第2【事業の状況】

 以下、第2 事業の状況に記載している金額は消費税等抜きの額である。

 

1【業績等の概要】

(1)業績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益の改善や民間設備投資の持ち直しの動きなどを受けて、景気は緩やかな回復基調が続いた。

 国内の建設市場においては、公共工事、民間工事の発注がともに堅調に推移しており、引き続き良好な受注環境にある。

 こうした情勢下にあって、当連結会計年度における業績については、売上高は当社、子会社ともに建設事業売上高が増加したことなどから、前連結会計年度比約948億円(5.3%)増の約1兆8,727億円となった。損益の面では、主として当社の国内工事における工事利益率の改善に伴い完成工事総利益が増加したことなどから、営業利益は前連結会計年度比約273億円(25.7%)増の約1,337億円、経常利益は前連結会計年度比約288億円(26.0%)増の約1,401億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比約310億円(49.0%)増の約945億円となった。

 

セグメント情報

① 建設事業

  グループ全体の売上高は、当社の国内建築事業及び子会社の海外建築事業で増加したことなどから、前連結会計年度比約1,067億円(6.3%)増の約1兆8,025億円となった。また、営業利益については、主として当社の国内工事における工事利益率の改善に伴い完成工事総利益が増加したことなどから、前連結会計年度比約305億円(32.5%)増の約1,243億円となった。内訳は以下のとおり。

(国内建築事業)   売上高は前連結会計年度比約873億円(9.4%)増の約1兆203億円、営業利益は前連結会計年度比約309億円(59.8%)増の約826億円となった。

(海外建築事業)   売上高は前連結会計年度比約300億円(8.9%)増の約3,679億円、営業利益は前連結会計年度比約22億円(86.0%)増の約48億円となった。

(国内土木事業)   売上高は前連結会計年度比約215億円(6.1%)減の約3,323億円、営業利益は前連結会計年度比約31億円(8.6%)増の約400億円となった。

(海外土木事業)   売上高は前連結会計年度比約109億円(15.4%)増の約817億円、営業損益は約31億円の損失(前連結会計年度は約26億円の利益)となった。

 

② 不動産事業

 前連結会計年度に子会社において大型不動産の売上計上があった反動減などから、グループ全体の売上高は前連結会計年度比約82億円(17.5%)減の約387億円、営業利益は前連結会計年度比約32億円(31.3%)減の約71億円となった。

 

③ その他

 グループ全体の売上高は前連結会計年度比約36億円(10.4%)減の約314億円、営業利益は前連結会計年度比約1億円(5.5%)増の約21億円となった。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に国内の建設事業収支が引き続き堅調に推移したことから約1,588億円のプラス(前連結会計年度は約1,249億円のプラス)となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業用不動産の取得等により約378億円のマイナス(前連結会計年度は約480億円のマイナス)となった。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や社債の償還等により約891億円のマイナス(前連結会計年度は約689億円のマイナス)となった。

この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて約293億円増加し、約1,941億円となった。

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 受注実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

国内建築事業

1,076,367

1,058,837

 △1.6

海外建築事業

320,380

554,951

73.2

国内土木事業

374,529

365,988

 △2.3

海外土木事業

90,862

72,727

 △20.0

建設事業 計

1,862,140

2,052,504

10.2

不動産事業

39,031

37,884

 △2.9

その他

50,771

54,867

8.1

合 計

1,951,943

2,145,256

9.9

(注)セグメント間取引については相殺消去している。

 

(2) 売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

国内建築事業

932,997

1,020,378

9.4

海外建築事業

337,956

367,980

8.9

国内土木事業

353,909

332,374

 △6.1

海外土木事業

70,889

81,792

15.4

建設事業 計

1,695,752

1,802,525

6.3

不動産事業

47,020

38,795

 △17.5

その他

35,061

31,400

 △10.4

合 計

1,777,834

1,872,721

5.3

(注)1 セグメント間取引については相殺消去している。

2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに総売上高に占める売上高の割合が100分の10以上の相手先はない。

 

なお、当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。

 なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

受注高(契約高)及び売上高の状況

(1)受注高、売上高及び繰越高

期 別

種類別

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

(百万円)

第112期

(自 平成27年
   4月1日
 至 平成28年
    3月31日)

