率

(%)

金額

(百万円)

前事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

建築工事

412,905

463,827

876,732

421,263

455,468

1

4,147

424,101

土木工事

860

954

1,815

1,109

706

43

306

1,141

413,765

464,781

878,547

422,372

456,174

1

4,453

425,242

業務受託

3,462

5,606

9,068

5,398

3,670

合計

417,227

470,387

887,614

427,770

459,844

設計監理

9,926

13,014

22,941

12,349

10,591

合計

427,153

483,401

910,555

440,119

470,436

当事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

建築工事

455,468

482,436

937,905

394,377

543,528

1

3,154

393,384

土木工事

706

2,101

2,807

1,274

1,533

18

280

1,248

456,174

484,537

940,712

395,651

545,061

1

3,434

394,632

業務受託

3,670

4,486

8,156

5,052

3,103

合計

459,844

489,023

948,867

400,703

548,164

設計監理

10,591

13,192

23,783

11,997

11,786

合計

470,436

502,215

972,651

412,700

559,951

 

(注) 1  前事業年度以前に受注したもので、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。

2 次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。

3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。

 

② 受注工事高の受注方法別比率

工事受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度
(自 平成27年4月1日
 至 平成28年3月31日)

建築工事

91.6

8.4

100.0

土木工事

80.1

19.9

100.0

当事業年度
(自 平成28年4月1日
 至 平成29年3月31日)

建築工事

83.5

16.5

100.0

土木工事

92.1

7.9

100.0

 

(注)  百分比は請負金額比であります。

 

 

③ 売上高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

(百万円)

前事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

建築工事

7,970

413,293

421,263

土木工事

1,109

1,109

7,970

414,402

422,372

業務受託

30

5,367

5,398

合計

8,001

419,769

427,770

設計監理

12,349

12,349

合計

8,001

432,118

440,119

当事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

建築工事

4,999

389,378

394,377

土木工事

1,274

1,274

4,999

390,651

395,651

業務受託

8

5,045

5,052

合計

5,007

395,696

400,703

設計監理

105

11,892

11,997

合計

5,112

407,589

412,700

 

(注) 1  完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

 

前事業年度 請負金額70億円以上の主なもの

住友商事㈱・近鉄不動産㈱・野村不動産㈱・
菱重ファシリティー&プロパティーズ㈱・
JR西日本不動産開発㈱他

京都桂川つむぎの街
グランスクエア・マークスクエア

新築工事

名鉄不動産㈱・関電不動産㈱・
ヤスダエンジニアリング㈱他

阿波座ライズタワーズ フラッグ46
(OMPタワー)

新築工事

 

野村不動産㈱

プラウドシティ南山

新築工事

住友不動産㈱

シティテラス横濱和田町

新築工事

住友不動産㈱

シティテラス神崎川駅前シーズンズテラス

新築工事

 

※関電不動産㈱は、平成28年4月1日にMID都市開発㈱と合併し、関電不動産開発㈱となっております。

 

当事業年度 請負金額80億円以上の主なもの

野村不動産㈱

プラウドシティ志木本町

新築工事

住友不動産㈱

シティテラス東陽町

新築工事

住友不動産㈱

シティテラス八千代緑が丘
ステーションコート

新築工事

野村不動産㈱・JR西日本不動産開発㈱他

プラウドシティ塚口 マークフォレスト

新築工事

エヌ・ティ・ティ都市開発㈱・
大成有楽不動産㈱他

ウエリス豊中桃山台

新築工事

 

 

2  完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりであります。

 

前事業年度

住友不動産㈱

57,722百万円

13.7%

 

野村不動産㈱

52,686百万円

12.5%

当事業年度

住友不動産㈱

73,766百万円

18.6%

 

野村不動産㈱

50,564百万円

12.8%

 

 

 

④ 手持高(平成29年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

(百万円)

