第2 【事業の状況】

 

第2  [事業の状況]における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示している。

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当年度の日本経済は、雇用など一部に改善が見られたものの、新興国経済の減速の影響等により一部企業の業績が弱含むとともに、個人消費も低迷を続けるなど、全体として弱い足取りとなった。

国内建設市場については、公共機関からの発注が減少したものの、製造業を中心とした民間工事の発注が引き続き順調に推移したことにより、全体では堅調さを維持した。

こうした状況のもと、当社グループの経営成績は次のとおりとなった。

受注高は前連結会計年度比5.4%減の1兆6,710億円となり、売上高は同1.7%減の1兆5,458億円となった。

利益については、営業利益は前連結会計年度比66.8%増の1,174億円、経常利益は同58.1%増の1,177億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同101.8%増の770億円となった。

 

報告セグメント等の業績を示すと次のとおりである(報告セグメント等の業績については、セグメント間の内部取引を含めて記載している。)。

 

①土木事業

当社グループにおいては、売上高は当社及び連結子会社ともに減少したことから、前連結会計年度比3.3%減の4,557億円となった。また、営業利益は、売上総利益率の改善により同53.1%増の507億円となった。

②建築事業

当社グループにおいては、売上高は当社の減少により前連結会計年度比0.2%減の1兆154億円となった。また、営業利益は、売上総利益率の改善により同130.6%増の564億円となった。

③開発事業

不動産販売市場は、分譲マンション市場においては、マンション供給戸数が減少する中、低金利や住宅取得時の税制優遇等が下支えとなり、販売は概ね堅調に推移している。また、不動産賃貸市場は、オフィスビルの空室率が改善し、一部ビルの賃料は上昇傾向を示すなど、回復基調が継続した。

当社グループにおいては、売上高は当社及び連結子会社ともに減少したことから、前連結会計年度比11.0%減の1,276億円となった。また、営業利益は、売上高の減少及び売上総利益率の悪化により同22.9%減の94億円となった。

④その他

当社グループにおいては、売上高は前連結会計年度比2.5%増の148億円、営業利益は同165.6%増の9億円となった。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

①営業活動によるキャッシュ・フロー

税金等調整前当期純利益を1,177億円獲得したこと等により、953億円の収入超(前連結会計年度は240億円の収入超)となった。

②投資活動によるキャッシュ・フロー

投資有価証券の取得等により、250億円の支出超(前連結会計年度は139億円の支出超)となった。

③財務活動によるキャッシュ・フロー

資金調達に係る有利子負債の返済等により、351億円の支出超(前連結会計年度は304億円の支出超)となった。

 

以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は3,717億円(前連結会計年度末比345億円増)となり、また、資金調達に係る有利子負債の残高は2,546億円(同185億円減)となった。なお、当連結会計年度末の資金調達に係る有利子負債の残高のうちノンリコース債務は51億円(前連結会計年度末は残高なし)である。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 受注実績

(単位:百万円)

報告セグメント等の名称

前連結会計年度

(自  平成26年4月1日

至  平成27年3月31日)

当連結会計年度

(自  平成27年4月1日

至  平成28年3月31日)

土木事業

 

570,219

444,462

建築事業

 

1,048,597

1,101,915

開発事業

 

134,477

112,201

その他

 

12,448

12,482

合計

1,765,743

1,671,061

 

 

(2) 売上実績

(単位:百万円)

報告セグメント等の名称

前連結会計年度

(自  平成26年4月1日

至  平成27年3月31日)

当連結会計年度

(自  平成27年4月1日

至  平成28年3月31日)

土木事業

 

448,727

433,924

建築事業

 

974,539

978,176

開発事業

 

137,555

121,305

その他

 

12,448

12,482

合計

1,573,270

1,545,889

 

(注) 1  受注実績、売上実績においては、セグメント間の取引を相殺消去している。

2  当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。

 

 

(参考) 提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

(1) 受注高、売上高、繰越高及び施工高

 

期別

区分

前期繰越高
(百万円)

当期受注高
(百万円)


(百万円)

当期売上高
(百万円)

次期繰越高(百万円)

当期施工高
(百万円)

手持高

うち施工高

第155期


平成26年
4月1日


平成27年
3月31日

 




