第2 【事業の状況】

 以下「第2 事業の状況」に記載している金額には,消費税等は含まれていない。

 

1 【業績等の概要】

(1)業績

 平成28年度の日本経済は,一部に改善の遅れもあったが,企業収益は好転し,個人消費や設備投資などにも持ち直しの動きがみられ,緩やかな回復基調が続いた。

 建設業界においても,民間工事が堅調に推移したうえ,官公庁工事で大型工事が受注の増加に寄与したことから,業界全体の受注高は前年度をやや上回る水準で推移した。

 このような状況のもと,当社グループの売上高は,完成工事高の減少などにより,前連結会計年度に比べ5.9%減少し1兆5,674億円となった。

 利益については,完成工事高は減少したものの,工事採算の改善による完成工事総利益の増加などにより,営業利益は前連結会計年度に比べ36.1%増加し1,288億円,経常利益は37.4%増加し1,311億円,親会社株主に帰属する当期純利益は66.8%増加し989億円となった。

 

 セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)

 

(当社建設事業)

 当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ8.4%減少し1兆2,530億円となったが,セグメント利益は,完成工事総利益率の改善などにより,前連結会計年度に比べ20.5%増加し1,129億円となった。

 

(当社投資開発事業)

 当社投資開発事業の売上高は,前連結会計年度に比べ43.6%減少し181億円となったが,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ12.8%増加し53億円となった。

 

(その他)

 当社が営んでいるエンジニアリング事業や子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ1.2%減少し4,729億円となり,セグメント利益は前連結会計年度に比べ3.6%減少し189億円となった。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,投資活動により346億円,財務活動により653億円それぞれ資金が減少したが,営業活動により1,436億円資金が増加した結果,現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ416億円増加し3,158億円となった。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは,税金等調整前当期純利益1,370億円の計上などにより1,436億円の資金増加となった。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは,当社における賃貸事業用資産の取得などにより346億円の資金減少となった。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは,長期借入金の返済や社債の償還などにより653億円の資金減少となった。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

 当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び開発事業では,「生産」を定義することが困難であり,また,子会社が営んでいる事業には,「受注」生産形態をとっていない事業もあるため,当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできない。

 また,当社グループの主な事業である建設事業では,請負形態をとっているので,「販売」という概念には適合しないため,販売実績を示すことはできない。

 このため,「生産、受注及び販売の状況」については,記載可能な項目を「1 業績等の概要」においてセグメントの業績に関連付けて記載している。

 なお,参考のため当社単独の事業の状況は次のとおりである。

(1) 受注(契約)高,売上高,及び次期繰越高

期別

種類別

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注(契約)高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期

繰越高

(百万円)

 

第114期

 

 平

27

 

 平

28

31

 

建設事業

 

 

 

 

 

建築工事

958,588

1,000,775

1,959,363

1,067,585

891,777

土木工事

463,832

283,858

747,691

282,762

464,928

1,422,420

1,284,633

2,707,054

1,350,347

1,356,706

開発事業等

25,725

57,266

82,991

56,485

26,505

合計

1,448,145

1,341,900

2,790,045

1,406,833

1,383,212

 

第115期

 

 平

28

 

 平

29

31

 

建設事業

 

 

 

 

 

建築工事

891,777

1,112,687

2,004,465

956,387

1,048,078

土木工事

464,928

311,666

776,595

288,644

487,950

1,356,706

1,424,353

2,781,060

1,245,031

1,536,028

開発事業等

26,505

60,707

87,212

46,518

40,694

合計

1,383,212

1,485,061

2,868,273

1,291,550

1,576,722

 (注) 1 前期以前に受注したもので,契約の更改により請負金額に変更のあるものについては,当期受注(契約)高にその増減額を含む。したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれる。

2 開発事業等は,投資開発事業及びエンジニアリング事業等である。

 

(2) 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は,特命と競争に大別される。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第114期

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

建築工事

40.6

59.4

100

土木工事

14.4

85.6

100

第115期

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

建築工事

36.5

63.5

100

土木工事

15.5

84.5

100

 (注) 百分比は請負金額比である。

(3) 売上高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第114期

 