建築工事

13,376

530,151

543,528

土木工事

1,533

1,533

13,376

531,685

545,061

業務受託

56

3,047

3,103

合計

13,433

534,732

548,164

設計監理

11,786

11,786

合計

13,433

546,518

559,951

 

(注) 手持工事のうち請負金額80億円以上の主なものは、次のとおりであります。

 

住友不動産㈱・㈱タカラレーベン

シティテラス越谷レイクタウン

新築工事

平成29年6月完成予定

野村不動産㈱

オハナ 淵野辺ガーデニア

新築工事

平成30年1月完成予定

住友不動産㈱

シティテラス八潮

新築工事

平成30年2月完成予定

住友不動産㈱

シティテラス小金井公園

新築工事

平成30年3月完成予定

㈱プレサンスコーポレーション

プレサンス レジェンド 琵琶湖

新築工事

平成30年6月完成予定

 

 

 

3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

日本の景気の動向は、平成24年の政権交代以降大胆な金融緩和政策への期待が続いているものの、為替相場・金利の動向、不安定な株式市場等、先行きが不透明な状況となっております。建設業界においては、足下の市況は堅調に推移している一方、労務費の上昇、建設技能労働者の減少、東京オリンピック後の需要減退、相次ぐ災害の影響等、多くの懸念要素を抱えています。

マンション市場では、平成29年4月の消費税率引き上げの延期、マンション価格の上昇、円高・株安の影響などもあり、購入マインドが本格的な改善に転じなかったため、需要者・供給者ともに慎重姿勢が継続しました。平成29年度も首都圏で4万戸以上、近畿圏2万戸程度の供給が可能な状況が継続しますが、市況を勘案しながら慎重に供給を行う傾向が継続し、首都圏で3万5,000戸~4万戸、近畿圏でも1万8,000戸~2万戸程度にとどまると予測しています。

また、販売面では希少性の高い物件の販売は好調に推移することに加え、マンション価格もこれまでの上昇基調から近郊・郊外地域を中心に価格調整がなされた物件の供給が行われはじめると思われます。住宅取得環境は好環境であることを積極的にアピールし、低迷している購入マインドを積極的に喚起することによって、販売状況も回復に転じていくと予測しています。

当社グループは、平成27年3月期より開始したNBs計画の最終年となる平成29年3月期において、建設関連事業においては当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢等をお客様及び事業主様から高くご評価して頂いたことにより、受注高は過去最高を更新し、サービス関連事業においては、収益力向上の観点からM&A等の投資を実施するとともに、既存子会社の利益も着実に積み重ねてきました。その結果、数値目標については大幅に上回ることができました。

平成30年3月期より、新たな3ヶ年の中期経営計画として「newborn HASEKO Jump Up Plan(略称:NBj計画)」をスタートしました。NBj計画においては、NBs計画の基本方針を踏襲しながら、当社グループの利益を維持し、向上させるための積極的な成長戦略投資を行うとともに、様々な経営課題への対応を進め、財務基盤及び将来の収益基盤の確立に努めてまいります。

  

中期経営計画の概要 

 

■計画名称:newborn HASEKO Jump Up Plan(略称:NBj計画)

        ~住まいと暮らしの創造企業グループを目指して~

 

■計画期間

平成30年3月期~平成32年3月期の3期間

 

■数値目標

  平成30年3月期~平成32年3月期 3期合計連結経常利益2,400億円
     平成32年3月期 連結子会社経常利益200億円以上

 

■基本方針

1.新規の住宅供給等を主なマーケットとする建設関連事業と既存の住宅関連等を中心とするサービス関連事業の両方に軸足をおく経営の確立

2.グループ連携を深化させ、都市居住生活者の信頼に応える企業体の実現
3.安全・安心で快適な集合住宅を提供
4.飛躍に向けた安定した財務基盤の確立
5.中長期的な視点を踏まえた新たな取組みへの挑戦
6.実効性の高いガバナンス・内部統制の確立

 

