第2 【事業の状況】

 以下「第2 事業の状況」に記載している金額には,消費税等は含まれていない。

 

1 【業績等の概要】

(1)業績

 平成27年度の日本経済は,上半期には設備投資に持ち直しの動きが見られ,企業収益は非製造業を中心に改善傾向にあったが,年度末に向けて,中国や新興国の経済減速,消費動向の低迷等により景気に弱さが見られた。

 建設業界においては,官公庁工事では前年度に大型案件があった反動などにより受注が減少したものの,民間工事で製造業・非製造業とも増加したことにより,業界全体としての受注高は前年度並みの水準を維持した。

 このような状況のもと,当社グループの売上高は,完成工事高の増加などにより,前連結会計年度に比べ6.2%増加し1兆6,649億円となった。

 利益については,完成工事高の増加に加え,工事採算の改善による完成工事総利益の増加により,経常利益は前連結会計年度に比べ69.8%増加し955億円,親会社株主に帰属する当期純利益は77.6%増加し593億円となった。

 

 セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)

 

(当社建設事業)

 当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ4.6%増加し1兆3,678億円となった。セグメント利益は,売上高の増加に加え,主として国内建築工事の採算が改善したことなどから,前連結会計年度に比べ96.3%増加し937億円となった。

 

(当社投資開発事業)

 当社投資開発事業の売上高は,前連結会計年度に比べ52.8%増加し322億円となったが,セグメント利益は,前連結会計年度に比較的採算の良い物件の売却があった反動などから,前連結会計年度に比べ19.4%減少し47億円となった。

 

(その他)

 当社が営んでいるエンジニアリング事業や子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ8.7%増加し4,785億円となり,セグメント利益は前連結会計年度に比べ4.3%増加し196億円となった。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,投資活動により資金は140億円減少したが,営業活動により383億円,財務活動により91億円それぞれ資金が増加した結果,現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ316億円増加し2,741億円となった。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは,税金等調整前当期純利益936億円の計上などにより383億円の資金増加となった。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは,当社における賃貸事業用資産の取得などにより140億円の資金減少となった。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは,転換社債型新株予約権付社債の発行などにより91億円
の資金増加となった。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

 当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び開発事業では,「生産」を定義することが困難であり,また,子会社が営んでいる事業には,「受注」生産形態をとっていない事業もあるため,当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできない。

 また,当社グループの主な事業である建設事業では,請負形態をとっているので,「販売」という概念には適合しないため,販売実績を示すことはできない。

 このため,「生産、受注及び販売の状況」については,記載可能な項目を「1 業績等の概要」においてセグメントの業績に関連付けて記載している。

 なお,参考のため当社単独の事業の状況は次のとおりである。

(1) 受注(契約)高,売上高,及び次期繰越高

期別

種類別

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注(契約)高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期

繰越高

(百万円)

 

第113期

 

 平

26

 

 平

27

31

 

建設事業

 

 

 

 

 

建築工事

965,072

1,040,785

2,005,858

1,047,270

958,588

土木工事

337,633

380,585

718,218

254,386

463,832

1,302,705

1,421,371

2,724,077

1,301,656

1,422,420

開発事業等

35,591

29,243

64,834

39,109

25,725

合計

1,338,297

1,450,614

2,788,911

1,340,766

1,448,145

 

第114期

 

 平

27

 

 平

28

31

 

建設事業

 

 

 

 

 

建築工事

958,588

1,000,775

1,959,363

1,067,585

891,777

土木工事

463,832

283,858

747,691

282,762

464,928

1,422,420

1,284,633

2,707,054

1,350,347

1,356,706

開発事業等

25,725

57,266

82,991

56,485

26,505

合計

1,448,145

1,341,900

2,790,045

1,406,833

1,383,212

 (注) 1 前期以前に受注したもので,契約の更改により請負金額に変更のあるものについては,当期受注(契約)高にその増減額を含む。したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれる。

2 開発事業等は,投資開発事業及びエンジニアリング事業等である。

 

(2) 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は,特命と競争に大別される。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第113期

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

建築工事

42.0

58.0

100

土木工事

13.9

86.1

100

第114期

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

建築工事

40.6

59.4

100

土木工事

14.4

85.6

100

 (注) 百分比は請負金額比である。

(3) 売上高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第113期

 

