第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度における国内経済は、雇用・所得環境の改善により緩やかな回復基調が続いておりましたが、中国をはじめとする新興国経済の減速や、年初以降には円高・株安の進行があり、先行きは不透明な状況となっております。

マンション市場においては、首都圏・近畿圏共に平成27年度の新規供給は低調で、首都圏で3万8,139戸(前期比14.4%減)、近畿圏で1万8,374戸(同7.4%減)にとどまりました。首都圏では平成21年度(3万7,765戸)以来の3万戸台、近畿圏では2年連続で2万戸を下回りました。初月販売率は首都圏で72.7%(同1.9ポイント減)、近畿圏で71.8%(同3.4ポイント減)に低下しました。首都圏・近畿圏共に好調な販売結果となる物件も見られるものの、9・10月は60%台に低下するなど、下期の販売状況は厳しさを増しています。平成28年3月末の分譲中戸数は、首都圏では6,039戸(同15.7%増)に増加しましたが、近畿圏は2,275戸(同0.4%増)と横ばいとなりました。供給商品内容をみると、首都圏の平均価格は5,617万円(同10.4%増)、近畿圏は3,889万円(同6.8%増)に上昇しました。特に、首都圏では平成3年度(5,822万円)以来の高水準となっています。

このような中、新中期経営計画「newborn HASEKO Step Up Plan(略称:NBs(エヌ・ビー・エス)計画)」2年目の当連結会計年度につきましては、建設関連事業においてマンション建築工事が好調に推移した中、過去最高の連結経常利益を達成、さらに単体の受注高も2年連続で過去最高を更新することができました。
 以上の結果、当連結会計年度における業績は、主にマンション建築工事の施工量増大、新たに連結子会社となった総合地所株式会社及び同社子会社2社の業績を第2四半期連結会計期間から取り込んだこと等により、売上高は7,874億円(同22.6%増)となり、海外関連事業においてたな卸資産評価損99億円の計上がありましたが、マンション建築工事の施工量増大及び完成工事総利益率の改善により、営業利益は688億円(同61.0%増)、経常利益は673億円(同60.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は512億円(同79.5%増)の増収増益となりました。営業利益率は8.7%(同2.1ポイント増)、経常利益率は8.6%(同2.1ポイント増)となりました

なお、当連結会計年度より、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日)等を適用し、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」としております。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

(単位:億円)

 

 

建設関連事業

サービス関連事業

海外関連事業

売上高

5,962

(+1,070)

1,860

(+462)

173

(-26)

営業利益

713

(+348)

88

(+11)

△97

(-91)

 ( )内は前期比増減額

 

① 建設関連事業

建設関連事業において、建築工事では、労務不足による建築費の上昇の懸念はありますが、マンション建設に特化している当社の高い施工能力・商品企画力等が大手デベロッパーを中心とする事業主から高い評価を頂く中、物件の大型化等により、受注時の工事採算と当期の完成工事総利益率は共に改善傾向にあります。

分譲マンション新築工事の受注は、首都圏で200戸以上の大規模物件27件を含む74件、近畿圏・東海圏で200戸以上の大規模物件12件を含む35件、東西合計で109件となりました。

完成工事につきましては、賃貸住宅等6件を含む計122件を竣工させました。

設計・監理では、58万戸を超える累計施工実績の中で提案してきた企画や技術、ノウハウの蓄積を活用して、マンションの基本性能の充実、可変性の向上、環境・防災性能の確保に積極的に取り組んでおります。

首都圏では、駅徒歩1分に立地し、制振構造を採用した地上29階建超高層タワーマンション「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス(タワー棟)」(東京都北区、230戸)が竣工しました。住棟計画においては角住戸を多くする、ワイドスパン中心の住戸設計を行う、天井高最大2,700mmを確保する等、眺望・採光・通風に配慮したプランニングを実現しました。また、都心を一望できる丘陵地に立地する、総開発面積約87万㎡の大規模複合開発事業の一画に、この街のランドマークとなる大規模マンション「プラウドシティ南山」(東京都稲城市、412戸)が竣工しました。

近畿圏では、甲子園球場の5倍超にもなるキリンビール京都工場跡地の大規模駅前複合開発街区に立地する、「京都桂川つむぎの街 グランスクエア・マークスクエア」(京都市南区、593戸)が竣工しました。また、大阪府「江之子島地区まちづくり事業コンペ」当選プロジェクトで、マンション街区と総合病院・クリエイティブセンターからなる再開発事業の一画に、地上46階建超高層免震タワーマンション「阿波座ライズタワーズ フラッグ46(OMPタワー)」(大阪市西区、565戸)が竣工しました。

マンション分譲では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を企画設計から実施設計、販売手法まで活用した「ブランシエラ板橋西台」(東京都板橋区、80戸)等、当期に新たに完成した17物件他の販売及び引渡しを行いました。

以上の結果、当セグメントにおいては、売上高5,962億円(前期比21.9%増)となり、主にマンション建築工事の施工量増大及び完成工事総利益率の改善により、営業利益713億円(同95.3%増)となりました。

 

当期の主な受注及び完成工事物件は以下のとおりです。

 

[主な受注工事]

 

 

 名称

所在

規模

シティテラス小金井公園

東京都小平市

922戸

ザ・ガーデンズ東京王子

東京都北区

864戸

プラウドシティ大田六郷

東京都大田区

632戸

ブランズシティ天神橋筋六丁目

大阪市北区

420戸

(仮称)JR塚口駅前C街区 新築工事

兵庫県尼崎市

366戸

(仮称)東区砂田橋 新築工事

名古屋市東区

553戸

 

 

[主な完成工事]

 

 

 名称

所在

規模

レジデントプレイス西葛西

東京都江戸川区

459戸

プラウドシティ南山

東京都稲城市

412戸

シティテラス横濱和田町

横浜市保土ヶ谷区

373戸

京都桂川つむぎの街

グランスクエア・マークスクエア

京都市南区

593戸

阿波座ライズタワーズ フラッグ46

(OMPタワー)