■目指す姿

少子化・高齢化、人口減少、都市のコンパクト化、災害、建築物の老朽化、環境配慮・省エネルギー、コミュニティ形成などの社会情勢の変化に対応し、当社の企業理念である「都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。」を具体的に実現する為、分譲マンションを中心に、賃貸・高齢者住宅や商業・介護・子育て・健康・医療・教育等を組み合わせ、ハード・ソフト両面から「住まいと暮らしの創造企業グループ」への飛躍を目指す。

 

■重点戦略

1.建設関連事業について

  『市況の波に翻弄されない優位性の確立』

   ・建築生産システムの継続的深化により、高い品質を維持した適正な工事量・利益の確保

   ・将来の都市居住を見据えた新たな集合住宅のあり方の構築と展開

   ・建替・再開発事業における事業企画力の向上とリスク管理の徹底

   ・非住宅及び分譲マンション以外の施工への積極的な取組みによる施工実績の積み上げ並びにコスト
     コントロール力の向上による競争力の強化      

 

2.サービス関連事業について 

  『サービス関連事業収益の基盤強化と都市居住生活者に対するサービスの拡充』
  ・「ホスピタリティ」意識の徹底と、グループ連携によるお客様への多彩なサービスの提供
  ・お客様との信頼関係の構築・強化に向けた施策の展開
  ・地域・店舗展開の促進とお客様目線のサービスの提供を目指した複合店舗構想の試行
  ・資産価値の維持・長寿命化のための修繕・改修技術の開発と提案力の強化
  ・分譲マンション事業の整備と優良不動産投資による安定収益の確保

 

3.財務戦略・株主還元について

  『安定した財務基盤を確立するとともに、株主への利益還元を安定的に行っていく』

 ・利益の配分については、財務体質の強化のための内部留保を確保しつつ、将来に向けた成長戦略の
 投資と株主還元にバランスよく配分

 ・1株当たり20円の株主配当金を安定的な配当として、連結配当性向20%を目指す

 

4.新たな取り組みについて

  『事業エリア・事業分野の拡大へ向けた取組みを加速』
 ・国内主要都市及び米国(ハワイ)・東南アジアマーケットへ向けたグループ事業の展開を図り、将
  来の収益源としての確立を目指す
 ・「住まいと暮らしの創造企業グループ」を目指して、必要とする事業分野への事業・資本提携及び
  M&A等で推進加速

  『新たな事に挑戦する風土の醸成』
 ・スピード感のある新商品、新サービスの開発
 ・企業間連携による新たな事業機会の模索
 ・グループの将来を担う、未来型思考の人材育成
 

5.社会的責任を全うするための取組みについて

 『実効性の高いガバナンス・内部統制及び長谷工版社会貢献の確立』

 ・透明性と客観性を確保した経営体制の維持・向上

 ・働きやすい職場環境への更なる改善と従業員個々の活躍・成長へ向けた支援体制の整備

 ・実効性と効率性を兼ね備えた事業・リスク管理体制の整備

 ・事業活動全てにわたる法令遵守・品質管理・環境負荷低減及び環境保全活動を推進

 ・事業特性を活かした社会貢献活動の継続実施

 

当社は、本年2月に創業80周年を迎えましたが、関係する全てのステークホルダーの皆様への“感謝”の気持ちを忘れずに、創業100周年、さらにその先にある未来の創造に向けてスタートする、その出発点にすべく、全役職員が決意を新たに取り組んでまいります。

 

※なお、将来に関する事項については、提出日現在において判断したものであり、その達成を保証するものでは
    ありません。

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの業績及び財政状態は、今後起こり得る様々な要因により影響を受ける可能性がありますが、事業等のリスクについては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項について記載しております。当社グループは、これらの他にも様々なリスクがありうることを認識し、それらを可能な限り防止、分散あるいは回避するよう努めておりますが、当社グループの支配の及ばない外部要因や必ずしも現時点にて具現化する可能性が高くないと見られる事項等の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項については、提出日現在において判断したものであります。