建設事業

建 築

1,031,129

1,069,697

2,100,827

908,468

1,192,358

土 木

426,540

330,584

757,124

297,907

459,217

1,457,670

1,400,281

2,857,952

1,206,375

1,651,576

不動産事業等

50

28,673

28,723

28,723

合 計

1,457,720

1,428,954

2,886,675

1,235,098

1,651,576

第113期

(自 平成28年
   4月1日
 至 平成29年
    3月31日)

建設事業

建 築

1,192,358

1,052,677

2,245,036

991,527

1,253,508

土 木

459,217

295,705

754,923

294,358

460,564

1,651,576

1,348,382

2,999,959

1,285,886

1,714,072

不動産事業等

18,179

18,179

18,179

合 計

1,651,576

1,366,562

3,018,138

1,304,065

1,714,072

 (注) 前期以前に受注したもので、契約の変更により契約金額に増減のあるものについては、当期受注高にその増減額を含む。また、前期以前に外貨建で受注したもので、当期中の為替相場の変動により契約金額に変更のあるものについても同様に処理している。

 

(2)受注工事高

期 別

区 分

国 内

海 外

官公庁

(百万円)

民  間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A)/(B)

(%)

(B)

(百万円)

第112期

(自 平成27年4月1日

  至 平成28年3月31日)

建 築

143,717

908,842

17,137

1.6

1,069,697

土 木

157,467

131,182

41,933

12.7

330,584

301,185

1,040,024

59,071

4.2

1,400,281

第113期

(自 平成28年4月1日

  至 平成29年3月31日)

建 築

110,868

937,239

4,569

0.4

1,052,677

土 木

162,455

112,793

20,456

6.9

295,705

273,323

1,050,033

25,025

1.9

1,348,382

 

(注)工事の受注方法は特命と競争に大別され、受注金額の割合は次のとおりである。

期 別

区 分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第112期

(自 平成27年4月1日

 至 平成28年3月31日)

建 築

45.0

55.0

100

土 木

26.5

73.5

100

40.6

59.4

100

第113期

(自 平成28年4月1日

 至 平成29年3月31日)

建 築

50.1

49.9

100

土 木

23.0

77.0

100

44.2

55.8

100

 

(3)売上高

(イ)完成工事高

期 別

区 分

国 内

海 外

官公庁

(百万円)

民  間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A)/(B)

(%)

(B)

(百万円)

第112期

(自 平成27年4月1日

  至 平成28年3月31日)

建 築

82,997

809,298

16,172

1.8

908,468

土 木

155,820

112,289

29,796

10.0

297,907

238,818

921,588

45,968

3.8

1,206,375

第113期

(自 平成28年4月1日

  至 平成29年3月31日)

建 築

62,816

914,601

14,110

1.4

991,527

土 木

163,506

95,650

35,201

12.0

294,358

226,323

1,010,251

49,311

3.8

1,285,886

 

 (注)1 海外工事の地域別割合は、次のとおりである。

地 域

第112期(%)

第113期(%)

アジア

49.8

53.8

北 米

38.7

38.2

その他

11.5

8.0

100

100

 

2 第112期に完成した工事のうち主なもの

発注者

工事名称

住友不動産㈱

新宿ガーデンタワー新築工事

キヤノン㈱

キヤノン川崎事業所高層棟新築工事

日野特定目的会社

三井不動産ロジスティクスパーク日野新築工事

九州旅客鉄道㈱

JRおおいたシティ新築工事

中日本高速道路㈱

新東名高速道路 稲木トンネル他1トンネル工事

 

第113期に完成した工事のうち主なもの

発注者

工事名称

三井不動産㈱

三井不動産ロジスティクスパーク船橋新築工事

学校法人 近畿大学

近畿大学東大阪キャンパス整備Ⅰ期工事

明石駅前南地区市街地再開発組合

パピオスあかし新築工事

SPパワーアセッツ社

シンガポールケーブルトンネル東西線EW1工区建設工事(シンガポール)

LLJ Investco㈱

レゴランドジャパン新築工事

 

3 第112期及び第113期ともに総完成工事高に占める完成工事高の割合が100分の10以上の相手先はない。

(ロ)不動産事業等売上高

期 別

区 分

売上高(百万円)

第112期

(自 平成27年4月1日

  至 平成28年3月31日)

不動産販売

9,604

不動産賃貸

7,572

そ の 他

11,545

28,723

第113期

(自 平成28年4月1日

  至 平成29年3月31日)

不動産販売

435

不動産賃貸

8,368

そ の 他

9,375

18,179

 

(4)繰越工事高(平成29年3月31日現在)