26

 

 

27

31

 

建設事業

 

 

 

建築工事

103,711

943,558

1,047,270

土木工事

145,425

108,960

254,386

249,137

1,052,519

1,301,656

開発事業等

237

38,872

39,109

合計

249,374

1,091,391

1,340,766

第114期

 

27

 

 

28

31

 

建設事業

 

 

 

建築工事

126,222

941,362

1,067,585

土木工事

181,462

101,299

282,762

307,684

1,042,662

1,350,347

開発事業等

148

56,337

56,485

合計

307,833

1,099,000

1,406,833

 (注) 完成工事のうち主なものは,次のとおりである。

第113期

三井不動産レジデンシャル(株)

東京建物(株)

三菱地所レジデンス(株)

東急不動産(株)

住友不動産(株)

野村不動産(株)

SKYZ TOWER&GARDEN新築工事

 

 

JGトラスティ社

JG2トラスティ社

ウエストゲート新築工事(シンガポール)

 

 

日本中央競馬会

札幌競馬場スタンド改築その他工事

 

 

中日本高速道路(株)

第二東名高速道路 東上トンネル他1トンネル工事

 

 

東日本高速道路(株)

常磐自動車道山元工事

 

第114期

三菱地所(株)

大名古屋ビルヂング新築工事

 

 

大日本印刷(株)

市谷工場整備計画建設工事(A工区)

 

 

(同)スペードハウス

東急プラザ銀座新築工事

 

 

(株)ユーラス六ヶ所太陽光

ユーラス六ヶ所ソーラーパーク建設工事

 

 

中日本高速道路(株)

第二東名高速道路 観音山トンネル工事

 

(4) 次期繰越高(平成28年3月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

建設事業

 

 

 

建築工事

176,673

715,104

891,777

土木工事

364,423

100,505

464,928

541,097

815,609

1,356,706

開発事業等

28

26,477

26,505

合計

541,125

842,086

1,383,212

 (注) 次期繰越工事のうち主なものは,次のとおりである。

京橋二丁目西地区市街地再開発組合

京橋二丁目西地区第一種市街地再開発事業施設建築物

(再開発棟)新築工事

 

 

埼玉県

埼玉県立小児医療センター新病院建設工事

 

 

メープルツリー・ビジネス・シティ社

メープルツリー・ビジネス・シティ新築工事第2期

(シンガポール)

 

 

東日本高速道路(株)

東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事

 

 

国土交通省

八ッ場ダム本体建設工事

 

3 【対処すべき課題】

当社は,10年後のシミズグループとしてのあるべき姿を示す長期ビジョン「Smart Vision 2010」,5年間の方針を定める「中期経営方針」に基づき,向こう3ヶ年の経営戦略を示す「経営3ヶ年計画」を,毎年ローリング方式で策定している。

平成26年7月に策定した「中期経営方針2014」に基づく平成28年度を初年度とする「経営3ヶ年計画」は,国内建設事業を主な収益源の柱としながらも,新たな事業領域にも経営基盤を確立していくための施策を打ち出す内容としている。

 

「中期経営方針2014」(要旨)

 1.建設事業の進化

   ・ 営業・ソリューションの進化

   ・ 技術,人材の進化

   ・ 現場マネジメントの進化

 

 2.重点3事業(ストックマネジメント,グローバル,サステナビリティ)の着実な成長

   ・ 投資開発・エンジニアリング事業の収益安定化

   ・ グローバル事業の持続的成長,安定的な収益の確保

   ・ 新規事業3分野(ecoBCP※1事業,自然共生事業,新事業)の将来の収益化に向けた

     重点投資

 

 3.経営基盤の一層の強化

   ・ 技術力強化

   ・ 人材マネジメント強化

   ・ 企業体質強化

   ・ CSR推進強化

 

 以上1~3の戦略により,社会・顧客価値創造への貢献,株主価値向上を図りながら,企業価値(シミズバリュー)向上を目指す。

 

「経営3ヶ年計画(平成28~30年度)」(要旨)