(1) 分譲マンションに関わる事業への依存

当社グループは、首都圏、近畿圏及び東海圏での分譲マンションに関わる事業をコアとしており、中でも分譲マンション建設事業に対する依存度が高くなっております。従って、受注高やその他の分譲マンション関連事業の取引高は、分譲マンションの新規供給量や販売状況、分譲マンション建設用地の供給、取引先デベロッパーの事業規模、住宅関連政策、住宅にかかる税制及び金利等の動向によっては大きく変動することになり、これらの変動が業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 また、当社は、土地情報収集力や分譲マンション事業に関するプロジェクトマネジメント力を背景として、土地持込による受注を主たるビジネスモデルとしておりますが、このビジネスモデルにより今後も引き続き競争優位に立ち、市場シェアや収益性の維持、拡大が図れるという保証はありません。

(2) 建設市場の動向

建設業全般の業績の動向によりマンション建設の分野に対する参入が増え、同業他社との価格競争が激化した場合や、建設資材・労務等の急激な高騰及び調達難、協力業者等の確保状況による生産能力の低下等が生じた場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制、行政規制等

当社グループが事業を行う上で遵守すべき法令・規則等は多岐に渡っており、建築基準法、建設業法、宅地建物取引業法、建築士法といった事業に直接関係する法令のみならず、会社法、金融商品取引法といった事業に直接関係はしないものの重要な法令等があります。当社グループにおきましては、役職員がこれらの法令等を遵守することができるよう啓蒙を適宜実施しておりますが、これらの法令等を遵守できなかった場合、またはこれらの法令等が当社グループの予測し得ない内容に改廃もしくは新設された場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

特に、建築基準法等のマンション建設における法的規制の改廃もしくは新設、又は建築確認・検査の厳格化等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、国内外の事業遂行にあたり、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 周辺住民との関係

建設工事着工に際しましては、周辺住民に対する事業計画等の説明を実施しておりますが、反対運動及びそれに伴う訴訟等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5) 瑕疵担保責任

施工品質の維持向上には万全を期しておりますが、引当金の計上額を上回る瑕疵担保負担の発生や、保険等でカバーできない損害賠償が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 建設事業における事故等

当社グループは、安全教育の実施、点検パトロール等、工事事故・品質事故・災害を撲滅するために安全管理・施工管理を徹底し、また、工事着手にあたり入念な施工計画の立案等、安全な作業環境を整え施工を行っておりますが、万が一、重大な工事事故・品質事故・労働災害等が発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 取引先の信用リスク

建設業においては、一つの取引における請負金額が大きく、多くの場合工事代金の支払いは分割であり、目的物の引渡時及び引渡後に多額の支払が行われる傾向があります。よって、工事代金の受領前に取引先が信用不安に陥った場合は、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(8) 保有不動産

当社グループは、営業活動上の必要性から不動産を保有しておりますが、不動産には時価の変動リスクがあるとともに、一般的に流動性が高くないため売却時における需給関係によっては相場価格により売却できない場合があります。販売用不動産については事業計画の進捗次第では予定している回収額に満たない場合や様々な要因により計画を中止せざるを得ない場合があります。また、固定資産についても、賃貸条件や事業収支の悪化が生じる等、予定しているキャッシュ・フローが得られなくなる場合があります。これらの場合には評価損失・減損損失・売却損失等が発生し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(9) 企業買収等

当社グループは、事業拡大のために企業買収等を実施することがありますが、買収等の対象事業を当社グループの経営戦略に沿って統合できない場合や、既存事業及び買収等の対象事業について効率的な経営資源の活用を行うことができなかった場合、当初想定していた効果が得られないことにより、のれんの減損の発生等、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(10)事業エリアの偏重

当社グループは、会社の経営資源の効率化を実現するために事業エリアを首都圏・近畿圏・東海圏に集中しております。このため、将来、首都圏・近畿圏・東海圏並びにその周辺において、地震、暴風雨、洪水その他の天災、事故、火災、その他の人災等が発生し、工期の遅延、消費者の購買意欲の減退、所有資産の毀損等があった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(11)海外事業におけるリスク