グメント

土木事業

475,380

448,234

923,615

324,168

599,446

3%

17,190

326,760

建築事業

1,170,198

945,480

2,115,679

886,194

1,229,484

2

26,730

888,340

1,645,578

1,393,715

3,039,294

1,210,363

1,828,930

2

43,920

1,215,101

開発事業

12,453

24,315

36,768

28,368

8,400

その他

11,804

11,804

11,804

合計

1,658,031

1,429,835

3,087,867

1,250,536

1,837,330

第156期


平成27年
4月1日


平成28年
3月31日

 




グメント

土木事業

599,446

323,881

923,327

313,325

610,002

4%

24,242

320,376

建築事業

1,229,484

1,006,974

2,236,459

879,551

1,356,907

2

21,371

874,192

1,828,930

1,330,856

3,159,787

1,192,876

1,966,910

2

45,613

1,194,568

開発事業

8,400

8,894

17,294

16,996

297

その他

12,059

12,059

12,059

合計

1,837,330

1,351,810

3,189,141

1,221,932

1,967,208

 

(注) 1  前期以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当期受注高にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。また前期以前に外貨建で受注したもので、当期中の為替相場の変動により請負金額に変更のあるものについても同様に処理している。

2  次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものである。

3  当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致する。

4  前期の土木事業及び建築事業の期中受注高のうち海外工事の割合は各々1.2%、2.4%、当期の土木事業及び建築事業の期中受注高のうち海外工事の割合は各々11.9%、0.2%である。

 

(2) 受注工事高の受注方法別比率

建設事業の受注方法は、特命と競争に大別される。

 

期別

区分

特命

競争

第155期

(自  平成26年4月1日

至  平成27年3月31日)

土木工事

22.8 %

77.2 %

100 %

建築工事

34.7

65.3

100

第156期

(自  平成27年4月1日

至  平成28年3月31日)

土木工事

44.7 %

55.3 %

100 %

建築工事

43.1

56.9

100

 

(注)  百分比は請負金額比である。

 

 

(3) 完成工事高

 

期別

区分

国内

海外

合計
(B)
(百万円)

官公庁
(百万円)

民間
(百万円)

(A)
(百万円)

(A)/(B)
(%)

第155期
(自  平成26年4月1日
  至  平成27年3月31日)

土木工事

203,973

100,140

20,054

6.2

324,168

建築工事

114,311

727,229

44,653

5.0

886,194

318,285

827,370

64,708

5.3

1,210,363

第156期
(自  平成27年4月1日
  至  平成28年3月31日)

土木工事

207,798

85,323

20,202

6.4

313,325

建築工事

118,363

752,155

9,031

1.0

879,551

326,162

837,479

29,234

2.5

1,192,876

 

(注) 1  第155期に完成した工事のうち主なものは、次のとおりである。

トルコ政府 運輸海事通信省・
インフラ投資総局

トルコ ボスポラス海峡横断鉄道建設工事

みずほ信託銀行㈱

(仮称)大手町1-6計画のうち、敷地内本体工事

エヌ・ティ・ティ都市開発㈱、
大成建設㈱、ヒューリック㈱、
東京都市開発㈱

(仮称)芝浦水再生センター再構築に伴う上部利用事業

ベトナム政府 ベトナム空港公団

ベトナム ノイバイ国際空港第2旅客ターミナル新築工事

東京都下水道局

芝浦水再生センター雨天時貯留池建設その3工事

 

 

2  第156期に完成した工事のうち主なものは、次のとおりである。

北品川五丁目第1地区市街地   再開発組合

北品川五丁目第1地区第一種市街地再開発事業        業務棟(A1棟・C1棟) 住宅棟(A2棟)         施設建築物新築工事

㈱鉃鋼ビルディング

 (仮称)新鉃鋼ビル建替計画に伴う新築工事

スリランカ高速道路省      道路開発公社

スリランカ コロンボ外郭環状道路北工区-1

三井不動産㈱

(仮称)ららぽーと海老名新築工事

国土交通省 関東地方整備局

圏央道桶川北本地区函渠その1工事

 

3  第155期及び第156期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。

 

(4) 手持工事高(平成28年3月31日)

  

