第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度における国内経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動等がありましたが、企業収益や雇用・所得環境に改善が見られる等、緩やかな回復基調が続いております。
 マンション市場において、平成26年度の新規供給戸数は、首都圏で4万4,529戸(前期比19.4%減)、近畿圏で1万9,840戸(同15.0%減)となりました。消費税率引き上げ後、新規供給は低調で、首都圏は平成21年度(3万7,765戸)以来で4万5,000戸を下回り、近畿圏も平成21年度(1万9,094戸)以来で2万戸を下回りました。初月販売率は首都圏で74.6%(同5.2ポイント減)、近畿圏で75.2%(同3.7ポイント減)となりました。また、平成27年3月末の分譲中戸数は、首都圏では平成26年12月末の駆け込み的な供給の影響もあり5,218戸(同36.3%増)、近畿圏で2,266戸(同10.6%増)と共に前年度末を上回りました。供給商品内容は、首都圏の分譲単価と平均価格が717千円/㎡(同1.6%増)、5,088万円(同1.6%増)、近畿圏がそれぞれ538千円/㎡(同6.1%増)、3,642万円(同4.5%増)に上昇しました。
 このような中、新中期経営計画「newborn HASEKO Step Up Plan(略称:NBs(エヌ・ビー・エス)計画)」初年度の当連結会計年度につきましては、建設関連事業においてマンション建築工事が好調に推移した中、優先株式の全額償還の完了と普通株式の配当復活に加え、平成6年以来の直接市場からの資金調達となる普通社債の発行を実現、さらに単体の受注高も過去最高を達成することができました。
 以上の結果、当連結会計年度における業績は、不動産売上高が減少しましたが、マンション建築工事の施工量増大に伴い完成工事高及び設計監理売上高が増加したことから、売上高は6,422億円(同9.3%増)、主にマンション建築工事の施工量増大及び完成工事総利益率の改善により、営業利益は427億円(同48.1%増)、経常利益は419億円(同64.9%増)、当期純利益は285億円(同15.0%増)の増収増益となりました。営業利益率は6.6%(同1.7ポイント増)、経常利益率は6.5%(同2.2ポイント増)となりました

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より報告セグメントを、従来の「設計施工関連事業」、「不動産関連事業」及び「住宅関連サービス事業」の3区分から、新規の住宅供給等を主なマーケットとする「建設関連事業」、既存の住宅関連等を中心とする「サービス関連事業」及び海外における不動産の開発・販売等を行う「海外関連事業」の3区分に変更しております。
 これは、当連結会計年度から新中期経営計画「NBs計画」をスタートさせたことに伴い、事業セグメントの見直しを行ったことによるものであります。
 主な変更点として、従来の「設計施工関連事業」と、主に新築マンションの工事受注に付随する不動産取引等を合わせて「建設関連事業」とし、従来の「住宅関連サービス事業」と、主にエンドユーザー向けビジネスであるマンションの販売受託、不動産の流通仲介、マンションのリノベーション等を合わせて「サービス関連事業」としました。また、その他に含まれていた海外事業を独立させ「海外関連事業」としました。
 下記の前期比につきましては、前期の数値を変更後の報告セグメントの区分に組替えた数値との比較となっております。

(単位:億円)

 

 

建設関連事業

サービス関連事業

海外関連事業

売上高

4,892

(+372)

1,397

(+88)

198

(+73)

営業利益

365

(+151)

77

(-10)

△7

( -3)

 ( )内は前期比増減額

 

① 建設関連事業

建設関連事業において、建築工事では、労務不足による建築費の上昇の懸念はありますが、マンション建設に特化することによるコスト競争力・商品企画力について事業主からの高い評価を頂いている中で、着工時期の平準化及び物件の大型化等により、受注時の工事採算と当期の完成工事総利益率は共に改善傾向にあります。
 分譲マンション新築工事の受注は、首都圏で200戸以上の大規模物件33件を含む91件、近畿圏で200戸以上の大規模物件13件を含む35件、東西合計で126件となりました。また、分譲マンション以外の工事として、PFI方式による建替事業である「公務員宿舎勝島町住宅(仮称)整備事業」(東京都品川区、479戸)、「(仮称)吹田市営新佐竹台住宅集約建替事業」(大阪府吹田市、240戸)を受注しました。
 完成工事につきましては、賃貸住宅等6件を含む計139件を竣工させました。
 設計・監理では、56万戸を超える累計施工実績の中で提案してきた企画や技術、ノウハウの蓄積を活用して、マンションの基本性能の充実、可変性の向上、環境・防災性能の確保に積極的に取り組んでおります。

首都圏では、川崎市の高度許可を得たことで、高さ20m規制の土地に高さ約45mの建築を行い高い緑地率と開放感を実現した「ドレッセ二子新地」(川崎市高津区、434戸)が竣工しました。この特例は、敷地全周にわたり敷地境界線から10m以内に建築物を建てない、通常よりも厳しい日影規制、高い緑化率の確保等、厳しい設計要件を満たすことに加え、認可保育園や公開空地における先進の防災設備の設置等が、周辺環境に貢献する計画であると認められたことにより許可されたものであります。
 また、新駅設置も予定されている山手線品川駅・田町駅周辺エリアにおいて、超高層制振マンション「品川タワーレジデンス」(東京都港区、125戸)が竣工しました。
 近畿圏では、敷地内に保育施設と児童遊園を併設し、「大阪市子育て安心マンション」とミキハウス子育て総研「子育てにやさしい住まいと環境」の同時認定を受けた「ジオ新町」(大阪市西区、382戸)が竣工しました。本物件は、「職住近接」に「育」という概念を加えたライフスタイルの提案と、地域社会への子育てインフラを提供したデザインコンセプトが評価され、2014年度グッドデザイン賞を受賞しました。
 また、「CASBEE堺 建築環境賞」を集合住宅で初めて受賞した「プレイズ堺 光明池」(堺市南区、242戸)が竣工しました。住宅性能表示制度の設計住宅性能評価における省エネルギー対策等級4の取得、防災3点セットの取組み等が評価されました。
 マンション分譲では、当期に新たに完成した23物件他の販売及び引渡しを行いました。
 以上の結果、当セグメントにおいては、売上高4,892億円(前期比8.2%増)となり、主にマンション建築工事の施工量増大及び完成工事総利益率の改善により、営業利益365億円(同70.5%増)となりました。