27

 

 

28

31

 

建設事業

 

 

 

建築工事

126,222

941,362

1,067,585

土木工事

181,462

101,299

282,762

307,684

1,042,662

1,350,347

開発事業等

148

56,337

56,485

合計

307,833

1,099,000

1,406,833

第115期

 

28

 

 

29

31

 

建設事業

 

 

 

建築工事

129,144

827,242

956,387

土木工事

197,347

91,297

288,644

326,491

918,540

1,245,031

開発事業等

243

46,275

46,518

合計

326,734

964,815

1,291,550

 (注) 完成工事のうち主なものは,次のとおりである。

第114期

三菱地所(株)

大名古屋ビルヂング新築工事

 

 

大日本印刷(株)

市谷工場整備計画建設工事(A工区)

 

 

(同)スペードハウス

東急プラザ銀座新築工事

 

 

(株)ユーラス六ヶ所太陽光

ユーラス六ヶ所ソーラーパーク建設工事

 

 

中日本高速道路(株)

第二東名高速道路 観音山トンネル工事

 

第115期

京橋二丁目西地区市街地再開発組合

京橋二丁目西地区第一種市街地再開発事業施設建築物

(再開発棟)新築工事

 

 

埼玉県

埼玉県立小児医療センター新病院建設工事

 

 

東京建物(株)

三井不動産レジデンシャル(株)

三菱地所レジデンス(株)

東急不動産(株)

住友不動産(株)

野村不動産(株)

ベイズタワー&ガーデン新築工事

 

 

国土交通省

平成23-27年度 鹿野川ダムトンネル洪水吐新設工事

 

 

首都高速道路(株)

(高負)YK13工区(2)~YK23工区(1)

下部・半地下・トンネル・土工・街路築造工事

(首都高神奈川7号横浜北線新横浜出入口)

 

(4) 次期繰越高(平成29年3月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

建設事業

 

 

 

建築工事

199,085

848,993

1,048,078

土木工事

346,390

141,559

487,950

545,475

990,553

1,536,028

開発事業等

48

40,645

40,694

合計

545,523

1,031,198

1,576,722

 (注) 次期繰越工事のうち主なものは,次のとおりである。

春日・後楽園駅前地区市街地

再開発組合

春日・後楽園駅前地区第一種市街地再開発事業

施設建築物等新築工事(北街区)

 

 

道玄坂一丁目駅前地区市街地

再開発組合

道玄坂一丁目駅前地区第一種市街地再開発事業

施設建築物新築工事

 

 

メープルツリー・ビジネス・シティ社

メープルツリー・ビジネス・シティ新築工事第2期

(シンガポール)

 

 

東日本高速道路(株)

東京外かく環状道路本線トンネル(南行)大泉南工事

 

 

国土交通省

八ッ場ダム本体建設工事

 

3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社は,10年後のシミズグループとしてのあるべき姿を示す長期ビジョン「Smart Vision 2010」,5年間の方針を定める「中期経営方針」に基づき,向こう3ヶ年の経営戦略を示す「経営3ヶ年計画」を,毎年ローリング方式で策定している。

なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

平成26年7月に策定した「中期経営方針2014」の要旨は以下のとおりである。

 

   「中期経営方針2014」(要旨)

    1.建設事業の進化

      ・ 営業・ソリューションの進化

      ・ 技術,人材の進化

      ・ 現場マネジメントの進化

 

    2.重点3事業(ストックマネジメント,グローバル,サステナビリティ)の着実な成長

      ・ 投資開発・エンジニアリング事業の収益安定化

      ・ グローバル事業の持続的成長,安定的な収益の確保

      ・ 新規事業3分野(ecoBCP※1事業,自然共生事業,新事業)の将来の収益化に

        向けた重点投資

      ※1 ecoBCP:非常時の事業継続機能(BCP)を考慮したうえで,平常時の節電・

                省エネ(eco)を実現するという考え方

 