大阪市西区

565戸

ザ・パークハウス 相生山

名古屋市天白区

274戸

 

 

② サービス関連事業

サービス関連事業においては、第2四半期連結会計期間から、総合地所株式会社及び同社子会社2社における不動産分譲、賃貸マンション運営管理及び分譲マンション管理等の業績が、第4四半期連結会計期間から、株式会社ジョイント・コーポレーション及び同社子会社4社における不動産分譲及び賃貸マンション運営管理等の業績が加わりました。併せて、分譲マンション管理戸数及び賃貸マンション運営管理戸数も増加しました。

分譲マンション管理では、新規受託・リプレースともに管理受託は相変わらず厳しい状況が続いておりますが、若手フロント社員の教育体制の再構築等、顧客満足度の向上に繋がる施策に取り組んでおります。新規連結の影響と併せ、管理戸数は361,204戸(前期末比16.8%増)となりました。

大規模修繕工事・インテリアリフォームでは、大型案件の工事進行基準による売上高が増加し、受注時の利益改善にも取り組みましたが、受注高は大型案件の受注競争が激しかった影響等により、313億円(前期比12.8%減)にとどまりました。

賃貸マンション運営管理・社宅管理代行の運営管理戸数は、新規受託の順調な推移や解約の減少等に、新規連結の影響も併せて、両事業合計で139,746戸(前期末比37.8%増)となりました。

シニアサービスでは、有料老人ホーム・高齢者向け住宅の稼働数は、2,054戸(同3.6%増)となりました。

新築マンションの販売受託では、新規供給戸数の減少と販売価格の上昇により、契約戸数及び引渡戸数は減少しました。

不動産流通仲介では、新築マンションの価格上昇の影響や店舗網の拡充により、リノベーション事業の販売戸数が大きく増加しました。

以上の結果、当セグメントにおいては、売上高は新規連結等の影響により1,860億円(前期比33.1%増)、営業利益は、主に大規模修繕工事における採算性の改善により、88億円(同14.8%増)となりました。

 

③ 海外関連事業

ハワイ州オアフ島におきまして、前期は一年間売上に寄与していた工事進行基準適用案件が、期中で完成したこと等により、売上高が減少しました。また、ハワイ州オアフ島エヴァ地区で進めているプロジェクトに関し、事業環境等から今後の開発エリアに係る計画を見直す必要が生じました。これに伴い、保有する営業用不動産の収益性の再評価を行った結果、たな卸資産評価損99億円を売上原価として計上しました。

以上の結果、当セグメントにおいては、売上高173億円(前期比13.1%減)、営業損失97億円(前期は営業損失7億円)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の400億円の収入超過と比較して256億円増加し、656億円の収入超過となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益688億円の計上などによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の41億円の支出超過と比較して267億円減少し、308億円の支出超過となりました。これは主に、株式会社ジョイント・コーポレーションの株式取得による支出179億円、有形及び無形固定資産の取得による支出189億円などによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の402億円の支出超過と比較して239億円増加し、163億円の支出超過となりました。これは主に、新たに連結子会社となった総合地所株式会社の支配獲得日からみなし取得日までの間に行った、総合地所株式会社の既存借入金の一部返済214億円などによるものであります。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末の1,336億円より186億円増加し、1,521億円となりました。

 

「第2 事業の状況」における各項目の記載金額には、消費税等は含まれておりません。

 

2【受注及び売上の状況】

(1) 受注実績

セグメントの名称

区分

前連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

(百万円)

建設関連事業

建設工事等

477,438

493,103

( 3.3%増)

設計監理

12,275

12,642

( 3.0%増)

489,714

505,746

( 3.3%増)

サービス関連事業

大規模修繕・

内装工事等

49,929

45,688

( 8.5%減)

海外関連事業

建設工事等

12

合計

539,642

551,445

( 2.2%増)

(注) 1 当連結企業集団では建設関連事業における建設工事等及び設計監理、サービス関連事業における大規模修繕・内装工事等及び海外関連事業における建設工事等以外の受注実績を把握することが困難であるため記載しておりません。

     2 セグメント間の取引については相殺消去しております。

(2) 売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

(百万円)

建設関連事業

487,706

589,054

(20.8%増)

サービス関連事業

134,612

181,043

(34.5%増)

海外関連事業

19,849

17,257

(13.1%減)

合計

642,167

787,354

(22.6%増)

(注)  セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(3) 建設関連事業の状況

売上実績

区分

前連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

(百万円)

建設工事等

401,520

451,074

(12.3%増)

設計監理

11,177

12,134

( 8.6%増)

不動産販売等

73,856

124,533

(68.6%増)

その他

1,153

1,313

(13.8%増)

合計

487,706

589,054

(20.8%増)

 

 

(4) サービス関連事業の状況

区分

前連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

数量

稼働数

売上実績

(百万円)

数量

稼働数

売上実績

(百万円)

不動産賃貸

8,898戸

8,524戸

11,284

12,983戸

12,474戸

14,618

( 29.5%増)

シニアサービス

2,295戸

1,983戸

9,892

2,456戸

2,054戸

10,133

(  2.4%増)

マンション建物管理

309,353戸

(3,909棟)

31,531

361,204戸

(4,456棟)

37,573

( 19.2%増)

マンション賃貸管理

92,439戸

 

9,259

127,540戸

 

10,968

( 18.5%増)

大規模修繕・内装工事等

41,915

49,840

( 18.9%増)

分譲マンション販売受託

6,593

5,627

( 14.7%減)

流通仲介・リノベーション等

14,001

19,308

( 37.9%増)

不動産分譲

20,800

(-)

その他

10,138

12,176

( 20.1%増)

合計

134,612

181,043

( 34.5%増)