 

当期の主な受注、完成工事及び分譲事業物件は以下のとおりです。

 

[主な受注工事]

 

 

 名称

所在

規模

グレーシアシティ川崎大師河原

川崎市川崎区

558戸

ザ・レジデンス検見川浜ガーデンズ

千葉市美浜区

545戸

オーベルグランディオ品川勝島

東京都品川区

452戸

プラウドシティ塚口 A街区・B街区

兵庫県尼崎市

834戸

シティテラス神崎川駅前 1街区

大阪市淀川区

411戸

セントアイナ藤が丘

愛知県長久手市

291戸

 

 

[主な完成工事]

 

 

 名称

所在

規模

ザ・シーズンズ

グランアルト越谷レイクタウン

埼玉県越谷市

435戸

ドレッセ二子新地

川崎市高津区

434戸

グランセンス吉川美南ステーションコート

埼玉県吉川市

429戸

ミリカ・テラス

大阪府吹田市

651戸

ジオ新町

大阪市西区

382戸

アルバックス覚王山ブランシェ

名古屋市千種区

137戸

 

 

[主な分譲事業物件]

 

 

 名称

所在

規模

パークホームズ稲毛小仲台

千葉市稲毛区

331戸

グレーシア横濱ベイ

横浜市中区

192戸

フォーチュンスクエア都筑中山

横浜市都筑区

157戸

メイツブラン長岡京

京都府長岡京市

217戸

ブランシエラ二条城

京都市上京区

47戸

セントハート藤が丘

愛知県長久手市

352戸

 

② サービス関連事業

サービス関連事業において、分譲マンション管理では、受注競争が激しい環境下ではありましたが、新築物件やリプレース物件の受注を着実に積み上げた結果、管理戸数は309,353戸(前期末比2.0%増)となりました。
 大規模修繕工事・インテリアリフォームでは、前期の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がありましたが、当社グループ管理外物件からの情報収集の強化に努めた結果、受注高は358億円(前期比10.5%増)となりました。
 賃貸マンション運営管理・社宅管理代行の運営戸数は、アセットマネジメント会社の取引先拡大等により、両事業合計で101,376戸(前期末比7.1%増)となりました。

シニアサービスでは、新規物件の稼働もあり、有料老人ホーム・高齢者向け住宅の稼働数は1,983戸(同5.4%増)となりました。

マンション販売受託では、前期の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動、全体的な販売価格上昇の影響等により、契約戸数・引渡戸数共に減少しました。

不動産流通仲介では、仲介の取扱件数は減少しましたが、リノベーション事業の販売戸数は増加しました。

以上の結果、当セグメントにおいては、売上高1,397億円(前期比6.7%増)となりましたが、前期の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動、サービス関連事業の体制強化に向けた人員の増加等の影響により、営業利益77億円(同11.3%減)となりました。

 

  当期の主な販売受託物件は以下のとおりです。

 

[主な販売受託物件]

 

 

 名称

所在

規模

オハナ 八王子オークコート

東京都八王子市

346戸

オハナ 鶴間ガーデニア

神奈川県大和市

307戸

グランソシア辰巳の森海浜公園

東京都江東区

185戸

阿波座ライズタワーズ フラッグ46

(OMPタワー)

大阪市西区

565戸

メイツブラン長岡京

京都府長岡京市

217戸

メイツ犬山レジデンス

愛知県犬山市

89戸

 

 

 

③ 海外関連事業

ハワイ州オアフ島におきまして、戸建分譲事業の契約戸数・引渡戸数は減少しましたが、東海大学校舎の工事の進捗、為替の影響等により、売上高は増加しました。
 以上の結果、当セグメントにおいては、売上高198億円(前期比57.8%増)、営業損失7億円(前期は営業損失4億円)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の553億円の収入超過と比較して153億円減少し、400億円の収入超過となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益423億円の計上などによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の294億円の収入超過と比較して335億円減少し、41億円の支出超過となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出47億円などによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の654億円の支出超過と比較して252億円増加し、402億円の支出超過となりました。これは主に、長期借入れによる収入・返済による資金の減少326億円、第1回B種優先株式の取得(自己株式の償還)による支出151億円などによるものであります。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末の1,377億円より41億円減少し、1,336億円となりました。

 

「第2 事業の状況」における各項目の記載金額には、消費税等は含まれておりません。

 

2【受注及び売上の状況】

 当連結会計年度より報告セグメントを、従来の「設計施工関連事業」、「不動産関連事業」及び「住宅関連サービス事業」の3区分から、「建設関連事業」、「サービス関連事業」及び「海外関連事業」の3区分に変更しております。前連結会計年度の金額、数量及び稼働数は、変更後の報告セグメントの区分方法により作成しております。

 

(1) 受注実績

セグメントの名称

区分

前連結会計年度

(自 平成25年4月1日

至 平成26年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

建設関連事業

建設工事等

379,943

477,438

(25.7%増)

設計監理

11,768

12,275

(4.3%増)

391,711

489,714

(25.0%増)

サービス関連事業

大規模修繕・

内装工事等

47,121

49,929

(6.0%増)

海外関連事業

建設工事等

3,918

合計

442,751

539,642

(21.9%増)