〈経営方針〉

「社会・顧客の変化を的確に捉え,建設事業の進化と収益基盤の拡大に向けた取組みを着実に推進するとともに,経営体制・経営基盤の強化を図り,シミズグループの持続的成長を実現する」

 

〈重点施策〉

 1.確実な生産体制の構築による品質・安全・工程管理の徹底とより一層の生産性向上

   ・ものづくりの意識向上による現場マネジメント力の強化

   ・取引業者と一体となったイノベーション活動の取組み強化

 

 2.建設業の担い手確保に向けた労働環境の改善

   ・意識改革と業務効率向上(ICT活用等)による労働時間の削減

   ・技能労働者の処遇改善等,シミズ・サプライチェーンの強化

 

 3.建設事業における更なる収益力の向上

   ・プロジェクトの上流段階からの計画的な利益確保

   ・情報収集力,技術力,提案力の強化による受注拡大

   ・2020年以降も見据えた長期大型案件への戦略的取組み

   ・「環境・エネルギー対策,防災,減災」等,社会・顧客ニーズに適応した,質の高いソリ

    ューション活動の推進

 

 4.収益基盤の拡大に向けた経営体制の構築

   ・グループ企業と一体となったストックマネジメント(投資開発/BSP※2)事業の

    収益力向上

   ・エネルギーを軸としたサステナビリティ事業分野における事業化の推進

   ・建設事業だけでなく,ストックマネジメント,サステナビリティ事業を含む,全社を挙げ

    たグローバル化の一層の推進

 

 5.ダイバーシティ経営の積極的推進と人財投資

   ・女性の活躍推進,障がい者・外国人の積極的な採用・育成

   ・優秀な人材の確保・育成に向けた「人財投資」の推進

 

 6.CSR推進及びコーポレートガバナンス確立

   ・事業活動と連動したCSR活動及び社会貢献活動への取組み

   ・コンプライアンス経営の推進によるコーポレートガバナンス実践

 

※1 ecoBCP:非常時の事業継続機能(BCP)を考慮したうえで,平常時の節電・省エネ

          (eco)を実現するという考え方。

※2 BSP    :Building Service Providerの略。竣工後の施設運営管理サービスを総合的

          に提供するもの。

 

 ■建設事業(国内)

  旺盛な建設事業に確実に対応できる生産体制の構築により品質・安全・工程管理を徹底しなが

 ら,取引業者と一体となった生産性向上を目指している。

  また,建設業の担い手確保に向け労働環境の改善に取組むとともに,建設事業のより一層の収

 益力向上のため,長期大型案件の戦略的創出等を図っていく。

 

 ■グローバル事業

  日系企業からの安定したプロジェクトの受注に加え,海外の地元資本,多国籍企業からのプロ

 ジェクトの受注も着実に獲得している。また,橋梁,トンネル等の土木インフラプロジェクトも

 積極的に受注していく。

 

 ■ストックマネジメント事業

  投資開発事業として,当社グループの営業力,技術力を活用した付加価値の高い優良なプロジ

 ェクトの創出に取組むとともに,建物竣工後の施設運営管理サービスを総合的に提供するBSP

 事業にも力を注いでいる。

 

 ■サステナビリティ事業

  「環境」と「事業継続」を融合した当社グループ独自の「ecoBCP」を基軸としたエネル

 ギーサービス事業を推進するとともに,太陽光,風力,地熱など再生可能エネルギー分野にも積

 極的に取組んでいる。また,農林水産等の自然共生事業の分野でもプロジェクトを進めていく。

 

 ■経営基盤の強化

  女性等の積極的な採用・育成を図るダイバーシティ経営,優秀な人材の確保・育成に向けた

 「人財投資」の推進を図るとともに,CSRとコーポレートガバナンスの確立も進めていく。

 

  以上のような取組みを通じ,コーポレート・メッセージの「子どもたちに誇れるしごとを。」

 に込めた想いを,役員・従業員全員が日常の諸活動の中で実践し,震災復興,日本経済の成長に

 寄与すべく,全力を尽くしていく。

4 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況,経理の状況等に関する事項のうち,投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には,次のようなものがある。
 なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 市場リスク