海外での事業活動に際しまして、社会慣行の違い、法令・規制の予期せぬ変更、経済・為替の変動、政治・軍事問題等に関するリスクが存在し、これらに関した問題が発生した場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(12)オペレーショナルリスク

当社グループが業務を遂行するにあたり、役職員による不正行為、不適切な行為、事務処理のミス、労務管理上の問題等の各種オペレーショナルリスクの発生が考えられます。当社グループはリスク管理規程を定め、オペレーショナルリスクも含めた事業遂行に関わる様々なリスクについて管理し、それらのリスクに対応することによって、グループの経営方針の実現を阻害するリスク要因を可能な限り低減させ、コントロールするよう努めておりますが、上記のようなオペレーショナルリスクが発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(13)個人情報等の管理

当社グループは、マンション購入顧客ならびに購入検討顧客や管理受託マンションの居住者等、多くの個人情報を保有しております。また、営業・購買情報等、多くのデータをコンピュータ管理しています。平成17年4月に完全施行された個人情報保護法にしたがって、個人情報の取扱いに関するルール(基本方針・規程・細則)を、また、平成28年1月から利用が開始されたマイナンバー(社会保障・税番号)制度への対応のため、マイナンバー関連規程(基本方針・規程)を設け、体制整備を行っております。また、個人情報以外の情報の取扱いについても、各部個別にセキュリティポリシー(基本方針・対策基準・実施手順)を順次整備する等、情報管理を徹底し万全を期しておりますが、コンピュータシステムのトラブルによる情報流出や犯罪行為等による情報漏洩が発生する可能性があります。その場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(14)資金調達及び金利動向等

当社グループは、借入や社債発行による資金調達を行っているほか、リースを活用した設備投資を行っております。そのため、金利等の市場環境の変化、あるいは当社に対する格付の引下げ等の信用力低下により、資金調達コスト及びリース費用が増加し、当社グループの業績及び財務内容に影響を与える可能性があります。

また、金融機関からの新規借入や社債発行あるいはリースの組成にあたっては同様の条件により行えるという保証はなく、当社グループが金融機関から借入や社債発行による調達を適時に行えない場合には、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、事業上必要な資金調達について、主に金融機関との間で協調融資方式によるタームローン、及びコミットメントライン契約の借入契約を締結しております。これらの借入契約には、自己資本の維持と経常利益の確保、有利子負債残高の3項目に関して財務制限条項が付加されており、それに抵触した場合には、多数貸付人の意思結集に基づく請求により期限の利益を喪失する可能性があり、約定の返済期限より前に残元本及び利息等を返済する義務が発生する可能性があります。

(15)株式市場の動向

当社グループは、市場性のある株式を保有しておりますが、株式市場が下落し、保有株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(16)繰延税金資産

当社グループでは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上していますが、この計算は将来の課税所得に関する見積に依拠しており、実際の結果は見積とは異なる可能性があります。当社グループが将来の課税所得の見積に基づいて、繰延税金資産の一部又は全部が回収できないと判断した場合や、法人税の減税等制度面における変更により、繰延税金資産の額が過大となった場合には、繰延税金資産は費用として計上され、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(17)中期経営計画について

当社グループは、平成30年3月期をスタートとする中期経営計画「newborn HASEKO Jump Up Plan」(略称:NBj計画)において、当社グループの利益を維持し、向上させるための積極的な成長戦略投資を行うとともに、様々な経営課題への対応を進めていくことを公表しております。しかし、当社グループの業績は、経済環境等様々な要因の影響を受ける可能性があるため、目標値を達成できるという保証はなく、計画している事業上、財務上の効果が得られない可能性があります。
 また、当社グループは充分な検討を重ねた上での優良不動産等投資、あるいは、首都圏・近畿圏・東海圏に次ぐ事業エリアとして、国内主要都市及び米国(ハワイ)・東南アジアマーケットに向けたグループ事業展開の強化を計画しておりますが、予期せぬ経済情勢の変化、あるいはマーケットの急激な変化等により、事業展開が予定通りに実行できず、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。 