区 分

国 内

海 外

官公庁

(百万円)

民 間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A)/(B)

(%)

(B)

(百万円)

建 築

192,688

1,048,039

12,780

1.0

1,253,508

土 木

282,375

124,949

53,239

11.6

460,564

475,063

1,172,988

66,020

3.9

1,714,072

 

 (注)繰越工事のうち主なもの

発注者

工事名称

赤坂一丁目地区市街地再開発組合

赤坂一丁目地区第一種市街地再開発事業
施設建築物等新築工事及び既存建築物等解体・除却工事

独立行政法人 都市再生機構東日本賃貸住宅本部

大手町二丁目地区再開発施設建築物B棟工区建設工事

中日本高速道路㈱

東京外かく環状道路 本線トンネル(北行)東名北工事

㈱三菱東京UFJ銀行

㈱三菱東京UFJ銀行大阪ビル建替工事

ナムニアップ1・パワー・カンパニー・リミテッド社

ナムニアップ1水力発電所建設工事(ラオス)

 

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営の基本方針

長期的な視点に立った会社経営を基本に、経営の効率化と収益力の向上によって、企業価値をより高めていくことを目標としており、その実現を通じて、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会など、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えられる経営を目指している。

 

(2)中期的な経営戦略及び対処すべき課題

[中期経営計画2017]

① 策定の趣旨

大林組グループは、企業理念に掲げる「持続可能な社会の実現」を見据え、創業150周年(2042年)の「目指す将来像」を描き、その実現へのロードマップの最初の5年間に達成すべき業績と取り組む施策を「中期経営計画2017」として策定した。

当社グループの業績は、国内建設市場の回復や生産性の向上を背景に大きく上向き、財務体質の改善も順調に進むなど、2015年度に3年を計画期間としてスタートした「大林組グループ中期経営計画2015」に掲げた目標を、最終年を待たずに概ね達成した。

一方、当社グループの事業環境を見ると、日本経済は堅調に推移しているものの、英国のEU離脱や米国新政権の動向をはじめとする世界の政治・経済面での不透明感の高まり、世界各地でのテロの常態化など、その先行きは不確実性を増している。

また、様々な分野における技術革新が想定を超えるスピードで加速度的に進展しており、当社グループには既存の枠にとらわれない不断の進化や成長が求められている。

このような状況の中で、過去最高益にある現在の業績を当社グループの総力をあげて維持、拡大するとともに、事業環境の変化を成長の機会と捉え、将来への布石を打っていくために、1年前倒しで新たな中期経営計画を策定し、事業を推進していく

 

② 「目指す将来像」の概要

当社グループの長期的な成長に向けて、創業150周年(2042年)の「目指す将来像」を次のとおり定めた。

0102010_001.png

 

③ 「目指す将来像」の実現に向けて

既存4本柱(建築・土木・開発・新領域)の強化を戦略の核に事業領域の深化・拡大、グローバル化を加速し、その実現を目指す。

〈既存4本柱の強化〉

 ・次世代生産システムの構築による飛躍的な生産性向上

 ・成長市場・エリアへの経営資源の重点的配分

 ・建設に関連する一貫した高付加価値サービスの提供

 ・オフィス賃貸事業の拡充

 ・再生可能エネルギー事業の拡充

 ・新たな要素技術の開発・獲得

事業領域の深化・拡大

 ・エンジニアリング機能の強化・拡充

 ・ファシリティマネジメント、プロパティマネジメント機能の強化・拡充

 ・賃貸不動産ポートフォリオの多様化

 ・保有技術やノウハウを活用した収益源の創出

 ・事業の創出につながる新たな要素技術の獲得

 ・異業種との連携による新たな事業モデルの確立

〈グローバル化〉

 ・未進出有望市場への取り組み

 ・既進出エリアでのM&Aを含む事業の拡大

 ・既進出エリアでのローカル化の加速

 ・大林水準の品質・安全管理のグローバル展開

 ・技術・人材交流によるシナジー効果の追求

 

④ 「目指す将来像」の実現に向けてスタートを切る最初の5年間の基本方針

〈強固な経営基盤の構築〉

大林組グループの総力をあげて、過去最高益にある現在の業績を維持・拡大させ、機会を捉えた成長投資や想定外の事業環境の変動に対応できる強固な経営基盤を構築

〈将来への布石〉

事業領域の深化・拡大及びグローバル化を実行するための技術の開発・獲得、人材の育成、新たなビジネスモデルの創出とこれらを支える戦略的な投資を実施

 