  短期的には,各種経済政策による公共投資の増加や,民間設備投資の回復が予測されるものの,国内外の景気後退等により民間設備投資が縮小した場合や,財政再建を目的として公共投資が減少した場合には,今後の受注動向に影響を及ぼす可能性がある。

 

(2) 建設資材価格及び労務単価の変動リスク

  建設資材価格や労務単価等が,請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し,それを請負金額に反映することが困難な場合には,建設コストの増加につながり,利益が悪化する可能性がある。

 

(3) 取引先の信用リスク

  景気の減速や建設市場の縮小などにより,発注者,協力業者,共同施工会社などの取引先が信用不安に陥った場合には,資金の回収不能や施工遅延などの事態が発生する可能性がある。

 

(4) 技術・品質上の重大事故や不具合などによる瑕疵等のリスク

  設計,施工段階における技術・品質面での重大事故や不具合が発生し,その修復に多大な費用負担や施工遅延が生じたり,重大な瑕疵となった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

 

(5) 海外事業リスク

  海外での事業を展開する上で,海外諸国での政治・経済情勢,為替や法的規制等に著しい変化が生じた場合や,資材価格の高騰及び労務単価の著しい上昇や労務需給のひっ迫があった場合には,工事の進捗や工事利益の確保に影響を及ぼす可能性がある。

 

(6) 投資開発事業リスク

  景気の減速による不動産市況の低迷や不動産ファンド等の破綻など,投資開発分野の事業環境に著しい変化が生じた場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(7) PFI事業におけるリスク

  PFI事業は事業期間が長期にわたることから,諸物価や人件費等の上昇など,事業環境に著しい変化が生じた場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(8) 保有資産の価格・収益性の変動リスク

  保有資産の時価が著しく下落した場合または収益性が著しく低下した場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(9) 自然災害リスク

  地震,津波,風水害等の自然災害や,感染症の世界的流行が発生した場合は,当社グループが保有する資産や当社グループの従業員に直接被害が及び,損害が発生する可能性がある。
 災害規模が大きな場合には,受注動向の変化・建設資材価格の高騰・電力エネルギー供給能力の低下等で,事業環境が変化し業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(10) 法令等に係るリスク

  当社グループの主な事業分野である建設業界は,建設業法,建築基準法,宅地建物取引業法,国土利用計画法,都市計画法,独占禁止法,さらには環境,労働関連の法令等,さまざまな法的規制を受けており,当社グループにおいて違法な行為があった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。
 また,事業活動において取得した個人情報,機密情報が漏洩した場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。
 加えて,社会や時代の変化により,新たな法規制の制定や法令の改廃等があった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項なし。

6 【研究開発活動】

 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は85億円であり,うち当社の研究開発費は84億円である。研究開発活動は当社の技術研究所等で行われており,その内容は主に当社建設事業に係るものである。

 当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。

  当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。

 

(1)生産技術

①高いコンクリート品質を実現する「ゼロシュリンク」の性能を確認

  超低収縮コンクリート「ゼロシュリンク」について,優れたひび割れ防止効果が得られることを実証した。いすゞ自動車㈱新研修センター(いすゞものづくりサービストレーニングセンター)の擁壁へ適用し,半年以上の経過時点においても擁壁表面のコンクリート品質に変化が生じていないことを確認した。

②コンクリート表層品質を向上する「アート型枠」を開発

  コンクリートの表層品質を向上させる超撥水型枠「アート型枠」を東洋アルミニウム㈱と共同開発した。水を著しくはじく“蓮の葉”の表面機構を模したバイオミメティクス(生物模倣)技術を応用し,コンクリート表面の美観を損なう気泡跡や色むらを大幅に抑制する効果を確認した。

③「タフネスコート」によるトンネル覆工コンクリートの剥落防止効果を検証

  コンクリート構造物の耐衝撃性や耐久性等を向上させる技術「タフネスコート」について,トンネル覆工コンクリートの剥落防止工法としての有効性ならびに実工事への適用可能性を,(公財)鉄道総合技術研究所,三井化学産資㈱と共同で検証した。