区分

国内

海外

合計
(B)
(百万円)

官公庁
(百万円)

民間
(百万円)

(A)
(百万円)

(A)/(B)
(%)

土木工事

308,042

216,874

85,085

13.9

610,002

建築工事

277,995

1,069,206

9,705

0.7

1,356,907

586,038

1,286,081

94,791

4.8

1,966,910

 

(注)  手持工事のうち主なものは、次のとおりである。

アルジェリア政府 
公共事業省高速道路公団

アルジェリア 東西高速道路建設工事(東工区)

六本木三丁目東地区市街地 
再開発組合

六本木三丁目東地区第一種市街地再開発事業         施設建築物新築工事及び公共施設工事<A区、B区>

(独行)都市再生機構 
東日本賃貸住宅本部

四谷駅前地区再開発工事

中日本高速道路㈱

東京外かく環状道路 本線トンネル(北行)大泉南工事

目黒駅前地区市街地再開発組合

目黒駅前地区第一種市街地再開発事業            施設建築物新築工事

 

 

3 【対処すべき課題】

このたびの平成28年熊本地震により被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げるとともに、被災された地域の一日も早い復旧・復興に、全力で取り組んでいく。
 建設産業界においては、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて繁忙度が高まる中、担い手確保が大きな課題となっている。一方、杭工事におけるデータ偽装問題による業界全体への不信感の広がりも、非常に重大な問題であると考えている。
 当社グループとしては、業界を牽引する立場として、担い手確保に向けた労働環境改善や生産性向上などに率先して取り組むとともに、社会からの信頼回復に向けて真摯に取り組んでいく。
 また、今後の市場環境については、当面は旺盛な建設需要が続くものの、人口減少や財政制約などを踏まえると、2020年以降のポスト五輪においては不透明であり、楽観できる状況ではないと考えている。
 このような認識のもと、当社グループは、2015年度を初年度とする「中期経営計画(2015-2017)」をスタートし、以下に掲げる経営課題の達成に向けて全力で取り組んでいる。

 

「中期経営計画(2015-2017)」(要旨)

 ■ 基本方針

「建設事業本業の深耕」

 

 ■ 経営課題

①注力プロジェクトへの戦略的な取り組み

②社会基盤整備への積極的な貢献

③次世代技術開発の推進

④注力分野での次世代ビジネスモデルの確立

⑤国内建設事業の強化

⑥海外事業の健全な成長に向けた基盤整備

⑦グループ力の向上

⑧経営基盤の進化

 

 

①注力プロジェクトへの戦略的な取り組み

国内では、新国立競技場・リニア中央新幹線等の国家的プロジェクトや当社の技術力等を活かせる大規模民間プロジェクト、海外では、官民一体で推進している海外インフラ輸出への参画等、2020年以降も見据えたプロジェクトに注力する。

②社会基盤整備への積極的な貢献

今後も震災復興事業や国土強靭化に向けた社会基盤インフラ整備に積極的に取り組み、我が国の社会基盤整備に貢献していく。

③次世代技術開発の推進

建設事業本業における当社グループの優位性をさらに高め、同業他社との差別化を図るべく、2020年以降を見据えた施工・差別化技術の開発を推進している。

④注力分野での次世代ビジネスモデルの確立

お客様に高い付加価値を提供できる5つの分野、リニューアル・リプレイス、原子力、環境、エンジニアリング、および都市開発の注力5分野において、高付加価値型のビジネスモデルを確立することによって、中長期的な競争力を高めていく。

⑤国内建設事業の強化

官民双方の旺盛な需要に適切に対応するために、施工能力をさらに向上させるべく、要員の増強、省人・省力化工法やICTの活用、ならびに専門工事業者との連携強化を図るとともに、調達力をさらに向上させていく。

⑥海外事業の健全な成長に向けた基盤整備

海外事業については、安定的な黒字確保を最優先課題として、2020年以降を見据え、事業規模の緩やかな成長と収益構造の確立を目指す。

 

⑦グループ力の向上

都市部の木造密集地域の不燃化や既存の官民インフラの耐震補強等、当社グループの強みを活かせる分野において、グループで協働することによって、より高いシナジー効果を発揮していく。