⑤ 主な経営指標目標

目指す将来像の実現に向けた成長投資や事業環境変動に対応できる「強固な経営基盤の構築」

2021年度末 B/S(連結)

自己資本額

(利益剰余金)

9,000億円

(7,000億円)

・さらなる財務体質の改善

・想定外の事業リスクにも耐えうる自己資本の増強

・事業領域拡大に向けた計画的かつ機動的な成長投資を支える

 投資余力の増強

自己資本比率

40%

ネット有利子負債

(有利子負債)

(現預金)

ゼロ

(2,500億円)

(2,500億円)

2021年度 P/L(連結)

売上高

2兆円程度

・安定的な利益水準の維持とその拡大により企業価値を向上

営業利益

1,500億円程度

親会社株主に帰属する当期純利益

1,000億円程度

1株当たり当期純利益(EPS)

150円程度

自己資本利益率(ROE)

10%超の水準

 

 

⑥ 株主還元策

連結配当性向20~30%の範囲を目安として、長期にわたり安定した配当を維持することを第一に、財務体質の一層の改善や将来に備えた技術開発、設備投資等を図るための内部留保の充実を勘案のうえ、自己株式取得も含め、業績に応じた利益還元を実施する。

 

⑦ 投資計画

目指す将来像の実現に向けた「布石」として5年間で4,000億円の投資を行う。

「最高水準の技術力と生産性を備えたリーディングカンパニー」であり続けるための継続的な投資

建設技術の研究開発

1,000億円

工事機械・事業用施設

500億円

「多様な収益源を創りながら進化する企業グループ」の実現に向けた投資

不動産賃貸事業

1,000億円

再生可能エネルギー事業ほか

1,000億円

機会を捉えた成長投資

M&Aほか

500億円

 

5年間の総投資額

4,000億円

当社グループとしては、この新たな中期経営計画に全力で取り組むことで企業価値を向上させ、株主をはじめとしたステークホルダーの期待に応えていく。また、生活・社会・産業基盤の整備を通じて、人々の暮らしに安全・安心を提供し、経済発展に寄与するという社会的使命を果たしていく。

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 事業に対する法的規制

 建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、独占禁止法、労働安全衛生法等の法令の改廃や新設、適用基準の変更があった場合等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(2) 建設市場の動向

 国内外の景気後退等により、建設市場が著しく縮小した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(3) 施工物等の不具合や重大事故

 設計、施工などの各面で重大な瑕疵があった場合や、人身、施工物などに関わる重大な事故が発生した場合、当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

(4) 取引先の信用リスク

 発注者、協力会社、共同施工会社の信用不安などが顕在化した場合、資金の回収不能や施工遅延を惹起し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(5) 建設資材価格及び労務単価の変動

 建設資材の急激な価格高騰や調達難または労務単価の高騰や技能労働者の不足が生じた場合、工事原価の上昇による利益率の低下や工期遅延による損害賠償のおそれなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(6) 保有資産の価格変動

 保有する販売用不動産、事業用不動産、有価証券等の時価が著しく下落した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(7) 長期にわたる事業のリスク

 事業期間が長期にわたるPPP事業や再生可能エネルギー事業等において、その期間中に事業環境に著しい変化が生じた場合や業務遂行上重大な事故等が発生した場合、当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

(8) 海外事業におけるリスク

①  アジア、米国をはじめとする進出国において、テロ・紛争等による政情の不安定化、経済情勢の変動、為替レートの急激な変動、法制度の変更など事業環境に著しい変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

② 当社が他社と共同で施工し、平成23年8月に竣工したドバイ都市交通システム建設工事の残工事代金の支払いについては、一定の金利を付し、平成23年10月から平成30年9月にわたる84ヶ月の毎月均等分割払いとすることで発注者のドバイ道路交通局との間で合意している。当該合意においては、この残工事代金の回収リスクを回避するため、ドバイ政府と支払保証契約を締結するなど債権保全策を講じているが、ドバイにおける政治及び経済状況等に著しい情勢の変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

  なお、ドバイ道路交通局による工事代金の支払いは、合意した内容に基づき予定どおり行われており、同局に対する平成29年3月末時点での当社分の完成工事未収入金(分割払い相当額)残高は、114百万米ドル(円換算値 約128億円)である。