④掘削サイクルタイムを短縮できる「急速ズリ処理システム」を開発

  トンネル工事のズリ処理時間を大幅に短縮する「急速ズリ処理システム」を開発・実用化した。発破工法による長大山岳トンネル工事の工期を短縮できる。当社が兵庫県で施工中の三谷トンネルに適用し,ズリ処理時間33%,掘削サイクルタイム11%の短縮を確認した。

⑤気象予報技術を応用した「地下水流動解析技術」を開発

  大規模地下構造物等の建設時に得られる地下水観測データを継続的に活用し,予測精度を向上させる地下水流動解析技術を開発した。観測データによって解析モデルを自動修正する,気象予報分野で発展してきた「データ同化手法」を地下水流動解析に応用した。

(2)ICT活用技術

掘削機の打撃振動を利用した「切羽前方探査システム」を開発

  山岳トンネル工事で掘削機による打撃振動の前方反射波を捉え,地質の変化を予測する「切羽前方探査システム」を開発した。切羽を安定させるために打ち込むロックボルトを受信センサーとし,振動の反射波が戻ってくるまでの時間を計測する。

②シールド機外周部の砂層を高精度に検出する「砂層探査システム」を開発

  シールド機外周部の砂層を高精度に検出する「砂層探査システム」を応用地質㈱と共同で開発した。シールド機のカッターヘッド側面に装備した「比抵抗センサー」を用いて,シールド掘進中に掘削断面全周の地盤状況をリアルタイムで把握できる。

③タブレット端末による「地下埋設物可視化システム」を開発

  地下埋設物の存在を適切に把握する「地下埋設物可視化システム」を㈱菱友システムズ等と共同で開発・実用化した。現地の風景画像と地下埋設物のデータを重ね合わせて“見える化”することで,地下掘削工事によるライフラインの損傷を防止できる。

④「覆工コンクリートの表層品質管理支援システム」を開発

  トンネルの覆工コンクリート表層品質を管理する支援システムを開発した。コンクリート表層を撮影したデジタル画像を解析し,変状を示す展開図を作成する。個々の変状について従来の1/2程度の時間で評価できる。

⑤コンクリートの変状を把握する「画像モニタリングシステム」を開発

  タブレット端末の撮影機能を使用して,コンクリートのひび割れや剥落等の変状を点検できる「画像モニタリングシステム」を㈱菱友システムズと開発した。画像データはインターネットで確認でき,専門技術者が現場に行くことなく変状の進行をモニタリングできる。

⑥視覚障がい者向けの音声による「屋内外歩行者ナビゲーション・システム」を開発

  屋内外を区別なく案内・誘導できる,視覚障がい者向けの音声による「屋内外歩行者ナビゲーション・システム」を開発し,技術研究所内に常設体験施設“親切にささやく場”を開設した。日本IBM東京基礎研究所の技術協力を受け,2018年の実用化を目指す。

(3)防災・BCP技術

①「スリム耐火ウッド」が1時間耐火性能の認定取得

  菊水化学工業㈱と共同開発した「スリム耐火ウッド」について,その耐火性能を証明する国土交通大臣認定を取得した。異なる耐火材料を組み合わせることで,スリムでありながらも1時間耐火を実現した。

②地震後の建物安全性を評価する「安震モニタリングSP」を開発

  地震発生後即時に建物の安全性(継続使用の可否)を高精度に評価するシステム「安震モニタリングSP」を開発し,(一財)日本建築総合試験所から評価性能を認定する建築技術性能証明を取得した。プロトタイプは,すでに7棟のオフィスビルに導入されている。

③特定天井対応の耐震天井構工法「リニアブレース」を開発

  特定天井に対応した新たな耐震天井構工法「リニアブレース」を開発した。斜め部材(ブレース)で躯体と天井ボードを直接連結し,建物の揺れと共振しにくい剛性の高い吊り天井をローコスト・短工期で構築できる。本構工法は,(一財)日本建築センターから一般評定を取得している。

④ローコスト液状化対策「グラベルサポート工法」の適用拡大

  小規模施設・外構向けローコスト液状化対策工法「グラベルサポート工法」の効果とコストパフォーマンスが高く評価され,適用実績が20件を超えた。

(4)環境・eco技術

①四国最高クラスのecoBCPオフィス「清水建設四国支店新社屋」が竣工

  「清水建設四国支店新社屋」が竣工した。経済産業省が求める“ZEB Ready(50%以上のエネルギー削減)”を上回る省エネ性能と,南海トラフ巨大地震を想定した事業継続性能を備え,当社が提唱する“ecoBCP”を実現している。