(注) 1 当連結企業集団では建設関連事業における建設工事等及び設計監理、サービス関連事業における大規模修繕・内装工事等及び海外関連事業における建設工事等以外の受注実績を把握することが困難であるため記載しておりません。

     2 セグメント間の取引については相殺消去しております。

(2) 売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 平成25年4月1日

至 平成26年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

建設関連事業

449,600

487,706

( 8.5%増)

サービス関連事業

125,395

134,612

( 7.4%増)

海外関連事業

12,575

19,849

(57.8%増)

合計

587,571

642,167

( 9.3%増)

(注)  セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(3) 建設関連事業の状況

売上実績

区分

前連結会計年度

(自 平成25年4月1日

至 平成26年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

建設工事等

319,104

401,520

(25.8%増)

設計監理

9,473

11,177

(18.0%増)

不動産販売等

117,992

73,856

(37.4%減)

その他

3,032

1,153

(62.0%減)

合計

449,600

487,706

( 8.5%増)

 

 

(4) サービス関連事業の状況

区分

前連結会計年度

(自 平成25年4月1日

至 平成26年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

数量

稼働数

売上実績

(百万円)

数量

稼働数

売上実績

(百万円)

不動産賃貸

9,125戸

8,693戸

11,546

8,898戸

8,524戸

11,284

(  2.3%減)

シニアサービス

2,118戸

1,882戸

4,168

2,295戸

1,983戸

9,892

(137.3%増)

マンション建物管理

303,260戸

(3,813棟)

31,454

309,353戸

(3,909棟)

31,531

(  0.2%増)

マンション賃貸管理

85,698戸

 

9,165

92,439戸

 

9,259

(  1.0%増)

大規模修繕・内装工事等

45,218

41,915

(  7.3%減)

分譲マンション販売受託

7,442

6,593

(11.4%減)

流通仲介・リノベーション等

7,702

14,001

(81.8%増)

その他

8,699

10,138

(16.5%増)

合計

125,395

134,612

( 7.4%増)

 (注)  数量及び稼働数は連結会計年度末現在で表示しております。

(5) 海外関連事業の状況

売上実績

区分

前連結会計年度

(自 平成25年4月1日

至 平成26年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

戸建分譲事業等

12,575

19,849

( 57.8%増)

合計

12,575

19,849

( 57.8%増)

 

 なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。

建設工事等及び設計監理の状況

① 受注高、売上高、繰越高及び施工高

期別

区分

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期繰越高

当期

施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高

比率

(%)

金額

(百万円)

前事業年度

(自 平成25年4月1日

至 平成26年3月31日)

建築工事

276,075

344,859

620,934

285,019

335,915

0

1,463

283,641

土木工事

685

940

1,625

1,404

221

25

55

1,274

276,760

345,799

622,559

286,423

336,136

0

1,518

284,916

業務受託

4,245

5,427

9,672

6,245

3,427

合計

281,005

351,226

632,231

292,668

339,563

設計監理

6,555

11,856

18,411

9,573

8,839

合計

287,561

363,082

650,642

302,240

348,402

当事業年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

建築工事

335,915

444,583

780,498

367,593

412,905

0

1,309

367,439

土木工事

221

1,908

2,129

1,269

860

32

273

1,487

336,136

446,492

782,628

368,862

413,765

0

1,582

368,927

業務受託

3,427

5,196

8,623

5,161

3,462

合計

339,563

451,688

791,251

374,024

417,227

設計監理

8,839

12,508

21,346

11,420

9,926

合計

348,402

464,195

812,597

385,444

427,153

   (注) 1  前事業年度以前に受注したもので、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。

2 次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。

3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。

 

② 受注工事高の受注方法別比率

 工事受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

(自 平成25年4月1日

至 平成26年3月31日)

建築工事

87.4

12.6

100.0

土木工事

82.6

17.4

100.0

当事業年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

建築工事

91.9

8.1

100.0

土木工事

100.0

100.0

   (注)  百分比は請負金額比であります。

 

③ 売上高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

(百万円)

前事業年度

(自 平成25年4月1日

至 平成26年3月31日)

建築工事

8,223

276,796

285,019

土木工事

47

1,357

1,404

8,270

278,153

286,423

業務受託

78

6,167

6,245

合計

8,348

284,320

292,668

設計監理

9,573

9,573

合計

8,348

293,893

302,240

当事業年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

建築工事

10,113

357,481

367,593

土木工事

1,269

1,269

10,113

358,750

368,862

業務受託

74

5,087

5,161

合計

10,187

363,837

374,024

設計監理

109

11,312

11,420

合計

10,295

375,149

385,444

   (注) 1  完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

前事業年度 請負金額60億円以上の主なもの

東京建物㈱・東京急行電鉄㈱

オリックス不動産㈱・日本土地建物販売㈱

伊藤忠都市開発㈱

Brillia City 横浜磯子

新築工事

積水ハウス㈱

グランドメゾン狛江

新築工事

住友不動産㈱

シティテラス戸田公園

新築工事

近鉄不動産㈱・野村不動産㈱・三菱商事㈱

近畿菱重興産㈱他

尼崎D.C. グランスクエア

SOUTH・WEST

新築工事

積水ハウス㈱他

グランドメゾン池下ザ・タワー

新築工事

 

当事業年度 請負金額60億円以上の主なもの

㈱大京・住友不動産㈱

ザ・シーズンズ グランアルト

越谷レイクタウン

新築工事

東京急行電鉄㈱・

三井不動産レジデンシャル㈱他

ドレッセ二子新地

新築工事

大和ハウス工業㈱・住友不動産㈱

グランセンス吉川美南ステーションコート

新築工事

㈱大京・東京建物㈱・関電不動産㈱・

新日鉄興和不動産㈱他

ミリカ・テラス

新築工事

野村不動産㈱・三井不動産レジデンシャル㈱・NREG東芝不動産㈱

ヒルコートテラス横浜汐見台

新築工事

 