(9) 繰延税金資産に関わるリスク

 将来の課税所得等の見積りの変動や税率変更等の税制改正によって、繰延税金資産の取崩しが必要となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(10) 機密情報漏洩

 外部からの攻撃や、従業員の不正等により個人情報、機密情報が漏洩した場合、社会的な信用の失墜、損害賠償の発生等により、当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はない。

6【研究開発活動】

(建設事業)

 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術の開発を行うなど、主に建設事業に関して多岐にわたる研究開発活動を実施している。

 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。

 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約105億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。

 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木及び海外土木の各セグメントには区分していない。

 

(1) 当社

① 高強度かつ高耐久性のセメント系繊維補強材料「タフショットクリート®」を開発

 コンクリート構造物のリニューアル工事に使用する長期耐久性に優れた補修・補強材料「タフショットクリート®」を宇部興産㈱と共同で開発した。

 ノンポリマーの補修・補強材料であり、従来のポリマーセメントモルタルに比べ、コストは同等ながら高強度かつ高耐久性を有する。100N/mm²以上の圧縮強度を長期的に確保し、従来よりも部材の厚さを低減できるほか、組織が緻密なため二酸化炭素、塩分、水分が浸透しにくく、中性化、塩害、凍害に対して高い抵抗性がある。また、50年以上の耐久性があることからライフサイクルコストの低減も可能である。

 

② バックホウなどの建設機械を無人で運転する汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を開発

 バックホウなどの建設機械を無人で運転する汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を大裕㈱と共同で開発した。

 低コストで汎用性が高く、一般的な建設機械を改造することなく容易に着脱できる。本装置を装着したままで遠隔操縦と搭乗操縦を簡易な作業で切り替えられるので、作業環境に応じて使い分け、災害復旧の現場などでの作業を迅速かつ柔軟に進めることが可能となる。

 

③ ICTとCIMを活用したコンクリート施工管理システムを開発

 ICTとCIMを活用したコンクリート施工管理システムを㈱スカイシステムと共同で開発した。

 コンクリートは時間経過とともに流動性が低下するという特徴があり、一定の時間内に打設する必要がある。本システムは、タブレット端末のアプリケーションやICタグ、GPSなどを使用し、コンクリートの練り混ぜ開始から打設終了までの時間、打設区画、品質試験結果などの情報をリアルタイムかつ一元的に管理することが可能である。本システムの情報はCIMの属性情報としても記録され、現場を監督する技術者などは3Dモデル上で最新情報を共有することができる。これにより正確かつ効率的な施工管理が可能になるとともに、一元化された情報を施工後の維持管理に活用できる。

 

④ ポリビニルブチラール樹脂及び硅砂を用いた高性能な防食鉄筋「サンドグリップバー」を開発

 ポリビニルブチラール樹脂及び硅砂を用いた高性能な防食鉄筋「サンドグリップバー」を㈱川熱、朝日工業㈱と共同で開発した。

 コンクリート構造物に使用された鉄筋が塩害や中性化によって腐食すると、鉄筋強度の低下や、錆の膨張圧によるコンクリートのひび割れが発生する。サンドグリップバーは、エポキシ樹脂よりも伸び率の高いポリビニルブチラール樹脂で鉄筋を被覆し、さらにその周囲に硅砂を付着させることで、鉄筋とコンクリートの付着強度の低下などの課題を解決した。エポキシ樹脂塗装鉄筋と同等の防食性を有しながら価格は同等以下であり、鉄筋を重ね合わせる際の継手の延長も不要である。一般財団法人沿岸技術研究センターの「港湾関連民間技術の確認審査・評価事業」において評価を取得している。

 

⑤ BIMを活用した建物維持管理ツール「BIMobile®(ビーモバイル)」を開発

 建物維持管理業務を支援する、BIMを活用した管理ツール「BIMobile®」を開発した。

 データ容量を軽量化したBIMの3Dモデルと、モデルにひも付いた属性情報をタブレット端末に表示することが可能で、さらに写真や点検記録などの情報を追加入力することができる。また、サーバーに保存された図面や取扱説明書などのドキュメントを閲覧することも可能である。タブレット端末で3Dモデルやその属性情報を単に参照するだけでなく、その場で同時に点検記録などの情報を入力可能とする技術は建設業界初である。

 