②米国ニューヨーク州でZEB実証を開始

  新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と清水建設㈱,Shimizu North America LLCは,ニューヨーク州立工科大学(SUNY Poly)と共同で,2015年に竣工したSUNY Poly内のZEN(Zero Energy Nanotechnology)ビルへの省エネルギー技術の導入を完了し,ZEB(Zero Energy Building)実現に向けた実証試験を開始した。

③中小規模オフィス向けの天井輻射空調システム「S-ラジシステム ライト」を開発

  中小規模オフィス向けの天井輻射空調システム「S-ラジシステム ライト」を開発した。天井内部に設置した冷却装置で生成した冷気によって,静粛かつ温度ムラの少ない快適な室内環境を創出,さらに,ビル全体で15%程度の消費エネルギー削減効果がある。

④建物の自然換気性能を評価する「VisualNETS-3D」を開発

  設計初期段階で建物の自然換気性能を評価する3次元シミュレーションシステム「VisualNETS-3D」を開発・実用化した。建築物の実態に即した効果的・経済的な自然換気方式が提案でき,空調に要するエネルギーを最大20%程度削減できる。

⑤放射線医療施設の高エネルギー化に対応した遮蔽計算手法を開発

  高エネルギー放射線医療施設の放射線遮蔽性能を高精度に解析するために不可欠な「光核反応データベース」を開発した。このデータベースを活用することで,リニアック(直線加速器)室や粒子線治療室等における安全性と経済性を両立した遮蔽設計が可能となる。

⑥騒音対策効果をVR技術で再現できる「騒音シミュレーションシステム」を開発

  バーチャルリアリティ(VR)技術を活用し,工事現場等から発生する騒音とその対策効果が体感できる「騒音シミュレーションシステム」を開発した。騒音源とその発生位置,騒音対策案を入力するだけで,任意の地点で聞こえる騒音を再現できる。

⑦ルーバーによる風切音を防止する「ルーバーサイレンサー」を開発

  集合住宅の手摺やオフィスビルの目隠し壁等に用いるルーバーの風切音を防止する消音材料「ルーバーサイレンサー」を開発・商品化した。技術研究所の風洞実験棟を使ったルーバーの風切音に関するコンサルティング業務の受託を始める。

汽水域でも緑化できる植生浮島を開発

  東京都中央区の協力を得て同区佃の石川島公園船溜まりに植生浮島を2010年から設置し,汽水域における緑化性能と耐久性に関する実証実験を継続的に実施した。19種類の在来種による長期的な緑化を実現するとともに,カルガモの産卵や昆虫の生息などを確認した。

(5)エネルギー技術

①水素関連施設の爆発影響を予測するシミュレーションシステムを開発

  水素関連施設の安全性と経済性の向上を目的に,水素ガス爆発の影響を予測するシミュレーションシステムを開発した。このシステムにより,安全性と経済性を備えた施設の意匠・構造計画を策定することが可能となる。

②建物付帯型の水素エネルギー利用システムの開発に着手

  水素社会の早期実現に向けて,国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究として,施設内で使用する太陽光などの再生可能エネルギーの余剰電力を水素に変換して貯蔵し,必要に応じて放出・発電する水素エネルギー利用システムの研究開発に着手した。

③福島復興・浮体式ウィンドファーム実証研究事業のうち第2期工事

  「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」の第2期実証研究事業のうち,福島県小名浜港における7MW油圧ドライブ型浮体式洋上風力発電設備(世界最大規模)の組立作業がこのたび完了し,実証研究実施海域への曳航・設置作業を開始した。

(6)震災復興支援技術

①コンクリート放射化レベルを評価する「廃炉ソリューションシステム」を開発

  原子力発電所の原子炉建屋に使われているコンクリートの放射化レベルを高精度に評価する廃炉ソリューションシステムを開発し,日本原子力発電㈱東海発電所の廃炉検討に適用した。今後,国内外の電力会社を対象とした廃炉エンジニアリング業務の受注活動に活用する。