 (注) 1 数量及び稼働数は連結会計年度末現在で表示しております。

2 第2四半期連結会計期間から、総合地所株式会社及び同社子会社2社の業績が、第4四半期連結会計期間から、株式会社ジョイント・コーポレーション及び同社子会社4社の業績が加わりました。これに伴い、当連結会計年度より「不動産分譲」を新たに区分表記することとしました。

 

(5) 海外関連事業の状況

売上実績

区分

前連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

(百万円)

戸建分譲事業等

19,849

17,257

( 13.1%減)

合計

19,849

17,257

( 13.1%減)

 

 なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。

建設工事等及び設計監理の状況

① 受注高、売上高、繰越高及び施工高

期別

区分

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期繰越高

当期

施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高

比率

(%)

金額

(百万円)

前事業年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

建築工事

335,915

444,583

780,498

367,593

412,905

0

1,309

367,439

土木工事

221

1,908

2,129

1,269

860

32

273

1,487

336,136

446,492

782,628

368,862

413,765

0

1,582

368,927

業務受託

3,427

5,196

8,623

5,161

3,462

合計

339,563

451,688

791,251

374,024

417,227

設計監理

8,839

12,508

21,346

11,420

9,926

合計

348,402

464,195

812,597

385,444

427,153

当事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

建築工事

412,905

463,827

876,732

421,263

455,468

1

4,147

424,101

土木工事

860

954

1,815

1,109

706

43

306

1,141

413,765

464,781

878,547

422,372

456,174

1

4,453

425,242

業務受託

3,462

5,606

9,068

5,398

3,670

合計

417,227

470,387

887,614

427,770

459,844

設計監理

9,926

13,014

22,941

12,349

10,591

合計

427,153

483,401

910,555

440,119

470,436

   (注) 1  前事業年度以前に受注したもので、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。

2 次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。

3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。

 

② 受注工事高の受注方法別比率

 工事受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

建築工事

91.9

8.1

100.0

土木工事

100.0

100.0

当事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

建築工事

91.6

8.4

100.0

土木工事

80.1

19.9

100.0

   (注)  百分比は請負金額比であります。

 

③ 売上高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

(百万円)

前事業年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

建築工事

10,113

357,481

367,593

土木工事

1,269

1,269

10,113

358,750

368,862

業務受託

74

5,087

5,161

合計

10,187

363,837

374,024

設計監理

109

11,312

11,420

合計

10,295

375,149

385,444

当事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

建築工事

7,970

413,293

421,263

土木工事

1,109

1,109

7,970

414,402

422,372

業務受託

30

5,367

5,398

合計

8,001

419,769

427,770

設計監理

12,349

12,349

合計

8,001

432,118

440,119

   (注) 1  完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

前事業年度 請負金額60億円以上の主なもの

㈱大京・住友不動産㈱

ザ・シーズンズ グランアルト

越谷レイクタウン

新築工事

東京急行電鉄㈱・

三井不動産レジデンシャル㈱他

ドレッセ二子新地

新築工事

大和ハウス工業㈱・住友不動産㈱

グランセンス吉川美南ステーションコート

新築工事

㈱大京・東京建物㈱・関電不動産㈱・

新日鉄興和不動産㈱他

ミリカ・テラス

新築工事

野村不動産㈱・三井不動産レジデンシャル㈱・NREG東芝不動産㈱

ヒルコートテラス横浜汐見台

新築工事

 

当事業年度 請負金額70億円以上の主なもの

住友商事㈱・近鉄不動産㈱・野村不動産㈱・

菱重ファシリティー&プロパティーズ㈱・

JR西日本不動産開発㈱他

京都桂川つむぎの街

グランスクエア・マークスクエア

新築工事

名鉄不動産㈱・関電不動産㈱・

ヤスダエンジニアリング㈱他

阿波座ライズタワーズ フラッグ46

(OMPタワー)

新築工事

野村不動産㈱

プラウドシティ南山

新築工事

住友不動産㈱

シティテラス横濱和田町

新築工事

住友不動産

シティテラス神崎川駅前シーズンズテラス

新築工事

※関電不動産㈱は、平成28年4月1日にMID都市開発㈱と合併し、関電不動産開発㈱となっております。

 

2  完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりであります。

前事業年度   野村不動産㈱      42,592百万円 11.5%

当事業年度   住友不動産㈱      57,722百万円 13.7%

野村不動産㈱      52,686百万円 12.5%

 

④ 手持高(平成28年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

(百万円)

建築工事

5,226

450,242

455,468

土木工事

706

706

5,226

450,948

456,174

業務受託

30

3,640

3,670

合計

5,256

454,588

459,844

設計監理

103

10,488

10,591

合計

5,359

465,076

470,436

  (注)  手持工事のうち請負金額80億円以上の主なものは、次のとおりであります。

野村不動産㈱

プラウドシティ志木本町

新築工事

平成28年8月完成予定

住友不動産㈱

シティテラス東陽町

新築工事

平成28年11月完成予定

住友不動産㈱

シティテラス八千代緑が丘

ステーションコート

新築工事

平成29年3月完成予定

野村不動産㈱・

JR西日本不動産開発㈱他

プラウドシティ塚口マークフォレスト

新築工事

平成29年3月完成予定

エヌ・ティ・ティ都市開発㈱・

大成有楽不動産㈱他

ウエリス豊中桃山台

新築工事

平成29年3月完成予定

 

3【対処すべき課題】

日本の景気の動向は、平成24年の政権交代以降大胆な金融緩和政策への期待が続いているものの、為替相場・金利の動向、不安定な株式市場等、先行きが不透明な状況となっております。建設業界においては、足下の市況は堅調に推移している一方、労務費の上昇、建設技能労働者の減少、東京オリンピック後の需要減退、相次ぐ災害の影響等、多くの懸念要素を抱えています。