2  完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりであります。

前事業年度   野村不動産㈱      29,215百万円 10.2%

当事業年度   野村不動産㈱      42,592百万円 11.5%

 

④ 手持高(平成27年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

(百万円)

建築工事

12,813

400,092

412,905

土木工事

860

860

12,813

400,952

413,765

業務受託

60

3,401

3,462

合計

12,874

404,353

417,227

設計監理

46

9,881

9,926

合計

12,919

414,234

427,153

  (注)  手持工事のうち請負金額70億円以上の主なものは、次のとおりであります。

住友不動産㈱

シティテラス神崎川駅前 1街区

新築工事

平成28年3月完成予定

野村不動産㈱

プラウドシティ南山

新築工事

平成28年3月完成予定

名鉄不動産㈱・関電不動産㈱・

ヤスダエンジニアリング㈱他

阿波座ライズタワーズ フラッグ46

(OMPタワー)

新築工事

平成28年3月完成予定

相鉄不動産㈱・ジェイアール西日本不動産開発㈱・西日本鉄道㈱他

グレーシアシティ川崎大師河原

新築工事

平成28年6月完成予定

野村不動産㈱

プラウドシティ志木本町

新築工事

平成28年8月完成予定

 

3【対処すべき課題】

当社グループを取り巻く環境は、東京オリンピックに向けて労務費の上昇、建設技能労働者の減少、為替相場・金利の動向など、多くの懸念要素があるものの、平成24年の政権交代以降大胆な金融緩和政策への期待から、株式市場も回復する等、景気の先行きは明るさを取り戻しつつあると認識しております

マンション市場では、平成27年度の新規供給戸数は、首都圏で5万戸以上、近畿圏でも2万戸以上の供給が可能な材料は整っています。郊外地域ではマンション価格の上昇もあって、慎重に供給が行われる傾向が継続するものの、都心部では好調な販売状況を背景に供給戸数が増加する可能性が高いことから、首都圏では4万5,000戸、近畿圏でも2万戸を上回る供給が行われると予測しています

また、需要者マインドも株価・景気の回復、平成27年春闘でのベースアップなどを背景に改善しはじめ、販売状況も改善、順調に推移すると思われます

当社グループは、NBs計画の初年度となる平成27年3月期において、足下の新築分譲マンション工事の受注環境の好調さに支えられ、NBs計画における計画最終年度(平成29年3月期)の数値目標を上回る連結経常利益となりました。しかしながら、NBs計画では、建設関連事業とサービス関連事業の両方に軸足をおく経営を確立する事を目指しており、引き続き安定的な収益基盤を持つ体制づくりを進めてまいります

 

NBs計画の概要は以下の通りとしております。

 

経営計画名:「newborn HASEKO(略称:NB計画)」

計画期間と位置付け:計画期間を平成27年3月期より6年間として、前半3年間を「Step Up」期間、後半3年間を「Jump Up」期間と位置付け、再生完了「新生・長谷工」として再誕・躍進を目指します。

前半3年間は新中期経営計画「newborn HASEKO Step Up Plan(略称:NBs(エヌ・ビー・エス)計画)」と称して、具体的には、以下の6点を掲げております。なお、将来に関する事項については、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 新規の住宅供給等を主なマーケットとする建設関連事業と既存の住宅関連等を中心とするサービス関連事業の両方に軸足をおく経営を確立すること。

建設関連事業においては、新築分譲マンション工事受注における適正利益を確保します。
サービス関連事業においては、収益の拡大と都市居住生活者の信頼に応える企業体の実現を目指します。

(2) グループ連携を深化させ、都市居住生活者の信頼に応える企業体を実現すること。

近い将来、首都圏の世帯数が減少に転じると予測される中、サービス関連事業の確立を一段と強力に推進させる観点から、グループ事業の連携と都市居住生活者からの更なる信頼獲得に取り組んでいきます。

(3) 安全・安心で快適な集合住宅を提供すること。

・次世代生産システムの開発・構築(IT技術の活用、工業化推進など)

・次世代マンションの開発・展開(省エネ・環境関連技術など)

・高齢者向け集合住宅、賃貸マンションの生産技術の具体案件での検証・展開

・改修技術開発の更なる強化

(4) 飛躍に向けた安定した財務基盤を確立すること。

・利益分配については、安定的な株主還元の継続、成長戦略投資、有利子負債の削減にバランスよく配分

・自己資本と負債の構成比を意識しつつ、期間利益の積上げによる自己資本の拡充を図り、

「飛躍に向けた安定した財務基盤の確立」

(5) 中長期的な視点を踏まえた新たな取組みへ挑戦すること。

・サービス関連事業を起点とした国内主要都市への事業エリア拡大の可能性を追求

・海外における長谷工グループの事業基盤構築への取り組み

(6) 実効性の高いガバナンス・内部統制の確立に向け注力すること。

・外部からの客観的・中立の経営監視機能として、過半数の社外監査役を含む監査役会による監視と、社外取締役を取締役会に加えることによる取締役会の活性化と経営の監視機能の強化を推進

・コンプライアンス、品質(ISO9001)、環境(ISO14001)、情報セキュリティ、個人情報保護の体制の継続的な維持・強化

・グループ一体となった経営体制の強化とそれを担う人材の育成

・女性社員の積極的な活用を推進

 

以上の取り組みにより、NBs計画における計画最終年度(平成29年3月期)の数値目標としましては、連結経常利益350億円、単体経常利益230億円としております。

当社グループは、株主の皆様をはじめ、取引金融機関などご支援頂いている皆様や、お取引先、お客様の支えにより、長期間を要した再建をようやく果たすことができました。これからも皆様への感謝の気持ちを忘れずに、社会に必要とされ、「いい暮らしを、創る。」住まいのオンリーワングループを目指してまいります。