②除去土壌等のトレーサビリティを確保する「シミズFITシステム」を構築

  除去土壌等のトレーサビリティや輸送車両の運行状況を総合的に管理できる「シミズFITシステム」を㈱エジソンと共同で構築し,当社JVが実施した除去土壌等のパイロット輸送(環境省発注)に適用し,安全・確実な輸送管理とともにデータ処理業務の大幅な省力化を実現した。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 財政状態の分析

 

(資産の部)

  当連結会計年度末の資産の部は,株式相場の下落に伴う当社保有株式(投資有価証券)の含み益の減少などがあったものの,現金預金及び有価証券に含まれる譲渡性預金の増加や受取手形・完成工事未収入金等の増加などにより1兆7,229億円となり,前連結会計年度末に比べ195億円増加した。

 

(負債の部)

  当連結会計年度末の負債の部は,当社保有株式(投資有価証券)の含み益の減少に伴う繰延税金負債の減少などがあったものの,当社単体の転換社債型新株予約権付社債発行による有利子負債の増加や未成工事受入金の増加などにより1兆2,372億円となり,前連結会計年度末に比べ157億円増加した。

 連結有利子負債の残高は3,924億円となり,前連結会計年度末に比べ169億円増加した。

 

(純資産の部)

  当連結会計年度末の純資産の部は,株式相場の下落に伴うその他有価証券評価差額金の減少などがあったものの,親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加などにより4,856億円となり,前連結会計年度末に比べ37億円増加した。また,自己資本比率は27.9%となり,前連結会計年度末に比べ0.1ポイント減少した。

(2) 経営成績の分析

 

(売上高)

  当連結会計年度の売上高は1兆6,649億円となり,前連結会計年度に比べ6.2%増加した。完成工事高が1兆5,160億円となり,前連結会計年度に比べ4.9%増加したことに加え,開発事業等売上高は1,488億円となり,前連結会計年度に比べ21.0%増加した。

 

(売上総利益)

  当連結会計年度の売上総利益は1,753億円となり,前連結会計年度に比べ42.6%増加した。完成工事総利益は主として国内建築工事の採算が改善したことなどにより1,585億円となり,前連結会計年度に比べ49.4%増加したことによる。なお,開発事業等総利益は168億円となり,前連結会計年度に比べ0.1%減少した。

 

(販売費及び一般管理費)

  当連結会計年度の販売費及び一般管理費は807億円となり,人件費が27億円,物件費が49億円それぞれ増加したことにより,前連結会計年度に比べ10.6%増加した。

 

(営業利益)

  この結果,当連結会計年度の営業利益は946億円となり,前連結会計年度に比べ89.2%増加した。また,当連結会計年度の売上高営業利益率は5.7%となった。

 

(営業外損益)

  当連結会計年度の営業外収益は82億円となり,前連結会計年度に比べ33.0%減少した。また,当連結会計年度の営業外費用は74億円となり,前連結会計年度に比べ20.9%増加した。これにより,営業外収益から営業外費用を差し引いた営業外損益は8億円の利益となり,前連結会計年度から53億円悪化した。このうち金融収支は24億円の受取超過となり,支払利息が減少したことなどから前連結会計年度に比べ7億円好転した。

 

(経常利益)

  この結果,当連結会計年度の経常利益は955億円となり,前連結会計年度に比べ69.8%増加した。また,当連結会計年度の売上高経常利益率は5.7%となった。

(特別損益)

  当連結会計年度の特別利益は,投資有価証券売却益を計上したことなどから7億円となり,前連結会計年度に比べ24億円減少した。また,当連結会計年度の特別損失は,関連事業損失を計上したことなどから26億円となり,前連結会計年度に比べ11億円減少した。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

  当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は593億円となり,前連結会計年度に比べ77.6%増加した。

  この結果,当連結会計年度の売上高当期純利益率は3.6%となり,前連結会計年度に比べ1.5ポイント増加し,また,自己資本利益率は12.4%となった。

(3) キャッシュ・フローの状況

 

 キャッシュ・フローの状況は,「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。