 

6 【研究開発活動】

当社の研究開発活動は、集合住宅における新築とストックの両分野に軸足をおき、これまで継続してきた安全・安心、快適・健康、品質・性能、生産性向上等のテーマに取り組むと共に、受注の拡大、利益の向上に寄与する研究・技術開発を目指しております。

活動にあたっては、研究・技術開発のスピードアップと採用促進を図るため、埼玉県越谷市の技術研究所を拠点としながら、大学・研究機関等との共同研究・開発を進めるとともに、当社技術推進部門・設計部門・建設部門等社内各部門及び当社グループ各社の技術関連部門との連携・強化に努めております。

活動内容としては、①生産技術開発 ②商品開発 ③そのために必要な基礎的な研究開発、以上の3つに重点を置きながら、特に工業化対応、省エネ・環境対応、長寿命化、防災対応、ストック改修対応など、社会環境や顧客ニーズの変化に即した集合住宅関連技術の開発・商品化に注力しております。

当連結会計年度における研究開発費は、1,172百万円であり、主な研究・技術開発の成果は次のとおりです。なお、当該費用につきましては、セグメントに共通する費用を区分することが困難であるため、総額のみを記載しております。

 

(建設関連事業)

(1) 次世代マンション企画の開発・提案

「基本性能の充実」、「可変性」、「環境+防災」という3つのコンセプトで開発した次世代マンション企画“Beシリーズ”については、さらに、高層化への対応、妻側住戸のリビングルームの開放性向上、整形で広い室内空間の実現を目指した企画開発を進めてまいりました。今後も当社の提案力の強化を図るべく、時代やニーズに対応した次世代マンション企画の更なるブラッシュアップに取り組み、当社設計・施工案件へ積極的に提案を進め、採用促進を図ってまいります。

(2) 中高層集合住宅を対象とした技術の開発

大規模・高層物件等を主な対象として、建設技能労働者の不足及び高齢化への対応と、生産性と多様性を両立させ且つ品質向上等の更なる推進のため、構造躯体の工業化・PC化、低生産性部位の整理と更なる省力化、長谷工オリジナルの新商品開発及び設計・施工情報のIT化等の積極的な推進展開を行い、着工物件において順次採用導入しております。特に、これまでの開発検証等をベースにして、下記の開発に注力・推進しております。

① サポート関連:技能労働者不足に対応するため、労務効率の向上を目指した工業化工法の開発を行うとともに、設計段階から生産技術を考慮する生産システムの構築に取り組んでいます。また、当社の保有技術である場所打ちコンクリート杭工法「HND工法」については、拡径部の支持力及び引抜き抵抗力を評価できる工法への改良に取り組んでいます。

このほか、平成28年度にゼネコン5社で共同開発を行った免震構造の省力化、工期短縮が図れる「拡頭杭免震構法」を、現在建設中である長谷工テクニカルセンター内の技術研究所に設けられる「住宅実験棟」に採用しました。

② クラディング関連:屋上の防水仕様として15年保証に対応した塩化ビニル系シート防水(DNシート防水)について東西で基本仕様化が完了しました。また、ルーフバルコニーの躯体立上り部施工の省力化と型枠廃材削減を目的としたアルミ水切金物は、実地検証のうえ、基本仕様化が完了しました。その他、バルコニーのパーテーション(隔て板)において、デザイン性に配慮した床から天井までの「SHパーテーション」を開発しました。今後、当社設計施工の対象案件への採用を薦めてまいります。
③ インフィル関連:内装関連付加価値商品として、移動可能な2つの収納ユニットにより家族構成やライフスタイルの変化に合わせて居室と収納の位置や広さを変えられる「UGOCLO(ウゴクロ)」を開発しました。今後、当社設計施工案件に可変性の高い間取りとして提案してまいります。また、建築物省エネ法に対応した断熱補強に用いる新しい断熱材として、「高流動湿式床用断熱材」を開発し、断熱補強部の施工性を向上しました。その他、平成28年度に開発した「樹脂一体型カーテンBOX」については新たな開発によりコーナー部への対応も可能となりました。