    3.経営基盤の一層の強化

      ・ 技術力強化

      ・ 人材マネジメント強化

      ・ 企業体質強化

      ・ CSR推進強化

 

 以上1~3の戦略により,社会・顧客価値創造への貢献,株主価値向上を図りながら,企業価値(シミズバリュー)向上を目指す。

 

平成29年度を初年度とする「経営3ヶ年計画」は,国内建設事業を主な収益源の柱としながらも,新たな事業領域にも経営基盤を確立していくための施策を打ち出す内容としている。

 現3ヶ年計画の最終年度(平成31年度)における経営目標は次のとおりである。

 

平成31年度(平成32年3月期)経営目標

 

 

(単位:億円)

 

売 上 高

経 常 利 益

 

有利子負債

連  結

17,600

1,150

 

3,500以内

当   社

14,400

1,000

 

2,500以内

 

経営3ヶ年計画(平成29~31年度)」の要旨は以下のとおりである。

 

   「経営3ヶ年計画(平成29~31年度)」(要旨)

   〈経営方針〉

   「環境変化に迅速・果敢に対応し,建設事業の進化と収益基盤の多様化を推進するととも

    に,経営基盤の強化と働き方改革を図り,シミズグループの持続的成長を実現する」

 

   〈重点施策〉

    1.品質・安全・工程管理の再徹底

      ・ものづくりの基本に立ち返る管理体制の再徹底

      ・ものづくりの技と心を兼ね備えた人財の育成

 

    2.建設事業の競争力・収益力強化及び生産性向上

      ・事業量の確保及び受注利益率の向上

      ・確実な生産体制の構築及び生産性向上の推進

      ・建設業の担い手確保に向けた諸施策の実践

 

    3.労働環境改善及びダイバーシティ経営推進

      ・ワーク・ライフ・バランスの実現

      ・ダイバーシティ経営の着実な推進

 

    4.国内建設事業に次ぐ,新たな収益源の構築

      ・関係部門の密接な連携によるグローバル事業の推進

      ・ストックマネジメント事業の戦略的強化

      ・環境・エネルギーを軸とするサステナビリティ分野の事業化

      ・将来に向けた戦略的な事業投資

 

    5.CSR経営の推進及びコンプライアンス経営の実践

      ・「攻め」と「守り」の環境経営の推進

      ・事業活動と連動したCSR経営の推進

      ・実効あるコーポレートガバナンスの確立

 

    6.災害発生時の体制整備による,安全・安心社会の実現

      ・震災・自然災害・テロ等,BCP対策の推進

      ・インフラや施設に関する安全安心技術の開発推進

 

   〈分野別の取組〉

    ■建設事業(国内)

     ものづくりの基本に立ち返り,品質・安全・工程管理の再徹底を図ったうえで,確実な

    生産制の構築及びICTを活用したi-Construction※2等による生産性の向上を推進して

    いる。また,建設業の担い手確保に向け,技能労働者の処遇向上を進めるとともに,週休

    二日制をはじめとする作業所における労働環境の改善を図っていく。

     ※2 i-Construction:建設生産システム全体でICT等を活用し,建設現場の生産性向上を図る

                取組み

 

    ■グローバル事業

     建設,投資開発,エンジニアリング等,関係部門の密接な連携により,中・長期を見据

    えた海外戦略を図っていく。建設事業では,安定した日系案件に加え,海外の地元資本,

    多国籍企業からの受注を推進している。また,海外の橋梁,トンネル等の土木インフラプ

    ロジェクトにも積極的に取組んでいく。

 

    ■ストックマネジメント事業

     投資開発事業として,当社グループの営業力,技術力を活用した付加価値の高い優良案

    件の創出に取組んでいる。

     また,建物竣工後の施設運営サービスを総合的に提供するBSP事業については,今

    後,潜在的需要の大きい建築物の老朽化に伴うリニューアルや管理・運営ビジネスに加え

    土木インフラメンテナンス,PPP/コンセッション分野にも事業を展開していく。

     ※3 BSP:Building Service Providerの略。竣工後の施設運営管理サービスを総合的に提供

            するもの

     ※4 PPP:Public Private Partnershipの略。公共サービスの提供に民間が参画する手法

 