マンション市場では、平成28年度は首都圏で5万戸程度、近畿圏でも2万戸以上の供給が可能な材料は整っています。平成27年度は需給ともに低調に推移しましたが、平成28年度は供給者・需要者ともにこれまでの慎重姿勢からは変化すると思われます。平成29年4月の消費税率引き上げの延期が発表されましたが、首都圏・近畿圏ともに供給能力が高いことから、平成28年度の新規供給戸数は首都圏で4万3,000戸~4万5,000戸、近畿圏でも2万戸を上回る供給が行われると予測しています。

需要者サイドも、住宅取得環境は好環境が継続していることに加え、個人消費を取り巻く環境も改善の可能性があることから、これまで見送り・先送りしていた住宅・マンション購入を再開する可能性が高いと思われます。その一方で、大幅な価格上昇が生じていることが懸念材料ですが、前年度を上回る販売状況になると予測しています。

当社グループは、NBs計画の2年目となる平成28年3月期において、足下の新築分譲マンション工事の受注環境の好調さに支えられ、NBs計画における計画最終年度(平成29年3月期)の数値目標を上回る連結経常利益となりました。しかしながら、NBs計画では、建設関連事業とサービス関連事業の両方に軸足をおく経営を確立する事を目指しており、引き続き安定的な収益基盤を持つ体制づくりを進めてまいります。

 

NBs計画の概要は以下の通りとしております。

 

経営計画名:「newborn HASEKO(略称:NB計画)」

計画期間と位置付け:計画期間を平成27年3月期より6年間として、前半3年間を「Step Up」期間、後半3年間を「Jump Up」期間と位置付け、再生完了「新生・長谷工」として再誕・躍進を目指します。

前半3年間は新中期経営計画「newborn HASEKO Step Up Plan(略称:NBs(エヌ・ビー・エス)計画)」と称して、具体的には、以下の6点を掲げております。なお、将来に関する事項については、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 新規の住宅供給等を主なマーケットとする建設関連事業と既存の住宅関連等を中心とするサービス関連事業の両方に軸足をおく経営を確立すること。

建設関連事業においては、新築分譲マンション工事受注における適正利益を確保します。
サービス関連事業においては、収益の拡大と都市居住生活者の信頼に応える企業体の実現を目指します。

(2) グループ連携を深化させ、都市居住生活者の信頼に応える企業体を実現すること。

近い将来、首都圏の世帯数が減少に転じると予測される中、サービス関連事業の確立を一段と強力に推進させる観点から、グループ事業の連携と都市居住生活者からの更なる信頼獲得に取り組んでいきます。

(3) 安全・安心で快適な集合住宅を提供すること。

・次世代生産システムの開発・構築(IT技術の活用、工業化推進など)

・次世代マンションの開発・展開(省エネ・環境関連技術など)

・高齢者向け集合住宅、賃貸マンションの生産技術の具体案件での検証・展開

・改修技術開発の更なる強化

(4) 飛躍に向けた安定した財務基盤を確立すること。

・利益分配については、安定的な株主還元の継続、成長戦略投資、有利子負債の削減にバランスよく配分

・自己資本と負債の構成比を意識しつつ、期間利益の積上げによる自己資本の拡充を図り、

「飛躍に向けた安定した財務基盤の確立」

(5) 中長期的な視点を踏まえた新たな取組みへ挑戦すること。

・サービス関連事業を起点とした国内主要都市への事業エリア拡大の可能性を追求

・海外における長谷工グループの事業基盤構築への取り組み

(6) 実効性の高いガバナンス・内部統制の確立に向け注力すること。

・外部からの客観的・中立の経営監視機能として、過半数の社外監査役を含む監査役会による監視と、社外取締役を取締役会に加えることによる取締役会の活性化と経営の監視機能の強化を推進

・コンプライアンス、品質(ISO9001)、環境(ISO14001)、情報セキュリティ、個人情報保護の体制の継続的な維持・強化

・グループ一体となった経営体制の強化とそれを担う人材の育成

・女性社員の積極的な活用を推進

 

以上の取り組みにより、NBs計画における計画最終年度(平成29年3月期)の数値目標としましては、連結経常利益350億円、単体経常利益230億円としております。

当社グループは、株主の皆様をはじめ、取引金融機関などご支援頂いている皆様や、お取引先、お客様の支えにより、長期間を要した再建をようやく果たすことができました。これからも皆様への感謝の気持ちを忘れずに、社会に必要とされ、「いい暮らしを、創る。」住まいのオンリーワングループを目指してまいります。

 

(注)数値目標として記載している「計画最終年度(平成29年3月期)連結経常利益350億円、単体経常利益230億円」は、NBs計画策定時(平成26年5月14日公表)のものであります。

 

4【事業等のリスク】

当社グループの業績及び財政状態は、今後起こり得る様々な要因により影響を受ける可能性がありますが、事業等のリスクについては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項について記載しております。当社グループは、これらの他にも様々なリスクがありうることを認識し、それらを可能な限り防止、分散あるいは回避するよう努めておりますが、当社グループの支配の及ばない外部要因や必ずしも現時点にて具現化する可能性が高くないと見られる事項等の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

(1) 分譲マンションに関わる事業への依存

 当社グループは、首都圏、近畿圏及び東海圏での分譲マンションに関わる事業をコアとしており、中でも分譲マンション建設事業に対する依存度が高くなっております。従って、受注高やその他の分譲マンション関連事業の取引高は、分譲マンションの新規供給量や販売状況、分譲マンション建設用地の供給、取引先デベロッパーの事業規模、住宅関連政策、住宅にかかる税制及び金利等の動向によっては大きく変動することになり、これらの変動が業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 また、当社は、土地情報収集力や分譲マンション事業に関するプロジェクトマネジメント力を背景として、土地持込による受注を主たるビジネスモデルとしておりますが、このビジネスモデルにより今後も引き続き競争優位に立ち、市場シェアや収益性の維持、拡大が図れるという保証はありません。