 

④ 設備関連:水廻りレイアウトの自由度向上が図れる「サイホン排水システム」の開発については、キッチンディスポーザでの開発に続き、ユニットバス、洗面化粧台、洗濯機防水パンでの実用化に向けた技術検証と開発が完了しました。また、「2016年度グッドデザイン賞」及び「第15回環境・設備デザイン賞」を受賞しました。今後、さらに実地検証を行うとともに、適用部位拡大に向けた検討を進めてまいります。その他、技術開発として、共用給水管の工場プレハブ化・樹脂化及び排水縦管の樹脂化を行い、標準化したほか、従来単独配線にて施工していた住戸内のエアコン回路を、現在使用している電灯回路ユニットケーブル内に組み込む配線方式を開発しました。今後も労務の省力化による生産システムの向上を図るとともに、品質確保に取り組んでまいります。
⑤ 設計・施工情報のIT化関連:業務及び生産プロセスの合理化に向けたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)活用の為、建設BIM推進部を設置し、設計・施工及びグループ企業の現業部門と緊密に連携した「長谷工版BIM」のツール開発や環境整備等を強力に推進しております。当社設計・施工案件における「長谷工版BIM」採用の実施設計案件は着実に増加しており、更なる普及・展開へと取り組むとともに、既築施工案件でのBIMデータ整備によるリフォームでの活用や、BIMモデルからのVR(バーチャルリアリティ)コンテンツ作成による販売活用といったシステム開発にも着手しました。

(3) 超高層RC造集合住宅を対象とした技術の開発

現在、3件の超高層タワー「プライムパークス品川シーサイド ザ・タワー」(東京都品川区、地上29階/地下1階、免震、817戸)、「品川イーストシティタワー」(東京都品川区、地上26階/地下1階、免震、363戸)、「ブランズタワー・ウェリス心斎橋SOUTH」(大阪市中央区、地上30階/地下1階、制振、202戸)を建設中です。各プロジェクトとも免震構造又は制振構造を採用しているほか、当社がこれまで実績を重ねてきた超高層技術の改良・改善を図りながら建設を進めています。また、「異種強度コンクリートを打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法」(VERJON工法)等、新たな技術の採用にも積極的に取組み、更なる超高層の設計及び施工技術のレベルアップに努めております。

(4) 省エネ・CO2削減など環境対応技術の開発

集合住宅共用部における年間エネルギー消費量の把握を目的とした実測調査を当社設計・施工物件において行うとともに、自然エネルギーを利用した共用部の給湯・空調システム開発等、各種検証に向けた取り組みを進めました。
  また、地球温暖化対策として、JISで規格化されたHFO断熱ウレタンの施工検証による確認を実施し、基本仕様化を完了しました。

(5) 建設産業廃棄物削減対応

これまで当社では、段ボール古紙や木くずにおける循環型マテリアルリサイクルシステムの構築、また、廃プラスチック類のサーマルリサイクルシステムの構築をしてまいりました。今後も、作業所所員・作業員への環境関連教育を通して、環境に配慮した循環型社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。

(6) 共同研究参画

競争と連携のネットワークを構築するため、多様な研究機関、企業等の幅広い結集を図り、研究開発の共通基盤(プラットフォーム)の確立を目指している「建築研究開発コンソーシアム」等の活動に継続参画しております。

 

 

(サービス関連事業)

ストック・リフォーム技術

拡大する国内ストック市場における既築集合住宅向け「ストックビジネス」の技術基盤づくりを目指しております。共用部では「建物の延命化・耐震化の工法」、「住みながらの改修を可能にする、居住者の負担を軽減するための工法」の開発等、専有部では「住まいとしての機能の維持やグレードアップ提案」を進める等、継続的にストック・リフォーム分野における研究・技術開発を行っております。