⑥ 建物利用者を快適な空間へと個別誘導するアプリを開発

 利用者にとって快適な空間を個別に紹介する誘導アプリを㈱電通国際情報サービスと共同で開発し、「グランフロント大阪」でデジタルサイネージを用いた実証実験を行った。

 本アプリは、利用者の空間へのニーズを生理状態や環境条件などからリアルタイムに評価し、その利用者にとって最適な空間での過ごし方を提案する。屋内からより快適な屋外へ利用者を誘導するための快適性評価方法を確立した本アプリの有効性を、今回の実証実験で確認した。

 

⑦ パイロット孔なしでコンクリート壁や床板を高精度に切断できるワイヤーソー装置「ディープノンループカッタ

ー」を開発

 鉄筋コンクリート構造物の解体作業においてダイヤモンドワイヤーを切断面に直接押しつけて切断するワイヤーソー装置「ディープノンループカッター」を㈱コンセックと共同で開発した。

 本装置は切断箇所への設置が容易で、前面から直接構造物を切断することができる。ダイヤモンドワイヤーの巻き付け、パイロット孔の削孔など事前準備の手間を省くことができることに加え、より高精度な解体が可能となる。

 

⑧ VR技術を活用した施工管理者向け教育システム「VRiel(ヴリエル)」を開発

 ヴァーチャルリアリティ(VR)技術を用いたVR教育システム「VRiel(ヴリエル)」を開発した。

 当社は鉄筋や型枠を組んだ教育用の躯体モックアップを自社施設内に構築し、鉄筋配置の不具合箇所を発見する体験型研修を実施しているが、定期的にモックアップを作り替えたり、受講者が実習施設所在地に赴いたりする必要があるなど、相当のコストと時間を費やしていた。本システムを使用することで、場所を選ばず手軽に、施工現場同様の環境で教育を実施することができる。また、素材としてBIMデータを活用できることから、さまざまな教育ツールを容易に作成することが可能となる

 

⑨ 免震建物へのフェイルセーフ機構「免震フェンダー®」を開発

 建築基準法などで定められている地震動を超える巨大地震が発生した場合に、免震建物が免震擁壁などへ衝突した際のリスクを軽減する緩衝装置「免震フェンダー®」を開発した。

 「免震フェンダー®」は建物と擁壁(またはストッパー)との間に設置する緩衝装置で、高減衰ゴム製の緩衝材が衝突のエネルギーを吸収し、衝撃力を緩和して建物の健全性と居住者の安全性を保つ。シンプルな装置であるため非常に安価であり、建築基準法で定められた大地震の約1.5~2.0倍の地震動に対して、衝突時の衝撃力を約2分の1から3分の2に低減する。

 

(2) ㈱内外テクノス

 美術館展示ケース用空気質対策技術を開発

 有害ガスが発生しない展示ケース壁構造を当社、大谷塗料㈱と共同で開発した。

 合板への金属箔(ガスバリア層となる)とガス吸着シートの貼付と、有害ガスの発生しない接着剤の使用により、展示ケース内の展示物にとって有害なガスを放出する期間が不要になり、展示ケースの使用開始時期を数か月早めることが可能となる。

 

(不動産事業及びその他)

 研究開発活動は特段行っていない。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比約640億円(3.3%)増の約2兆159億円となった。これは、「現金預金」や工事代金債権(「受取手形・完成工事未収入金等」及び「電子記録債権」の合計)が増加したことなどによるものである。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末比約183億円(1.3%)減の約1兆3,719億円となった。これは、工事代金の支払に係る債務(「支払手形・工事未払金等」及び「電子記録債務」の合計)が増加した一方で、「短期借入金」や「社債」などの有利子負債が減少したことなどによるものであり、有利子負債残高は前連結会計年度末比約729億円(21.1%)減の約2,733億円となった。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末比約824億円(14.7%)増の約6,440億円となった。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い「利益剰余金」が増加したことなどによるものである。

この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は29.5%となり、前連結会計年度末より3.1ポイント上昇した。

 

(2)経営成績

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ、建設事業において約1,067億円(6.3%)増の約1兆8,025億円、不動産事業において約82億円(17.5%)減の約387億円、その他において約36億円(10.4%)減の約314億円となった。全体としては、前連結会計年度に比べ約948億円(5.3%)増の約1兆8,727億円となった。

 損益の面では、主として当社の国内工事における工事利益率の改善に伴い完成工事総利益が増加したことなどから、営業利益は前連結会計年度比約273億円(25.7%)増の約1,337億円、経常利益は前連結会計年度比約288億円(26.0%)増の約1,401億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比約310億円(49.0%)増の約945億円となった。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」に記載している。