 

4【事業等のリスク】

当社グループの業績及び財政状態は、今後起こり得る様々な要因により影響を受ける可能性がありますが、事業等のリスクについては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項について記載しております。当社グループは、これらの他にも様々なリスクがありうることを認識し、それらを可能な限り防止、分散あるいは回避するよう努めておりますが、当社グループの支配の及ばない外部要因や必ずしも現時点にて具現化する可能性が高くないと見られる事項等の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

(1) 分譲マンションに関わる事業への依存

 当社グループは、首都圏、近畿圏及び東海圏での分譲マンションに関わる事業をコアとしており、中でも分譲マンション建設事業に対する依存度が高くなっております。従って、受注高やその他の分譲マンション関連事業の取引高は、分譲マンションの新規供給量や販売状況、分譲マンション建設用地の供給、取引先デベロッパーの事業規模、住宅関連政策、住宅にかかる税制及び金利等の動向によっては大きく変動することになり、これらの変動が業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 また、当社は、土地情報収集力や分譲マンション事業に関するプロジェクトマネジメント力を背景として、土地持込による受注を主たるビジネスモデルとしておりますが、このビジネスモデルにより今後も引き続き競争優位に立ち、市場シェアや収益性の維持、拡大が図れるという保証はありません。

(2) 建設市場の動向

 建設業全般の業績の動向によりマンション建設の分野に対する参入が増え、同業他社との価格競争が激化した場合や、建設資材・労務等の急激な高騰及び調達難、協力業者等の確保状況による生産能力の低下等が生じた場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制、行政規制等

 当社グループが事業を行う上で遵守すべき法令・規則等は多岐に渡っており、建築基準法、建設業法、宅地建物取引業法、建築士法といった事業に直接関係する法令のみならず、会社法、金融商品取引法といった事業に直接関係はしないものの重要な法令等があります。当社グループにおきましては、役職員がこれらの法令等を遵守することができるよう啓蒙を適宜実施しておりますが、これらの法令等を遵守できなかった場合、またはこれらの法令等が当社グループの予測し得ない内容に改廃もしくは新設された場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

特に、建築基準法等のマンション建設における法的規制の改廃もしくは新設、又は建築確認・検査の厳格化等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 周辺住民との関係

 建設工事着工に際しましては、周辺住民に対する事業計画等の説明を実施しておりますが、反対運動及びそれに伴う訴訟等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5) 瑕疵担保責任

 施工品質の維持向上には万全を期しておりますが、引当金の計上額を上回る瑕疵担保負担の発生や、保険等でカバーできない損害賠償が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 建設事業における事故等

 当社グループは、安全教育の実施、点検パトロール等、工事事故・品質事故・災害を撲滅するために安全管理・施工管理を徹底し、また、工事着手にあたり入念な施工計画の立案等、安全な作業環境を整え施工を行っておりますが、万が一、重大な工事事故・品質事故・労働災害等が発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7) 取引先の信用リスク

 建設業においては、一つの取引における請負金額が大きく、多くの場合工事代金の支払いは分割であり、目的物の引渡時及び引渡後に多額の支払が行われる傾向があります。よって、工事代金の受領前に取引先が信用不安に陥った場合は、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(8) 保有不動産

 当社グループは、営業活動上の必要性から不動産を保有しておりますが、不動産には時価の変動リスクがあるとともに、一般的に流動性が高くないため売却時における需給関係によっては相場価格により売却できない場合があります。販売用不動産については事業計画の進捗次第では予定している回収額に満たない場合や様々な要因により計画を中止せざるを得ない場合があります。また、固定資産についても、賃貸条件や事業収支の悪化が生じる等、予定しているキャッシュ・フローが得られなくなる場合があります。これらの場合には評価損失・減損損失・売却損失等が発生し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(9) 企業買収等

 当社グループは、事業拡大のために企業買収等を実施することがありますが、買収等の対象事業を当社グループの経営戦略に沿って統合できない場合や、既存事業及び買収等の対象事業について効率的な経営資源の活用を行うことができなかった場合、当初想定していた効果が得られないことにより、のれんの減損の発生等、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(10)事業エリアの偏重

 当社グループは、会社の経営資源の効率化を実現するために事業エリアを首都圏・近畿圏・東海圏に集中しております。このため、将来、首都圏・近畿圏・東海圏並びにその周辺において、地震、暴風雨、洪水その他の天災、事故、火災、その他の人災等が発生し、工期の遅延、消費者の購買意欲の減退、所有資産の毀損等があった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(11)オペレーショナルリスク

 当社グループが業務を遂行するにあたり、役職員による不正行為、不適切な行為、事務処理のミス、労務管理上の問題等の各種オペレーショナルリスクの発生が考えられます。当社グループはリスク管理規程を定め、オペレーショナルリスクも含めた事業遂行に関わる様々なリスクについて管理し、それらのリスクに対応することによって、グループの経営方針の実現を阻害するリスク要因を可能な限り低減させ、コントロールするよう努めておりますが、上記のようなオペレーショナルリスクが発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(12)個人情報等の管理

 当社グループは、マンション購入顧客ならびに購入検討顧客や管理受託マンションの居住者等、多くの個人情報を保有しております。また、営業・購買情報等、多くのデータをコンピュータ管理しています。平成17年4月に完全施行された個人情報保護法にしたがって、個人情報の取扱いに関するルール(基本方針・規定・細則)を設け、体制整備を行い、また個人情報以外の情報の取扱いについても、各部個別にセキュリティポリシー(基本方針・対策基準・実施手順)を順次整備する等、情報管理を徹底し万全を期しておりますが、コンピュータシステムのトラブルによる情報流出や犯罪行為等による情報漏洩が発生する可能性があります。その場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(13)資金調達及び金利動向等