    ■サステナビリティ事業

     「環境」と「事業継続」を融合した当社グループ独自の「ecoBCP」を基軸とした

    エネルギーサービス事業を推進するとともに,太陽光,風力,地熱など再生可能エネルギ

    ー分野にも積極的に取組んでいる。

 

    ■経営基盤の強化

     女性,外国人,障がい者等の「ダイバーシティ経営」,優秀な人材の確保・育成のため

    の「人財投資」とともに,「働き方改革」も積極的に進めていく。

     また,将来に向けた戦略的な投資を図りながら,CSRとコーポレートガバナンスの確

    立にも邁進していく。

 

  以上のような取組みを通じ,コーポレート・メッセージの「子どもたちに誇れるしごとを。」

 に込めた想いを,役員・従業員全員が日常の諸活動の中で実践し,震災復興,日本・国際経済の

 成長に寄与すべく,全力を尽くしていく。

4 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況,経理の状況等に関する事項のうち,投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には,次のようなものがある。
 なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 市場リスク

  短期的には,各種経済政策による公共投資の増加や,民間設備投資の回復が予測されるものの,国内外の景気後退等により民間設備投資が縮小した場合や,財政再建を目的として公共投資が減少した場合には,今後の受注動向に影響を及ぼす可能性がある。

 

(2) 建設資材価格及び労務単価の変動リスク

  建設資材価格や労務単価等が,請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し,それを請負金額に反映することが困難な場合には,建設コストの増加につながり,利益が悪化する可能性がある。

 

(3) 取引先の信用リスク

  景気の減速や建設市場の縮小などにより,発注者,協力業者,共同施工会社などの取引先が信用不安に陥った場合には,資金の回収不能や施工遅延などの事態が発生する可能性がある。

 

(4) 技術・品質上の重大事故や不具合などによる瑕疵等のリスク

  設計,施工段階における技術・品質面での重大事故や不具合が発生し,その修復に多大な費用負担や施工遅延が生じたり,重大な瑕疵となった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

 

(5) 海外事業リスク

  海外での事業を展開する上で,海外諸国での政治・経済情勢,為替や法的規制等に著しい変化が生じた場合や,資材価格の高騰及び労務単価の著しい上昇や労務需給のひっ迫があった場合には,工事の進捗や工事利益の確保に影響を及ぼす可能性がある。

 

(6) 投資開発事業リスク

  景気の減速による不動産市況の低迷や不動産ファンド等の破綻など,投資開発分野の事業環境に著しい変化が生じた場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(7) PFI事業におけるリスク

  PFI事業は事業期間が長期にわたることから,諸物価や人件費等の上昇など,事業環境に著しい変化が生じた場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(8) 保有資産の価格・収益性の変動リスク

  保有資産の時価が著しく下落した場合または収益性が著しく低下した場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(9) 自然災害リスク

  地震,津波,風水害等の自然災害や,感染症の世界的流行が発生した場合は,当社グループが保有する資産や当社グループの従業員に直接被害が及び,損害が発生する可能性がある。
 災害規模が大きな場合には,受注動向の変化・建設資材価格の高騰・電力エネルギー供給能力の低下等で事業環境が変化し,業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(10) 法令等に係るリスク

  当社グループの主な事業分野である建設業界は,建設業法,建築基準法,宅地建物取引業法,国土利用計画法,都市計画法,独占禁止法,さらには環境,労働関連の法令等,さまざまな法的規制を受けており,当社グループにおいて違法な行為があった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。
 また,事業活動において取得した個人情報,機密情報が漏洩した場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。
 加えて,社会や時代の変化により,新たな法規制の制定や法令の改廃等があった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項なし。

6 【研究開発活動】

 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は101億円であり,うち当社の研究開発費は99億円である。研究開発活動は当社の技術研究所と事業部門の技術開発部署で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものである。

 当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。

 これまでの研究開発の成果として,地震動予測で日本建築学会賞(論文)を,液状化対策技術で日本建築学会賞(技術)を受賞した他,土木学会,日本火災学会,日本建築仕上学会,日本風工学会より種々の賞を受賞した。