(2) 建設市場の動向

 建設業全般の業績の動向によりマンション建設の分野に対する参入が増え、同業他社との価格競争が激化した場合や、建設資材・労務等の急激な高騰及び調達難、協力業者等の確保状況による生産能力の低下等が生じた場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制、行政規制等

 当社グループが事業を行う上で遵守すべき法令・規則等は多岐に渡っており、建築基準法、建設業法、宅地建物取引業法、建築士法といった事業に直接関係する法令のみならず、会社法、金融商品取引法といった事業に直接関係はしないものの重要な法令等があります。当社グループにおきましては、役職員がこれらの法令等を遵守することができるよう啓蒙を適宜実施しておりますが、これらの法令等を遵守できなかった場合、またはこれらの法令等が当社グループの予測し得ない内容に改廃もしくは新設された場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

特に、建築基準法等のマンション建設における法的規制の改廃もしくは新設、又は建築確認・検査の厳格化等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、国内外の事業遂行にあたり、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 周辺住民との関係

 建設工事着工に際しましては、周辺住民に対する事業計画等の説明を実施しておりますが、反対運動及びそれに伴う訴訟等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5) 瑕疵担保責任

 施工品質の維持向上には万全を期しておりますが、引当金の計上額を上回る瑕疵担保負担の発生や、保険等でカバーできない損害賠償が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 建設事業における事故等

 当社グループは、安全教育の実施、点検パトロール等、工事事故・品質事故・災害を撲滅するために安全管理・施工管理を徹底し、また、工事着手にあたり入念な施工計画の立案等、安全な作業環境を整え施工を行っておりますが、万が一、重大な工事事故・品質事故・労働災害等が発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 取引先の信用リスク

 建設業においては、一つの取引における請負金額が大きく、多くの場合工事代金の支払いは分割であり、目的物の引渡時及び引渡後に多額の支払が行われる傾向があります。よって、工事代金の受領前に取引先が信用不安に陥った場合は、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(8) 保有不動産

 当社グループは、営業活動上の必要性から不動産を保有しておりますが、不動産には時価の変動リスクがあるとともに、一般的に流動性が高くないため売却時における需給関係によっては相場価格により売却できない場合があります。販売用不動産については事業計画の進捗次第では予定している回収額に満たない場合や様々な要因により計画を中止せざるを得ない場合があります。また、固定資産についても、賃貸条件や事業収支の悪化が生じる等、予定しているキャッシュ・フローが得られなくなる場合があります。これらの場合には評価損失・減損損失・売却損失等が発生し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(9) 企業買収等

 当社グループは、事業拡大のために企業買収等を実施することがありますが、買収等の対象事業を当社グループの経営戦略に沿って統合できない場合や、既存事業及び買収等の対象事業について効率的な経営資源の活用を行うことができなかった場合、当初想定していた効果が得られないことにより、のれんの減損の発生等、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(10)事業エリアの偏重

 当社グループは、会社の経営資源の効率化を実現するために事業エリアを首都圏・近畿圏・東海圏に集中しております。このため、将来、首都圏・近畿圏・東海圏並びにその周辺において、地震、暴風雨、洪水その他の天災、事故、火災、その他の人災等が発生し、工期の遅延、消費者の購買意欲の減退、所有資産の毀損等があった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(11)海外事業におけるリスク

 海外での事業活動に際しまして、社会慣行の違い、法令・規制の予期せぬ変更、経済・為替の変動、政治・軍事問題等に関するリスクが存在し、これらに関した問題が発生した場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(12)オペレーショナルリスク

 当社グループが業務を遂行するにあたり、役職員による不正行為、不適切な行為、事務処理のミス、労務管理上の問題等の各種オペレーショナルリスクの発生が考えられます。当社グループはリスク管理規程を定め、オペレーショナルリスクも含めた事業遂行に関わる様々なリスクについて管理し、それらのリスクに対応することによって、グループの経営方針の実現を阻害するリスク要因を可能な限り低減させ、コントロールするよう努めておりますが、上記のようなオペレーショナルリスクが発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(13)個人情報等の管理

 当社グループは、マンション購入顧客ならびに購入検討顧客や管理受託マンションの居住者等、多くの個人情報を保有しております。また、営業・購買情報等、多くのデータをコンピュータ管理しています。平成17年4月に完全施行された個人情報保護法にしたがって、個人情報の取扱いに関するルール(基本方針・規程・細則)を、また、平成28年1月から利用が開始されたマイナンバー(社会保障・税番号)制度への対応のため、マイナンバー関連規程(基本方針・規程)を設け、体制整備を行っております。また、個人情報以外の情報の取扱いについても、各部個別にセキュリティポリシー(基本方針・対策基準・実施手順)を順次整備する等、情報管理を徹底し万全を期しておりますが、コンピュータシステムのトラブルによる情報流出や犯罪行為等による情報漏洩が発生する可能性があります。その場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(14)資金調達及び金利動向等

 当社グループは、借入や社債発行による資金調達を行っているほか、リースを活用した設備投資を行っております。そのため、金利等の市場環境の変化、あるいは当社に対する格付の引下げ等の信用力低下により、資金調達コスト及びリース費用が増加し、当社グループの業績及び財務内容に影響を与える可能性があります。

 また、金融機関からの新規借入や社債発行あるいはリースの組成にあたっては同様の条件により行えるという保証はなく、当社グループが金融機関から借入や社債発行による調達を適時に行えない場合には、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、事業上必要な資金調達について、主に金融機関との間で協調融資方式によるタームローン、及びコミットメントライン契約の借入契約を締結しております。これらの借入契約には、自己資本の維持と経常利益の確保、有利子負債残高の3項目に関して財務制限条項が付加されており、それに抵触した場合には、多数貸付人の意思結集に基づく請求により期限の利益を喪失する可能性があり、約定の返済期限より前に残元本及び利息等を返済する義務が発生する可能性があります。