⑧経営基盤の進化

時代の要請に沿ったガバナンス体制を確立するとともに、建設業界の中期的な課題である女性の活躍推進、外国人材の活用等のダイバーシティ経営やICTによるワークスタイルの変革に積極的に取り組んでいる。

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの事業に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項には、次のようなものがある。なお、当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存である。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) 建設・不動産市場の動向

建設・不動産市場の急激な縮小や競争環境の激化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(2) 海外事業の展開に伴うリスク

世界各国で事業を行っているため、テロ・戦争・暴動等の発生及びその国の政情の悪化、経済状況の急激な変動、為替レートの大きな変動、法律・規制の予期せぬ変更等が発生し、契約によりヘッジできない場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(3) 取引先の信用リスク

一般に建設業の請負契約は、一取引における契約金額が大きく、また多くの場合には、工事目的物の引渡時に多額の工事代金が支払われる条件で契約が締結される。このため、工事代金を受領する前に取引先が信用不安に陥った場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(4) 資材価格の変動

原材料の価格が高騰した際、請負代金に反映することが困難な場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(5) 資産保有リスク

営業活動上の必要性から、不動産・有価証券等の資産を保有しているため、時価の変動により、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(6) 退職給付債務

年金資産の時価の下落及び運用利回り・割引率等の退職給付債務算定に用いる前提に変更があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(7) 金利水準の変動

金利水準が急激に上昇した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(8) 建設生産物・関連サービスの瑕疵

当社グループの事業に起因して瑕疵担保責任及び製造物責任に基づく多額の損害賠償が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(9) 付帯関連する事業のリスク

当社グループは、PFI事業、レジャー事業を始めとした土木事業・建築事業・開発事業に付帯関連する事業を営んでいる。これらの事業の多くは、事業期間が長期にわたるため、将来の事業環境が大きく変化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(10)土木事業・建築事業に対する法的規制

土木事業・建築事業の遂行は、建設業法、建築基準法、労働安全衛生法、独占禁止法等による法的規制を受けており、これらの法規の改廃や新たな規制等が行われた場合、また、これらの法的規制により行政処分等を受けた場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(11)重大事故の発生

土木事業・建築事業においては、人身や施工物などに関わる重大な事故が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性がある。

(12)大規模自然災害等リスク

大規模地震、風水害等の大規模自然災害や感染症の大流行が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記事項なし。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「建設事業本業の深耕」の基本的方針のもと、品質と安全の確保によって高い顧客満足を得るとともに、安定的かつ持続的な成長を目的として、リニューアル・リプレイス分野、原子力分野、環境分野、エンジニアリング分野並びに都市開発分野に重点を置き、技術開発を推進している。実施に際しては、技術ニーズの高度化・多様化に対応し、また技術開発への投資効率を高めるべく、大学をはじめとした研究開発、異業種企業、同業他社等との社外アライアンスを積極的に推進している。

当連結会計年度における研究開発費は109億円である。このうち、主な研究開発事例とその成果は次のとおりである。

 

 (土木事業)

(1) 液状化対策のための解析技術の開発

液状化による建物の沈下を簡易に予測する解析手法を開発した。本解析手法は、地層などの地図情報や建物の形状・配置のデータを3次元でモデル化することで、構造物の不同沈下や建物同士の干渉による変状を精度よく短期間で解析でき、より安全で効果的な液状化対策を選定することができる。東日本大震災での戸建住宅の被災事例解析では、住宅の傾斜角や沈下量など実際の被災状況を再現しており、本解析手法の有効性を確認できた。今後は、プラント工場等の液状化対策検討などへの適用を図る。

(2) 山岳トンネル工事における前方探査・湧水対策技術の開発

山岳トンネル工事において安全な掘削を行うために、トンネルの地山状況や湧水対策効果を事前に定量把握する技術を開発した。トンネル切羽前方探査「T-SPD」は、トンネル穿孔振動を用いて地山を探査するもので、前方500m区間において、崩落の恐れがある不良地山を高精度に把握することが可能となる。「T-WELL_FLO」は、山岳地帯のトンネル工事において高圧・大量湧水が発生すると予測される場合の排水対策として行う水抜きボーリングの圧力損失を考慮した排水効果を解析する手法で、水抜きボーリング孔の数や配置、径・長さなどを最適に計画・設計することができるため、より効果的で安全な排水対策が可能となる。今後は、大土被りの山岳トンネルプロジェクトを対象に適用を図る。