  当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。

 

(1)生産技術・i-Construction

①屋内位置情報を基盤とした現場情報共有システムを開発

  建設現場における作業関係者間のコミュニケーション効率の向上を目的に,屋内位置情報を基盤とした現場情報共有システムを,国際航業㈱と共同開発した。現場内に設置した測位インフラから現場作業者の位置情報を取得し,作業者がその場所で必要とする施工管理情報をスマート端末にプッシュ配信する。

②環境負荷の少ない解体工法「シミズ・クールカット」を本格適用

  環境負荷の少ない解体工法「シミズ・クールカット(2013年:㈱コンセックとの共同開発)」を本格適用した。シミズ・クールカットによって,解体に伴う振動がほぼゼロ,敷地境界での騒音は従来工法の3/4程度(85dB→63dB),粉じん量は10%以下となることを確認した。

200㎏クラスの重量鉄筋を楽に運べるアシストロボを開発

  重量鉄筋の配筋作業をアシストするロボットアーム型の作業支援ロボット「配筋アシストロボ」を,アクティブリンク㈱,㈱エスシー・マシーナリと共同開発した。従来,6~7人を要していた重量200㎏クラスにもおよぶ重量鉄筋の配筋作業を,1/2程度に省人化できる。

  ※アクティブリンク㈱は2017年4月1日に社名を㈱ATOUNに変更した。

④ICTを活用したダムコンクリート締固め管理システムを開発

  バイブレータ付きバックホウ(バイバック)による,ダムコンクリートのICTを活用した締固め管理システムを開発した。3Dスキャナと油量センサでコンクリート打設面の平滑度評価を,バイブレータの作動油量で締固めの完了判定を行う。締固め管理を定量的に行うことが可能となり,ダムコンクリートの一層の品質向上を図る。

⑤「山岳トンネル三次元前方予測・探査システム」を開発

  切羽前方30~50m先までの地山性状を三次元で予測・見える化するシステム「山岳トンネル三次元前方予測・探査システム」を開発・実用化した。トンネル掘削時に打設するロックボルトの削孔エネルギーデータで切羽前方の地山性状を予測することで,山岳トンネル施工の効率化と安全性向上を図る。

⑥日常探査が可能な切羽前方探査システム「S-BEAT」を開発

  トンネル掘削振動の反射波を利用して,掘削作業を中断することなく,切羽前方50~100m先までの地山状況を三次元的に探査するシステム「S-BEAT」を開発した。掘削作業に使用する資機材を探査に利用するため導入が容易で日常的に使用でき,山岳トンネル施工のさらなる生産性向上が期待できる。

⑦コンクリートの充填状況を予測する三次元シミュレーションシステムを開発

  型枠内へのコンクリートの充填状況を予測する三次元シミュレーションシステムを開発した。高密度配筋となる高架橋などの土木構造物を対象に,最適なコンクリート材料・配合,施工方法などの組合せを施工計画に反映することが可能になる。

 

⑧亀裂から出る高水圧の湧水を抑制する技術を開発

  岐阜県瑞浪市にある瑞浪超深地層研究所において,高水圧の湧水を抑制するグラウチング技術を,日本原子力研究開発機構と共同開発した。深度500m水平坑道で,グラウチングによる湧水抑制技術を実施した結果,実施しない場合の予測値に対して湧水量を約1/100まで低減した。

(2)防災・BCP技術

機器免震システム「安震スライダー」を開発・初適用

  地震時に重要設備機器の安全性を向上させる機器免震システム「安震スライダー」を日本ピラー工業㈱と共同開発し,初適用した。安震スライダーは,2014年に両社で共同開発した立体自動倉庫向けの免震システム「ラックベーススライダー」をバージョンアップしたもので,軽荷重の機器に対応できることを特長とする。