(15)株式市場の動向

 当社グループは、市場性のある株式を保有しておりますが、株式市場が下落し、保有株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(16)繰延税金資産

 当社グループでは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上していますが、この計算は将来の課税所得に関する見積に依拠しており、実際の結果は見積とは異なる可能性があります。当社グループが将来の課税所得の見積に基づいて、繰延税金資産の一部又は全部が回収できないと判断した場合や、法人税の減税等制度面における変更により、繰延税金資産の額が過大となった場合には、繰延税金資産は費用として計上され、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

株式取得に関する契約

①総合地所株式会社の株式取得について

当社及び当社の子会社である不二建設株式会社は、平成27年4月23日付で、総合地所株式会社の全株式を取得する旨の契約を締結し、平成27年5月28日付で株式取得に関する全ての手続きを完了しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

②株式会社ジョイント・コーポレーションの株式取得について

当社及び当社の子会社である不二建設株式会社は、平成27年11月11日付で、株式会社ジョイント・コーポレーションの全株式を取得する旨の契約を締結し、平成27年12月17日付で株式取得に関する全ての手続きを完了しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

当社の研究開発活動は、集合住宅における新築とストックの両分野に軸足をおき、これまで継続してきた安全・安心、快適・健康、品質・性能、生産性向上等のテーマに取り組むと共に、受注の拡大、利益の向上に寄与する研究・技術開発を目指しております。

活動にあたっては、研究・技術開発のスピードアップと採用促進を図るため、埼玉県越谷市の技術研究所を拠点としながら、大学・研究機関等との共同研究・開発を進めるとともに、当社技術推進部門・設計部門・建設部門等社内各部門及び当社グループ各社の技術関連部門との連携・強化に努めております。

活動内容としては、①生産技術開発 ②商品開発 ③そのために必要な基礎的な研究開発、以上の3つに重点を置きながら、特に工業化対応、省エネ・環境対応、長寿命化、防災対応、ストック改修対応など、社会環境や顧客ニーズの変化に即した集合住宅関連技術の開発・商品化に注力しております。

当連結会計年度における研究開発費は、1,020百万円であり、主な研究・技術開発の成果は次のとおりです。なお、当該費用につきましては、セグメントに共通する費用を区分することが困難であるため、総額のみを記載しております。

 

 (建設関連事業)

(1) 次世代マンション企画“Beシリーズ”の開発・提案

「基本性能の充実」、「可変性」、「環境+防災」という3つのコンセプトで開発したマンション“Be-Next”、高層化を実現させた“Be-Next II”、妻側住戸のリビングルームの開放性をさらに向上させた“Be-Next L”に続き、更なる開放性を実現する「免震20階建・バルコニー側の柱梁型なし架構」“Be-Next M”の開発を進めました。“Beシリーズ”については、当社設計・施工案件へ積極的に提案を進めており、今後も当社の提案力の強化を図るべく、時代やニーズに対応した次世代マンション企画の更なるブラッシュアップに取り組んでまいります。

(2)中高層集合住宅を対象とした技術の開発

大規模・高層物件等を主な対象として、建設技能労働者の不足及び高齢化への対応と、生産性と多様性を両立させ且つ品質向上等の更なる推進のため、構造躯体の工業化・PC化、低生産性部位の整理と更なる省力化、長谷工オリジナルの新商品開発及び設計・施工情報のIT化等の積極的な推進展開を行い、着工物件において順次採用導入しております。特に、これまでの開発検証等をベースにして、下記の開発に注力・推進しております。

① サポート関連:免震部材と杭を直接接合することで免震建物の基礎構造を簡略化でき、免震性能を発揮しながらも基礎工事の省力化・工期短縮が可能となる「拡頭杭免震構法」を、ゼネコン5社による共同開発にて行い、日本ERI㈱の構造性能評価を取得いたしました。本構法は、共同住宅をはじめ多くの建物用途に採用することが可能な技術であり、今後は当社設計・施工案件への採用促進を図ってまいります

このほか、当社の保有技術である杭工法「HND工法」に改良を加えることで、支持力及び引抜き抵抗力を更に向上できる場所打ちコンクリート杭工法の開発に取り組みました。

② クラディング関連:屋上部分の防水立上り(パラペット)における躯体工事省力化並びに型枠廃材の削減を目的として、防水仕上げ端部を保護する、新たなアルミ水切り金物を開発いたしました。今後は当社設計・施工案件での施工検証を経て、基本採用化を進めてまいります。

また、外壁ALC部材取付けにおいて、無溶接で取付け工事可能な、新たなALC取付け金物をALCメーカーと共同開発いたしました。

インフィル関連:内装関連工事において、将来予想される熟練工の不足及び高齢化を見据え、内装部位の簡素化・ユニット化を目的として、「樹脂製一体型カーテンBOX」、「トイレユニット」を開発し、導入を進めました。今後は、当社設計・施工案件への標準採用化へ向けて導入を図ってまいります

設備関連:従来の重力式排水方式と異なり、サイホン力を利用することにより、配管口径の縮小化、無勾配化及び水廻りレイアウトの自由度向上が図れる技術である「サイホン排水システム」を、野村不動産㈱、㈱ブリヂストン、㈱長谷工コーポレーションの3社で共同開発いたしました。第1段階として、キッチンディスポーザの排水に関する開発が完了いたしました。引き続き、ユニットバス、洗面化粧台、洗濯機防水パン等の水廻りに関する技術検証を行っており、実案件の採用へ向けた詳細検討を推進しております。

また、基礎ピット内の共用給水管について、従来から採用している一般配管用ステンレス鋼管に比較して、工業化工法による労務省力化が可能なポリエチレン管の工場プレハブ加工方式の開発を行いました。