当社グループは、借入や社債発行による資金調達を行っているほか、リースを活用した設備投資を行っております。そのため、金利等の市場環境の変化、あるいは当社に対する格付の引下げ等の信用力低下により、資金調達コスト及びリース費用が増加し、当社グループの業績及び財務内容に影響を与える可能性があります。

 また、金融機関からの新規借入や社債発行あるいはリースの組成にあたっては同様の条件により行えるという保証はなく、当社グループが金融機関から借入や社債発行による調達を適時に行えない場合には、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。
 当社は、事業上必要な資金調達について、主に金融機関との間で協調融資方式によるタームローン、及びコミットメントライン契約の借入契約を締結しております。これらの借入契約には、自己資本の維持と経常利益の確保、有利子負債残高の3項目に関して財務制限条項が付加されており、それに抵触した場合には、多数貸付人の意思結集に基づく請求により期限の利益を喪失する可能性があり、約定の返済期限より前に残元本及び利息等を返済する義務が発生する可能性があります。

(14)株式市場の動向

 当社グループは、市場性のある株式を保有しておりますが、株式市場が下落し、保有株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(15)繰延税金資産

 当社グループでは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上していますが、この計算は将来の課税所得に関する見積に依拠しており、実際の結果は見積とは異なる可能性があります。当社グループが将来の課税所得の見積に基づいて、繰延税金資産の一部又は全部が回収できないと判断した場合や、法人税の減税等制度面における変更により、繰延税金資産の額が過大となった場合には、繰延税金資産は費用として計上され、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社の研究開発活動は、集合住宅における新築・ストックの両分野に軸足をおき、これまで継続してきた安全・安心、快適・健康、品質・性能、生産性向上等のテーマに取り組むと共に、受注の拡大、利益の向上に寄与する研究・技術開発を目指しております。

活動にあたっては、研究・技術開発のスピードアップと採用促進を図るため、埼玉県越谷市の技術研究所を拠点としながら、大学・研究機関等との共同研究・開発を進めるとともに、当社技術推進部門・設計部門・建設部門等社内各部門及び当社グループ各社の技術関連部門との連携・強化に努めております。

活動内容としては、①商品開発 ②生産技術開発 ③そのために必要な基礎的な研究開発に重点を置きながら、特に工業化対応、省エネ・環境対応、長寿命化、防災対応、ストック改修対応など、社会環境や顧客ニーズの変化に即した集合住宅関連技術の開発・商品化に注力しております。

当連結会計年度における研究開発費は、804百万円であり、主な研究・技術開発の成果は次のとおりです。なお、当該費用につきましては、セグメントに共通する費用を区分することが困難であるため、総額のみを記載しております。

 

 (建設関連事業)

(1) 次世代マンション企画“Beシリーズ”の開発・提案

「基本性能の充実」、「可変性」、「環境+防災」という3つのコンセプトで開発したマンション“Be-Next”、高層化を実現させた“Be-NextⅡ”、妻側住戸のリビングルームの開放性をさらに向上させた“Be-Next L”に続き、Be-Nextシリーズとして「免震20階建・バルコニー側の柱梁型なし架構」を開発し追加いたしました。当社が設計・施工する分譲マンションへ積極的に提案を進めており、今後も当社の提案力の強化を図るべく、時代やニーズに対応した次世代マンション企画の更なるブラッシュアップに取り組んでまいります。

(2)中高層集合住宅を対象とした技術の開発

大規模・高層物件等を主な対象として、建設技能労働者の不足及び高齢化への対応と、生産性と多様性を両立させ且つ品質向上等の更なる推進のため、構造躯体の工業化・PC化、低生産性部位の整理と更なる省力化、長谷工オリジナルの新商品開発及び設計・施工情報のIT化等の積極的な推進展開を行い、着工物件において順次採用導入しております。特に、これまでの開発検証等をベースにして、下記の開発に注力・推進しております。

サポート関連:高強度化する鉄筋コンクリート工事の施工性向上ならびに品質向上のため、柱・梁のコンクリート強度打ち分けなどを目的とした「打ち分け材を用いた梁の鉛直打継ぎ工法」の開発、また、梁・スラブのコンクリート強度打ち分け技術である「VERJON工法」の改良(異種強度梁研究会:ゼネコン9社共同開発)を行い、一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得しました。これらの成果は、既に施工案件への採用を進めております。

クラディング関連:マンション共用部等における石材・大型タイル材に応じた接着工法の確立に向け、比較性能検証を行い、妥当性の確認による施工仕様の確立を図りました

インフィル関連:お客様の声を商品企画に反映した長谷工オリジナル仕様「U's-style(ユーズスタイル)」の新たなアイテムとして、見せる収納で玄関スペースを有効活用し、オリジナリティを加えられる「デコ・ウォール」を開発したほか、将来における造作技能工不足対策を踏まえ、多工種が錯綜するトイレ廻り工事の省力化・品質確保を目的とした「トイレユニット」を開発し、「ブランシエラ板橋西台」(東京都板橋区、地上9階、80戸)等へ導入しました

設備関連:設備配管用ALC(軽量気泡コンクリート)袖壁の防火区画貫通処理材として、施工性の向上を図れる「ALC用防火区画貫通処理材(Nブロック)」の開発を完了し、関東圏・近畿圏・東海圏の新築マンション計39物件に導入したほか、屋上躯体工事の省力化を目的として、新たな屋上配管立上り乾式カバーの開発を完了いたしました