① 耐震改修に対応する技術:平成23年に一般財団法人日本建築防災協会の技術評価を取得した「後施工部分スリットによる柱の耐震補強工法」は住みながらできる耐震改修工法として数多くの物件で採用されていますが、より広範な建物に適用できるよう技術改良を進めてまいりました。この結果、腰壁及び垂れ壁付き柱に限定されていた認定範囲を、袖壁付き柱や水平スリット等にも拡大して技術評価を更新した上で、㈱長谷工リフォームによる耐震改修工事に採用しました。
② 大規模修繕に対応する技術:今後、免震建物の大規模修繕工事の増加が見込まれる中、大規模修繕工事中に地震が発生した場合に、足場脚部が滑動し、免震建物と外部足場が同調して動く工法を㈱長谷工リフォームによる大規模修繕工事にて採用しました。今後も、免震建物大規模修繕工事において本工法を提案し、採用を進めてまいります。

また、屋上の防水改修においては、㈱長谷工リフォームが提案する防水改修技術として、一定の条件を満たした集合住宅において従来以上の長期保証を可能とする塩化ビニル系シート防水の採用目処付けが完了しました。今後は管理組合等へ対して積極的に提案し、大規模修繕ならびに改修工事の受注拡大を図ってまいります。

③ その他改修に対応する技術:排水管の改修技術として、排水管の漏水部分を塩化ビニル形状記憶樹脂にてピンポイントで補修する「HJ インコア工法」について一般財団法人日本建築センターの建設技術審査証明を取得しました。本工法は、経年劣化で最も傷みやすい横引管との合流部のみを再生する工法として数多くの物件で採用されていますが、本性能証明取得を機に、他社との差別化技術として営業展開を図り、受注を強化してまいります。
④ 専用部に対応する技術:換気口やエアコンの新設、追い炊き機能付き給湯器への更新等に伴う、既存集合住宅の非耐力壁へスリーブを新設する際に、ひび割れを抑制する補強工法を開発しました。今後、積極的に採用を提案してまいります。

 

なお、子会社においては、研究開発活動は行われておりません。

建設関連事業及びサービス関連事業以外の事業においては、研究開発活動は行われておりません。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループにおける財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであり、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。

具体的には、工事進行基準による収益認識、固定資産、退職給付に係る資産、工事未払金、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、賞与引当金、役員賞与引当金、退職給付に係る負債、株式給付引当金、役員株式給付引当金、資産除去債務、繰延税金資産、偶発事象や訴訟等であり、これらに関し、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づいた見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。

(2) 経営成績

当事業年度における当社単体の受注高については、当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢等をお客様及び事業主様から高くご評価して頂いたことにより、受注高は過去最高を更新し、5,022億円(前期比3.9%増)となりました。

また、当社グループの経営成績については、売上高は7,723億円(同1.9%減)となりましたが、マンション建築工事の完成工事総利益率の改善により、営業利益は890億円同29.5%増)、経常利益は888億円同31.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は588億円同14.7%増)の増益となりました。

(3) 財政状態の分析

財政状態については、当連結会計年度末における連結総資産は、主に現金預金が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ409億円増加し、6,309億円となりました。

連結総負債は、主に借入金を返済したことにより、前連結会計年度末に比べ121億円減少し、3,925億円となりました。

連結純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上し利益剰余金が増加したこと等から、前連結会計年度末に比べ531億円増加し、2,385億円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の31.3%に対し、37.7%となりました。

(4) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の656億円の収入超過と比較して439億円増加し、1,095億円の収入超過となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益783億円の計上などによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の308億円の支出超過と比較して110億円増加し、198億円の支出超過となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出241億円などによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の163億円の支出超過と比較して239億円減少し、402億円の支出超過となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出627億円などによるものであります。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末の1,521億円より493億円増加し、2,015億円となりました。