設計・施工情報のIT化関連:業務プロセス・生産プロセスの合理化に向けたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用を推進する体制及び各種ツールを整備・開発を進めると共に、BIMモデルデータから積算数量を自動的に算出するプログラムの開発を進めました。当社設計・施工案件における「長谷工版BIM」の実施設計案件は、首都圏・近畿圏・東海圏において着実に増やしており、今後も「長谷工版BIM」を当社設計・施工の全物件に導入、展開するべく取り組んでまいります

(3) 超高層RC造集合住宅を対象とした技術の開発

これまで開発した成果を反映させた当社設計・施工で、制振構造と工業化工法を採用した超高層RC造集合住宅「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス(タワー棟)」(東京都北区、地上29階、230戸)が完成いたしました。引き続き、設計技術及び施工条件に即した最適な構工法技術の確立などを図りながら、超高層対応技術のレベルアップに努めてまいります。

(4) 省エネ・CO2削減など環境対応技術の開発

都市部の集合住宅における更なる省エネルギー化を目指すため、地中熱等の自然エネルギー利用技術の効果検証を推進することを目的として、当社所有用地に実証実験装置を設置いたしました。

(5) 建設産業廃棄物削減対応

これまで当社では、段ボール古紙や木くずにおける循環型マテリアルリサイクルシステムの構築、また廃プラスチック類のサーマルリサイクルシステムの構築をしてまいりました。今後も、作業所所員・作業員への環境関連教育を通して、環境に配慮した循環型社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。

(6) 共同研究参画

競争と連携のネットワークを構築するため、多様な研究機関、企業等の幅広い結集を図り、研究開発の共通基盤(プラットフォーム)の確立を目指している「建築研究開発コンソーシアム」の活動に継続参画しております。

 

 (サービス関連事業)

ストック・リフォーム技術

拡大する国内ストック市場における既築集合住宅向け「ストックビジネス」の技術基盤づくりを目指しております。共用部では「建物の延命化・耐震化の工法」、「住みながらの改修を可能にする、居住者の負担を軽減するための工法」の開発等、専有部では「住まいとしての機能の維持やグレ-ドアップ提案」を進める等、継続的にストック・リフォーム分野における研究・技術開発を行っております。

① 耐震改修に対応する技術:平成23年に一般財団法人日本建築防災協会の技術評価を取得した「後施工部分スリット工法」について、平成28年に技術評価の有効期限を迎えるにあたり、より広範な建物へ適用できるように技術改良を進めました。

② 大規模修繕に対応する技術:今後に増加が見込まれる、高強度コンクリートを採用した建物の改修工事への対応として、コンクリート強度を確保しつつ耐火性に優れた、新たなポリマーセメント補修材料を補修材メーカーと共同開発いたしました。今後は、超高層物件等の大規模修繕及び改修工事の受注時に提案を行い、採用を進めてまいります。

また、マンションの大規模修繕工事において、車路や自転車置場、ピロティー等地盤面から仮設足場がかけにくい箇所を改善するための技術として、共用廊下等のコンクリート製手摺壁からの支持により仮設足場を設置できる「枠組足代対応型SKT金物」を仮設材メーカーと共同開発いたしました。今後は幅広く大規模修繕及び改修工事において提案を行い、導入を図ってまいります。

③ その他改修に対応する技術:国土交通省による平成24年度住宅・建築物省CO2先導事業に採択され、平成26年3月に竣工した「エステート鶴牧4・5住宅」(東京都多摩市、356戸、29棟)の消費エネルギー実態調査を実施いたしました。この結果、㈱長谷工リフォームによる断熱改修工事後には、工事前の予測を上回る省エネ効果が得られていることを確認いたしました。今後は、この調査で得られたデータやノウハウを基に提案を行い、断熱改修工事の受注を強化してまいります。

④ 専用部に対応する技術:換気口や排気ダクト、給気シャッター等の換気設備の経年劣化・性能低下を改善するための技術として、経過年数に応じた調査手法の確立と併せて、効率的な清掃・メンテナンス方法を開発いたしました。更に、機能保全ならびにグレードアップメニューの開発を行い、㈱長谷工コミュニティによる住まいのサービスメニューとして提案したことで、㈱長谷工コミュニティにおける清掃・メンテナンス工事の受注に繋がりました。

 

なお、子会社においては、研究開発活動は行われておりません。

建設関連事業及びサービス関連事業以外の事業においては、研究開発活動は行われておりません。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループにおける財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであり、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

 なお、当連結会計年度より、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日)等を適用し、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」としております。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。

具体的には、工事進行基準による収益認識、固定資産、退職給付に係る資産、工事未払金、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、賞与引当金、役員賞与引当金、退職給付に係る負債、資産除去債務、繰延税金資産、偶発事象や訴訟等であり、これらに関し、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づいた見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。

(2) 経営成績

当事業年度における当社単体の受注高については、当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制等について事業主から評価して頂けていることから、4,834億円(前期比4.1%増)となりました。

また、当社グループの経営成績については、主にマンション建築工事の施工量増大、新たに連結子会社となった総合地所株式会社及び同社子会社2社の業績を第2四半期連結会計期間から取り込んだこと等により、売上高は7,874億円(同22.6%増)となり、海外関連事業においてたな卸資産評価損99億円の計上がありましたが、マンション建築工事の施工量増大及び完成工事総利益率の改善により、営業利益は688億円(同61.0%増)、経常利益は673億円(同60.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は512億円(同79.5%増)の増収増益となりました。

(3) 財政状態の分析

財政状態については、当連結会計年度末における連結総資産は、総合地所株式会社及び同社子会社2社と株式会社ジョイント・コーポレーション及び同社子会社4社が連結子会社となったこと等により、前連結会計年度末に比べ1,131億円増加し、5,900億円となりました。

連結総負債は、主に借入金が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ718億円増加し、4,046億円となりました。

連結純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上し利益剰余金が増加したこと等から、前連結会計年度末に比べ413億円増加し、1,854億円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の30.2%に対し、31.3%となりました。