設計・施工情報のIT化関連:業務プロセス・生産プロセスの合理化に向けたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用を推進する体制及び各種ツールを整備・開発し、「ブランシエラ板橋西台」(東京都板橋区、地上9階、80戸)にて企画設計から実施設計、販売手法に至るまでのプロセスで活用いたしました。平成28年度には、「長谷工版BIM」を実施設計ベースで当社が設計・施工する首都圏の全物件に導入、更には近畿圏及び東海圏の物件にも展開させるべく推進してまいります。
 また、エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)の改正に伴う、新築マンションにおける一次エネルギー消費量に関する算出プロセスの迅速化を目的として、改正省エネ法に対する外皮性能算定プログラム及び根拠図を作成するプログラムの開発を完了いたしました。

 

(3) 超高層RC造集合住宅を対象とした技術の開発

これまで開発した成果を反映させた当社設計施工で、制振構造を採用した超高層RC造集合住宅「品川タワーレジデンス」(東京都港区、地上25階、125戸)が完成いたしました。引き続き、設計技術及び施工条件に即した最適な構工法技術の確立などを図りながら、超高層対応技術のレベルアップに努めてまいります。

(4) 省エネ・CO2削減など環境対応技術の開発

CO2削減プログラムの運用によるCO2削減効果の検証、マンションの長寿命化、環境負荷の低減、資源・エネルギーの効率化などの環境に配慮した技術を採用し、分譲マンションで初めて国土交通省の低炭素建築物の認定を取得した「シーズンスイート志木の杜」(埼玉県志木市、地上11階、152戸)や、都市の低炭素化の促進に関する法律(略称:エコまち法)の基準への適合に向けた取り組みを行い、建物全体で低炭素建築物の認定を取得した「キセラ川西オリヴィエ」(兵庫県川西市、地上11階、202戸)等、マンション事業の第一人者として環境配慮型の良質なマンションの普及に努めました

(5) 建設産業廃棄物削減対応

これまで当社では、段ボール古紙や木くずにおける循環型マテリアルリサイクルシステムの構築、また廃プラスチック類のサーマルリサイクルシステムの構築をしてまいりました。今後も、作業所所員・作業員への環境関連教育を通して、環境に配慮した循環型社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。

(6) 共同研究参画

競争と連携のネットワークを構築するため、多様な研究機関、企業等の幅広い結集を図り、研究開発の共通基盤(プラットフォーム)の確立を目指している「建築研究開発コンソーシアム」の活動に継続参画しております。

 

 (サービス関連事業)

ストック・リフォーム技術

拡大する国内ストック市場における既築集合住宅向け「ストックビジネス」の技術基盤づくりを目指しています。共用部では「建物の延命化・耐震化の工法」、「居住者の負担を軽減するための住みながら改修を可能にする施工法」の開発等、専有部では「新築なみのグレ-ドアップ提案」を進め、継続的にストック・リフォームの技術開発を行っております。

① 耐震改修に対応する技術としては、マンション住戸内工事が不要で、住みながら耐震補強工事ができるための技術として開発した「柱増打ち補強工法」が、株式会社東京建築検査機構の評定を取得しました。今後、既存の耐震補強技術と併せて、グループ各部門で本工法を積極的に提案していくにあたり、技術協力・受注支援を行ってまいります。

② 大規模修繕に対応する技術開発としては、大規模修繕工事中の仮設足場において、スライド足場使用時を想定した「通行可能パーテーション」を開発・導入(コスモシティ東京イースト(東京都荒川区、地上15階、147戸、平成14年竣工 築13年)等)いたしました。本部材の導入により、改修時の作業効率向上が可能となります。今後も引き続き、大規模修繕工事での導入を図ってまいります。

③ その他改修に対応する技術としては、長谷工コンバスマンションシリーズ(昭和48年~昭和57年)における共用部リノベーションの標準メニューを開発・導入(六高台サンハイツB棟(千葉県松戸市、地上8階、79戸、昭和52年竣工 築38年)等)しました。また、新たに開発・検証が完了した、給水管更新工事における共用給水縦管にステンレス管を利用した新たな更新工法、マンション屋上に新規設置するソーラーパネル架台用鋳鉄製基礎等について、今後採用提案を図ってまいります。

④ 専有部インテリアリフォームに対応する技術としては、「住みながらリフォーム」できるための提案商品として、マンション室内の直貼りフローリングをはがさないで床暖房対応フローリングへリフォームすることができる「暖cerR」を開発いたしました。今後、インテリアリフォーム工事の受注に向け積極的な提案を図ってまいります。

 

なお、子会社においては、研究開発活動は行われておりません。

建設関連事業及びサービス関連事業以外の事業においては、研究開発活動は行われておりません。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループにおける財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。

具体的には、工事進行基準による収益認識、固定資産、退職給付に係る資産、工事未払金、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、賞与引当金、役員賞与引当金、退職給付に係る負債、資産除去債務、繰延税金資産、偶発事象や訴訟等であり、これらに関し、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づいた見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。

(2) 経営成績

当事業年度における当社単体の受注高については、マンション建設に特化することによるコスト競争力・商品企画力への評価が高まっている中、主に大手事業主からの特命受注が増加したことにより、4,642億円(前期比27.8%増)となりました。

また、当社グループの経営成績については、不動産売上高が減少しましたが、マンション建築工事の施工量増大に伴い完成工事高及び設計監理売上高が増加したことから、売上高は6,422億円(同9.3%増)、主にマンション建築工事の施工量増大及び完成工事総利益率の改善により、営業利益は427億円(同48.1%増)、経常利益は419億円(同64.9%増)、当期純利益は285億円(同15.0%増)の増収増益となりました。

(3) 財政状態の分析

財政状態については、当連結会計年度末における連結総資産は、受取手形・完成工事未収入金等及び販売用不動産の増加により、前連結会計年度末に比べ195億円増加し、4,769億円となりました。