(3) 微生物を用いた地下水汚染浄化技術の開発

製品評価技術基盤機構(NITE)と共同で、汚染された地下水を微生物を用いて従来方法の半分以下の期間で浄化する技術を開発した。この技術では、有害な塩素化エチレン類を無害化する特殊な細菌を、増殖促進菌と共に培養することにより、増殖速度を従来の倍以上に速めることで脱塩素化を速やかに進行させることが可能となる。今後は、実汚染サイトで浄化効果を確認するとともに1~2年後の実用化を目指す。

(4) 既設柱の耐震補強技術の開発

グループ会社の成和リニューアルワークス㈱と共同で、柱部材の耐震補強技術「CFパネル工法」を開発した。本工法は、炭素繊維シートをフレキシブルボード(繊維強化セメント板)で挟んだ複合パネルにより既設柱を囲うもので、炭素繊維を柱部材に巻き立てる従来の耐震補強工法と同等の性能を有しており、重機を使用せず少ない現場作業で施工可能で、工期短縮と施工費削減を図ることができる。今後は、工事スペースや作業時間に制約がある地下街や地下鉄、大型重機が使えない場所への適用を図る。

(5) 次世代無人化施工システムの開発

将来的な人手不足対策や生産性向上を目的として、建設機械を自動制御するシステムを開発した。当システムは、建設機械の操作者が作業目標を設定し、スタートボタンを押すだけで、建設機械に搭載されたセンサー類により周辺状況を建設機械自体が判断しながら作業をするため、遠隔操作も熟練したオペレーターも必要としない、誰でも安全・簡単に操作可能な「次世代の無人化施工システム」である。今後は、技術の更なる高機能化を図るとともに、人の立ち入ることのできない危険区域や災害現場での適用のみならず、ダム、大規模造成工事等への用途拡大を図る。

 

  (6)連結子会社における研究開発の主なもの

大成ロテック㈱において、舗装の耐久性向上・維持修繕に関わる技術として「ひび割れとわだち掘れの発生しにくいアスファルト混合物の開発」や環境にやさしい「耐久性の高いひび割れ補修材の開発」、循環型社会の構築へ向けた舗装技術からのアプローチとして「繰り返し再生されたアスファルト混合物の望ましい再生方法の検討」や「CO2排出量の削減を目的とした中温化技術の高度化」、寒冷地の冬季路面対策として車道用凍結抑制舗装技術の開発」や「歩道用の除雪補助機能を有する舗装の開発」、歩行空間の暑熱環境改善技術として「給水型保水性ブロック舗装システムの改良」及びデング熱などの感染症のリスク軽減に関する技術として「虫除け機能を有する舗装の開発」等の研究を行っている。

 

 (建築事業)

(1) 「ZEB実証棟」年間エネルギー収支ゼロを達成

2014年に技術センター内に建設されたZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)実証棟において、都市型の建物としては国内で初めて年間エネルギー収支ゼロを達成した。当社のZEB技術は、エネルギー消費を一般のオフィスビルに比べ75%削減するとともに残り25%を太陽光発電で創出するものであり、2020年の市場投入に向け技術開発を進めている。また、一般ビルのZEB計画を目的として「T-ZEBシミュレーター」を開発し、短期間でエネルギー収支予測及びZEB評価、コスト算出を可能とした。

(2) エアカーテンによる清浄空気環境技術の開発

空気のカーテンで外部を遮り、屋内の特定の空間のみ空気清浄度を高めるクリーンブース技術「T-Clean Air Wall」を開発した。一定の作業エリアに対し天井外周部から1m/s程度の微風を下方に送るものであり、クリンブース内部はビニルカーテンやガラスで区画する従来のクリーンブースと同等の清浄度を確保できる。また、壁等を設けないため、人や搬送装置の移動動線の妨げといった問題を解消し、高い作業性を確保できる。今後は、電子デバイス製造施設の新築や改修等において、省エネや低コストが求められるような局所クリーン化が必要とされるクリーンルームに対して提案を行うとともに、食品工場、医療施設等さまざまな施設への展開を図る。