(4) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の400億円の収入超過と比較して256億円増加し、656億円の収入超過となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益688億円の計上などによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の41億円の支出超過と比較して267億円減少し、308億円の支出超過となりました。これは主に、株式会社ジョイント・コーポレーションの株式取得による支出179億円、有形及び無形固定資産の取得による支出189億円などによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の402億円の支出超過と比較して239億円増加し、163億円の支出超過となりました。これは主に、新たに連結子会社となった総合地所株式会社の支配獲得日からみなし取得日までの間に行った、総合地所株式会社の既存借入金の一部返済214億円などによるものであります。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末の1,336億円より186億円増加し、1,521億円となりました。

 

(5) 新中期経営計画及び今後の方針

当社グループは、将来へ向けた経営体制の確立を目指し、平成26年5月に経営計画「newborn HASEKO(略称:NB計画)」を策定致しました。平成26年3月期をもって2年前倒しで終了した中期経営計画「PLAN for NEXT(略称:4N計画)」を「Hop」、NB計画の前半3年間を「Step」、NB計画の後半3年間を「Jump」と位置付け、再生完了「新生・長谷工」として再誕・躍進を目指します。

NB計画の期間は、平成27年3月期より6年間と定め、前半3年間を「新生・長谷工へのステップアップ期間」として、新中期経営計画「newborn HASEKO Step Up Plan(略称:NBs(エヌ・ビー・エス)計画)」を策定致しました。近い将来、首都圏の世帯数が減少に転じると予測される中、当社を取り巻く環境は、少子化・高齢化の進行や高経年マンションの増加、建設技能労働者の減少、環境・エネルギー問題等への対応など、基本的には4N計画策定時から大きく変化していない事から、本計画においても基本方針は4N計画を踏襲致しますが、サービス関連事業の確立を一段と強力に推進させる観点から、グループ事業の連携と都市居住生活者からの更なる信頼獲得を基本方針に加えて、重要課題として取り組んでまいります。

 

 

中期経営計画「newborn HASEKO Step Up Plan(略称:NBs計画)」の概要

 

■計画期間

平成27年3月期~平成29年3月期の3期間

 

■基本方針

1.新規の住宅供給等を主なマーケットとする建設関連事業と既存の住宅関連等を中心とするサービス関連事
   業の両方に軸足をおく経営の確立
 2.グループ連携を深化させ、都市居住生活者の信頼に応える企業体の実現
 3.安全・安心で快適な集合住宅を提供
 4.飛躍に向けた安定した財務基盤の確立
 5.中長期的な視点を踏まえた新たな取組みへの挑戦

6.実効性の高いガバナンス・内部統制の確立

 

■数値目標

本計画における計画最終年度の平成29年3月期において、連結経常利益350億円、単体経常利益230億円として
おります。

 

■具体内容

1.本業収益強化について

『新規の住宅供給等を主なマーケットとする建設関連事業と既存の住宅関連等を中心とするサービス関連事業の両方に軸足をおく経営の確立』

・新築分譲マンション工事受注における適正利益の確保

・サービス関連事業収益の拡大と都市居住生活者の信頼に応える企業体の実現

 

2.技術力・技術開発の強化・推進について

『安全・安心で快適な集合住宅を提供』

・次世代生産システムの開発・構築(IT技術の活用、工業化推進など)

・次世代マンションの開発・展開(省エネ・環境関連技術など)

・高齢者向け集合住宅、賃貸マンションの生産技術の具体案件での検証・展開

・改修技術開発の更なる強化

 

3.財務戦略について

『安定した財務基盤を確立するとともに、株主への利益還元を安定的に行っていく』

・利益分配については、安定的な株主還元の継続、成長戦略投資、有利子負債の削減にバランスよく配分

・自己資本と負債の構成比を意識しつつ、期間利益の積上げによる自己資本の拡充を図り、
「飛躍に向けた安定した財務基盤の確立」

 

4.将来を見据えた新領域への挑戦について

『中長期的な視点を踏まえた新たな取組みへの挑戦を萌芽させていく』

・サービス関連事業を起点とした国内主要都市への事業エリア拡大の可能性を追求

・海外における長谷工グループの事業基盤構築への取り組み

 

5.経営管理・人材等について

『お客様本位の事業活動を通じて社会に貢献し、信頼を得ることを経営の基本方針として掲げ、実効性の高いガバナンス・内部統制の確立に向け引き続き注力する』

・外部からの客観的・中立の経営監視機能として、過半数の社外監査役を含む監査役会による監視と、社外取締役を取締役会に加えることによる取締役会の活性化と経営の監視機能の強化を推進

・コンプライアンス、品質(ISO9001)、環境(ISO14001)、情報セキュリティ、個人情報保護の体制の継続的な維持・強化

・グループ一体となった経営体制の強化とそれを担う人材の育成

・女性社員の積極的な活用を推進

 

NBs計画の2年目となる平成28年3月期において、足下の新築分譲マンション工事の受注環境の好調さに支えられ、NBs計画における計画最終年度(平成29年3月期)の数値目標を上回る連結経常利益となりました。また、平成29年3月期の業績予想は連結経常利益780億円、単体経常利益660億円としております。しかしながら、NBs計画では、建設関連事業とサービス関連事業の両方に軸足をおく経営を確立する事を目指しており、引き続き安定的な収益基盤を持つ体制づくりを進めてまいります。

当社グループは、株主の皆様をはじめ、取引金融機関などご支援頂いている皆様や、お取引先、お客様の支えにより、長期間を要した再建をようやく果たすことができました。これからも皆様への感謝の気持ちを忘れずに、社会に必要とされ、「いい暮らしを、創る。」住まいのオンリーワングループを目指してまいります

 

(注)数値目標として記載している「計画最終年度の平成29年3月期連結経常利益350億円、単体経常利益230億円」は、NBs計画策定時(平成26年5月14日公表)のものであります。