連結総負債は、主に借入金が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ51億円減少し、3,328億円となりました。

連結純資産は、第1回B種優先株式の取得を行ったことにより減少したものの、当期純利益を計上し利益剰余金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ246億円増加し、1,441億円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の26.1%に対し、30.2%となりました

(4) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の553億円の収入超過と比較して153億円減少し、400億円の収入超過となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益423億円の計上などによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の294億円の収入超過と比較して335億円減少し、41億円の支出超過となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出47億円などによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の654億円の支出超過と比較して252億円増加し、402億円の支出超過となりました。これは主に、長期借入れによる収入・返済による資金の減少326億円、第1回B種優先株式の取得(自己株式の償還)による支出151億円などによるものであります。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末の1,377億円より41億円減少し、1,336億円となりました。

 

(5) 新中期経営計画及び今後の方針

当社グループは、将来へ向けた経営体制の確立を目指し、平成26年5月に経営計画「newborn HASEKO(略称:NB計画)」を策定致しました。平成26年3月期をもって2年前倒しで終了した中期経営計画「PLAN for NEXT(略称:4N計画)」を「Hop」、NB計画の前半3年間を「Step」、NB計画の後半3年間を「Jump」と位置付け、再生完了「新生・長谷工」として再誕・躍進を目指します。

NB計画の期間は、平成27年3月期より6年間と定め、前半3年間を「新生・長谷工へのステップアップ期間」として、新中期経営計画「newborn HASEKO Step Up Plan(略称:NBs(エヌ・ビー・エス)計画)」を策定致しました。近い将来、首都圏の世帯数が減少に転じると予測される中、当社を取り巻く環境は、少子化・高齢化の進行や高経年マンションの増加、建設技能労働者の減少、環境・エネルギー問題等への対応など、基本的には4N計画策定時から大きく変化していない事から、本計画においても基本方針は4N計画を踏襲致しますが、サービス関連事業の確立を一段と強力に推進させる観点から、グループ事業の連携と都市居住生活者からの更なる信頼獲得を基本方針に加えて、重要課題として取り組んでまいります。

 

 

中期経営計画「newborn HASEKO Step Up Plan(略称:NBs計画)」の概要

 

■計画期間

平成27年3月期~平成29年3月期の3期間

 

■基本方針

1.新規の住宅供給等を主なマーケットとする建設関連事業と既存の住宅関連等を中心とするサービス関連事
   業の両方に軸足をおく経営の確立
 2.グループ連携を深化させ、都市居住生活者の信頼に応える企業体の実現
 3.安全・安心で快適な集合住宅を提供
 4.飛躍に向けた安定した財務基盤の確立
 5.中長期的な視点を踏まえた新たな取組みへの挑戦

6.実効性の高いガバナンス・内部統制の確立

 

■数値目標

本計画における計画最終年度の平成29年3月期において、連結経常利益350億円、単体経常利益230億円として
おります。

 

■具体内容

1.本業収益強化について

『新規の住宅供給等を主なマーケットとする建設関連事業と既存の住宅関連等を中心とするサービス関連事業の両方に軸足をおく経営の確立』

・新築分譲マンション工事受注における適正利益の確保

・サービス関連事業収益の拡大と都市居住生活者の信頼に応える企業体の実現

 

2.技術力・技術開発の強化・推進について

『安全・安心で快適な集合住宅を提供』

・次世代生産システムの開発・構築(IT技術の活用、工業化推進など)

・次世代マンションの開発・展開(省エネ・環境関連技術など)

・高齢者向け集合住宅、賃貸マンションの生産技術の具体案件での検証・展開

・改修技術開発の更なる強化

 

3.財務戦略について

『安定した財務基盤を確立するとともに、株主への利益還元を安定的に行っていく』

・利益分配については、安定的な株主還元の継続、成長戦略投資、有利子負債の削減にバランスよく配分

・自己資本と負債の構成比を意識しつつ、期間利益の積上げによる自己資本の拡充を図り、
「飛躍に向けた安定した財務基盤の確立」

 

4.将来を見据えた新領域への挑戦について

『中長期的な視点を踏まえた新たな取組みへの挑戦を萌芽させていく』

・サービス関連事業を起点とした国内主要都市への事業エリア拡大の可能性を追求

・海外における長谷工グループの事業基盤構築への取り組み

 

5.経営管理・人材等について

『お客様本位の事業活動を通じて社会に貢献し、信頼を得ることを経営の基本方針として掲げ、実効性の高いガバナンス・内部統制の確立に向け引き続き注力する』

・外部からの客観的・中立の経営監視機能として、過半数の社外監査役を含む監査役会による監視と、社外取締役を取締役会に加えることによる取締役会の活性化と経営の監視機能の強化を推進

・コンプライアンス、品質(ISO9001)、環境(ISO14001)、情報セキュリティ、個人情報保護の体制の継続的な維持・強化

・グループ一体となった経営体制の強化とそれを担う人材の育成

・女性社員の積極的な活用を推進

 

NBs計画の初年度となる平成27年3月期において、足下の新築分譲マンション工事の受注環境の好調さに支えられ、NBs計画における計画最終年度(平成29年3月期)の数値目標を上回る連結経常利益となりました。しかしながら、NBs計画では、建設関連事業とサービス関連事業の両方に軸足をおく経営を確立する事を目指しており、引き続き安定的な収益基盤を持つ体制づくりを進めてまいります。

当社グループは、株主の皆様をはじめ、取引金融機関などご支援頂いている皆様や、お取引先、お客様の支えにより、長期間を要した再建をようやく果たすことができました。これからも皆様への感謝の気持ちを忘れずに、社会に必要とされ、「いい暮らしを、創る。」住まいのオンリーワングループを目指してまいります