②高性能免震システム「マルチステップ免震」の適用実績が50万㎡突破

  超精密環境生産施設・研究施設向け高性能免震システム「マルチステップ免震(2007年開発)」の適用実績が,延床面積50万㎡を突破した。マルチステップ免震は微振動抑制と地震対応の免震機能を兼ね備えた高性能免震システムであり,平常時には生産・研究施設の生産機能に影響を及ぼす微小な揺れを抑制,大地震時には被害を最小化し早期復旧に寄与する。

③「1855年安政江戸地震」の震源と揺れを推定

  近年の地震観測記録に基づき,歴史資料が残る首都直下地震の中で最大被害をもたらした「1855年安政江戸地震」の震源モデルと地震動を推定し,その特性を明らかにした。この震源モデルから推定される首都圏での地震動には,建物に大きな影響を与える周期1~2秒の揺れが卓越する特性があることが分かった。今後,この研究成果を都心部での超高層建物等の耐震設計に反映していく。

「ちきゅう」の断層掘削試料の分析と動力学解析による南海トラフ地震での断層すべり量の定

 量的評価

  地球深部探査船「ちきゅう」により採取された日本海溝と南海トラフのプレート境界断層の試料を大阪大学,海洋研究開発機構高知コア研究所,カリフォルニア工科大学,国立研究開発法人建築研究所,東京大学地震研究所,京都大学防災研究所と共同で分析し,2011年東北地方太平洋沖地震での海溝付近の巨大すべり約80mを再現した。また,南海トラフ地震での海溝付近の断層が,約30~50m程度すべる可能性を世界で初めて明らかにした。

(3)環境・設備技術

①ニーズを先取りし,再生医療エンジニアリングを展開

  再生医療の普及に伴う細胞培養施設の建設ニーズに対応すべく,細胞加工・調製施設「S-Cellラボ」を当社技術研究所内に建設した。S-Cellラボは,培養の過程で細胞に影響を与える種々の環境要因をリアルタイム・モニタリングし,細胞培養環境を最適化する高度な環境制御機能を備える。今後,この研究施設の中で実際に各種細胞を培養しながら最適な培養環境を究明し,再生医療エンジニアリングに展開する。

②病室内の不快な臭いをいち早くキャッチし,換気で解消する「スメルケア」を開発

  病室内の快適性の向上を目的として,病室向けの臭気制御システム「スメルケア」を,新コスモス電機㈱と共同開発した。スメルケアは,オムツ交換や食事に伴う臭気を半導体センサにより拡散前に素早く感知し,給排気ファンを臭気濃度に合わせて即時に制御する。

③置換空調技術を応用したクリーン空調システムを開発

  クリーンルームの生産効率向上と省エネルギーを両立する,クリーン空調システム「置換クリーン空調」を開発した。清浄冷気をクリーンルームの床面に向って吹き出し,生産装置などの内部発熱により温まった室内空気と置換することで,室内空調と作業エリアの清浄化を行う。天井部に空調設備を設置する必要がないため階高を最大限活用でき,より大型の生産装置の導入が可能になる。

 

再生の杜」ビオトープによる生物多様性への貢献を確認

  「再生の杜」の10年間にわたるモニタリングによって,都市部の人工的な緑地が生物多様性を高めることを確認した。2006年4月に当社技術研究所内に建設した都市型の大規模ビオトープ「再生の杜」において,生物相や植生環境の継続的なモニタリングを実施してきた。その結果,都市部に構築された人工的な緑地が,生物生息環境を着実に形成し,生物多様性向上に寄与していることが確認できた。

⑤移動式の温熱・風環境計測システムを開発

  都市の屋外温熱環境を簡便に計測できる,移動式の環境計測システムを開発・実用化した。このシステムは,エリアの温熱環境を計測する「エリア計測車」と局地の温熱や風環境を計測する「スポット計測車」から構成され,ヒートアイランド現象等により酷暑化が進む都市において,酷暑緩和策が必要な地点や原因の特定に役立てる。実用化第一弾として,夏季に都心で計画されているマラソンコースの温熱環境を,東京大学と共同で計測した。