(3) 土壌細菌による汚染水浄化技術の開発

大阪大学・北里大学と共同で、工業廃水に含まれる規制物質「1,4-ジオキサン」を効果的に除去する技術を開発した。従来技術は、エネルギー消費が大きく高コストであったが、大阪大学グループが発見した微生物(D17株)を応用することで、イニシャルコストを8割、ランニングコストを5割低減できる。今後は、多くの化学物質を含む難易度の高い工場廃水の処理実験を進め、化学品工場への導入を目指す。同技術で日本経済新聞社「第25回 日経地球環境技術賞」優秀賞を受賞した。

(4) 鉄筋の挿入・定着による既存建物の耐震補強技術の開発

既存の鉄筋コンクリート建築物の増改築時において、既設・新設の躯体を一体化させるための鉄筋挿入・定着工法「Post-Head-Anchor(ポスト・ヘッド・アンカー)」を開発した。地震時に発生する引張力を躯体間で確実に伝達することで建築物の耐震性能を大幅に向上させるだけでなく、既存躯体への影響を最小限に抑え、短工期で施工できる。今後は、発電所等の重要施設の地震・津波時対策として、建屋の安定性確保など既設建築物の補強・増設工事への適用を目指すとともに、一般的な建築物の増改築や耐震補強技術として適用を図る。

(5) ウェアラブル端末を利用した施工支援技術の開発

ICT技術を活用した施工の省力化・省人化技術として、ウェアラブル端末を活用した墨出し測量システム「T-Mark.Navi」を開発した。本システムは、眼鏡型のウェアラブル端末と専用測量機器を連携させウェアラブル端末の画面表示により作業員を目標とする測点まで誘導し、作業員の音声操作により測点の位置を決定するシステムである。これまで2人1組で行っていた測量作業を単独で行うことができ、作業時間も約3割短縮できる。現在、数ヵ所の建設現場で運用を開始している。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 概況

当連結会計年度の経営成績については、売上高は年度当初の予想を達成するには至らなかったものの、受注高・営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益の各項目においては年度当初の予想を達成した。また、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度比388億円増の770億円となったことから、ROE(自己資本当期純利益率)は6.5%増の15.3%となった。

財政状態については、支払に伴う工事未払金の減少等により負債が1兆1,395億円に減少したことに加え、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により純資産が5,212億円に増加したため、自己資本比率は前連結会計年度末比3.0%増の31.2%となった。また、資金調達に係る有利子負債が2,546億円と185億円減少(うちノンリコース債務は51億円・前連結会計年度末は残高なし)したものの、D/Eレシオは同ポイントの0.5倍となった(前連結会計年度末は劣後ローンの資本性勘案後)。

 

(2) 財政状態

①資産の状況

回収の進捗に伴う完成工事未収入金の減少等により、資産合計は前連結会計年度末比4.3%・744億円減の1兆6,608億円となった。

②負債の状況

支払に伴う工事未払金の減少等により、負債合計は前連結会計年度末比8.3%・1,035億円減の1兆1,395億円となった。

なお、当連結会計年度末の資金調達に係る有利子負債残高は2,546億円(うちノンリコース債務は51億円)となった。

③純資産の状況

株式相場下落によるその他有価証券評価差額金の減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、前連結会計年度末比5.9%・291億円増の5,212億円となった。

 

(3) 経営成績

①受注高及び売上高

受注高は、土木事業及び開発事業において減少したことから、前連結会計年度比5.4%減の1兆6,710億円となった。

また、売上高も土木事業及び開発事業において減少したことから、前連結会計年度比1.7%減の1兆5,458億円となった。

②営業利益及び経常利益

営業利益は、売上総利益が土木事業及び建築事業の利益率好転等により増益となったことから、前連結会計年度比66.8%増の1,174億円となった。

経常利益は、為替差損益の悪化等に伴う営業外損益の悪化があったものの、営業利益の増加により、前連結会計年度比58.1%増の1,177億円となった。

③親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、退職給付信託資産返還に伴う利益の発生等により特別損益が好転したことから、前連結会計年度比101.8%増の770億円となった。

 

(4) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「第2  事業の状況  1  業績等の概要  (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。