ベトナムの枯葉剤汚染土壌の無害化

  ベトナム政府機関の要請に基づき,ダイオキシン汚染土壌,いわゆる枯葉剤汚染土壌に対する当社土壌洗浄技術の有効性確認実験を実施した。その結果,同国汚染土壌の大半を占めるとみられる汚染レベル20,000pg-TEQ/gの汚染土壌におけるダイオキシン除去率は95%に達し,洗浄後は7割程度が再利用可能な1,000pg-TEQ/g未満の浄化土に再生できることを確認した。今後,パイロットテストの実施や大規模な浄化事業の実施などの可能性について広く検討を進めていく。

⑦埋め立て処理された石炭灰(エージング灰)を再生資材化

  石炭火力発電所から発生する石炭灰(新生灰)のうち,処分場に埋め立てられた石炭灰(エージング灰)のリサイクル技術を恵和興業㈱,東北電力㈱と共同開発した。エージング灰にセメントと水を混合することで,砂粒状のリサイクル資材として,路盤材,盛土材に活用する。東北地方の震災復興事業での活用を目指し,自治体,省庁など関係機関に提案していく。

(4)ICT・AI活用技術

①車イス利用者や視覚障がい者などに対応した屋内外ナビゲーション・システムを開発

  インクルーシブなまちづくりを支援する屋内外ナビゲーション・システムを,日本アイ・ビー・エム㈱東京基礎研究所と共同開発した。汎用のスマートデバイスを用い,位置測定機能・音声ナビゲーション機能・対話機能を備えたスマートフォン・アプリ,空間情報データベース,位置情報インフラが協調して,屋内外を継ぎ目なくナビゲーションすることで,車イス利用者や視覚障がい者などの円滑な移動をサポートする。

  さらに,日本橋室町地区を対象として,バリアフリー・ストレスフリーな街づくりの実現に向けた公開実験を,日本アイ・ビー・エム㈱,三井不動産㈱と共同実施した。

②名古屋大学と共同でシールド機操作のAI化に挑戦

  熟練オペレータの経験や技量に基づくシールド機操作のAIによるモデル化を,名古屋大学と共同で実施している。これまでに構築した操作モデルで,オペレータの操作行動を7割近く再現できており,これを発展させてシールド機操作へのAI活用を目指す。

③ディープラーニングで建物の電力需要を高精度で予測するシステムを開発

  AI技術による建物電力需要の高精度予測システムを,中部大学の協力を得て開発した。日々の電力需要と気象データ,設備・施設利用状況等の関係を蓄積,AIを使ってピーク電力需要の予測を行った。1年分のデータで検証した結果,従来の電力需要予測システムに比べて3.6ポイントの精度向上を実現し,予測誤差が5.7%に収まることを確認した。本技術の活用により,電力関連事業ならびに施設のエネルギー運用の効率化が見込まれる。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 財政状態の分析

 

  当連結会計年度末の資産の部は,有価証券に含まれる譲渡性預金は増加したが,受取手形・完成工事未収入金等の減少などにより1兆6,881億円となり,前連結会計年度末に比べ347億円減少した。

  当連結会計年度末の負債の部は,支払手形・工事未払金等の減少や社債の償還などにより1兆1,113億円となり,前連結会計年度末に比べ1,259億円減少した。連結有利子負債の残高は3,400億円となり,前連結会計年度末に比べ524億円減少した。

  当連結会計年度末の純資産の部は,親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加などにより5,768億円となり,前連結会計年度末に比べ912億円増加した。また,自己資本比率は33.9%となり,前連結会計年度末に比べ6.0ポイント増加した。

(2) 経営成績の分析

 

  当連結会計年度の売上高は,完成工事高の減少などにより,前連結会計年度に比べ5.9%減少し1兆5,674億円となった。

  利益については,完成工事高は減少したものの,工事採算の改善による完成工事総利益の増加などにより,営業利益は前連結会計年度に比べ36.1%増加し1,288億円,経常利益は37.4%増加し1,311億円,親会社株主に帰属する当期純利益は66.8%増加し989億円となった。

(3) キャッシュ・フローの状況

 

  キャッシュ・フローの状況は,「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。